2008年版あのヒット商品の仕掛け人 5万円台ミニPC はるさめヌードル

今年、テレビ・雑誌・インターネットなどで話題に上ったあの商品。ヒットのかげには、仕掛けた人たちの苦労と喜びがあった!?「ヒット商品の仕掛け人」、その仕事をご紹介します。

2008年12月10日(水)

「不安をfun!へ」変えられる企業が、ヒット商品を生み出す

2008年は金融危機、原料高騰、年金問題など、暮らしのインフラを揺るがす大きな変化が相次ぎました。生活者は先行きの見えない不安の中、未体験のモノ・コトに外向的にトライするよりも、「自分の内側磨き」に投資した年でした。それが、健康ブームや多様な能力検定型ゲームなどのヒットにつながったと考えます。

また近年、生活者は自己実現の追求だけでなく、安全・環境など社会情勢とのつながりの中に「新たな充足」を求め始めました。不況下では、何かを我慢したり、欲しいモノは代替品で…となりがちですが、そうした節制・節約は「健康・エコという達成感」に置き換えられています。生活者は単に安価な商品に反応するわけではなく、新しい喜びのストーリーを含んだ商品・サービスを求めているのです。

逆風を追い風に、新しいモノ作りを始める企業も増えました。一例を挙げれば、小麦の高騰を背景に、米を原料とした新しい食品が生み出されたこと。生活者が感じるネガティブ要因をひっくり返すような、いわば「不安をfun!へ」という価値転換ができる企業が、次のヒット商品を生み出す企業と言えるかもしれません。

株式会社博報堂 研究開発局 主席研究員 中村隆紀氏

1984年、博報堂入社。クリエイティブ職を経た後、2003年から消費分析と発想支援ナレッジの開発を担当。「生活者発想」に基づいたさまざまなアイディアのシーズ(種)を開発する。

健康志向でヒット メタボ対策で火がついた!

「はるさめシリーズ」商品企画のお仕事

「スープはるさめ」は2001年、「はるさめヌードル」は2002年から販売。以前から女性には低カロリーな食品として人気があった「はるさめシリーズ(特にスープはるさめ)」だが、いわゆる“メタボ対策”の推進で男性からも注目が集まり、今年のヒット商品となった。この「はるさめシリーズ」のヒットは、商品開発グループ・近澤氏が仕掛けた!

「はるさめシリーズ(はるさめヌードル)」
「はるさめシリーズ」のコンセプト立案などを行う、商品企画を担当しています。商品開発グループにはほかに、麺やスープなど中身の開発を得意とする「ハード出身者」もいます。当初は6人のみで始めたプロジェクトですが、商品のヒットのおかげもあって、今はメンバーも14人に増えました。

エースコック株式会社 マーケティング部 商品開発グループ3 近澤幸大氏(33歳)

大学卒業後、大手流通企業へ入社。食品フロアで販売などを行う。その後、玩具卸に転職。同社倒産のため転職を余儀なくされる。自動車アクセサリー・家具などメーカー数社を受けたが、最終的にエースコックへ入社を決意(2001年)。営業職を経験した後、マーケティング部に異動。

メタボ対策で時流をつかんだ「はるさめヌードル」。
ヒットはまだ「芽」の段階。これからも育て続けます

「はるさめシリーズ」がヒットした理由は?

ヒットというか、「うまく時流をつかんだ」という認識ですが…それで言えば、やはり今年は「はるさめヌードル」。「スープはるさめ」のほうは4年ほど前からすでに、女性を中心に支持をいただいているので。スープに比べると、ヌードルは長いこと「冬の時代」でした。それでもあきらめずにあの手この手で攻めていたところへ、「メタボ健診が義務づけられる」というニュースが。言うまでもなく、これは起爆剤になってくれました。長い「冬の時代」、商品のポテンシャルと自分たちの仕事を信じて耐えたからこそ、このチャンスをどの企業よりも早くつかみ、ヒットに結びつけられたと思っています。

女性や学生を中心に人気のロングヒット商品「スープはるさめ」。今年、やっと時流に乗った「はるさめヌードル」は、男性からも注目され始めた

ヒットを実感したのは?

正直、まだ「実感」とまではいかない。出荷ベースで、やっと30億円程度なので…。「スープはるさめ」で一度、ものすごい成功体験を味わっているため、「はるさめヌードル」はまだまだこれからという気持ち。ただ「空気は確実に変わった」と思います。昨年くらいまでは社内の反応や取引先からの反応が、「これはいらない」「もうやめたら」と言われていたのに、「これはやらなきゃいけないよ」と少しずつ変わってきた。ヒットの芽を、感じています。

この仕事にどう関わりましたか?

私が入社した年に「はるさめシリーズ」の販売が始まりました。販売翌年から商品開発に異動して、この商品を担当したので、「育ててきた」という自負があります。商品企画(コンセプト立案)、パッケージデザインの検討、サンプリングの実施、プロモーション担当と協力して認知度やブランドイメージの調査収集を行ったりします。またヌードルに関しては「メタボ対策に使える」ということを謳っていくため、まず私たちが勉強をしなければと考え、そのために医師や医療系マーケティング企業に協力してもらえるようお願いもしました。弊社としては異例でしたが、臨床試験を実施して研究データを集め、「はるさめヌードル」が脱メタボに有効な低カロリー食品であることの実証も、商品開発グループとして行いました。

ヒットを生み出す過程でしんどかったのは?

やはり「はるさめヌードル」で、なかなか結果を出せなかったこと。結果が出るまでは、この商品を出し続けることへの反対意見もありましたしね。「スープはるさめ」のときも、社内の反対意見はあったんですよ。即席めん市場が頭打ちになり、一方でカロリー・塩分控えめなど世間ではヘルシー志向が高まり、そうした中うちは何が出せるのかと。当時はヘルシーな麺といえばノンフライ麺でしたが、弊社にはその生産ラインがなかった。ではノンフライ麺ではないヘルシーで美味しい麺はほかにはないのか?と考えて採用されたのが、はるさめで。「絶対にこの商品はいつか世の中に認められる」と信じ、あきらめない推進派というのが、私たちでした。しかし売り上げが伸びず「もうええやん」「やめとけ」という空気が社内に出てきて、気持ちが折れそうになるときもありました。「はるさめヌードル」にいたっては、それで7年ですからね。パッケージを変え、商品名を変え、CMを変え…手は尽くすが結果が出ないとなると、「育ての担当者がよくないのでは」となるわけで。それは辛かったですよね。

「必ず売れる」という信念を貫き続けるには、支え合う仲間が必要です

この商品を、途中であきらめずに続けられた理由は?

“推進派”となるチームがあって、仲間がいて、バックアップしてくれる役員がいて…そのように支え合える人たちがいたことかな。社長も含めて、ですね。「まあ、失敗するかもしれへんけど、いいからやってみろ」と。だから続けられる。私1人なら、あきらめていたかもしれませんよ。でも、私が折れそうなときはほかの誰かが耐え、その誰かが折れそうなときは私が耐え…と。うちの会社はいい意味で、のんびりしていて家庭的なんです。すぐ結果を出せ!とか、やいやい言わないから、みんなあきらめずにコツコツやっていられるのかもしれません。

転職前の経験は役に立った?

確実に役立っています。例えば流通(大型スーパー)で働いたときの経験は、今の仕事での「売り場提案」に役立っています。「こうすると売れるんじゃない?」「こうすると売り場の人が喜ぶんじゃない?」と、実際に売る側の立場だったので、それが肌で感じ取れている。インフラを知っていることは、私にしかない強みになっています。そもそも商品企画という「モノ作り」の仕事に興味を覚えたのも、流通や卸という前職での経験があったからこそ。「モノを流すだけではなく、作り出したい」と考えるきっかけになりました。

売れなくても、あきらめずに続ける。すると、あるときやってきたチャンスを機を逃さず、すぐにつかまえることができるんです!

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EDIT&WRITING
佐藤裕子
PHOTO
松谷靖之、臼田尚史
DESIGN
Mac.H GraphicArts

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