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純粋?異常?○○すぎるエンジニア vol.2

イラストレーターになる夢が
pixivを作り上げた!

何かに対して深いこだわりを持つエンジニア、つまり“○○すぎるエンジニア”を探すこの企画。今回紹介するのは、日本の代表的サブカルチャーであるアニメや漫画、そしてイラストに対して深いこだわりを持つエンジニアだ。

(総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:10.11.12

イラストにこだわりすぎて、pixivを作ったエンジニア


今回の○○すぎるエンジニア
ピクシブ株式会社
リードエンジニア
上谷隆宏氏

「pixiv」と言えばイラストの投稿や評価、タグ付け、コメント機能など「イラストによるコミュニケーション」にフォーカスして作られたサービス。2007年に開設してからわずか3年で会員数240万人(2010年10月末時点)にまで急成長した人気サイトだ。

今回、紹介するエンジニアはそのpixivの生みの親である、上谷隆宏氏(30歳)。専門学校時代にイラストレーターになる夢を持ってから、今でもその夢を持ち続けている上谷氏は、毎週20本のアニメ番組を欠かさずチェック。また漫画単行本やライトノベルを今年だけでも100冊以上読み漁る一方、同人誌活動に参加しつつ、本業でも無数のイラストをチェックするなどアニメ・漫画・イラストをこよなく愛するエンジニアだ。

そんな上谷氏がなぜpixivを立ち上げることになったのか?そのユニークかつ波乱万丈な経緯について、本人に語ってもらおう。

専門学校でイラストレーターになる道を選択。しかし夢破れてニートに……


pixivには、上谷氏が描き上げた珠玉のイラスト作品も掲載されている

イラストに興味を持ったきっかけは、ゲーム専門学校のイラストコースを選択したこと。同じ学校仲間とイラストを描いたり、同人誌を作って売ったりする活動を通して純粋にイラストを描くことの面白さを実感しました。
学校卒業後、イラストレーターとしてゲーム会社への就職を目指したのですが、思いのほかハードルは高く断念。その後実家に戻り、1年間ニート生活を送っていたんです。
それから専門学校時代の友人に誘われて再び上京。今度はWebデザイナーとして職務に復帰したのですが、やはりイラストレーターになる夢をあきらめきれず1年後に退職。その後デッサンスクールに通いつつ、アルバイトでWebデザインの仕事を続けました。仕事の中で新しいWebサイトの構築を一手に担う業務があって、その時にPHPを覚えたりするなど、エンジニアとしてのスキルも身につけていったのです。

しかし勉強や仕事を続けていくうちに、他のプロのイラストレーターの高品質な作品を目にすることで、やはり自分の力ではプロのイラストレーターとして独立していくのは難しいと感じました。その一方で以前からずっと思っていたことが。私の場合、普段から数百人のイラストレーターの作品をネットサーフィンしながらチェックしていたのですが、正直その行為が面倒だなと。イラストレーターが一堂に集まって自分の作品を紹介し、お互いに評価し合うことで創作意欲を高めたり、また私のようなイラストレーターを目指している若手が、公の場で作品を発表できるような“イラストのポータルサイト”のようなものがあればいいのにと思っていたんです。

わずか2カ月でpixivを作り上げた! 今もイラストレーターになる夢を追い続ける


pixivの社内には打ち合わせデスクや受付入口の壁面など、いたるところにイラスト作品が飾られている

「ないものは自分で作ってしまえばいい」。そこでこれまでの経験を生かしながら、他のSNSサイトも参考にしつつ、2カ月間で今のpixivの基本機能も含めたコンテンツを作り上げました。ただ作ったのはいいけれど、運用するサーバがない。そこで当時、知り合いだったピクシブの片桐社長に協力を仰いでサーバを貸してもらい、2007年9月から運用をスタートさせました。
開始後、わずか1週間でサーバが回らなくなるほどアクセス数が急増。その後何度も拡張したり、また新機能をリリースする中で気がつけば、会員数240万人の大規模サービスになっていたんです。
今でも基本的な部分はすべて私一人が担当しています。それに加え、毎日100通近いユーザーからの要望メールが届くので、それを元に新しい機能やサービスを追加・開発しています。
私自身、業務以外の時間も週に20本程度アニメをチェックしたり漫画の単行本やライトノベルを購読するなど、自分の好きなことに対しても時間の許す限りのめりこんでいますね。

pixivを作ったのも、今の業務も基本的には「自分が楽しむため」にやってきた部分があります。それは自分自身が開発者である一方、1ユーザーの視点で「こんなのあったらいいのに」という思いを常に大事にしているからこそ、pixivがこれだけ多くの方に受け入れられたんだと思っています。
今後の目標は海外を含め、より多くの方に楽しんでもらえるpixivを作っていくこと。今年、新たに台湾向けのサイトを作ったり、スマートフォン向けサービスをスタートさせるなど矢継ぎ早に実行しているところです。特にイラストって言葉の壁がなく自由にコミュニケーションができる最適な表現スタイルだし、それがイラストならではの魅力だと思うんですよね。私もpixivで定期的に自分の作品をアップしていますし、実は今もイラストレーターになる夢を追い続けているんです(笑)。

上谷さんが勤務する企業:ピクシブ株式会社の事業方針


ピクシブ株式会社
取締役/開発統括
青木俊介氏

「日本から世界に通用するソフトウェア(Webサービス)を作りたい」という思いでスタートしたピクシブは2007年、上谷の加入で「pixiv」が生まれました。
ピクシブの魅力はテクノロジーとクリエイティブ、両方の視点からチャレンジできる課題があるということです。具体的には膨大なデータやアクセスを処理するWebアプリケーションの開発や運用といった技術面。一方、pixivに世界中から投稿されるユーザーの素晴らしい作品を、展示会や即売会というイベントを通してサポートする文化的側面。その両面を感じることができます。

今回紹介した上谷は、社内で「創造神」と呼ばれる存在。サイトデザインから設計開発をすべて一人でゼロから生み出し、今も核心部分は上谷一人で担っています。彼の場合、仕事も趣味の境界線がなく、モノづくりが好きで暇さえあればイラストやアニメに触れています。その中で、アイデアを巡らせ形にしていく姿勢を常に貫いていることが、彼ならではの強み。そして私たちが求めるエンジニアの理想も、まさに上谷のような考えを持って取り組める方なんです。徹底したユーザー視点で考えて、自分がいいと思うモノを作っていくチャレンジングな姿勢を重視しています。

今年になって、台湾向けのサイトを開設したり、スマートフォン向けにリリースするなど、pixivはそのサービス領域をますます拡大させていますが、それは開発するエンジニアにとっても非常に挑戦しがいのある環境であるはず。一般的なSNSとは違うユニークな存在であるpixivの価値が今後ますます高まっていく中でぜひ、上谷や私たちと一緒にオリジナリティのあるプロダクトを生み出していきましょう。

【今回の○○】「こんなサービスあったら便利なのに」の発想が、すべての始まり

240万人の会員数を誇るpixivも、きっかけは上谷氏自身が日頃感じていた、「無数のイラスト作品を一つのサイトでチェックできたら便利なのに」というユーザー視点の発想から生まれた。そしていまでも、上谷氏をはじめpixivのエンジニアは常にユーザー視点を大事にしたサービスを考え、開発している。イラストが好きすぎるからこそ、同じイラスト好きのユーザーにとって必要なサービスやモノを生み出し、その積み重ねが多くの支持を得ることができるのだ。
「これからもあきらめずにイラストレーターを目指す」と断言する上谷氏が活躍する、pixivの今後の展開には要チェックだ。

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