mixiチェックイン、はてなココ、PinQA、コロプラ… |
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位置情報がWebを変える!
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「位置がわかると何ができる?」のアイデアが花盛り
株式会社シリウステクノロジーズ
シリウスラボ 所長
関 治之氏
「Near Near」の画面
現在の場所やスポットなどの情報を共有できる、「mixiチェックイン」が始まった。米「Foursquare」が先行したロケーションサービスは、「ロケタッチ」(ライブドア)や「はてなココ」(はてな)なども含めて日本に急速に広がっている。Twitterなどからの質問にGoogle Map上で回答する「PinQA」(NTTレゾナント)もユニーク。ARのセカイカメラも位置ゲーのコロプラもそうだが、すべては「位置情報」が不可欠なサービスなのだ。
こうしたGPS、緯度経度情報、地図などと連動したコンテンツを持つメディアは、近年では「ジオメディア」と呼ばれるようになった。そんな「ジオ(Geo)な人たち」が集まる「ジオメディア・サミット」を運営する中心人物が、シリウスラボ所長の関治之氏だ。
「Webやモバイルで多彩なプラットフォームが出てきているので、それと位置情報を掛け合わせたコンテンツに興味が尽きません。そのひとつがソーシャルアプリなわけですが、位置情報と連動したサービスの特徴は、『主体的に人が動く』ことなんですね」
コロプラと東京メトロとのコラボレーションが好例だが、人が移動するとお金も時間も使うので、ビジネスが生まれやすくなる。関氏はmixiチェックインからも、こうした新しい「文化」が広がるかどうか注目しているという。また、「食べログ」などでのレコメンデーション機能が強化されて、次のステージに進むとも予測する。CGM(Consumer Generated Media:消費者主導型のメディア)が力を持ってきたことが背景にある。
「第三者のレビューは参考になりますが、他人なので嗜好がわからないし、信用できない部分もある。Twitterで友達が書けば、パーソナリティはわかっているので評価に期待できます。こうしたリアルタイムのコミュニケーションと位置情報とがいっそうつながるようになると思いますし、グルーポン系も要チェック。日本でどこまで流行るかは様子見の段階ですが」
クーポッドを買収して日本進出を図る米国Grouponが大流行させたのが、Webを使った商品やサービスの「共同型タイムセール」。フラッシュマーケティングとも呼ばれ、参入が比較的容易なことから日本でもサービスが林立している。これらには位置情報が大切な要素だし、SNS内のロケーション機能と割引クーポンとはそもそも親和性が高い。
ただ、ブランディングに成功した米国と異なり、関氏は日本での定着に疑問符を付ける。「バーゲンハンター」ばかりがユーザーになって、リピーターが増えない可能性も考えられるし、日本人は飽きっぽいところもあるからだ。しかし、位置情報のプラットフォームがまたひとつ増えたことは間違いない。
オープンソースの「FOSS4G」から始めよう
9月に開催されたFOSS4Gのオープニングセッション
FOSS4Gで行われたコードスプリント
FOSS4Gのブースの様子
関氏は大学時代からアルバイトで、Javaで金融系システムを開発していた技術系。その後は外資系のネット証券や、スポーツ系のポータルサイト、音楽系のコンテンツプロバイダーなどで開発エンジニアをした後、シリウステクノロジーズの社長に誘われて2006年にシリウスラボの所長となる。位置情報に触れたのはここからだ。
シリウステクノロジーズは「AdLocal」という地域連動型のモバイル広告サービスが主力商品。シリウスラボではこのPRもそうだが、位置情報やジオメディアの普及や、ソーシャルロケーションブックマークの「Near Near」、携帯キャリアで異なる緯度経度の取得方法や測地系の違いを統一する「GeoForm API」などの開発も行っている。先のジオメディア・サミットの運営は仕事というより趣味に近いという。
「位置情報は面白いですね。特に僕の好きなモバイルとの相性がいい。常に携帯していて生活に密着しているモバイルでは、いっそう可能性が広がると感じました。エンジニアにとっては、地理情報向けのソフトがオープンソースで普及し始めたところですから、入るにはよい時期だと思います」
それがFOSS4G(フォスフォージー:Free and Open Source Software for Geospatial)だ。地理情報システム(GIS)用のソフトウェアはライセンス料が高額で、プロ仕様の多機能型が多いため習熟にも時間も掛かる。オープンソースによるソフトは「オープンソースGIS」と呼ばれ、企業にもエンジニアにも参入の壁を低くする効果が絶大となる。
これらはデスクトップ用の「GRASS GIS」、Web用の「OpenLayers」、Webマッピング用の「MapServer」、空間データベース用の「PostGIS」など、用途別に多様なソフトがそろっている。その多くは日本語化されているか、日本語化作業が進行中だ。
FOSS4Gでは1年に一度、世界的なカンファレンスが開かれるが、今年は9月にスペインのバルセロナで開催されたばかり。参加者は800人ほどで毎年増え続けており、日本人の出席者は二十数人だったと関氏は語る。それでもアジア地域では最も多かったとのことだが、関氏は5つの会場でのさまざまなセッション、その後のディナーやパーティにも参加した(写真参照)。
「プロ」の少ない今が世界に出ていくチャンス
FOSS4Gの後のディナー
会場の外には古都の風景が広がる
位置情報のサービス提供企業は増加しているが、転職するにはどれほどのスキルが必要になるのだろうか。こうした企業に技術特化型のベンチャーが多いこともあるが、次々と仕様が変わるので要件定義などできず、開発は自社で行うケースがほとんどだと関氏は語る。そのため、大手企業が位置情報サービスに本格参入する場合は、優良なベンチャー買収するケースが少なくない。関氏の勤務先であるシリウステクノロジーズも先ごろ、ヤフーに買収されたばかりだ。
「Webのフロント側は通常と変わらないし、位置情報との連携もGoogle Maps APIでつなげればできるので、専門の知識がなくても入社できると思います。位置情報を組み合わせたiPhoneアプリなどの開発もエンジニアが不足していると思いますので、そちらに行く手もあるでしょう。ただ、だからこそ専門性を高めると強い武器になります。ノウハウがまだ一般化していない、例えばPostGISでデータベースを扱えるエンジニアなどが求められると思います」
各種サービスが拡大して位置情報のデータが膨大になると、それをDB化して検索し、最終的な処理までを行うニーズが高まってくるが、そのためのエンジニアだ。ほかにも、BI(ビジネス・インテリジェンス)と位置情報を組み合わせたニーズも発生するのではないかと関氏は見る。大手企業でエリアマーケティングなどの分析業務を担当するエンジニアがこれに当たる。
「分析業務に必須なGISソフトは高額ですが、FOSS4Gなら誰でも扱えるので技術力を身につけられます。統計の基礎知識があり、これらのソフトで市場分析などができれば、エンジニアとして高い市場価値が生まれるはずです」
ジオメディア・サミットの来場者は年代も業種も幅広く、半数以上が新規の参加者だという。エンジニアの割合は半数ほどで、全体的には意思決定のできるポジションにいる人が目立つという。大手企業の関心も高まっているようだ。今後はジオメディアもLBS(次世代ワイヤレス機器に搭載できる位置情報サービス)も、市場規模は右肩上がりと予測されている。
「業種やサービスの奥深さがこの業界の特徴ですから、アイデア次第で活躍の場はいくらでも広がります。まだ日本人が少ないこと、世界とつながりやすいことなどを考えると、国際舞台で働けるチャンスも十分にあります。ぜひ、飛び込んできてください」
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