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アインシュタイン、ザッカーバーグ、ジョブズ、本田宗一郎… 不倫、ピンハネ、男気…有名エンジニア13人の逸話集
偉大なエンジニアと呼ばれる人たちの、隠れたエピソードを紹介します。従兄弟と不倫、親友からピンハネ、学友をかばって退学、宇宙に旅行、元ボクサー……。本来語られるべき業績・功績は、書籍やネットで多数紹介されていますので、ぜひそちらをご参考に。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ イラスト/関根庸子)作成日:10.08.18
エンジニアたちの“トンでも”LOVE STORY
 当たり前だけど、エンジニアだって恋をする。失恋もすれば不倫(?)もする。ただ、「技術」や「偉業」といった形容詞が付くと、なぜか「まじめ」で「おとなしい人」と思われてしまうようです。それが違うこと、よくわかっていますよね?
アルベルト・アインシュタイン 天才物理学者は女好き!不倫の果てに相手の娘に求婚
 アインシュタインが最初に結婚したミレーバとは、「できちゃった婚」。双方の親が反対する中で妊娠が発覚したのは、ようやくスイスの特許庁に職を得ようとしていた時期。当時は婚姻前の妊娠はタブーであり、生まれた女の子は養子に出し、二人はようやく結婚する。

 ここから彼の大論文が走り出すのだが、女癖の悪さも走り出す。脚光を浴びるアインシュタインはお茶目な人柄もあって、女性に大人気。数々の浮名を流す中、従兄弟のエルザと不倫の関係に落ちる。彼女は娘二人を抱えて離婚したばかりだったが、交際は長く続き、アインシュタインはミレーバに離婚を切り出す。その条件は「ノーベル賞の賞金を慰謝料にする」。でもこれ受賞前のこと。何度もノミネートされていたとはいえ、いかがなものかと……。

 結局ミレーバは離婚に応じる。ただ、アインシュタインは最愛のエルザと結婚するかと思いきや、彼女の娘のイルザに恋してしまう! プロポーズしてしまう! いい加減にせい! 最終的にエルザと結婚するが、その後も女漁りは止まらない。エルザとは終生をともにするものの、仲たがいも終生続いたとか。
マーク・ザッカーバーグ Facebook発想の原点はハーバード大学版「出会い系」?
 世界最大のSNS「Facebook」の創設者でありCEOのマーク・ザッカーバーグ。米フォーブス誌「2010年 世界で最も若い10人の億万長者」の第1位に最年少の25歳で選ばれ、総資産額は約40億ドル(約3600億円)とか! ただ、彼はビジネスとしてFacebookを始めたわけではない。

 Facebookがハーバード大学の学生限定でスタートしたことは有名だが、なぜか。米国の大学には多くの「社交クラブ」が存在し、成績だけでなく家柄、人柄、財産などが審査されて入会が認められる。早い話が排他的なエリートの親交会だ。
 だからこそ会員同士の結びつきは強く、就職の斡旋や将来の人脈づくり、男女の出会いの場としても機能する。優秀な大学ほど傾向は顕著で、将来性豊かな男性を求めてかわいい女の子も集まってくる。だが、先のように入会には高いハードルがある。

 人付き合いの得意でないザッカーバーグとその悪友、いや学友たちは考えた。「自分たちで作ればいいじゃん」。で、この社交クラブをネットで実現したのがFacebook。だから自分のハーバード大学生限定で、実名+写真付きなのだ。
 彼がFacebookで彼女を見つけたかどうかは不明だが、もう彼女探しには使っていないだろう。
野口英世 世界に誇る偉大な細菌学者は、一歩間違えればストーカー?
 極貧の中から苦学して研究者となり、人種差別の残る米国で奮闘し、世界的な名声を得た野口英世。彼の初恋の人とされるのが、会津で初めて開業した女医といわれる山内ヨネだ。女学校時代、彼女は「名前の書かれていない」ラブレターを受け取る。不審に思って教師に相談すると、差出人は英世と発覚。注意を受けて彼の初恋は終わるのだが、恋は終わらなかった。

 ヨネはその後、東京で女医を目指すが、同じく上京していた英世はヨネと再会。旧友(?)を深め、検疫医官補として清国(中国)に出向く直前には正装して思いを打ち明けるが再び玉砕。帰国すると「自分とヨネの名を刻んだ指輪」(!)を贈るのだが、気持悪がられたのか以降は面会不能に。その後、ヨネは明治35年に医師と結婚するのだが、それをニューヨークで知った英世は、「夏の夜に飛び去る星、誰か追うものぞ。君よ、快活に世を送り給え」と友人への手紙に書いている。ヨネへの思いの強さがわかる。

 英世の明治44年、米国でメリー・ダージスと結婚。二人は幸せな生活を送るのだが、英世はヨネへの思いを断ち切れなかったようだ。大正4年に15年振りに帰国すると、夫と死別していたヨネを訪問。自分の講演会に誘って彼女は出席するが、これが2人の最後となった。その後も英世は、米国で会う会津出身者にヨネのことを尋ねていたという。
ピエール・キュリー 草食系の研究者が美女のマリーと結婚できたわけ
 女性で初、かつ物理学賞と化学賞を受けた唯一のノーベル賞受賞者であるマリー・キュリー。研究一途で結婚に関心のなかった彼女が「キュリー夫人」と呼ばれるのも、ノーベル賞を受賞できたのも、公私ともによきパートナーだった夫のピエール・キュリーの存在が大きい。ピエールは学者としての業績も高いのだが、歴史的に際立った存在感がないのは、彼の性格によるところが大きいようだ。

 ピエールは今でいう草食系男子。常に控え目で朴訥、昇進や栄誉に興味はなく、ノーベル賞以外の勲章などはすべて辞退している。そんな彼が彼の研究室で出会って一目ぼれしたのがマリー・スクロドフスカだ。マリーへの最初のプレゼントは対称性についての彼の新論文。後の「キュリーの原理」につながるもので、マリーは彼に興味を抱いて部屋に招く。

 しかし、そこは小さな屋根裏部屋。彼女のあまりの貧しさを知って恋の炎は激しく燃えたようで、その後はラブレターで口説き、最後には実家に招いてプロポーズ。女性に奥手だったとは信じられないほどの押しの強さで、マリーに結婚を承諾させたのだ。ピエールは荷馬車に轢かれて事故死するが、マリーはその後の28年間を独身で通した。
エンジニアもそりゃ人間だけど……ちょっとセコイ
 セコイ奴って嫌われますよね。でも、自分でしてしまうこともありますよね。偉大なエンジニアたちも同じなのです。「セコイ」の定義はよくわかりませんが、以下を読んでもらえれば感覚としてわかってくれると思います。
チャールズ・ダーウィン 若手の台頭で22年の遅筆が2週間の早筆にヘンシン
 測量船ビーグル号で世界一周航海に出て、5年間の生物の観察を元に「進化論」を書き上げたチャールズ・ダーウィン。しかし、帰国から発表まで22年という年月があり、アルフレッド・ウォーレスがいなければもっと遅くなっていたに違いない。なぜなら、同じく航海の経験をもとにして書いた同様の論文を、ウォーレスはわずか数日でまとめて、親交あるダーウィンに送ってきたからだ。ダーウィンが帰国して22年後のことである。

 22年をかけて構想を「じっくり」と練っていたダーウィンは驚いた。そして、2週間という早業で「進化論」を書き上げ、ウォーレスとの「共著」で学会発表するのである。無名の若手学者を立てたとも言えるが、先を越されまいと同時に出版権を奪取したという見方もできる。

 なぜなら、この翌年にダーウィンは進化論を元にした「種の起源」を出版し、次々と著作を出し続け、「進化論=ダーウィン」という論調に学会も世間も納得していくからだ。
 ダーウィンの名誉は自然発生的なものではなく、彼自身が奪取したものかも。
アルフレッド・ノーベル 「数学賞」がない理由はフラれ男のひがみから?
 ダイナマイトの発明家として知られるアルフレッド・ノーベル。その莫大な遺産を元に1901年から始まったのがノーベル賞だ。対象分野は「物理学」「化学」「生理学・医学」「文学」「平和」で、後に「経済学」が追加される。あれ、「数学」がない。

 この理由には諸説あるのだが、一説には犬猿の仲と言われたスウェーデンの数学者、ミッターク・レフラーに受賞させたくなかったから。その理由のひとつとされているのが、美人数学者として有名なソーニャ・コワレフスカヤの存在だ。ノーベルはソーニャが好きで、アプローチもするのだけど振られてしまう。その彼女と師を同じくするレフラーが親しく、彼に嫉妬したのではないかとも言われる。

 ノーベル賞はノーベルの遺言によって創設された賞なので、自分の死後に「恋敵」に賞を与えたくなかったのかもしれない。フィールズ賞ができたからよかったが、ひょっとしたら、嫉妬が数学の進歩を遅らせていた可能性も?
スティーブ・ジョブズ 大親友のウォズからピンハネした若気の至り
 アップルの創設者として知られる2人のスティーブとは、スティーブン・ジョブズとステファン・ウォズニアック。2人の間にはこんな逸話が残っている。ジョブズがゲーム会社のアタリにいたころ、上司からブロック崩しのゲーム「ブレイクアウト」の部品の削減を命じられた。減らすほどに報酬を出すという「おいしい話」だったが、どうにも方法がわからない。

 そこで、そのころヒューレット・パッカードにいた友人のウォズに相談する。ジョブズと違って「ウォズ」は、ハードもソフトもわかる天才肌のエンジニアだ。この人選は大成功でジョブズは報酬を受け取った。そしてウォズには、全額700ドルのうち半分の350ドルを渡す。しかし、実際の報酬は何と5000ドル。ジョブズは2000ドル以上を「ピンハネ」していたのだ。若気の至り。

 一方のウォズは人柄のよさで有名だ。2人が資産家になってからの話だから比較にならないが、彼は二度の大きなロックコンサートを主催して、約2000万ドルを使ったが、「皆が楽しめて大成功」と語っている。ピンハネは後にバレるのだが、そのときにジョブズが残高を返金したかどうかはわからない。
ビル・ゲイツ セコいのでなく倹約家。大企業のトップはかくあるべし!
 今では慈善活動家となったビル・ゲイツ。言わずと知れたマイクロソフトの創設者だが、会社が大きくなっても飛行機はエコノミークラスで利用していたという。理由は「無駄なことに金を使いたくない」からで、「ファーストクラスに何倍も料金を払っても到着する時間は同じ」とも語っている。

 また、移動が頻繁になり自家用ジェットを利用するようになっても、飛行機本体の料金はもとより、燃料代、整備代、空港使用料なども会社に請求せず、自腹で払っていたという。こういう考え方を「ケチ」と呼ぶ人もいるだろうが、世界有数の大企業の社長、しかも創業社長でこんなことが実行できる人が、何人いるものだろうか。
カッコいい!エンジニアたちのもうひとつの顔
 思わぬ一面、知られざる姿というのが人にはあります。それを知ると不思議とその人に、「深み」が加わるように感じます。ここではエンジニアたちの「もうひとつの顔」を紹介します。
エドウィン・ハッブル 「宇宙の膨張」を発見したのはヘビー級ボクサー
 宇宙膨張を証明する論拠となった「ハッブルの方式」で知られ、宇宙望遠鏡にもその名が冠されるほどの天文学者、エドウィン・ハッブル。宇宙、天体、望遠鏡などからのイメージからほど遠く、彼はスポーツ万能だった。
 
それもハンパでない。高校時代は陸上が万能で、走り高跳びではイリノイ州の州記録を樹立、シカゴ大学ではヘビー級のボクサーとして活躍した。ボクシングでは世界チャンピオンとの対戦を勧められたというから、本格的なアスリートだ。

 その後、英国に渡りオックスフォード大学に進むのだが、ここでも大学対抗のトラック競技に出たり、フランスのチャンピオンとボクシングの試合をしていたらしい。宇宙の収縮をヘンだと思いながらも支持していたアインシュタインに、「わが人生で最大の過ち」と言わしめた男、エドウィン・ハッブル。ボクサーではなく学問を選んで大正解だった。
本田宗一郎 白いツナギは正装!着なければ天皇陛下に会わない
 夜中にアイデアを練っていると外がうるさい、見ると屋台のラーメン屋がチャルメラを流している、頭にきてそのラーメンを全部買い取った……こんなエピソードには事欠かない、ホンダの創業者で世界有数のエンジニアだった本田宗一郎。そんな彼は天皇陛下から勲一等瑞宝章(現・瑞宝大綬章)を受章すると伝えられ、「ツナギ」で参内すると言い出した。当たり前だが正装はモーニングだ。

 その理由は「技術者の正装とは真っ白なツナギだ」から。周囲に止められると、「じゃあ行かねえ」。説得されてモーニングを着用したというが、ツナギにこれほどの誇りを持ったエンジニアは、後にも先にも彼だけだったのではないか。
ラリー・エリソン ヨット、豪邸、女性……IT業界の暴れん坊は日本好き
 IT業界の成功者には一流大学を卒業、あるいは起業により中退した、中流家庭以上の出身者が多い。しかし、この男はちょっと違う。オラクルの共同設立者でありCEOのラリー・エリソンだ。
 未婚の母の子として養子に出され、母親とは後に再開するが、父親の所在は不明。イリノイ大学シャンペーン・アーバナ校に入学し、優秀な学生だったが2年で中退。シカゴ大学に入学するもまた中退。プログラマとして何社かを転職し、後にオラクルを起業する。

 エリソンは「アメリカン・ドリーム」の体現者のようだ。世界有数の大富豪であり、ヨットの大会に出場し、自家用ジェットを操縦し、離婚歴は多く、ストレートな発言が物議を醸す。そんな彼の意外な一面は日本好き。お忍び旅行で京都に来たり、相撲を観戦したり、何と桂離宮を模した邸宅や庭園をカリフォルニアに建設してしまう。

 約3万坪の敷地に200億円を投じて、約9年を掛けて完成させたというが、2005年に売りに出されて、新たな日本邸宅を建設中とか。IT業界でも異色の人物だが、繊細なハートの持ち主という評伝がネットにあふれている。
ヴィルヘルム・レントゲン 友人をかばって退学になり、特許取得もしなかった私心なき男
 X線の発見で、第1回ノーベル物理学賞を受賞したヴィルヘルム・レントゲン。彼の経歴をたどると随所に「男気」が感じられる。まず、ギムナジウム(高等中学校)時代。教師の似顔絵を落書きした友人の名前を問われたのだが、最後まで「吐かなかった」。これにより学校は中退、大学の入学資格を得られなくなり、スイスのチューリッヒ工科大学に進む。

 その後、恩師と共に助手としてヴュルツブルク大学に進むのだが、ギムナジウム中退が原因で昇格できず、シュトラスブルク大学の講師となる。その後でいくつかの大学に移って実績を上げ、ヴュルツブルク大学に戻る。今度は大学側も昇格を認めざるを得なくなり、学長にまでなった。しかし、「学歴の壁」で苦労したことは確かだ。

 現在でもX線は「レントゲン線」と呼ばれるが、彼はその俗称を嫌い、この発明が多くの人に使われるようにと特許も申請しなかった。ノーベル賞以外のすべての賞を断り、国王からの称号も辞退している。最後は、困窮の中で無一文で亡くなったという。私心を持たないエンジニア、それがレントゲンだった。
チャールズ・シモニー Word・Excelの開発者は世界で5人目の宇宙旅行者
 チャールズ・シモニーを知らない人でも、Microsoft Officeの「Word」や「Excel」は使ったことがあるだろう。天才プログラマと呼ばれた彼はこれらの開発者だ。そんなシモニーの子供のころからの夢は宇宙旅行。13歳でモスクワに旅行したとき、宇宙飛行士に出会ったことがきっかけだという。そして、実現してしまう。

 2007年4月、ロシアのソユーズTMA-10に搭乗して、国際宇宙ステーションで11日間を過ごす。彼は世界で5人目の民間人宇宙旅行者となったのである。これだけで終わらない。2009年3月にはソユーズTMA-14に登場し、二度目の国際宇宙ステーションでの生活を楽しんだのだ。
 ちなみにその旅行代金は、シモニー自身が記者会見で「1回目は2100万ドル、2回目が3500万ドル」と語っている。そして、宇宙旅行を二度する理由を尋ねられるとこう答えた。「自分のスキルを伸ばすため」。
※記事の内容は書籍などからの情報によるものですので、事実と完全に一致していない場合もあります。
※ご紹介した方の敬称は略させていただきました。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
もっといっぱいあるんです、偉大なエンジニアたちのエピソード。だけど、本当のエンジニアなら知ってておかしくないけど、世間的には知名度の少ない人はいますよね。そんな微妙なボーダーをどこに置くかが難しかったです。みなさんが納得すれば、続編を作りたいのですが……。

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