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日本経団連が7月18日に発表した2007年夏のボーナス交渉妥結結果によると、妥結額(加重平均)は91万286円と4年連続で過去最高を更新した。経団連の最終集計としては初の90万円台。最近の大手企業を中心とする業績向上が、ボーナスにも反映された形になっている。 これを受けて家電量販店や百貨店など小売業の夏商戦も前年を上回る売上高。秋葉原の大手家電量販店では、薄型テレビの販売台数が前年比2割増。夏休みの海外パック旅行の申込数も、有名格安チケット代理店では、前年比26%増ということだ。今年の夏は、財布の入りも出も、ともに大盤振る舞いという感じがする。 Tech総研が行う恒例のエンジニア・アンケート調査(今回のパネルは25〜44歳のソフト・ネットワーク系技術者、電気・電子・機械などのハードウェア系技術者の1000人。平均年収584.4万円。平均年齢33.7歳)では、今年の夏のボーナスは全体平均で72.3万円となった。回答者が報告する昨年夏からのアップ額は、平均で5.4万円と、ボーナスの伸びはここでも確認できた。以下、詳しくアンケート結果をレポートする。 |
同じ技術職でも、職種や年齢、勤務先の規模、業種によって、ボーナス額に差があるのは当然のこと。まず職種別にみると、経団連調査にある90万円台を突破しているのは、「コンサルタント、アナリスト、プリセールス」(91.1万円)と、ソフトウェアの「研究、特許、テニクカルマーケティング、品質管理」(93.5万円)の2つの職種分類だ。もともとシステム系、IT系のコンサルタント職は給与総額ではいつもダントツだが、今回は研究、特許などの専門職がこれに並んだ。企業の戦略立案にかかわり、新技術・新製品の研究の最先端に位置する「インテリジェント系」職種がボーナスでも報われつつあるということがいえそうだ。 同じ「研究職」について、ソフトウェア・ネットワーク系とハードウェア系を比べると、ソフトがハードを大きく上回っている。しかし、これがソフト/ハードの一般的傾向かというとそうではない。職種全体を大きく「ソフトウェア・ネットワーク系」とハードウェア系」に分けると、前者が平均68.4万円、後者が72.3万円で、明らかに回路・システム設計、光学技術、制御技術などを含むハード系のほうが高くなっている。ボーナス額におけるハード優位の傾向はここ数年変わっていないが、背景には自動車、エレクトロニクスなど「モノづくり系産業」の好調があるとみられる。 このことは所属する企業の業種の違いを見れば、より端的に理解できよう。業種を「IT・通信系」と「メーカー(電気・電子・機械系)」に分けて見ると、前者が64.7万円であるのに対して、後者は78.6万円。2割以上の差がある。最近のモノづくり産業の勢いは、IT産業の成長を上回っていると、とりあえずは言えそうだ。 |
DATA1 2007年夏の年代・職種別ボーナス平均額を大公開! |
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職種を問わず年代別に集計してみると、20代後半が56.9万円、30代前半が64.9万円、同後半が81.9万円、40代前半が96.8万円という数字が出た。20代はそこそこという感じのボーナスも、35歳を過ぎるとバネのようにピンと伸びるという一般的傾向を示している。しかし、このデータからはうかがえないが、実は近年は同期入社・同年代の社員間のボーナス差額が大きく開いていることも事実だ。成果主義の浸透で年齢による平均額があまり意味をもたなくなり、むしろ個人や所属部署の業績の差が、ボーナスにダイレクトに反映される傾向が強まっている。 今回の調査でも「今年の夏のボーナス金額の評価基準で最も影響があったと思われる項目」という設問では、最も多いのが「会社の業績」(47.4%)だが、「個人の業績」を挙げる人も4分の1程度(25.1%)いた。2006年同時期の調査に比べると、会社の業績が5.4ポイント増え、個人の業績が0.8ポイント減っているが、それでも無視できない数字ではある。 |
とはいえ、業績をどう評価し、それを賞与にどれぐらい還元するかは上司や企業トップの判断にかかわるもの。「自分は頑張ったのに、それがボーナスに評価されない」という不満は、この種の調査にはつきものだ。例えば、「会社業績が好調で、株の配当も増配であり、また個人評価も高い水準を獲得したにもかかわらず、前年と比べて変化がなかった」(生産技術・28歳)などの声。この回答者は「仕事内容に比べてボーナス額は50万円程度安い」と不満たらたらだ。 反対に「会社の業績が好調なため、ボーナスも増額になったと思う」(プロセス開発・31歳)という意見のように、個人業績はさておいても、今年のボーナス増額に大満足という声もある。 総じて、ボーナスへの満足度を聞くと、「仕事内容に見合っている」が60%と最も多い。「50万円程度安い」という不満層も33%いるが、例年の調査と比較すると、全体としては満足度は上がっている。 |
このほか、企業特性別のボーナス額のクロス集計では、国内大手企業(平均86.4万円)→外資系企業(同80.6万円)→国内ベンチャー企業(同70.1万円)→国内中小企業(同55万円)という順になった。大手と中小では30万円もの差がついている。産業構造上、この差はやむをえないともいえるが、大手企業の軒並み好決算の報道をみながら、「じっとわが手をみつめる」中小企業のエンジニアの姿が思い浮かぶ。日本のエンジニア全体の活性化のためにも、大手の好景気が中小に波及し、ボーナス支給額の差がもっと縮まることを願わずにはいられない。 |
DATA2 2007年夏のボーナスの決め手は何? | DATA3 2007年夏のボーナス満足度は? | |||
今回の調査では、ボーナスの使い道についても簡単にアンケートを取っている。 それによれば、「貯金する」が74%と最大、「ローン返済」が33%で、以下「買い物をする」(40%)「旅行する」(24%)などとなっている。全般的な消費動向の好転を受けて、「買い物」「旅行」がもっと伸びるのではと想定していたが、いずれも昨年より数ポイントとわずかながら数字を下げている。エンジニアは、世間の浮かれぶりを向こうに見つつ、ボーナス増額のいまこそ、その分をせっせと貯蓄に回すという、キリギリス型というよりはアリ型の行動特性をもっているのだろうか。 |
DATA4 2007年夏のボーナス使い道はどうする?(※複数回答) |
ちなみに、回答者の月々の貯蓄額の平均は、5万5676円。平均して20代後半が最も高く6万円を超えるのに対して、家計支出が増える40代前半となると4万4000円前後になる。現在の貯蓄総額は全体平均で478万8660円という数字になった。30代前半だけをみると、約510万円といったところ。政府系の金融広報調査委員会の調査によれば、世帯主が30代の平均貯蓄額は596万円(2003年)であり、これに比べれば低いが、サンプルの取り方が違うので簡単には比較できない。 いずれにしても、30代で500万円の貯金というのが標準とはいえる。その貯蓄額を意識しながら、今年のボーナスの使い道を考えてみてはいかがだろうか。 |
DATA5 職種別・年代別で比較!月々の貯蓄額と現在の貯蓄額 |
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