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会員数約660万人(1月27日現在)を擁するmixi、携帯電話サービスとして急速に会員数を伸ばしているモバゲータウン。こうした成功で注目を集め、Web2.0のトレンドの中でも中心的な存在となりつつあるのが、インターネット上のコミュニティスペース「SNS」(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)だ。 現在では総合SNSだけでなく、テーマ別SNS、企業内SNSなどの個別SNS、ブログやグループウェアとの連携など、機能の増加が計られている。SNSの市場規模は2006年には60億円程度だったが、矢野経済研究所は2009年には554億円にまで市場が拡大するとの予想を発表している。単なる遊びの領域を超え、エンタープライズ向けにまで広がるSNSは、今後の動向を注視していくに値する分野だ。 |
今日のSNSブームに乗って、多くのWebサービス企業やコンテンツ制作会社など、インターネット関連企業がSNS構築サービスに進出している。その中でオープンソース・プラットホームを使って勝負をかける企業が手嶋屋だ。 |
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SNSの発展性を見越したOpenPNE、早くも1万ダウンロード突破 手嶋屋が2006年にリリースしたオープンソースのSNS構築・管理ソフト「OpenPNE」は、登場から1年もたたないうちに1万ダウンロードを突破するなど、早くもSNS業界における一大勢力に成長した。ゲームソフト会社のタイトーが展開しているアミューズメント系SNS「しまにてぃ」などの大規模SNSから、地方自治体のコミュニティSNS、業界限定型SNS、スポーツや芸能のファンクラブSNSなど、OpenPNEを使用したSNSの数は増加する一方だ。 SNS構築ビジネスにおいて、従来のASP型の収益モデルは、自社のプラットホームを使ってユーザーの望むSNSを構築するところに力点を置いた。それに対して手嶋屋は、自社で開発したソフトをフルオープンソースにしている。 「SNSのプラットホームを囲い込んで、そこで収益を上げるというやり方では広がりがない。SNSのオーナーを増やせるだけ増やし、ユーザーのニーズに合わせたカスタマイズや運用受託などのサービスを発生させたほうが、ビジネスとしての発展性があると思いました」 代表取締役の手嶋守氏は、ソフトを無料化することでむしろビジネスチャンスが広がると考えているのだ。その背景には、SNSの発展性の高さについての読みがある。 「SNSは決して一過性のブームではありません。以前のコミュニケーションツールは、メーラーではアドレス帳、ブログであればコメント許可IDなど、コミュニケーションを取るための基本となるものが下位のレイヤーにありましたが、SNSは誰とコミュニケーションを取るかという判断を最初に行う。これは実社会における人間関係と極めて似たものです。SNSはそれ単体に限らず、多くのWebサービスのひな型になり得る潜在的な可能性があります」 人間関係重視のSNS構築に必要なスキルは「配慮」 SNSがWeb2.0時代のコミュニティツールの基盤技術として広く認知されれば、付帯するサービスにバリューが生まれる。そういう状況をつくるには、多くのユーザーがSNSの運営に参入できる環境づくりが必要だ。オープンソース化は、ユーザーにとって最大の参入障壁である立ち上げや運営コストの大幅な引き下げを実現する。 「OpenPNEを使ってすべて自前で立ち上げや管理を行えば、かかる費用はレンタルサーバー代と独自ドメイン代くらい。年間1万円もあればSNSが開設できてしまうんですよ。SNSの運営についていいアイデアをもちながら、資金の問題で断念するようなことはもはやありません」 SNSの今後のビジネスモデルについては、いまだに明瞭な未来予測が呈示されていない。だがその一方で、既に商用展開の動きも出てきている。ホームページが主流であった時代にはWebに対する広告宣伝の心理的バリアは比較的高かったが、ブログにおけるアフィリエイトなどで広告へのバリアが低まっていたこともあって、活動が活発だったり、有用な情報が集まるSNSに対しては、企業や団体がスポンサーにつく傾向がある。 「OpenPNEのユーザーさんの中にも、SNS運営のほうが本職になって、脱サラした人も出てきています」 ホームページからSNSへという流れが明確になりつつある今、エンジニアの活躍の場も確実に広がっているという。 「SNSのニーズは日々変わっていくもの。ソフトの開発やサイトのカスタマイズといった業務はこれから増えこそすれ、なくなることなどありません。例えば、ほかのWebサイトへの接続機能をもたせるにしても、Webサービス上のリクエストの仕組みを理解する必要があります。また、人間関係を重視するSNSの構築には、『相手への配慮』が必須。この意識は今後、どんなアプリ開発でも重要視されるスキルだと思います」 オープンソースのOpenPNEがSNSのビジネスチャンスをどう伸ばしていくか。エンジニアにとっても大きな関心事といえるだろう。 |
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SNSはまだ市場が立ち上がったばかりの分野だが、エンドユーザー向けに加えてエンタープライズ向けの展開も進むなど、今後の成長性についてはかなり期待がもてる。現実に、SNS関連のスキルをもつエンジニアの人材需要も立ち上がり始めた。リクナビNEXTでは「SNS」「Web2.0」などをキーワードに検索すれば、求人情報をゲットできる。 SNS業界への転職というと、Web関連のスキルを山ほど求められるというイメージがあるが、実際にはスキルよりもアイデアややる気を重視されるケースが多い。実際のSNS構築・運営業務においてはありとあらゆるWeb関連技術が要求されるため、特定のスキルをもっているだけでは焼け石に水に近いからだ。 そのため、現時点でのスキルの高さよりは、技術的な要求に直面するたびに何でも勉強して自分のモノにしてしまうという、柔軟性と学習能力が重視される。また、技術を知っているだけではなく、Webサービスについての豊かな発想力を要求されるのも特徴。SNSの世界では、エンジニアは技術屋とプランナーの二面性が求められるのだ。 もちろん、そのベースとして知っていれば便利、あるいは有利というスキルは少なくない。例えばPHP関連。アスフェリカルデータベースとの接続、CGIの設定などは、SNSの基盤技術であるため知っておくに越したことはない。RSSではXMLの知識が使える。また、モバイルSNS需要が発生していることから、携帯電話の通信システム、アプリケーションについて理解していると有利だ。 日常的に使うことの多いSNSには、エンジニア視点での魅力もいっぱいだ。 |
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