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厳選★転職の穴場業界 第17回 ゲームソフトウェア 東京ゲームショウで見つけた最先端ゲーム開発
ゲーム業界が一時の冷え込みを脱し、ようやく活況を呈してきた。新世代ゲーム機やモバイルゲーム機、携帯電話の新機種も登場、オンラインゲームの急成長がその原動力だ。市場の復調に伴い、エンジニアの人材ニーズも高まっている。
(取材・文/伊藤憲二 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:06.10.11
業界動向:急成長する世界市場。オンラインがブレイクのカギ
 低迷が続いていたゲームソフト業界に、ようやく明るさが戻ってきた。大手ゲーム機メーカーの新プラットホームリリースに伴い、ソフトの新作需要が高まっているのだ。販売が好調に推移しているモバイルゲーム機向け、すっかり定着した感のある携帯電話向けの新作や、既存ゲームの移植もさかんである。
 この上昇トレンドに拍車をかけているのが、オンラインゲームのブレイクだ。有料、無料など複数のビジネスモデルがあるが、スタンドアロンのゲームソフトに比べてユーザー数を増やしやすい傾向にあり、今やゲーム専用機向け、PC向けを問わず、ゲーム業界の牽引役となっている。

 ただ、ゲーム業界復調といっても、ジャンルによってややばらつきもある。最新ゲーム機のスペックに合わせた、高精細動画やサラウンドを多用したリッチなソフトについては、ヒットすれば利益も大きい半面、開発費も相当にかさむ。このため、コンテンツプロバイダーは大手企業に事実上限定されている。
 拡大が顕著なのは、モバイル機向けソフトや携帯電話向けアプリケーションの分野だ。特に携帯電話向けはダウンロード単価は安いものの、機器側のリソースが限定されるのでおのずと規模が限定され、結果的に開発費は少なくてすむ。小規模のゲームソフトハウスが次々に参入し、成功を収めている要因だ。
 また、オンラインゲームは業態がさまざまだが、ヒットタイトルを見ると、必ずしもリッチコンテンツが圧倒的優位を保っているわけではなく、中小ソフトハウスが躍進するケースが少なくない。

 経済産業省の調査によれば、2005年の日本のゲームソフト市場はスタンドアロン、オンライン、アーケードの合計で約1兆1400億円。これはソフトウェア業界全体の中でも際立って高い数字である。世界市場についても、既存の大市場であった日欧米に加え、アジア地域など新興市場での急成長が期待できる。ゲームソフト業界の潜在的成長性は、依然としてきわめて高い水準にあるのだ。
注目イベント:近未来ゲームのエキシビション東京ゲームショウ2006潜入ルポ
 9月下旬、東京ゲームショウ2006が幕張メッセで開催された。10回目を迎えた今年のショウは出展タイトル650と過去最大規模。定番人気のビッグタイトルに加え、モバイル向けソフト、携帯アプリ、オンラインゲームと盛りだくさんの内容で、一般公開の2日間で約14万人の来場者を集めた。
■バンダイナムコゲームス
  機動戦士ガンダム Target in Sight
■カプコン
  DEVIL MAY CRY 4
 合併によってより豊富なキャラクター、コンテンツを擁したバンダイナムコ。PS3向けソフト「機動戦士ガンダム Target in Sight」は、メカニカルな質感をポリゴンで精密に再現した高精細が売りだ。「ゲーム作りは確実に変わってきており、グラフィックをどこまでつくり込むかという検証ひとつをとっても時間がかかる。これからのゲームプログラマは既存の枠にとらわれず、発想の転換を図ることが大事。これができれば未経験でも大丈夫です」(コンテンツ制作部 南條智輝氏)  ハイレベルな映像表現で知られるカプコンのブースでもっとも注目を浴びていたのは、PS3用ソフト「DEVIL MAY CRY 4」。空気の質感をも描き出す3DCGと、常時60FPSという業界初の高速描画を両立させたアクションゲームだ。「新世代プラットホーム向けのリッチコンテンツ開発は確かに大変ですが、表現の自由度が高まった分だけ、エンジニアは十分にチャレンジできるというもの。今後はレガシーソフトの移植といった業務も増えるでしょう」(CS事業統括 豊田恵氏)
新世代プラットホーム向け作品が続々、進むリッチコンテンツ化

 会場には世界のゲーム市場における、家庭用ゲーム機の新世代プラットホームがそろい踏みした。他社に先がけて昨年デビューしたマイクロソフトのXbox360に加え、今年はSCEのプレイステーション(PS)3もプレイアブル。任天堂の新世代機Wiiのデモも行われた。
 高い描画能力を売りにするXbox360とPS3では、その能力をフルに使うリッチコンテンツが早くも数多くお目見えした。PS3ゲームの目玉のひとつは、物理シミュレーション技術を駆使したドライブゲームの最新作である「グランツーリスモHD」。概要は発表されていたものの、会場では完全にプレイ可能な状態で提供された。車の動きを物理的に演算するアルゴリズムは既に完成の域にあり、そこに大きな改変はない。大きく変わったのは3Dグラフィックだ。デジタルハイビジョンの高精細に対応し、フレームレートも最大60FPSと高速化が図られていた。

 このグランツーリスモHDをはじめ、次世代ゲーム機向けソフトのデモを見るとおしなべて高精細、高フレームレートを極限まで追求しており、リッチコンテンツ化はとどまるところを知らない。プロバイダーも豊富な開発リソースを有している大手が中心だった。
 だが、今後も大手独占が続くかどうかは不明だ。カギを握っているのは、サードパーティがつくる開発支援システムなどミドルウェアの動向。ゲーム機メーカーが供給するSDK(開発キット)のみを使う場合、少人数での高精細3Dゲーム開発は難しい。しかし、ドラッグアンドドロップや座標入力などで高精細3Dを自動生成するといった開発支援ツールが発売されれば、このハードルは一気に低くなる。とりあえず膨大な3Dデータを生成できれば、画面のクオリティの多少の差はゲームの創造性でとらえるからだ。次世代ゲーム機向けのソフト開発は、ゲームタイトルとミドルウェアの両方で需要が増すだろう。
■ソフトバンクモバイル
  オンラインゲーム向け携帯電話
■ハンゲーム
  ファミスタオンライン
 ボーダフォン改めソフトバンクモバイルは、高精細ディスプレイ携帯電話を生かしたオンラインゲームを多数展示。メイドカフェを「出店」して来場者にゲームを説明するなど、ユニークな出展方法が光る。「携帯が高精細になっても、フルスペック3Dには向かわない。あくまでシンプル、そしてみんなで楽しめるというのが携帯ゲームの妙味です。上位機種互換に配慮しながらゲームを開発することが大切です」(プロダクト・サービス開発本部 前田順氏)  日本でもオンラインゲーム大手となった韓国のハンゲーム。日本法人のNHNでは、韓国のゲームのローカライズだけでなく、日本製ゲームのオンライン化や自主タイトル開発の強化を表明。「ファミスタオンライン」もそのひとつだ。「ゲームの面白さだけでなく、チャットやサークルといった機能をもたせるなど、サービス設計もオンラインゲームを成功させる重要なカギ。エンジニア需要は確実に増えています」(NHN Japan広報室 小林真記氏)
顕著なオンライン化の波、携帯アプリにも波及か

 ゲームショウで実感させられたのは、オンライン化の波がますます顕著になっていることだ。今年出品されたタイトルでもっとも多かったのは、以前はゲーム機に押されて退潮気味だったPC用ゲームソフト。ひとえにオンラインゲームのおかげといえるだろう。次世代家庭ゲーム機もすべてオンライン機能が実装されており、このトレンドは当面続くと思われる。
 オンラインゲームポータルサイト大手のハンゲームを運営するNHNが、ゲームショウに初出展。流行の戦闘対戦ゲームだけでなく、ファミスタオンラインをはじめとするオールドゲームのオンラインへの移植という方向性を示した。リッチコンテンツではコーエーの「真・三国無双BB」の迫力が目を引いた。

 Javaアプリがすっかり定着した感のある携帯電話では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社が、ショウ史上初めて一堂に顔をそろえた。Bluetoothやオンラインによる対戦型、通信型ゲームアプリを豊富に出展しており、オンライン接続が容易な携帯電話というデバイスの特性を生かし、本格ゲーム機との差別化を試みていることがうかがえる。
 また、携帯電話のアプリといえば、機器のスペックが低く、規模が制約されるというイメージがあったが、端末の高性能化によって次第に大型化が進んでいる。NTTドコモのメガアプリなどが好例だ。VGA表示が可能な機種も増えていることから、今後は3Dゲームやロールプレイングゲームなど、リッチコンテンツの開発比率が高まるのではないかとみる関係者が多い。開発リソースが少なくてすむ携帯アプリの普及は、新興ソフトメーカーにとっても追い風だ。
 オンラインゲームは当面、アーケードゲーム、PCゲーム、家庭用ゲーム機、モバイルゲーム機、携帯電話というゲーム5分野すべてにおいて、市場活性化の牽引役となることだろう。通信を前提としたソフト開発やセキュリティー強化など、ソフト高度化のニーズも増えることは間違いない。
穴場求人:職種はゲームプログラマだけじゃない! 豊富な人材ニーズ
 一時は冷え込みがささやかれたゲーム業界だが、人材需要は高水準。リクナビNEXTでは「ゲームソフト」あるいは単に「ゲーム」で検索すると、大量の求人情報をゲットできる。
 ゲーム業界におけるエンジニアの人材ニーズは大きく分けて3種類がある。ゲームコンテンツそのものを製作するゲームプログラマ、ミドルウェアなどの支援ツールを開発するエンジニア、オンラインゲームやダウンロードゲームなどにおける通信、課金、データベース、セキュリティーなどのサービス設計を行うエンジニアだ。

 ゲームプログラマはプログラミングの知識がある程度あれば、実務未経験でも転職のチャンスがある。3DCG、サウンド、ゲームプログラミングなど、仕事に必要とされるスキルは多いが、それらのほとんどはOJTで習得可能だからだ。重視されるのはむしろセンスとやる気。例えば戦闘ゲームでも、乱数ひとつでキャラクターの動きのパターンがまるで違ってくる。ある程度自分も楽しむような形で細部のつくり込みを徹底する。こんな姿勢が強く求められる。

 CGにあまり詳しくないゲーム製作者のプログラミング作業の多くを、ソフト側で代行するミドルウェア開発。ここでは一転、3DCG関連についての深い知識が求められる。16ビット不動小数点演算によるマッピング、ピクセルシェーダー、Z&ステンシルバッファといったCGの要素技術を理解し、それらを効率的に使ったCG生成アルゴリズムの設計が必要だからだ。
 3番目のサービス設計は、もっとも幅広いスキルを生かせるジャンル。課金システムやセキュリティー強化、データベース構築は、それぞれゲームとはまったく関係ない業界のエンジニアでも、十分にスキルを生かすことができる。通信関連の知識はパケットの授受の高効率化など、オンラインゲームの品質向上に直接関わる重要なジャンルだけに、転職にはかなり有利だろう。
ゲームソフトウェア業界のエンジニアニーズ
・ ゲーム開発だけがゲーム業界の技術職ではない。多彩な職種あり
・ ゲームプログラマは技術スキル以上にやる気とセンスが必須
・ ミドルウェア開発者は3DCG、画像処理などの高度な専門知識が必要
・ サービス設計は業界未経験可。ネットワークやDBなどのスキルを生かす
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 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
人人人人、すごい数の来場者でした。脇見をしながら歩けない状態ですし、ゲームをするのに「3時間40分待ち」の看板が出ていたり。どれだけのゲームファンがいるかを改めて知りました。面白かったのは、ソフトバンクモバイルのブースで、メイドさんとBluetoothでオセロ対決。メイドカフェ初体験でしたが、やばいです。ハマりそうです。別かれ際の「行ってらっしゃいませ」が忘れられません……。

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