グリッドコンピューティング／高速化は「創造力」が鍵

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多数のコンピュータをネットワークでつないで1つのスーパーコンピュータのように稼働させる技術。
既に数年前から世界で注目され、早くも熾烈な高速化競争が展開されている。オープンプロトコルを
使ったシンプルなシステムをどう高速化するかは、エンジニアの創造性次第だ。

（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:04.10.13

　企業情報システム分野、研究開発分野など、多くのジャンルで注目を集めているテクノロジー、グリッドコンピューティング。その最大の理由は、コストをかけずに膨大なデータ処理を行うことができる点にある。

　かつては大企業の情報システム、ゲノム解析、超細密3D-CADといった高負荷処理を行うのはスーパーコンピュータというのが相場だった。だが、日進月歩のスーパーコンピュータは、数十億円もするようなシステムを組んでも、数年がたてば陳腐化してしまう。それに対してグリッドは、家庭用PCのような非力なシステムを数百基から数千基、大規模な場合は数百万基も接続して分散処理を行うため、家庭用PCをベースに最新・最強のスパコン並みの処理も可能なのである。
　実際に先進地域のヨーロッパでは、ボランティアがPCの余力をインターネットを介して提供することで構成されたグリッドが、ゲノム解析などの先端科学に利用されているという。

　グリッドコンピューティングは一見、大した技術は必要ないように見られる。個別のPCが低性能でも、つなげる数を増やせばいくらでも高性能化できると思われがちだからだ。
　だが、実際にはネットワークを介していることから、コンピュータ間のトラフィックに計算結果が左右されることもしばしばある。こうしたグリッドの弱点を克服し、あらゆる面で高性能かつ安定性のある構築技術を目指した開発競争が、日米欧各国の間で繰り広げられているのだ。日本の大手IT企業もこぞってグリッド戦争に参入、文部科学省や経済産業省の資金援助を受けて処理速度を競っている。
　グリッド処理を行うミドルウェアの開発に加え、P2P技術、ネットワーク技術など、関連する技術をどのように活用して高速・安定化を図るか。この部分が企業とエンジニアの技術力の見せ所である。

　ポスト・スーパーコンピュータと目されているグリッドコンピューティングは、既に情報機器、SIerなど多くの企業が開発を手がけており、求人も発生している。リクナビＮＥＸＴでは「グリッドコンピューティング」をキーワードに検索をかければ求人情報を得られる。

　グリッドコンピューティングに必要なスキルは、Web系をはじめインターネット全般、P2P、ネットワーク構築、基幹系など多彩である。ハードウェアへの精通よりも、SEやプログラマなどのソフトエンジニアに適性が高い分野だといえる。
　ハードウェア系ではクラスタ接続、マルチディスクアレイ、ブリッジ設計などの経験があると、グリッドの概念をとらえやすいだろう。

　基本的な考え方はオープンプロトコルによるネットワーク構築と同じ。それをベースにネットワークを介して複数のコンピュータを束ねるのだが、実際に高速化を図るとなると、常識的なネットワーク構築だけではかなり難しい。
　グリッド網のトラフィックをどう管理すると分散処理がより均質化されるかといったアルゴリズムを考案したり、実情に合わせたチューニングを地味にこなしていくといった作業が中心となる。スキルレベルそのものの高さより、柔軟な発想力や仕事の丁寧さ、プログラマとしての勘のよさなどが大切になるようだ。
　PCとネットワークスキルの延長線上にあるという意味では、比較的取っつきやすい最先端テクノロジー。転職を希望するエンジニアにとって敷居は高いほうではないが、それなりに頭脳を要求されるのも事実。自信のある人は、ぜひチャレンジしてほしい。