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技術者派遣会社から憧れの自動車メーカーへ

CAE技術にこだわるために転職を選んだM・Iさん(32歳)

技術者派遣の会社から自動車メーカーに出向して活躍していたM・Iさん。しかし、会社側の都合で事務職に配置転換されてしまう。身につけたCAE技術で活躍したい……。そう考えたM・Iさんは、自動車メーカーへの転職活動を始めた。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田せいめい)作成日:04.05.26

キッカケ編
希望の開発を続けたいが、派遣社員では困難

派遣社員でありながら開発の最前線にかかわる

 教師になる夢は捨てたが、代わりに自動車開発を志した。もともとモータースポーツが好きということもあったが、父が自動車メーカーに勤務していたことも大きい。だが、大学卒業から3年もたっていて、どこかに潜り込みたいという一心だった。そこで入ったのが自動車メーカーに多くのエンジニアを送り込んでいる派遣企業。首尾よく自動車開発の世界に入り込んだ。

自分の居場所が無くなっていく!

 最初からメーカーA社に派遣されて、足回りの実験にかかわった。次にCAEによるボディー強度の解析に携わった。これがハマった。昨今の自動車はボディー剛性と軽量化を両立させることが肝要であることから、シミュレーション担当として開発の一翼を担っていると感じられた。

 ところがメーカー側の都合で、同じA社のほかの開発部門に配置転換させられてしまった。今度は電装系統の設計を任されたのだが、同じ開発職といえども以前ほど仕事に手ごたえがない。自分の評価も以前の部門ほど高くないようだ。徐々に直属のメーカー側の上司とも、派遣会社の本部とも、コミュニケーションが取りにくくなってきた。派遣社員の常であるが、先行きの不透明さに不安が募ってくる。

 やはり不安は的中した。上長から、開発から離れて新人教育担当をしてくれないかと打診された。少し逡巡したが断った。そうしたら強制的に事務系の仕事に回された。自分としては開発職を続けたい。だが、派遣社員ゆえ希望は通りそうもない。こうなったら転職しか活路は見いだせないと悟った。

PROFILE
自動車車体メーカー
CAEエンジニア
M・Iさん(32歳)

1996年に国立大理工学部を卒業。専攻は数学。卒業後3年間は教師を目指して学習塾の講師として数学を教える。1999年、当初から考えていた3年間という区切りで現実を見据え、自動車業界に強い技術者派遣会社に就職。
M・Iさんの転職活動DATA
前勤務先 技術サービス会社
CAEエンジニア
転職した時期 2003年 9月
活動期間
(決意〜内定)
約4カ月
転職理由 エンジニアとして培ったスキルを生かせる仕事がしたい
会社選びで優先したこと 仕事内容、勤務地など
実際に応募した社数 3社
内定社数 1社
落ちた社数 2社
辞退した社数 0社

応募からの日数
 B社:自動車メーカー
 C社:自動車車体メーカー
 D社:トラックメーカー
 
B社
C社
D社
書類選考
7日
7日
7日
1次面接
14日
(不合格)
38日
52日
(不合格)
内定
 
45日
 

転職準備編
自分の市場価値をコンサルタントに聞く

CAE解析の経験を生かしてメーカーに挑戦

 さて、自動車開発の最前線で働いていたという自負はもっていたが、自分がどれだけ評価してもらえるのだろうかと心配になった。場合によっては、他業界に派遣してもらうしか道が残されていないのかもしれない。そこで転職情報サイトが開催する適職フェアなるイベントに足を運んだ。ここでコンサルタントから貴重な意見をもらう。
CAE解析のスキルはある程度評価されるのではないかということが一つ。そして完成車メーカーへの転職は32〜33歳が限界であり、ラストチャンスですよ、というものだった。このまま残っていてもスキルがプラスになる立場ではない。今、エンジニアとしての岐路に立っていると実感した。

意志を固めて人材紹介会社に登録

 気持ちは固まった。履歴書と職務経歴書を書き、さっそく人材紹介会社2社に登録した。希望職種は自動車業界の強度解析エンジニアだ。また、コンサルタントにお願いし、紹介企業の勤務地は住み慣れた関東圏に限定してもらった。

活動編
書類選考では多くの企業に通っても内定はギリギリ1社

7分の5の高率で書類選考通過

 登録から数日後、紹介会社2社から、完成車メーカーを中心に7社も候補企業をピックアップしてもらった。いずれも派遣エンジニアから見れば、そうそうたる大企業だ。トラック専業メーカーもあった。乗用車に比べて耐久性を重視するだけに、強度試験エンジニアとしては挑戦意欲がかき立てられた。
 その全部の企業に紹介をお願いした。そこで初めて各企業に自分のプロフィールが送られることになるようだ。結果は1週間前後で相次いで知らされた。なんと7社中、5社も書類選考を通過したというのだ。この結果には、われながら驚いた。

最初の面接はミスマッチ

 それから数日たち、最初の面接があった。好調が伝えられるB社である。先方は技術部門のリーダー2人が同席した。ところが最初だからか、自分でも思いがけずあがってしまったのだ。自分をもっとアピールしなければならないのに、受け答えがうまく言えない。聞かれた内容は、CAEについての経験内容だった。それと、折衝経験やプロジェクトの取りまとめの経験が問われた。どうやら、開発の実働部隊からのニーズではないようだ。先方のニーズは解析ソフトの検証部門への配属のようである。これでは受け答えもうまくいくはずがない。希望とニーズのミスマッチだった。案の定、面接1週間後にコンサルタントより不合格の連絡があった。

辞表を出した日の夕方に合格通知!
 B社から遅れること約1カ月、今度は車体メーカーC社との面接に挑んだ。完成車メーカーではないが、ボディー強度の解析を任されるのなら、この会社も良い選択だ。先方は部長から課長、技術リーダー、人事担当まで総勢5人が出席した。でも、前回で慣れているせいか、今回はあがらずにすんだ。聞かれたことは、今までの仕事内容、仕事に対する姿勢、解析評価に関する具体的な内容などである。会話はスムーズに進んだ。そして、これが最終面接であることを聞かされた。つまり、一発試験である。
 C社の面接から約1週間がたったある日の朝、とうとう現状に耐えられなくなって派遣会社の上司に辞表を提出した。4年間も所属した会社だが、退社の真の理由は職務内容に対する不満と気まずさである。しかも次の行き先が決まっていなかっただけに、心は晴れなかった。
 ところがその日の夕方、コンサルタントからC社合格のメールが届いた。一挙に目の前が開けたように感じた。まるでジェットコースターのような一日だった。

この次は完成車メーカーへ…

 C社の内定をもらっていたが、態度を保留していた。D社の面接が差し迫っていたからだ。本音をいえばトラックメーカーであるD社のほうが行きたかったのだ。でも面接では手ごたえを感じることができなかった。また、あと2社ほど面接する予定なのだが、いつになるかわからない。内定通知から2週間、もうC社を待たせる訳にはいかない。コンサルタントに電話してC社入社の意思を伝えた。

 派遣社員からメーカーエンジニアへ。この転職の成功要因はコンサルタントの方に恵まれたことにあると思う。本当に親身になってプロのアドバイスをしてくれた。7社を受けて、短期間でなんとか1社に滑り込めたのも、彼のおかげだと感謝している。

 面接に関していえば、場慣れが大切だと思った。相手の要求レベルを把握することができ、自分の商品価値が見えてくる。自信がつくこともあるだろうし、会話もスムーズに運べる。こんなことを言ってはいけないのかもしれないが、練習用の面接もアリかなと思う。

 C社に入社して半年が過ぎた。念願の強度解析の仕事を任されている。しかし、満足ばかりではない。転職を成功させて身辺が落ち着いた所で、さらなる欲が出てきた。もっと大きな企業で、より多くの収入を得たいということと、自社ブランドの車を手がけたいという欲だ。実は今年の春先に、かつての派遣先だったA社を別の人材紹介会社を通して受けている。結果は、書類選考は通ったが一次面接で落ちた。このように、再び転職活動を始める可能性は高い。今度は完成車メーカーへ…… 一段一段上っていきたいと考えている。
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