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(株)リクルートキャリア 門野友彦

1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。

2013年9月25日

今週の相談者

翻訳者としての経験を活かし広報、IRに就きたいが、面接落ちが続く和久井さんの場合

和久井貴史さん
(仮名・37歳)

プロフィール
米国留学経験を活かし、大学卒業後は翻訳者としてのキャリアをスタート。IR会社や外資系金融などで、プレスリリースやアナリストレポートなどの英訳を手掛けてきた。今までの経験を活かし、一般企業の広報・IR職に就きたいが、なかなか内定につながらない。
現状
  • ・今までファイナンス系のリリースやレポートの英訳を多く手掛けてきたので、当初はその分野で転職を考えていたが、案件が少ない。今後のキャリアを考えても、広報・IRなど「英語プラスアルファ」の経験が積める環境に移りたい。TOEICは920。
  • ・面接で、「日本人なのに、英文和訳ではなく和文英訳の翻訳者?」と言われることが多い。和文英訳の世界では、英語ネイティブで日本語が堪能な人が求められていると感じる。
相談者:和久井さんDr.門野

診断スタート

すでに4カ月のブランク。早く転職先を決めたいが、求人が少ない中どう動けばいい?

今まで、IR会社で企業のアニュアルレポート(年次報告書)やニュースリリースの英訳、外資系金融会社でアナリストレポートの英訳などを手掛けてきました。この経験を活かして、一般企業の広報やIR職に就きたいと思っていますが、なかなか内定が得られません。

和久井さんは、英文和訳ではなく、「和文を英訳する」翻訳者なのですね。

はい。日本人の翻訳者の中では、少ないほうだと思いますね。私の場合、初めて手掛けた翻訳の仕事が、国内精密機器メーカーの海外向け仕様書の英訳だったので、その延長線上で英訳のキャリアを積んできました。英文和訳ももちろん手掛けたことがありますが、得意なのは英訳ですね。目の前の和文を、英語文化での解釈を考えながら英訳する作業は、英語ができること、現地で暮らしたことがあることだけでなく、ある程度業務経験を積まないと難しいと思っています。

プロフェッショナルですね!…でも、なかなか内定が得られないと。

はい。いくつか面接の機会をいただいたのですが、「日本人なのに英訳?外国人に伝わる英文が書けるのですか?」などと言われたことがあります。…そう言われても、これを本職として10年以上やってきたんですけどね(苦笑)。ネイティブの友人には、「ネイティブが書く英文よりもきれい」と言われるのですが、どうやら企業は、英訳翻訳に関しては「日本語が堪能な英語ネイティブ」を採用したいようです。

どういう企業に応募しているのですか?

今までファイナンス系の英訳が多かったので、得意分野を活かしたくて金融機関をメインに応募していました。でも求人案件が少なくて。今後のキャリアを考えると、もっと自分の幅を広げたほうがいいのではないかと思い、最近では一般企業の広報やIR職に応募しています。「英語プラスアルファ」の経験が積める環境へ…と考えての選択だったのですが、状況は芳しくありません。プレスリリースなどの英訳は数多く手掛けてきましたが、広報、IR業務の実務には携わったことがないので、落ちているのでしょうか。

そうですね。実務経験がないと、広報・IRは厳しいかもしれませんね。…しかし翻訳者としての経験は豊富ですよね。ヘッドハンティングとか、転職エージェントには翻訳者の求人案件が多そうですが、活用されていますか?

はい。実際、声をかけていただく機会はあります。でも、派遣や業務委託という雇用形態が多くて…家庭を持っているので、正社員以外の案件には二の足を踏んでしまいます。また、正社員であっても、メーカーの英文テクニカルライターの求人は比較的多く、オファーも受けるのですが、テクニカルライターの経験は初めの1年だけなので、苦手意識があり、断っています。…ちなみに、前職である外資系金融機関からも「戻ってこないか」と言われているのですが、辞めた理由が会社の経営不振なので、戻る気はありません。今はその前職から英訳の仕事を個別にいただいて生計を立てていますが、もうそろそろブランクも4カ月になるので、早く転職先を決めたいんです。

うーん。転職を焦る気持ちはわかりますが、焦るがゆえに、さまざまな可能性があるにもかかわらず視野を狭めてしまっている印象がありますね。

え?本当ですか??

これが原因!

専門性が高い仕事なので、会社勤めにこだわらなくてもいいのでは?もしくは今、ニーズが高い分野に飛び込み、翻訳者としての幅を広げにいくのも一法。

お話しをうかがっていてまず感じたのは、「会社勤めにこだわらなくてもいいのでは?」ということ。和久井さんの仕事は、非常に専門性が高い。すでに前職から個別に仕事を受けているとのことですし、業務委託としても声を掛けられているのですよね?それだけ世の中に「翻訳を外部の専門家に発注するニーズがある」ということですから、フリーの翻訳者として独立し、さまざまな企業から広く仕事を受けるという道がありえるのではないかな。和久井さん自ら、人脈をたどって働きかければ、もっと仕事は増やせるのでは?

独立、ですか…。考えたことがなかったな…。確かに、ある程度の仕事量は確保できそうです。

会社勤めにこだわるのであれば、先ほど求人が多くオファーも受けているとおっしゃっていた「英文テクニカルライター」も視野に入れてみてはどうでしょう。つまり「ニーズがあるところに飛び込む」という選択です。転職市場において英文テクニカルライターのニーズが高いのであれば、その経験を積むことが今後の和久井さんの強みになるはずですよね。

確かに…英文テクニカルライターの経験を積めば、スキルの幅が広がり、食いっぱぐれはなくなるかもしれません。

「やりたいこと」を仕事にできれば幸せですが、実際はそういう人はごくわずかです。「自分がやれること」を手掛け、経験を積むなかで、それが「やりたいこと」に変わればベストですよね?たとえ「やりたいこと」に変わらなくとも、少なくとも今後の和久井さんのキャリアにはプラスになると思いますよ。

なるほど、おっしゃる通りです。自分のキャリアについて、改めて考えるきっかけをもらった気がします。…このタイミングでこんなことを言うのは変かもしれませんが、そもそも翻訳の仕事が好きなのかどうか、最近わからなくなっているんです。学生時代は、自分の手で何か作品を生み出し世に広める仕事がしたいと思っていたのですが、翻訳ってクリエイティブではないですよね。ほかの人が作成したリリースやレポートを、英文にするのですから。それに、私は日本人であり、いくら英語文化を学んでも、生粋のネイティブならではの「ちょっとしたニュアンス」まではつかみ切れない。和文の意図を100%英文として表現できているのか、自分に対していつも懐疑的なんです。

いい話じゃないですか。自分に対して懐疑的だから、英文のちょっとしたニュアンスまでネイティブに近づこうと努力する。品質向上の努力を怠らないという姿勢を感じました。書類や面接で、ぜひプラスの言い方でアピールしてほしいですね。…そして、今の話をうかがうと、英文テクニカルライターは和久井さんに向いているかもしれませんよ。ほかの選択肢に比べてモノづくりの現場と近いですし、「日本製品を世界に広める」一助を担う役割ですから、モチベーションを感じる場面が多いのではないかな。

そういう考え方もできますね!自分の方向性を今一度じっくり考えて、選択したいと思います。

診断を終えて…

「一般企業へ」と視野を広げていたつもりでしたが、結果的にそこばかり見てしまい、ほかの選択肢が見えなくなっていました。自分のキャリアにはもっと可能性があるのだと気付かされたのは収穫です。今がいい機会だと思い、一つひとつの選択肢をじっくり検討したいと思います。(和久井さん)

EDIT
伊藤理子
DESIGN
マグスター
ILLUST
もりいくすお
PHOTO
平山諭

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