木原裕也さん （仮名・37歳）
	卸売会社、経営コンサルティング会社、広告代理店などさまざまな業界を経験。この10年は一貫して法人向け営業に携わる。現在はシステム開発会社でパッケージソフトの営業を担当しているが、経営不振で転職を決意。在職しながら転職活動を行うが書類落ちが続く。
	・今の会社は経営不振で給与が下がる一方。そのため、頑張ったら頑張った分だけ給与に反映してくれる会社を希望。業界は問わず、法人営業職に広く応募している。 ・転職回数は5回と多いものの、10年近く法人営業職に携わり新規開拓でも成果を挙げており、営業力には自信を持っている。しかし、書類でことごとく落ちてしまうのは、年齢と転職回数のせいだろうか。

コンサルティング会社や広告代理店など、さまざまな業界で営業に携わってきました。直近の2年半は、システム開発会社で医療機関向けパッケージソフトの営業を担当しています。営業成績はいいほうだし、自信を持っているのですが、会社が経営不振で給与が下がる一方で…。家族もいますし、将来的には独立を考えているので、頑張った分きちんと給与で報いてくれる会社に転職したいと思っています。でも、なかなか書類が通過しなくて悩んでいます。

ふむ、職務経歴書は、時系列で書く「編年体式」ではなく、「キャリア式」でまとめているのですね。

はい。転職回数が5回と多いので、キャリア式のほうがスキルが伝わりやすいかと思って。

どんなところに応募しているのですか？

業界は問わず、法人営業に幅広く応募しています。この10年間、一貫して法人営業に携わってきたので、どの業界でも経験がフルに活かせると思っています。新規開拓も得意ですし。ただ、どちらかというと有形物よりも無形物を売るほうが好きなので、応募企業もそちらの比重が大きいですね。無形物を扱っていた時期が長かったし、今もそうなので、介在価値を発揮できると思うんです。

ほう、新規開拓も行っているのですか？

はい。少しでも会社の業績に貢献するために、既存顧客のフォローだけでなく、新規開拓も積極的に行っています。前職でも新規開拓は行ってきたので、苦にはなりません。どちらかというと好きなほうです。

なかなか新規開拓を「得意」「好き」と言える人はいませんよ。断られることが多くて体力的にも精神的にもタフな仕事ですからね。「無形物を売りたい」というのも、営業スキルの高さを感じさせますね。一般的に、システムやサービスという目に見えないものを、お客様のニーズに合わせて組み合わせ提案するのは、目に見える有形物を売るよりも難易度が高いですからね。

ありがとうございます。でも、書類の段階で落ちてしまうのは、なぜなんでしょう？営業としての実績数字も含め、今までの経歴をわかりやすくまとめているつもりなのですが…。

経歴は確かにきれいにまとめられていますし、営業実績も申し分ないのですが、木原さんがどう努力、工夫してきたのかが伝わってこないのです。だから、魅力が半減しているのではないかな。この書類のままでは非常にもったいないですよ。

本当ですか！？練りに練ってまとめたのですが…。

パッケージソフトという無形の商品を、既存顧客に売りつつ、新規も開拓してきたのですよね？こういうものは売ったら終わりではないですから、後フォローも大変だったのでは？

その通りです。パッケージソフトをカスタマイズするのですが、立ち上がりの段階で不具合が出るケースが多いんです。なので、納品後しばらくは顧客に張り付いて対応しなければなりません。…実は今も、納品後に大きなトラブルが発生しまして…ものすごく多忙な状態です（苦笑）。

その間を縫って、新規開拓もしているのですよね？そしてしっかり成果も挙げている。この両立は、おそらくとても難しいはずです。どうやってこの両方をこなし、かつ実績も挙げているのか。木原さんならではの「こだわり」や「工夫」までが記されていると、書かれている事実に一気にリアリティが出ます。また、「新規開拓が得意だし、好き」という事実は、ぜひ自己アピールとして伝えましょう。そう言い切れる人なんてそうそういないですから、ほかの応募者との差別化につながります。「そもそも新規開拓が好きだから、既存顧客フォローとも両立できたし、こんな高い実績も挙げられたのか。この人ならば、うちでも売り上げ拡大のために頑張ってくれそうだ」と思えますよね？

なるほど…言われてみればそうですね。

実績の裏づけである、営業としての「こだわり」「工夫」を加えて、全体のまとめ方を見直せば、書類通過率はぐんと上がりますよ。同業他社を狙えば、内定も近いでしょう。

実は…先ほど「業界はこだわらない」と言いましたが、システム業界だけはあえて外しているんです。せっかく納品しても不具合が多くて、その対応に追われてばかりで…ほとほと嫌気がさしています。謝っている暇があったらもっと営業活動をしたいのに、その時間を削がれているんです。

気持ちはわかりますが、不具合が多いのは今の会社だけのことですよね？もっと開発部隊がしっかりしている会社はたくさんあるはずです。せっかく今の会社で高い実績を挙げているんですから、これを武器に同業他社にアプローチしたほうが高く評価されます。また、「不具合が多いから嫌気がさして」異業界を目指すというのは、「逃げの転職」という印象です。向き合って、乗り越えてこそ、営業としてさらに上の力がつくのでは？

う〜ん、確かにそうなのですが…。実は将来的に、中小企業向けの経営コンサルタントとして独立したいと思っているので、別にあえてシステム業界を選ばなくてもいいかなと…。

それならなおさら、今の業界で頑張るべきですよ。中小企業の経営アドバイスには、IT化が必ず絡んできます。CRMパッケージを扱っている会社に転職して、独立後にアウトソースさせてもらうという手も考えられますよね？業界は変えないほうが、将来の夢にもつながると思いますよ。

確かにおっしゃる通りです。今、本当に顧客フォローに苦労しているので、異業界ばかりに目が行ってしまっていました（苦笑）。

お気持ちはわかりますけどね（笑）。起業したら、それこそ困難の連続です。将来のためにも、困難からは逃げずに解決したほうがいいですよ。

EDIT

伊藤理子

DESIGN

マグスター

ILLUST

もりいくすお

PHOTO

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