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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2011年1月19日
朝木美都子さん |
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オーストラリアで5年間働き、2カ月前に帰国したばかり。英語力を活かせる仕事に就きたいと考え、貿易会社など約30社に応募した。しかし、書類選考は高い確率で通過するものの、一次面接でだいたい落ちてしまう。 | |
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オーストラリアで5年間働き、2カ月前に帰国しました。英語力を活かせそうな仕事をピックアップして、すでに30社ほどに応募したのですが、書類はそこそこ通っても面接が突破できません。こんなに苦戦するとは思っていなかったので、かなり自信喪失気味です。
書類はどれぐらい通過しているのですか?
半分以上は通過しています。でも、面接に進んでも一次敗退がほとんど。3社ほど、二次面接に進み、1社からは内定をいただきましたが、条件面が合わずに辞退しました。
すごいじゃない!書類通過率が5割以上なんて、なかなかないですよ。「面接が通らない」といっても、二次面接に2割の確率で進んでいるんですから、もっと自信を持ってください。
でも…先日、面接の雰囲気がよく自信を持っていた会社に落とされてしまって…すっかり落ち込んでいます。帰国直前まで勤めていたのは現地の自然食品メーカーで、企画からパッケージデザイン、日本市場への営業など幅広い仕事に携わってきましたが、いかんせん家族経営のような小さな会社だったので、経験不足と見られているのでしょうか。
どんな会社、職種に応募しているのですか?
仕事で日常的に英語が使えるので、貿易会社が多いですね。職種は貿易事務や、前職で経験のある営業や営業企画など。とはいえ、最近は、英語が使えるならば業界や会社規模、職種にはこだわっていません。海外出張が多いと書かれていた、芸能事務所の募集にも応募してみました。いずれも、5年間の海外生活で身につけた英語力をアピールし、「それを仕事に活かして頑張りたい」と志望動機を伝えています。
書類は高い確率で通っているので、企業は朝木さんにポテンシャルは感じているはず。ただ、面接の場で経験者と比較され、相対的に競り負けてしまっているのだと思います。何か致命的な原因がある、というわけではありませんよ。
では今後いったい、どうすればいいのでしょう?経験の部分は、もはやどうしようもないですし、打つ手はないのでしょうか。
「英語を使って仕事がしたい」ということですが、具体的にはどんな働き方をしたいのですか?
うーん…今は正直、「英語を使って働ければどんな仕事でもいい」と思っています。失業期間が長引くにつれ、とにかくどこでもいいから採用して!と思うようになってきました。でも、そんな気持ちが企業に見透かされているのかな。
そうかもしれませんね。企業にとっては、「英語力」はあくまで、仕事をする上でのツールのひとつ。ただ「英語力を活かしたい」とだけ言われても、違和感があります。この人は何をしたいのか、どうなりたいのかが見えてこないと、自社に合う人材かどうか、活躍してくれそうかどうか判断できませんよ。
そ、そうですか…。
面接に落ち続ける過程で、何がやりたいのか本当にわからなくなってきちゃって…。とにかく今の状況から脱したくて、派遣登録してみたりと、かなり迷走しています。
では、少し掘り下げて考えてみましょう。英語を使いたいということは、何らかの形で海外と関わる仕事がしたいということですよね。海外赴任があるような仕事がいいのか、海外出張がちょくちょくある仕事がいいのか、それとも日本にいながら海外とやり取りする仕事がいいのか…というと、どれがしっくりきますか?
うーん、日本を拠点にしつつ、たまには海外にも出向いて、現地の企業や現地法人とやり取りするような仕事ができたらいいなあ。オーストラリアでも、そのような働き方をしていたので。
ほう、前職ではそんなお仕事もされていたのですか?書類には、食品の企画やパッケージデザイン、販促、営業などと書かれていますが。
はい。主に日本相手ですが、半年だけ営業を担当していました。日本人である私が入社したことで、社長が日本市場への進出を検討するようになり、ある日「日本の商社に話をつなげてくれないか」といきなり言われたんです。それまでは社内で、パッケージデザインや販促企画をメインに担当していたので、全くの未経験領域を任されて始めは面食らいました。勝手も何もわからない中、日本の自然食品マーケットを独学で調べて、40社ほどの日本企業をピックアップし、メールや電話でアプローチして…。オーストラリアの小さいメーカーですし、初めはなかなか話を聞いてくれませんでしたが、少しでも興味を持ってくれたところには試供品を送り、相手が納得のいくまで粘り強く説明をして、最後には私が日本に直接足を運んで交渉して契約に結びつけました。帰国する直前の半年間だけではありましたが、苦労したし、思い出深い仕事でしたね。
すごい仕事を任されていたんですね!なぜ、このエピソードを書類でアピールしないのですか?
たった半年だけですし、日本企業相手なのでそれほど高レベルなビジネス英語を使っていたわけではないので、書類に書いても逆効果かなと…。
いや、書くべきですよ。レベルは企業が判断すればいいことです。全く日本にツテのない中、ゼロからアプローチ企業を探して、契約にまで結びつけた。ましてやそれをたった一人でやったのでしょう?半年とはいえ、成果にもつなげているし、稀有な経験ですよ。
確かに、そう言われれば…。右も左もわからず、とにかく体当たりで臨んだので、相手先企業もさぞや戸惑ったでしょうが(苦笑)、自信にはつながりました。
こういう具体的なエピソードが書類に書いてあると、「行動力があり、自分で道を切り開けそうな人だ。一度会ってみたい」って思えますよね。そして、面接の場でもっと突っ込んで聞いてみたいと思うはず。
なるほど…。面接のチャンスをもっと増やせるかな。
この話をしている時の朝木さん、とてもイキイキしていて言葉にも張りがありましたよ。初めの自信なさげな朝木さんとは別人みたい。心から思っている言葉には、魂が乗ります。面接の場で企業に与える印象も、今までとはがらりと変わるはずですよ。
そうですか!少し自信が湧いてきました。
初めに朝木さんが言っていた「英語力を活かしたいから、貿易の仕事に就きたい」という志望動機は、単なる1スタッフのイメージです。よもやここまで責任ある仕事を任された人とは思えません。「ほかの人にはない、自分ならではの経験」があるのですから、まずは書類の段階でしっかり伝えることです。日本市場をゼロから開拓したこと、その際に独学で市場動向を調べたり、試供品を送ったりと工夫したことも伝えましょう。できれば、半年の間に何社と契約を結び、実際にどれぐらいの売り上げを上げたのかまで示せるといいでしょう。そして、「これらの経験を活かして、日本と海外をつなぐ仕事がしたい」とまとめれば、書類での印象はかなり変わります。書類通過の確率もあがり、面接でのイニシアチブもとれるでしょう。
ああ、なんか視界が開けてきました。私がやりたいのは、単に英語を使う仕事ではなくて、もっと外に出て何らかの形で海外と日本をつなぐ仕事だって、自分の中で明確になりました。やりたいことをすっかり見失っていました…。
転職活動に行き詰ると、焦ってどうしても自分を見失いがちになりますが、「これがやりたい」という軸がぶれるとうまくいきませんよ。今、改めて気付いたその「自分の軸」をしっかり持って、転職活動に臨んでくださいね。
わかりました!書類を見直し、応募先企業も再検討します。
海外のものを日本市場で展開する輸入商社などは、朝木さんの経験がフルに活かせそうですね。経験をベースに、どのチャネルにどう売り込めばいいのか、戦略を練ることができるでしょう。日本の商品を海外に売り込む「海外営業」もいいでしょう。ぜひ自分の軸を大切に、納得のいく転職先を見つけてください。
前職の仕事にやりがいを持っていたのに、転職活動を続ける中ですっかりやりたいことを見失っていました。目指すべき道が見えたので、自信を持って歩き出せそうです。まずは応募書類をまとめ直すところから始めたいと思います!(朝木さん)
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