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東日本大震災から3年。東北復興から“次のステージ”へ

東北エンジニアが全国をつなぎ
地域活性化を担う主役へ

震災をきっかけに、東北でスマートフォンアプリの開発者育成と能力向上を図り、スマホアプリビジネスの活性化を目指して設立されたFandroid EAST JAPAN(FEJ)。震災から3年が過ぎ、FEJの活動は東北に、そして全国に対してどのような影響を及ぼしたのか?事務局メンバーへの取材を通して探ってみたい。

(総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:14.03.27

FEJとは?


(画面左より)
FEJ事務局 小泉勝志郎氏
FEJ事務局 理事長 原亮氏
FEJ事務局 佐藤慧氏
FEJ HP http://fandroid-ej.org/


 2011年に発生した震災を機に、復興支援を目的としたさまざまな活動が展開される中、エンジニアやデザイナーといったクリエイターを中心に多数、新たな団体やグループを結成して動き出した。

その中で設立されたのが、Fandroid EAST JAPAN(FEJ)だ。
FEJは仙台・宮城を中心とした東北において、スマートフォンアプリケーション開発者の育成と能力向上を図り、スマートフォンアプリケーション関連ビジネスを活性化させることを目的として設立された団体。従来の組織を超えた「つながり」を目指すことで、地域から変革を起こしていこうと活動している。
 
現在、仙台を拠点に青森や秋田、盛岡、福島などの東北各地域をはじめ、北海道や岐阜、大阪、そしてシリコンバレーも含む9支部にまで活動拠点を拡大させている。
Tech総研でも過去、FEJの活動を継続的にレポートしてきた。
 
 
 
 
今回、震災から3年を迎えるのを機に改めて、これまでの活動の経緯をFEJ事務局メンバーに振り返ってもらった。そしてFEJが活動してきた成果が、具体的に東北エンジニアたちに対してどのような影響を与えてきたのかを探っていきたい。

150以上のイベントを開催。東北エンジニアのつながりを増やし「アウトプットを生み出す土壌」を創出することに挑戦してきた3年間


東北を中心に各地で開催されたコンテストやハッカソン等イベントの様子。回を重ねるごとに参加者の熱気は増しているという

 「150」と「40」。

この数字は、この3年間のFEJの活動による、一つの成果を表している。
「150」は、主催・共催を含め、FEJが東北をはじめとした全国で開催してきたイベント実施数。
「40」は、FEJが直接関与してきたことで生み出された、東北発のスマートフォンアプリ数。
 
この数字が表すもの、それはFEJがこの3年間の活動を通じて目指してきた、「つながりを増やす」という大きな目的によるものだ。
以前から東北在住のエンジニアにとって、「つながりを持つ」ということが潜在的な課題としてあった。
それが震災の発生によって一気に顕在化したことで、FEJの活動もつながりを生み出すことに目的が集約されていったという。
 
「例えば東北地方在住のエンジニアが、何か面白いアプリを開発したり、とがったことをしても、誰も注目してくれない。確かにSNSのように、世界に対して情報を気軽に発信できる環境はあります。でも実際のところ、多くの人が注目するきっかけとなるのは、著名なエンジニアや企業、メディアがネット上で紹介してくれるところからスタートするのが現実。その点、東北にあるような地方都市では、そうした著名な方たちとの接点がない。だからこそ、FEJの活動でつながることによって、注目されるきっかけになると考えます」(小泉氏)
 
その結果、これまでのイベントでは株式会社ユビキタスエンターテインメント(UEI)の清水亮氏や株式会社ユードーの南雲玲王氏、面白法人カヤックの柳澤大輔氏など多くの著名人を呼んで講演会や勉強会、アプリ開発コンテストを開催。さらにまだ東北ではあまりなじみのなかったハッカソンも、定期的に各支部で開催されるようになっている。
 
「ハッカソンにしても、どこからどう参加したらいいのか東北のエンジニアにはわからない。そこで私たちがまず参加を促したり、開催側にまわることで、最初は手探りだった参加者たちの姿勢も徐々に熱を帯びて、最近では積極的にアイデアを出し合う雰囲気になってきていますね。
一方で、そうしたイベントによるつながりで刺激を受けたことで、例えば青森支部では実家が農業を営んでいるエンジニアが、新たに農家を対象にしたサービスを自発的に開発。また仙台では行政とタッグを組むことで、公共の分野でクオリティの高いアプリ開発に挑戦するなど、私たちが目指す“アウトプットを生み出す土壌づくり”はこの3年で着実に進展しています」(原氏)

東北から全国へ。東北が「世代・地域・業種」をつなぎ、地域活性化するための新たなロールモデルに

 このように3年間で着実に東北エンジニアやクリエイター、そして地域の垣根を越えたつながりを増やしてきた中で、最近では東北から全国に向けて、これまでの活動で得た知見やつながりを生かした活動を積極的に展開している。

そのひとつが「アイデアソン」。
特定のテーマについて、グループ単位でアイデアを出し合い、それをまとめていく形式のイベントであるアイデアソンの国内先進地が、仙台なのだ。
「もともとFEJの初代理事長であり、仙台に拠点を置くアイデアプラント代表の石井力重氏は、早くから人がアイデアを考え出す際のプロセスを研究してきた、日本のアイデアソンの第一人者とも呼べる存在。その石井氏が、FEJの活動を通して知り合った岐阜や大阪など東北以外の地域でアイデアソンを開催したことがきっかけで、現在も定期的に開催されています」(原氏)
 
また、ほかにも、
「著名人を呼んで面白いイベントを開催するためのノウハウを教えてほしい」
「ハッカソンの運営を手伝ってほしい」
「FEJの支部を作りたい」
といったような要望が続々と寄せられたことで、岐阜や大阪など東北以外の地域にも支部が設置された経緯がある。
 
「当初、私たち東北だけが抱えていたと思われる“つながりを増やすことで地域を活性化する”というテーマは、全国の地方共通の課題でもあったわけです。その中でたまたま震災を機に東北でその課題が早い時期に表面化したのです。そして、その課題に対して積極的に取り組んできた成果やノウハウを、今後全国で生かしていくことが、私たちに課せられた新たなミッションだと思います」(原氏)
 
そうした意味では、3年間の活動が今後、目に見える形となって続々と表れてくることが期待される。
そして、全国の地方が抱える課題に対し東北が主体となり、世代や地域・業種といった壁を乗り越えてつなぐノウハウを伝えていくことで、地域振興を仕掛けていく“新たなステージ”に突入していく。


最近、FEJ参加の企業が開発・リリースしたアプリ。上段は東日本大震災の記憶を伝えるガイドアプリ
『DARK TOURISM SENDAI』
下段は平成27年度開業予定の、仙台市地下鉄東西線の工事現場で録音されたライヴパフォーマンスを映像とサウンドジェネレーターで世界中に発信する
『TOZAI-SEN RECORDING LIGHT&SOUND』

取材当日は“えふしん”が講演!テーマは「エンジニアが生き残るためのキャリアデザイン」


当日の開催風景。終始和やかな雰囲気の中進行し、後半の質疑応答では参加者からの質問に対し、えふしん氏ならではの持論が展開された

 ちょうど取材当日は、モバツイ開発者で有名な“えふしん”こと、藤川真一氏による講演が開催された。

テーマは「エンジニアが生き残るためのキャリアデザイン」。
デザインを使ってクライアントの問題をどう解決するか?
そのためには、まず、自分なりの哲学やビジョンの設定からスタートし、技術的実現性を確認→フィールドワークによる観察と分析→メンタルモデナの構築・ターゲットペルソナの設定→アイデアのプロトタイプ ユーザシナリオ→詳細設計・実装検証までの段階を経て形にしていくことが提示された。
 
この中で特に大事なのは「哲学やビジョンの設定」。
自分が創りたい、面白そうと思うものにチャレンジする「創造的イノベーション」の重要性や、コモディティ化した技術を活用しつつ、ワクワクしながらいいものを作り続けることに全力でコミットすること。その上で、「この人なら一緒に面白そうなことをしてくれそう」と思える人とのつながりを大切にし、ビジネス的なもうけは考えずにひたすらバットを振り続けてトライし続ければ、時代性(運)が味方に付いて思わぬ大ヒットにつながる。
 
それは、面白さを追求したえふしん氏によって開発されたモバツイが、2009年、本家ツイッターから直接リンクを貼られたり、iPhoneにフロントカメラが搭載されたことで、女子高生に広くモバツイが利用されるようになったという「時代性」と結びついた、自身の体験談からきている。
 
だからこそ、今回紹介したFEJの活動目的でもある「つながり」を活用しつつ、創造的イノベーションに対して地域を問わず誰もがチャレンジしていくことがエンジニアとして今後、長く活躍していく重要なキーワードになっていくのかもしれない。

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