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伸び続ける企業、何でも話せる風土で、半導体の知識を吸収したい
本音で語る半導体各社から東芝に転職してどうだった?
キャリア採用を積極化している東芝の研究開発には、半導体メーカーのみならず、様々な業種からエンジニアが集っている。今回はセットメーカー、半導体商社、受託開発会社などから転職してきた30代エンジニアたちに新天地での活躍を語ってもらった。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/馬場美由紀 撮影/栗原克己)作成日:13.11.20
出席者プロフィール
メモリ事業部 メモリ応用技術部 K氏

NANDフラッシュメモリを中心としたメモリ技術マーケティング、メモリ応用技術開発を担当。携帯電話事業のセットメーカーから2012年10月に転職。大船分室勤務。

メモリ事業部 メモリ応用技術 U氏

NANDフラッシュメモリを中心としたメモリ技術マーケティング、メモリ応用技術開発。半導体商社から、2012年9月に転職。大船分室勤務。

メモリ事業部 NANDシステム技術部 T氏

NANDフラッシュメモリ用コントローラのソフトウェア、ハードウェア設計。総合エンジニアリング企業から、2012年9月に転職。大船分室勤務。

ミックスドシグナルIC設計技術部 ワイヤレスIC設計担当 I氏

半導体システム技術センター分室勤務。システム製品のアナログ設計開発担当。半導体メーカーから2013年5月に転職。

半導体エンジニアとしてのプライドを活かせる最後の場所

──今、半導体関連の技術や知識を持つエンジニアが、さまざまな業界から東芝に集まって来ています。まずは自己紹介を兼ねて皆さんの現在の仕事と、転職の動機をお話しください。

I氏

BluetoothとWi-Fi一体型のコンボチップの開発を担当しています。回路設計、レイアウト設計、ICの評価など量産に向けた一連の開発をする部署に配属となり、現在は製品評価および量産テスト開発を担当しています。

前職も半導体メーカーで10年ほど勤務しましたが、2012年暮れにグループが半導体事業から撤退することを発表しました。

異業種にスキル転換という道もありましたが、やはり半導体技術者として志半ばでしたからね。半導体に関わり続けるには、転職先の選択肢はほとんどなかった、というのが正直なところです。

東芝は日本の半導体技術の復興を企業目標に掲げていました。その世界に立ち向かっていく姿勢に感銘を受け、ぜひここで働きたいと思い応募しました。

U氏

私は半導体商社出身。内外の半導体メーカーの製品をデストリビューターとして販売する、あるいはFAE(フィールドアプリケーションエンジニア)として技術サポートをしていました。商社を選んだのは、いろんな製品に携わりたかったからですが、どうしても自分が開発した製品ではないので、お客様に説明を求められても、かゆいところに手が届かないもどかしさがありました。

現在の半導体商社は単に右から左に商品を流すだけでなく、商品に付加価値を付けてビジネスをしています。ただし、付加価値といっても、サポート力やソフトウェア、モジュールなどに限られてしまう。製品そのものについては価値をつけられない。そういう限界がありました。やはり技術者ならメーカーにいるべきだな、と思っていたとき、東芝の求人があったので応募したのです。

現在は、NAND単体を扱い、その技術サポート、技術マーケティングを行っています。SDカード、USBメモリ、SSDなど主にストレージ関係のセットメーカー、コントローラメーカーが顧客です。

半導体技術者として、NANDメモリの中をどうしても覗いてみたかった
K氏

Uさんとは同じメモリ応用技術部というところにいて、私はコントローラ付NANDのe-MMCという製品が担当です。この製品技術をお客様に紹介し、技術サポートを行い、次期製品につなげるためのニーズ把握をするといった仕事ですね。携帯電話・スマホメーカーのお客さんが多いです。

もともと私は、携帯電話・スマホを開発するセットメーカーのエンジニアとしてe-MMCを使う側、つまりユーザー側の立場にいたんです。ところが、会社がスマホ事業を縮小してしまい、早期退職の募集があったので、一度人生を考え直してみようと思い、人材エージェント企業に登録をしました。新卒入社以来、一生この会社にいるだろうと思っていたのですが、会社の状況がどんどん悪くなっていくのを実感していったので、腹を決めました。

もちろん社内の別の製品担当になって続ける道はあったんですが、異動先はほとんど関西の事業所なので、引っ越しを迫られる。私はずっと東京在住なので、転職先はできたら関東圏の企業を選びたい。消極的かもしれないけれど、それも東芝への転職の動機の一つでした。

──転居を伴う転職はそう簡単なことじゃないですからね。

K氏

使う側から作る側への転換で最初は戸惑いました。e-MMCの中身は私たちにはブラックボックスでしたし、半導体に関する専門用語がわからず、入社後1カ月から2カ月は苦労しました。先輩や同僚の助言、業務に特化した研修体制でフォローしてもらい、なんとか今に至っている感じです。

 

e-MMCを使う側にいた経験は、今、お客様をサポートする立場に立つと、それが利点になっていると思います。お客様と話が通じやすいということが実際ありますね。お客様は欧州メーカーも含まれるので、いずれは欧州出張もあると思います。

T氏

前職はエンジニアリング会社。新卒入社以来、8年間大手半導体メーカーに技術派遣され、そこで組込みソフトウェアの開発を担当していました。SDカードのホスト側コントローラの制御ソフト、携帯電話やカーナビに組み込まれるソフト、ファイルシステム、ミドルウェアなども担当範囲でした。

SDカードのインターフェイス部分はわかるのですが、Kさんと同じで、SDカードの中身、特にNANDフラッシュメモリの構造などは、私たちからするとブラックボックスです。しかし、技術者の端くれとして、その中身には興味がある。どうしてもその中身を見てみたい。東芝はフラッシュメモリの先駆け企業ですからね。派遣先の経営悪化で、派遣技術者の削減ということもあり、今しかないと思って飛び込みました。

現在はSDカードに使われるNANDメモリのコントローラのファームウェア評価を担当しています。外製、内製問わず、ファームウェア評価では私の部署が最後の砦。ここでダメだ、となったら絶対に製品化されません。

そのNANDですけど、実際、その中身に触れて新鮮な驚きがありました。その仕組み、コントローラの制御方法、コマンドの書き方など日々勉強です。常駐派遣という形から正社員への立場の変化も私にとっては大きな出来事でした。この会社のために自分の技術を活かそう、そういうモチベーションが転職で高まりました。

若手もベテランに混じって活発に議論

──先ほどKさんの話もありましたが、前職で培った経験は今どのように活かされているのでしょうか。

T氏

SDカードに搭載されているNANDに携わっていて、さまざまなSDカードのインターフェイスの試験をしていますが、ここでは前職の知識がそのまま活かされています。ファイルアクセスの仕組み、測定機器を使った評価手法などもそうですね。前職での経験があったからこそ、今の評価部署に配属されたのではないかと思っています。8割は前職のノウハウでいけますが、足りないのはやはりNAND単体についての知識。これがかなり奥深い。しかし、そこが弱いと不具合の解析ができません。今必死に勉強しているところです。評価技術者に対する専門的な研修体制があるので、なんとかなっています。

東芝は新卒であれ、キャリア採用であれ、OJTや集合研修を通して、技術力の底上げを図るという姿勢が明確ですね。

U氏

NAND製品そのものの知識はまだまだ勉強が必要ですが、いろいろなお客様、アプリケーション、製品に携わってきたことは今後に活かせる部分もあるかと思います。半導体商社におけるFAEとしての経験ですね。特にこれからの新規市場開拓の際にはこの経験を活かしていけたらと思っています。

I氏

半導体メーカーにいたので業務の流れはだいたい理解できるのですが、大きく違うのは前職は受託設計が中心、東芝は自社開発製品に携われるということです。受託設計ではどうしても技術分野が広く浅くになってしまう。また中堅層になると顧客対応中心となってしまい、設計技術を深めることが難しい環境でした。

今の職場は、より半導体の専門技術を深めたいという私の思いと合致しています。何より開発の人的リソースの厚みを感じますね。自社製品開発なのでその違いもあるかもしれません。さらに東芝には若手の発言を尊重してくれる風土があります。若手もベテランに混じって毎日熱い議論を交わしています。技術者コミュニティですから、技術的な話になればすぐに打ち解けられる。そういう雰囲気がいいですね。

用語が違う、会議スタイルが違う──異文化発見もまた楽しからずや

──逆に東芝に来て、ここは前職とは違うな、ここを改善すればということはありますか。

K氏

部署の呼び名、略称が最初わからなかったですね。自分の業務と関連する部署はわかるけど、遠い部署はわからない。社内用語が多すぎます。それと、会議のスタイルも違いますね。例えば、会議のときにホワイトボードに会議メモを録る、書いたものはその場でスキャンしてPDFで回されるんだけれど、これを文字に起こす文化がないんですね。テキストにしてもらったほうが見やすいな。これ、ここで初めて言うんですけれど(笑)。

I氏

うちの事業部はあまりホワイトボード使わないですよ。事業部によっても違うんじゃないかな。会議室にノートPCを持ち込んで、みんなそれでメモをとる。これがむしろ私には新鮮でした。

T氏

私の部署だけかもしれないけれど、報告事項を関係者に直接面と向かって話す文化なんですね。前職では報告はメールが原則。フェイス・トゥ・フェイスで会話ができる良い面もあるけれど、話の内容を自分がメモを録っておかないといけないので、結構大変(笑)。PCの周りが付箋だらけです。

U氏

専門用語が多くて入社した当時は解らない言葉が多いと感じました。業界、会社が違うと言葉も違うと思いました。その言葉に慣れてくるとそれが普通になってきているのは不思議ですね(笑)。

背中を押してくれる人はいたほうがいい。転職エージェントはこうして使え

──転職にあたって専門のエージェント会社を使った方が3人いますね。どういう使い方が有効でしたか。

K氏

転職エージェントを利用しました。キャリアアドバイザーと話す中で、次第に転職を意識していった。「いつまでに何をやりましょう」というように、タスクやスケジュールを設定してもらったのは助かりましたね。他人に背中を押してもらわないと、ここまでスムーズには動けなかったかも。

U氏

私も複数のエージェントに登録していました。面接の直前に、ワンポイント的なアドバイスをしてもらい、それを紙に印刷して持参したりしました。

I氏

私もエージェント経由。採用までかなりの時間を要し、精神的に不安な日々を過ごしたことを覚えています。私からの相当なフォローをエージェント担当者に受け止めて頂き、随時進捗をご連絡頂いたご苦労のかいあって、東芝に転職できたと思っています。

──何人かの方は前職で半導体事業が縮小されるなどで、ある意味、転職は必然だったのかもしれませんが、あえて「転職はまだ考えていない」という人に、東芝の良さを伝えるとしたら、どんなメッセージになりますか。

T氏

NANDは難しいけど面白い。それがダイレクトに学べるところが半導体技術者としてのメリット。それと、研究開発費は、必要であれば潤沢に使える環境がここにはあります。

K氏

基礎的な研究開発から、回路設計、製品化まで一貫して世界で戦っているのは、国内では東芝だけ。そのやりがいが存分に感じられる職場だと思います。

U氏

何かの製品でも世界一を経験できる可能性があるということでしょうか。外から見ているのと、中に入って体験できることは全然違う。知らない製品もたくさんある。これは入ってみないとわかりませんでした。

I氏

自分の意見が言いやすい。自分のやりたいようにできる環境があるのはエンジニアとして大事なことだと思います。

専門技術者のノウハウをまるごと吸収したい

──最後にこれからの抱負を。

K氏

東芝のメモリ事業はグローバルに活動していますので、英語がとても重要だと感じています。前の会社ではそこまで英語を必要としていなかったのですが、今は読み書きだけでなく、コミュニケーションも必要になってきているので、通勤時間を使って勉強しています。将来的には、グローバルに活躍できる人材になりたいと思います。

T氏

私も英語力向上は課題ですね。半導体関連のドキュメントは英語が多いですから。いまは工程の一部を任されていますが、これからはより大きなプロジェクトのリーダーとして全体の取りまとめができるようになりたいですね。

U氏

今行っている業務をいち早くキャッチアップすることはもちろんですが、いずれは新しいビジネスを新しいアプリケーションに、今までの経験を活かして開拓できればと思っています。

I氏

半導体エンジニアとして自分の専門性を高めたい。これに尽きます。今までが広く浅くという環境だったので、これからは専門を深めたい。とりわけ私の場合はRFアナログ回路設計。前職では社内にRF設計者は少なかったのですが、東芝には来てみたらたくさんいるので驚きでした。おお、みんなここにいたのかって(笑)。優秀な方が非常に多くいらっしゃいますので、そういう方たちの知識を吸収したいと思っています。

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