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人気漫画家佐藤秀峰氏・見ル野栄司氏をゲストに迎えて開催された「(白石俊平と)かっこいいやつら」。今回は主催者である白石俊平氏が自らレポート!業界セキララ対談や、イベント連動のアプリ開発の裏側などをお伝えします。
(文/白石俊平 総研スタッフ/馬場美由紀 撮影/小澤亮・筒井智子)作成日:13.08.12
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どうもはじめまして。白石俊平と申します。「(白石俊平と)カッコいいやつら」は、豪華ゲストを「IT業界にお招き」して対談するという、ちょっと変わったイベントです。私自身、全然違う業界の方にお話を聞くのが大好きなので、それをイベントにしてしまった…というのがホントのところです。イベントという箱にすれば、有名な人にも会いやすいですしね。
最大のこだわりポイントは、ゲストや参加者に対して、「ITエンジニアならではのおもてなし」を積極的にしていきたいと考えていることです。例えば「イベントのテーマに関連したアプリを作る」なんてこともしていますし、いろんなWebサービス/ITベンダーとも積極的にタイアップしていきます。
というわけで、僕みたいなちょっとミーハーなIT業界人なら、楽しめること間違いなし!のこのイベント(と、主催者自ら言うのはおこがましいですが)。今回は「ITは漫画をどう変える?」というテーマのもと、「海猿」や「ブラックジャックによろしく」といった代表作をもつ佐藤秀峰さんと、Tech総研で連載中の「シブすぎ技術に男泣き!」の見ル野栄司さんを迎え、2013年7月26日、メディアテクノロジーラボ「MTLカフェ」にて開催されました。
「今回の献立」イベントの一コマより。左から、「まんが王国」で有名なmenue株式会社・代表取締役社長の吉田仁平さん、見ル野栄司さん、佐藤秀峰さん、そして白石。白石の額に貼ってあるのは「広告枠」というステッカー。はい、顔面を広告枠として、イベントスポンサー絶賛募集中です!
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イベントはまず、見ル野栄司さんと白石との対談から始まりました。見ル野さんは、ゆる〜いオーラを身にまとった、相手をすぐに打ち解けた気持ちにさせてしまうタイプの方。このオーラ、ギャグ漫画家という職業で身につけたんでしょうか。対談している僕も、すごくリラックスして臨めました。
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見ル野 |
私は、なんとか食べていけてます。私のスタイルは、依頼を受けてWebで漫画を描きつつ原稿料をいただき、それを集めて単行本にするんです。漫画家って、単行本が出ないと厳しいんです。原稿料だけではなかなか食べていけない。 以前は雑誌でも描いていました。その時の流れは、まず3カ月くらい悩んでネームを切り、出版社の企画会議に出すんです。当然、ネームを考えている間は収入なし。企画会議で採用されればまだいいですが、採用されなければまたネームからやり直し。で、何とか連載が決まったとしても、人気が出なかったら半年で打ち切られる。そうなると単行本を出してもらえず、収入といえば連載期間中の原稿料だけ。単行本にならない、お蔵入りになった原稿ってたくさんあるんですよ。 |
Q:今の執筆って、ほとんど紙を使ってないのでしょうか?
見ル野:私の執筆スタイルだと、紙を使うのはネームを考えるところくらいです。A4の紙にネームを描いて、スキャンして編集者に送ります。ネームに問がなければ、それをコミックスタジオっていうソフトに取り込んで、そのネームの上からペン入れをしていく。インクを使ったペン入れは、ミスが許されないのでものすごくパワーを使います。でも、佐藤秀峰さんはインクで描いてるんじゃないかな。
失礼ながら、佐藤秀峰さんに対しては「大きな会社とケンカばかりしてるコワイ人」というイメージがあったのですが、実際に会ってみるととても物腰柔らかな優しい方。そして対談では、参加者に対するサービス精神が旺盛で、ちょっと刺激的な発言を随所に散りばめてくれました。ただ記事にするとなると、残念ながらそういう発言はカットせざるを得なく…。気になる方は、動画でご確認ください。
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「漫画貧乏」では、この対談で述べられた漫画家の実情がより細かく述べられている。
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佐 藤 |
そんな大それたかんじではないんです。「働けば働くほどお金が貯まるはずなのに、どんどん減ってくのはなんでだろう?」と考えていたら、「これは途中で抜いている奴がいるんだ!」というのに気づいちゃった(笑) 。それなら、中抜きされないようにすればいけるんじゃないか?なんていろいろ行動していたら、止まらなくなっちゃったんです。 漫画家は先生なんて呼ばれているけど、全然儲からない。先生と呼んでいる側の社員の給料が、出版社大手3社とかだと1500万円前後。なのに「先生」は280万円。こりゃ、先生と呼ばれているのはおかしい。それを言いたかった。漫画家は、「好きな事を仕事にしたい」という想いでこの職業を選んだという人がすごく多い。でも実際には自由も限られているし、収入も限られている。そこで私は、「漫画家だって好きなことできるんだぜ!」っていうのを言いたくて、「漫画 on Web」を作りました。 「漫画 on Web」では、自分で漫画を公開して好きな値段で売ることができます。できるだけ多くの漫画家に参加してもらい、作品を自由に発表していただきたいと思っています。素人の方でも全然構いません。 |
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浴衣姿も麗しい、女優・モデルとして活躍中の徳川美妃さん。なんと受付のお手伝いも!豪華すぎる…
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見ル野さんが書いた徳川さんの似顔絵。まごうことなき見ル野さんが描く女性キャラだけど、似てる〜!
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佐藤さんが書いた徳川さんの似顔絵。確かに似てない(失礼)。けど、かわいい!!
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次に、とある有名なキャラクターを書いてもらいました。何がお題だったかをここで言うと面倒が起こりそうなので、画像から判断してください。
見ル野さんの作品。脱力系にもほどがある。
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見ル野さんの作品その2。おい!おい!!!
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佐藤さんの作品。佐藤さん、中学生の頃このキャラをよく書いていたそうで。ブランクはあれども、特徴は忘れていませんね。ほっぺとか。
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さらなる協力ゲストを加えてのディスカッション! ここからは、menueの吉田仁平さんを加えて、ITや漫画に関わる話題をちょっとまじめにディスカッションしてみました。
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白 石 |
フリーで作品をネットで公開するということのメリットやデメリットについてもお聞かせください。佐藤さんにお聞きしたいのはやはり、「ブラックジャックによろしく」の二次利用フリー化です。 |
佐 藤 |
フリー化したことのメリットとしては、私の意志とは関係なく、作品がどんどん世の中に広がっていくことですね。ただ、「ブラックジャックによろしく」のアダルトビデオが出ると聞いた時には驚きましたが…。 |
白石& 会 場 |
ええええ!(驚愕) |
佐 藤 |
本当です。「ブラックジャックによろしく AV版」とかで検索すれば、たくさん情報がでてきます。まあその話はさておき、一部をフリー、一部は有料という形にすることで、より多くの収益を生み出せるとは思っています。実際、「ブラックジャックによろしく」をフリー化したことで認知度が高まったおかげで、その他の有料コンテンツの売上も向上しました。 |
見ル野 |
自分の作品がフリーで公開されているといっても、私自身は原稿料をもらっています。だからフリーだからどうこう、ということはあまりありませんね。まずは作品がWeb上で公開され、それを紙の出版社に本にしていただく、というスタイルです。 |
白 石 |
なぜ、見ル野さんのようなスタイルを他の漫画家さんが取れないのでしょうか? |
見ル野 |
私はジャンルが独特ですからね。Web向きなのかもしれません。ストーリーを重視した正統派漫画とかでは、ちょっと難しいかもしれませんね。そうした漫画の受け皿はやはり雑誌ですが、出版不況なので競争率も高いし、どんどん厳しい世界になっていっているのは間違いありません。 |
吉 田 |
まんが王国の特徴としては、試し読みできるコンテンツを多めに揃えていることが挙げられます。全てをフリーにしては成り立たなくなってしまいますが、もともと知らない漫画を知るきっかけとして、試し読みという体験を重視していますし、今後も一定の量を確保していきたいと考えています。 |
Q:今後、技術の進化でコマ割りなどの「漫画的な表現」が変わっていく可能性はあるのでしょうか?
吉 田:クリエイティブの観点から言うと、今までなかった表現にはチャレンジしていくし、今後も行われていくでしょう。一方で、そうした表現を具体的に実践していくための方法論については、コスト的な面も考慮しながらも、各社がしのぎを削っていくことになる。例えばケータイコミックなどでは、コマごとに切り出して紙芝居のような形にし、本ともアニメとも違う独特なテイストになったと思います。
見ル野:ニコニコ静画などでは紙芝居的な表現が実現されていましたね。モーションコミックという、アニメーションとコミックの中間的な表現もあります。ただ、一般的なコマ割りの技法を用いることが、作家がやりたい表現を一番シンプルに実現する方法だとも言えます。迫力で魅せるために、一枚の絵でダイナミックにコマをぶち抜くとかですね。シンプル・イズ・ベストで、コマ割りという技法は今後も残っていくんじゃないかな。
「他の業界の方々を、IT業界にお招きする」という、自分たちにとっては初めての試みでした。コンセプト作り、PR、集客、アプリ作り、イベントに向けた準備…。あまりに意気込みすぎて、イベントが終わった翌日に、高熱を出して倒れたほどです(笑)。でも、準備が大変だっただけに、イベントを終えた喜びはひとしお。アンケートを見る限り、皆さん概ね楽しんで頂けたようです。やはり、漫画家という普段接しないタイプの方々に、ナマの声を伺えたことが面白かったのではないでしょうか。
マイクロソフト社に差し入れてもらったパンツを掲げて、みんなで記念撮影。楽しかった!!
一番の反省点としては、「壇上」を参加者の人達が「観覧する」というスタイルになってしまったこと。こうしたテレビ番組然としたあり方ではなくて、もっと参加者も一緒になって盛り上がれるような、「お祭り」のようなものを目指したい。素人がテレビ番組的な見せ方のイベントをしようと思っても、大したものができるわけもないですしね。
次回は、今回と同様に「豪華なゲスト」と「リラックスした空間づくり」にはこだわりつつ、お祭り感をより追求していきます。目指すは、「IT業界における伝説のイベント」です! 乞うご期待!
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