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ソフトバンクモバイルの情報システム部門で開発を行う社内SEの仕事は、iPhone5を販売する際の予約を受け付けるためのシステム構築から、iPhoneアプリ「かざしてGO!」開発まで幅が広い。彼らに課せられた新しいミッションとは何なのか──
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:12.11.28
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情報システム本部
モバイルシステム統括部 アカウントマネジメント部 田中 博之氏 |
9月21日、iPhone5が発売された。4インチ縦長サイズのディスプレイを搭載、従来に比べて薄型で軽量であり、LTEに対応した高速通信時代のiPhoneである。日本ではソフトバンクモバイルとKDDI(au)の激しいキャンペーン合戦も関心を呼んだ。 同社の社内SEたちにとっては、トラブルが起きることなく、膨大な予約をさばくシステムを開発する必要がある。ソフトバンクモバイルでは社内の各部署が協業しながらiPhone5を販売するためにビジネスを進めている。主にマーケティング・販売戦略の立案を行う部門、ショップ営業を担う部門、さらに契約した顧客のアフターフォローを行う部門がある。これらの部門と連携する形で技術系の部門もある。その一つが受注・契約などの社内業務システムを構築する情報システム本部だ。いわゆる「社内SE」の集団だ。
「システムを分析する会議を定期的開催し、予約受付システムの構想を練ることになりました。絶対に落ちないシステムを構築するためにキャパシティの拡大は必須でした」 |
アカウントマネジメント部は社内のさまざまなシステム案件を受け付けながら、その課題を整理し、システム構築の企画を立てる部署。田中氏は、具体的な要件定義を行うシステム企画部の佐川学氏と共に、「強固な顧客フロントエンドシステム」を構築する今回のプロジェクトに専念することになった。 「システムの堅牢性を担保するために、いろいろな取り組みを行いました。将来的な市場規模の拡大に応じて、汎用性のあるシステムにすることも要件の一つになりました」(田中氏) iPhoneの予約・購入はオンラインショップのほかに、直営店・代理店の実店舗でも行われる。iPhoneなどの携帯端末やアクセサリー購入予約の受付から料金プランの選択、さらに開通確認までを行う顧客フロントエンドシステムを使用している。一連の作業をコンピュータ処理し、より迅速な新規登録・機種変更登録などをしている。
今回のシステム改修の目玉はデータベースシステムの刷新だ。 |
情報システム本部
モバイルシステム統括部 システム企画部 佐川 学氏 |
佐川氏の前職は、官公庁システムを業務委託で開発するSE。モバイルインターネットの可能性に魅力を感じ、2008年にソフトバンクモバイルに転職してきた。「スピード感の速さはソフトバンクグループの身上ですが、そればかりにとらわれすぎると、現状についていくのが精一杯で、その先が見えなくなります。現状を当たり前と思わずに、なぜこうなのかと常に疑問に思い、次の課題を発信できるエンジニアが必要ですし、私自身もそうなりたいと願っています」(佐川氏)
2008年新卒入社の田中氏も「自分で考えて分析し、ソリューションを出すことができる会社」とソフトバンクモバイルを定義する。自分の頭で考えるためにも「なぜ=Why?」の精神が欠かせないのは、言うまでもないことだ。
大学は総合政策学部で次世代電気自動車の研究を行う。2008年新卒入社。情報システム本部では基幹系顧客管理システムにて、設計、開発に従事した後、超上流工程にて案件を整理するマネジメント業務に携わるべく2012年4月に現職に異動。
業務委託として官公庁システムの開発・運用を担当。2008年4月中途入社。予約・販売業務にて利用する顧客フロントエンドシステムの開発に関わる。
情報システム本部にいるIT技術者をさらに増強しようというのが今回のエンジニア採用だ。そこには、各種システムの開発、改修のほか、アプリケーション開発要員も含まれる。
ソフトバンクモバイルのアプリケーションと言われてもピンと来ない人も多いと思うが、その実例の一つが9月にリリースされたiPhone向け無料アプリ「かざしてGO!」だ。
「街を歩いたり、店舗を散策しているとき、気になる商品のパンフレットやポスターが目についたら、さっとiPhoneをかざして写真を撮ります。指定の媒体に対しては、アプリが認識すると音が鳴る。アプリは関連サイトに自動的にアクセスして、ユーザーは製品や店舗情報、お得なキャンペーン情報などがすぐに得られるというものです」
と説明するのは、IT管理統括部IT企画部の荒生誠治氏だ。
IT管理統括部
IT企画部 IT企画課 荒生 誠治氏
ソフトバンクBB株式会社
情報システム本部 システムサービス事業統括部 Eコマース開発部 安藤 勝司氏 |
QRコードなどを撮影して、その情報をWebにリンクさせるシステムは以前からあるが、「かざしてGO!」ではコードの埋め込みは不要。システムの眼目は画像認識技術だ。情報提供企業がポスターなどの画像を登録すると、ソフトバンクモバイルが画像の特徴点を抽出しそれをサーバー側のデータベースに登録する。撮影した画像と特徴点を照合することで、指定のWebへ遷移するという仕組みだ。画像にはポスターやチラシなどの紙媒体だけでなく、屋外看板、商品のパッケージ、さらにはテレビCMなどの動画も含まれる。
年内はプロモーションとして、ソフトバンクショップのロゴを撮影すると景品応募サイトに誘導される自社キャンペーンや、サントリーの缶コーヒーとのコラボ・キャンペーンなどに使われてきた。
開発チームの一人が、システムサービス事業統括部Eコマース開発部の安藤勝司氏。アプリ側に現在のキャンペーン登録状況の一覧画面を表示するWeb側の仕組みなどを作り込んでいる。 ソフトバンクモバイルの社内SEたちが、iPhoneアプリの内製開発に取り組んだ例としては、「お父さんアプリ」がある。QRコードリーダー、手書きメモ、割勘計算、歩数計などの単機能ユーティリティとしてシリーズ化されているものだ。マーケティングやサービスサイドからの要請でアプリをつくったというより、システム側からのビジネス提案という点でも注目される。
「確かに社内システム企画という本来の業務とは外れるプロジェクト。しかし、情報システム部門のトップ自らが、開発者たちがそういう発信をしていくことをむしろ奨励しています。エンジニアも顧客志向を高め、サービスや事業へのコミットを強めていく。そのチャンスがますます広がってきたという感じがします」 モバイルキャリアのエンジニアというと、これまでは、無線通信システムや基地局構築のネットワークエンジニアばかりに注目が集まっていた。しかし、情報システム系の社内SEもまた、サービスにより近いところで重要な仕事をしている。さらにスマートフォンビジネスの深化で、単なる社内受託開発とは違う仕事の面白みも広がっている。モバイルキャリアにおける新しいエンジニア像が生まれつつあるのだ。 |
大学院は電気工学専攻でアンテナの設計などをしていた。事業やサービス立案に興味があり2007年総合職として入社。「かざしてGO!」プロジェクトにはサービス・コンセプトづくりから関わる。
マルチメディア系の四年制専門学校を卒業後、2005年に新卒入社。入社後はYahoo! BBの予約受付システムなどを開発し、現在は要素技術の研究が主業務。
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