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2013年は、mruby、MobiRubyで世界中にRubyブームを巻き起こす!
まつもとゆきひろ、
増井雄一郎の“Ruby”ギークライフ
世界にRubyの存在感を示していきたい──組み込み向けプログラミング言語“mruby”“MobiRuby”を開発するまつもとゆきひろと増井雄一郎が語る想いを、前回の誕生編に引き続き紹介する。
(取材・文/井元康一郎 総研スタッフ/宮みゆき)作成日:13.02.07
PCを使わない機器のソフトをプログラミングできる“mruby”

―― Rubyの生みの親であるまつもとゆきひろさんが、組み込みソフト開発をターゲットとしたスクリプト言語、mrubyをリリースしたのが2012年の4月。それから半年も経たない9月には増井雄一郎さんがmrubyをベースに、iPhoneやiPadなどiOS上で走るアプリを組めるSDK、MobiRubyを発表しました。2012年はRubyにとって熱い年でしたね。

まつもと ゆきひろ氏
まつもと ゆきひろ氏
まつもと

そうですね。mruby開発のきっかけは07年、製造業が集積している福岡県のソフトハウスからご要望をいただいたことでした。近年、デジタル家電などのマイコンの性能が32ビット化、フラッシュメモリも1メガバイト搭載といった具合にどんどん上がり、組み込みソフトも複雑化しています。一方でソフトをつくる側のプログラマのほうはそんなに数が増えているというわけでもない。プログラマの負担軽減という点で、プログラミングの簡素化を実現するスクリプト言語のニーズがあった。そこでRubyをベースに、軽量版のmrubyをつくったわけです。

 増  井 

mrubyの構想を私が知ったのは、2010年に行われたRubyのカンファレンスでした。そのころ、私はObjective-Cを使ったiOSアプリの開発と、Rubyを使ったサーバアプリの開発の両方を行っていました。一人で両方を書いていく中で、Rubyで書く部分に比べて、Objective-Cは文字列や配列の操作、ネットワームの処理などが煩雑になりがちな事が気になっていました。
そんなときにまつもとさんのmrubyの構想を聞き、「これがリリースされたらiPhoneに組み込んでRubyでiOSのアプリをつくれるようにしたい!」と強く思いました。

まつもと

われながらRubyは組み込み用途にはなかなかいいと思う。特に自動販売機や医療機器、再生可能エネルギーのパワーコントロールユニットなど、生産台数の少ない制御ソフト組み込みの分野では、コストや手間の面からも有利。mrubyだとPCを使わない機器のソフトをそのままプログラミングできる。

 増  井 

「mrubyをつくる」という話を聞いてからずっと早く試してみたいと思っていたのですが、いつまで経ってもリリースされるという話を聞かないので、2012年の3月にTwitterでまつもとさんに直接聞いたところ、リリース前のmrubyをもらえることになりました。そのときちょうど米国に出張していたので、帰りの飛行機の14時間で一気にmrubyでiPhoneのアプリをつくることは技術的に到達可能ということを検証して、帰国後すぐにMobiRubyの開発に取りかかりました。

“mruby”“MobiRuby”の進捗状況は?

―― 2012年9月に正式に公開したそうですが、もうダウンロードはできるんですか。

 増  井 

iOS用のものを公開しました。2013年中にはAndroid用もリリースする予定です。大きな特徴として、ネイティブの機能、例えばグラフィックのAPIや音を鳴らすAPIのほぼ全てをRubyから呼び出すことができるようになっています。多くの人がMobiRubyを使って容易にiOSのアプリをつくれるようになってもらえるとうれしいですね。

まつもと

mrubyをつくった私としても、ユーザーが増えるのは歓迎したいところです。デバッグは一生懸命やっていますが、やはり一定以上のユーザーがいると、使わなければわからないようなバグが見つかる。ユーザー数は成長の駆動力ですよ。

 増  井 

今年前半のリリースを目指しているバージョン1では、iOSの全ての機能をRubyから扱えることを目標としています。その代わりRubyらしくない書き方を強いられる事になってしまっています。次のバージョン2では、もっとRubyらしい書き方でiPhoneのアプリをつくれるようにしていきたいと思っています。

Rubyで一番の特徴は、複雑な機能をラッピングして隠して、多くのユーザーに見せない様に書くことができるという事だと思います。Ruby on Railsが世の中に受け入れられたのも、SQLやルーティングなどのプログラムで煩雑な部分を隠して、プログラマにわかりやすくコードを書ける環境を提供したことにあると思います。MobiRubyでも同じようにRubyの特徴を活かして、iOSやAndroidの機能をさらにわかりやすい形で書ける環境を提供していきます。

増井 雄一郎氏
増井 雄一郎氏
MobiRuby

―― 増井さんのiPhoneにはMobiRubyでつくったパズルゲームが入っていますね。アップルはアプリについてさまざまな制限を加えていますが、これはOKなんですか?

 増  井 

問題はありません。このアプリは「MobiRuby Game」という名前で公開していますので、iOSのApp Storeからダウンロードする事ができます。まだ現在のMobiRubyには多くの問題がありますが、頑張ればこのようなアプリをリリースすることも可能ですので、興味のある方はGitHubから開発ツールをダウンロードして試してみてください。うまく動かなかった場合は、Twitterで@masuidriveに連絡もらえればすぐ対応します。まだ動かない事が多々ありますから(笑)。

まつもと

mruby自体、もっと完成度を上げていく必要がある。実際、日々仕様が変わり、良くなっている状態。興味のある人にはぜひ試していただきたいですね。

“mruby”“MobiRuby”はグローバルに向けたポートフォリオづくり

―― Rubyは日本発のスクリプト言語ですが、海外での知名度はいかがでしょう?

増井氏
 増  井 

Ruby on Rails以後、RubyはWebアプリをつくる言語として世界中で認知されています。しかしそれ以外の分野ではそれほどの存在感はありません。まつもとさんがmrubyをリリースしたことで、いままでRubyが注目されなかった分野でもRubyが使われる可能性が出てきました。この可能性を現実のものとするために自分もなにかで貢献できたら楽しいだろうなと思っています。mrubyも日本語のサイトがないため、日本人同士でもGitHub上では英語でやりとりをしています。MobiRubyも世界中で使ってほしいと思っているので、サイトやドキュメントは英語で提供するようにしています。

まつもと

自分がこの20年間、Rubyに人生の時間をどのくらい費やしてきたかということを考えると、世界にRubyの存在感を示していきたいのも確かです。もちろん好きなことに打ち込んできたという満足感はありますし、Ruby on Railsでは一定のシェアも得ていますが。複雑なアルゴリズムをmrubyでつくると作業が楽になるといった省力化、クラウドで使えるといったことに加えて、iPhoneなどモバイルデバイスのアプリも書けるようになるなど、Rubyの特性を活かせる新しい使い方の方向性も見えてきたところですから。

 増  井 

私はRubyを長く使ってきているのですが、Rubyそのものへの貢献はほとんどしていない事がずっと気になっていました。Rubyを使っているのに、何もお返しをしてないんですね。しかし、Rubyは歴史も長く複雑なため、私が貢献できる箇所はほとんど残っていないように見えます。しかし、新しいmrubyはまだ未成熟な部分も多く、私が貢献できる部分もあるんじゃないかと思いmruby本体の開発にも積極的に関わるようにしています。

――mruby、MobiRubyを扱ってみたいというプログラマもこれから増えてくると思いますが。

まつもと

mrubyは、ユーザー数はまだ少ないですが、バグの発見や改良のポイントを見つけるのには十分かなと感じる段階にはなってきています。注目しているのはむしろ、mrubyという素材をどう使うか、その用途開発のほう。増井さんがiPhone、Android用にMobiRubyをつくっていますが、10年前にはスマホがこんなに世の中を席巻するとは思っていなかった。言語の世界はいまもFORTRANが現役で使われているのをみてもわかるように、変化は少ない。変わるのは使い方のほうなんですよ。そういう視点を持ったプログラマが手掛けると、これからも面白いものができそう。

 増  井 

私がMobiRubyをつくる理由はいくつかありまして、そのうちの一つに海外でも広く使われるプロダクトを自分でつくり、世界に通用するポートフォリオをつくるというものがあります。多くの人に使われるためには、良いものをつくるだけではなく、人の目を引く必要があります。mrubyはこれから伸びるプロダクトだと思っていますので、mrubyの伸びと一緒にMobiRubyにも注目してもらえたらと思っています。

まつもと氏
 

海外のエンジニアと広く交流するには英語が必須ですが、これはもうブロークンイングリッシュでもいいからとにかく体当たりでコミュニケーションを取るようにすればいいと思っています。私もアメリカで働いたときには、変な英語を話していましたが、なんとかなるものです。われわれはエンジニアですから、変な英語でも技術が良ければ相手はちゃんと理解するよう努めてくれます。北米、欧州、インド、中国など、数十億人とやりとりできるようになることを考えれば、恐れずぜひトライしてみるといいと思います。

プロフィール
まつもと ゆきひろ氏
まつもと ゆきひろ氏
筑波大学卒業。静岡県浜松市に居住していた頃、効率的に記述できるプログラム言語の実現を目指し、Rubyの開発を始める。現在は島根県松江市に在住し、株式会社ネットワーク応用通信研究所(NaCl)にフェローとして勤務。2007年より楽天の楽天技術研究所のフェローを兼務、またRubyの普及を目的として設立されたRubyアソシエーションの理事長も務める。2009年にはRubyの開発に関する功績を認められ、松江市の名誉市民に選出された。2011年にはHeroku, Inc.チーフアーキテクトにも就任。
増井 雄一郎氏
増井 雄一郎氏
2009年までAjax、Ruby on Railsなどの技術を使った Webアプリケーションの構築や雑誌・書籍への執筆をフリーランスとして活動。PukiWikiなどのソーシャルアプリケーションの企画・開発を得意とする。2008 年より渡米しiPhone、iPad関連のアプリケーション開発に従事。主な著書に「Ajax 実装のための基礎テクニック」(技術評論社)「PukiWiki入門まとめサイトをつくろう!」(翔泳社)。2010年12月に帰国。2012年9月まで、Appcelerator Inc.テクニカルエバンジェリストとして活動。現在は、FrogAppsのCTOとして、「ミイル(miil)」の開発に注力している。http://blog.masuidrive.jp/
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