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Forkwell、QA@IT、CodeIQ ITエンジニア価値向上サービスでキャリアアップ計画
2012年、ITエンジニア向けに特化したWebサービスが数多く誕生した。今回、その中から3つのサービスに注目。誕生した経緯や目的等を企画開発者から伺いながら、これらのサービスによってITエンジニアのライフスタイルがどう変わるのかを探ってみたい。
(総研スタッフ/山田モーキン)作成日:13.01.24
はじめに
ソーシャルネットワーク等の普及によって、ネットワークを介したコミュニケーションスタイルが多様化している現代。その中で特に2012年は、IT・Webエンジニア向けのサービスが続々と誕生した。例えばプログラマに限定した、技術情報共有サービスや実務スキル評価サービス。またエンジニア自身によるセルフブランディングが実践できるソーシャルサービス等。
こうした各種サービスは、それぞれどういった背景・目的を持って誕生したのか?そしてこうしたサービスを活用することで、ITエンジニアにどのようなメリットや可能性をもたらすのか?今回、以下の3つのサービスを事例に紹介したい。
ケース1「Forkwell」 ケース2「QA@IT」 ケース3「CodeIQ」
https://forkwell.com/ http://qa.atmarkit.co.jp/ https://codeiq.jp/
Forkwellの項へ移動 QA@ITの項へ移動 CodeIQの項へ移動
ケース1 エンジニアのためのソーシャルサービス『Forkwell』
2012年4月に誕生した『Forkwell』は、エンジニアやクリエイターを中心に、ユーザーが自分のスキルやコネクションを可視化することができ、それをセルフブランディングにつなげられるサービス。
これまで特にITエンジニアの場合、自分のスキルやこれまでの経験を第三者に対してわかりやすくPRするのは、かなりハードルの高い領域だった。そこに着目したのが「Forkwell」だ。
Forkwell トップページ
“誰から、何のスキルを評価されているのか”が一目でわかることに価値がある
「Forkwell誕生のきっかけは、ブログの退職エントリーやTwitter等のSNSを利用した転職が増えてきたことです」と語るのは、Forkwellの開発メンバーである大岡氏。エンジニア同士が専門技術や関心のあるテーマをきっかけにつながり、勉強会を開催することが一般的になってきた。このつながりをソーシャルグラフによって可視化し、もっと便利にわかりやすくすることでキャリア形成やセルフブランディングに役立ててほしい、というのがForkwellの原点になっている。

「エンジニア同士でないとその人のスキルの評価は難しく、転職の場面でもそれがネックになりがち。そういったものを、エンジニア以外の人、特に人事採用担当者にもわかりやすくしたいという思いがありました」と、同じくForkwellを立ち上げた大畑氏も語る。

しかし実際、自分のスキルや実績を例えば全て数値化することで、わかりやすくしようとしても不可能だ。そこで重要になってくるのは「誰か信頼のおける人に評価してもらう」ということ。

「例えば自分のことをある程度理解している人やその人に対して信頼を置いている人がもし、自分とは無縁の人に対して高い評価をしているのなら、その評価の信ぴょう性はある程度担保されるはず。そこから評価のネットワークが広がることで“誰から、どんな風に評価されているのか?”一目でわかる。これは非常に大きな価値があるはずなんです」(大岡氏)
[写真]大畑貴文氏・大岡由佳氏
株式会社garbs
代表取締役
大畑貴文氏(画面右)
R&D Div.
ディレクター
大岡由佳氏(画面左)
エンジニアのセルフブランディングを助け、キャリアを切り拓くきっかけになりたい
こうして半年の開発期間でリリースしたForkwellは、多くのITエンジニアに対して具体的にどのようなメリットをもたらす可能性を秘めているのか?
まず「誰もがより手軽にセルフブランディングができることで、新しい人や仕事との出会いのチャンスを広げることができる」と言う点。

「Forkwellを活用することで『自分はこんなことができるエンジニアなんだ』というセルフブランディングがより手軽にでき、それが他のエンジニアからの評価につながる。その結果、新しい人や仕事との出会いが生まれ、自分のやりたいことを実現できるチャンスをつかむ。そんなサービスになっていってほしい」と、大岡氏は語る。

またこの「他人から評価される」という経験は、エンジニアとしての向上心にも好影響を与えると言う。

「自分の評価ポイントが少しずつForkwell内で蓄積されていくことで、自信につながっていき、さらに上を目指そうとする意欲が高まるというメリットもあります」(大畑氏)

ただし注意する点もある。それは継続的にForkwell内で自分のアウトプットを出していく必要があること。第三者に自分を評価してもらう材料を数多く提供していかなければ、評価ポイントは蓄積されていかないからだ。

今後、Forkwellではユーザーのプロフィールページに様々な実績やアウトプットを掲載できるようにすることで、エンジニア同士の評価をより活発化させていく予定だという。
ケース2 ITエンジニア向け質問&回答コミュニティ『QA@IT』
最新技術を駆使して新しいサービスや価値を生み出していくITエンジニアには日々、数多くの疑問や不明点が付いて回る。そうしたものはたいがい、同じ境遇にある他のエンジニアにも当てはまる。
そこで同じような疑問や悩みを抱える多くのエンジニアが、質問やそれに伴う回答を共有・編集することで、ベストなQA集を蓄積するために生み出されたのが『QA@IT』だ。
QA@IT トップページ
「あそこにいけばだいたいわかる」と思ってもらえる場所を目指して開発
ITエンジニア向けの情報サービス「@IT」の運営元として有名なアイティメディアでは、@IT立ち上げ10年を経て、新しいサービス立ち上げを模索していた。その中で西村氏が以前から注目していた米国発のQ&Aサイト「Stack Overflow(スタックオーバーフロー)」の日本版のようなサービスを立ち上げようと企画したのが、2010年のこと。

「当時、掲示板のようにQ&Aサービスに似たようなサイトはすでに存在していました。しかしそこには数々の問題点も。例えば『自分が知りたい回答がどこにあるのか分からない』『そもそもそこに掲載されている回答が本当に正しいのかどうか、定かでない』『古い情報が混在しているため、今の業務ではあまり役に立たない』など。
その一方、私が注目していた『スタックオーバーフロー』は、まさにこうした問題点をすべて払しょくした画期的なサービスでした。そこで日本に特化した、ITエンジニア向けQ&Aサイトを本格的にゼロから立ち上げようと思ったのが、QA@IT立ち上げのきっかけです」(西村氏)


基本的にはStack Overflowを大いに参考にしながら開発を進めていったが、日本ではマッチしない機能もあった。中にはリリース後、すぐに削除したものもあるという。

「例えば『ウィキペディア』のように、回答を第三者が編集する機能。日本では『なぜ自分の書いた回答が、知らぬ間に書きかえられてしまうのか?』という苦情がリリース後殺到してすぐにこの機能を削除しました。こればかりは文化や風土の違いで、事前に把握できませんでしたね」(西村氏)

その他にも開発コストや期間などの制約から、リリース時はあまり多くの機能を追加できなかったという苦労も伴いつつ、リリース後は早くもこれまで生み出せなかった価値を提供できているという。

「当初はRubyやRails関連のQ&Aを軸に展開していたのですが、中にはある質問に対して、その開発者自身が回答を寄せるケースも出てきました。これまでオープンにされてこなかったコアな知見が続々とQA@IT上で公開されていく状況は、私たちにとって驚きであり、新たな発見でもありましたね」
[写真]西村賢氏・浦嶌啓太氏
アイティメディア株式会社
ITインダストリー事業部
@IT統括部 @IT副編集長
西村 賢氏(画面右)
株式会社永和システムマネジメント
サービスプロバイディング事業部
アジャイル開発グループ
浦嶌啓太氏(画面左)
参加する喜び&人を助けるやりがい=セルフブランディングにつながる
開発時に最も重要なテーマとしていたのは、「いかに多く質問してもらうか」という点だと、開発メンバーの浦嶌氏は語る。

「いわゆる優秀なエンジニアの中には、自分から情報をあまり発信しない人が比較的少なくありません。その一方、質問に対して回答したり、自分なりの考えや意見を発信するエンジニアは多い。そのため、QAサイトとして成立させるには、いかに多くのエンジニアに質問をしてもらうことが重要なのです。
そのためリリース前のβ版でRubyなどテーマを絞って、できる限り誰もが知りたいと思うような“いい質問”を集めることに注力しました」


その結果、良質な質問が徐々に集まり、それによって様々なエンジニアからの回答が多く寄せられるようになってきた。その流れで特にRubyやRailsプログラマを中心に、「QA@ITに結構面白い内容が記載されている」といった情報が口コミで広まり、利用者が増えてきた経緯がある

「最近ではJavaやC#、VB.NETなどの質問も増えてきています。QA@ITでは今後、自分が注目しているテーマに関するタグを自動的に目立つ場所に表示させたり、逆にあまり関心のないテーマに関しては非表示させることで、本当に自分が知りたい情報をすぐにチェックできるようにしていくつもりです」(浦嶌氏)

またQA@ITには、活用次第でITエンジニアに大きなメリットを生み出す可能性があると西村氏は指摘する。

「ある時は自分の得意分野で回答することで役立ったり、ある時は疑問を解消することで、効率よく仕事を進めることができる。その繰り返しによってQA@IT内でセルフブランディングが無意識のうちに行われて、高い評価を受けることも。今後もより良質なQ&Aを生み出し続けることで、現在100万人いると言われるITエンジニアをサポートしていきたいですね」
ケース3 ITエンジニアのための実務スキル評価サービス『CodeIQ』
2012年6月にリクルート(現リクルートキャリア)からリリースされた『CodeIQ(コードアイキュー)』。第一線で活躍するITエンジニアが出題する問題に解答することで、エンジニアとしての実務スキルがどの程度のレベルなのか「評価フィードバック」を受けることができる。また正解/不正解、コードを書くセンスであったりモノの考え方も含め、より総合的な評価を可能にしていることが、CodeIQの大きな特徴となっている。 CodeIQ トップページ
「気がついたら“誘われて”転職していた」という潜在ニーズを喚起する
「まずは多くのエンジニアの方に“おれたちのためのサービスだ”と思ってもらえるような存在を目指してCodeIQを企画・運営してきました」と語るのは、CodeIQのクリエイティブディレクターであるサカタ氏。

冒頭でも紹介したように、CodeIQは問題に解答することで、自分のスキルを評価してもらうことができるサービスである。

「『一番強いのは誰だ!?』的な出題よりも『やってみよう』的な出題の方が多いので、学習目的で利用するにはなかなか良いツール」

「独学でプログラムを学んでいるので、自身のスキルを客観的に評価してくれるサービスはありがたい。他のコーディングチャレンジよりも題材が豊富ですし、楽しませてもらっている」

「第一線のITエンジニアによる実践的な問題に挑戦できる貴重な機会」

といったようにすでに多くのエンジニアからも、CodeIQが提供するサービスに対する高い評価を受けている。

またそれだけに止まらず、転職を考えているエンジニアには、“自らのスキルを示すことで企業からオファーを受けられる世界”をCodeIQは創ろうとしている。
特に「自分の力が活かせる場所に行きたいと思っているけれど、それがどこにあるのか自分では分からないから自分で『応募』ボタンは押せない」「職務経験はないけど独学で学んだスキルを使って転職したい」エンジニアにとっては、よりマッチしたサービスともいえる。

一方、企業の採用活動においてこれまで、ITエンジニアを評価する手段(特に「人事」と呼ばれる非エンジニアにとって)は、応募者の履歴書やレジュメや面接での受け答えくらいしかなかった。しかしそれだけで現場が求めるスキルが本当にあるのか判断するのは、決して容易ではない。
そこでもっとわかりやすく、しかも簡単にエンジニアのスキルを可視化する場を作ることで、満足度の高い出会いを可能にすることを目指したのだ。

「しかしいきなり転職を前面に打ち出してしまうと、敷居が高いと感じてしまう方もいる、と。そこでまずは先述したように“おれたちのためのサービス”と思って、楽しんで問題に挑戦してもらえること、評価を受け取って学んでもらえることに全力を尽くすようにしています。
その次の段階で、多くのエンジニアの方が解答し、評価され、出題した企業側から声がかかり、結果的にすれば転職が生まれる。つまり“気がついたら誘われて転職してた”というようなシーンを一人でも多く生み出すことが、CodeIQの理想ですね」(サカタ氏)
[写真]サカタカツミ氏
クリエイティブディレクター
サカタカツミ氏
PHP, Java, Ruby, Perl, JavaScript, SQL, Python, Query, HTML5, C++, Objective-C, R, アクセス解析, インフラなど、問題テーマは多岐にわたる
恥ずかしくなく、嫌みなく、自分のスキルをアピールできる場所
ITエンジニアの転職意識について調査したところ、あるひとつの傾向が読みとれたと言う。それはもっと“自然な形でさりげなく転職したい”という意識。
そもそもITエンジニアの場合、自分のスキルを第3者に見てもらったり、評価してもらう機会が少ない。そのためいざ転職しようと思っても「本当に自分のスキルが通用するのか?」必要以上に不安を感じるケースも少なくないのだ。

そこでCodeIQでは、そうした転職に対する不安やこれまでの課題をクリアするために「恥ずかしくなく、嫌みなく、自分のスキルをアピールできる機会」が必要だと考えた。

「問題を解くだけで自分のスキルレベルを客観的に理解できる上に、出題したエンジニアや企業側から『評価フィードバック→(Meetup)→オファー』という自然な形で転職の誘いが来るチャンスが生まれる。この仕組みはITエンジニアというスキルが可視化されやすい分野だからこそ有効であるとも言えるし、そこにこそ“おれたちのためのサービス”と認識してもらえるチャンスがあると考えます」(サカタ氏)

今後の転職は、特に専門性の高いITエンジニアの場合「一人募集・一人応募・一人採用」というような『マイクロ・リクルーティング』が主流になると言われている。つまり、母集団の量よりも質を重視した採用プロセスであるが、その分、誘う側(企業)も誘われる側(個人)も、いかに自社/自分がその相応しい相手なのだと知ってもらえるかがカギになる。
自分のスキルを「恥ずかしくなく、嫌みなく」世の中に示すことがもっと手軽に行え、結果としてこれまで以上に相思相愛のマッチングを数多く生み出す手段として、CodeIQは今後もさらに注目を集める存在となりうるかもしれない。
優秀解答者には企業から転職・就職のオファーが来ることを明示した「ウチに来ない?」問題の一覧
おわりに
今回は3つのサービスを紹介したが、どんなに良質なサービスもそのメリットを生かすも殺すも、利用するエンジニア自身。自分から積極的に情報を発信したり、アクションを起こしていけば必ず、何かしらの反響が起こり、それが次の可能性に広がっていく。
これからは自らの手でやりたいことを実現していく時代になっていくからこそ、ぜひこうしたサービスを活用してもらいたい。
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山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ 山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ
SNSの急速な普及に伴って、Webを介したコミュニケーションツールの多様化が今回紹介したような、エンジニア向けサービス誕生に結びついているようです。今後もこうした動きを随時チェックしながら、ユーザー視点でのメリットを追求していきたいと思います。

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