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世界累計で700万ダウンロード突破!中国App Storeで上位を継続中
Japan Lifeを世界大ヒットさせたNubeeが語る開発秘話
東南アジア圏でメガヒットを続けている「Japan Life」。開発したNubeeは、シンガポールに設立された日系のSAP。企画のスタート時からかかわったエンジニアたちにインタビューし、ヒットの要因を探った。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/宮みゆき)作成日:12.05.15
日本をテーマに選んだのは外国人メンバー
桑水 悠治氏
Nubee Pte.Ltd.
マーケティングマネージャー
桑水 悠治氏

「Japan Life」はホテルやショップ、その他観光施設を運営して収益を上げ、レベルに応じて建物を建てることで魅力的な観光地を作り上げるソーシャルゲームだ。風景や建物、さまざまなアイテムは和風。日本のどこかで見たことのあるような街づくりが楽しめる。このゲームが、中国App Storeで上位を継続し、グローバルで700万のダウンロードを突破するなど、アジア圏を中心に大ヒットを続けている。Nubeeを一躍ソーシャルゲームの世界最前線に押し上げたこの「Japan Life」は、どのようにして誕生したのだろうか。

 この要因を探るべく、シンガポールで活躍するNubeeの開発エンジニアたちに、Skypeでインタビューを試みた。そこから見えてきたのは、グローバル展開を積極化させている国内のSAP事業者とは一線を画す独自路線だった。
「ゲーム会社がつくった組織ではなかったので、従来の開発スタイルにとらわれることなく、柔軟に取り組んだのが奏功したかもしれませんね」
そう語るのは、現地でプロデューサーとして開発メンバーたちを率いている桑水氏である。

 Nubeeをシンガポールに開設したのは、家具のECサイトである「ロウヤ」を運営しているベガコーポレーション。家具のECサイト運営とソーシャルゲーム配信事業の類似性に目を付け、テストアプリケーションとしてiOS/Android向けのゲームをリリースしたところ、わずか3日間で10万ダウンロードを記録したことから、本腰を入れてSAP事業に参入すべく2010年10月にNubeeを設立したのである。シンガポールをヘッドクオーターとしたのは、最初からグローバル市場を見据え、英語・中国語バージョンのゲームの開発を優先したからだ。「Japan Life」は、そんなNubeeがリリースした最初のタイトルなのである。

「例えば、チーム運営。私はすべてのジャッジの権限を持つプロデューサーというよりも、言わばどこにも無い面白いゲームをつくろうとメンバーを鼓舞させる旗ふり役を指向しました。プロジェクト開始時はイメージが固まった企画や仕様がある訳ではありませんから、メンバーから持ち寄られる、一番グッとくるアイデアが採用されていきました。事実、当初に決まっていたのは、スマートフォンをプラットフォームとするシティビルディング系のゲームにすることだけです。
 象徴的なのはテーマ設定です。当初はどこの町をテーマにするか、ベニスやアメリカなどの候補でいろいろと考えていました。ところが、現地雇用の開発エンジニアのJeffreyや他のゲームデザイナも日本をテーマに開発したいと言ってきたのです。日本人にとっては馴染みのある街並みを、アジアの人にとっては憧れの日本の街並みを作る事が出来るので、面白そうだという事でテーマが決定しました。この潜在的な“日本に対する憧れ”をストレートに表現したゲームが、『Japan Life』になったのです」

 と、桑水氏が語るように、役割分担に固執せず、メンバーの意見をどんどん吸い上げる民主的な開発スタイルでなければ、「Japan Life」は「Venice Life」になっていたかもしれない。もしそうだったら、アジア人の日本に対する憧れに応えられていないはずだ。背景となる文化が異なるスタッフたちの中で意見やアイデアの応酬があり、ユーザーの潜在的なニーズを捉えられたことが「Japan Life」が成功した第一の理由と言えるだろう。

Nubee Pte.Ltd.  マーケティングマネージャー  桑水 悠治氏

インターネットコンサルティング会社のSEO担当として手腕を振るった後、株式会社ベガコーポレーションに入社。同社の新規事業である「Nubee Pte.Ltd.」の立ち上げの際に自ら指揮を執り、「Japan Life」等のヒット作を生み出した。Nubee創設の立役者である。

先駆者ゆえの障壁もメンバー全員で克服

 最初にリリースするのは、テーマを日本に置いたシティビルディング系のゲームと決まった。急速に普及し始めたスマートフォンをプラットフォームにすることにも迷いはなかった。現地で採用した開発メンバーは、ゲーム開発経験者ばかり。優秀な通訳もそろえた。
 しかし、開発はスムーズに進んだわけではない。多くのSAPは、それまでガラケーを対象に、HTML+FlashによるWebアプリの開発で次々とヒットタイトルを生んできたが、Nubeeのメンバーたちはスマホらしい表現力を求め、プラットフォームに特化したネイティブアプリとしての開発を選択したことから、参考となるゲームや資料がほとんどなかったのだ。

 何事も、先駆者にはパイオニアならではの苦労が伴うが、その典型例と言えるだろう。プログラマとして参加したJeffrey氏は、開発には新たにたくさんの技術の修得が必要で、全員で集中的に勉強したと述懐する。

「日本のゲームメーカーでの開発経験を持つ私をはじめ、『Japan Life』の開発のために集結したスタッフは、十分な開発経験を持っていたと思います。でも、iPhone対応のアプリケーションを開発するためのツールパッケージであるXcodeや、同様にAndroid上で動くアプリケーションを開発するためのツール群であるAndroid Development Toolsに関しては、誰も経験していません。そのため、初期のころは、それこそ開発メンバー全員で頑張って勉強し、得た情報を共有していました。Xcodeに関しては、開発作業が深く進む前にiOSに詳しいKartaが参加してくれたことで、Xcodeバージョンの作業はよりスムーズになりました。Android対応アプリの開発に関しては、当初は多少の問題があったのですが、現在ではよい方向に向かっています」

Karta Sutanto氏
Nubee Pte.Ltd.
Game programmer
Karta Sutanto氏

 続けてKarta氏は、メンバー全員の意欲が開発を加速させたと言う。
「私は大学時代に、インターン制度を利用してAppleで開発をした経験があります。卒業後は、独自のプロジェクトを立ち上げ、iPhone向けのアプリとゲームを開発していました。そんな私がNubeeへの入社を決めた理由は、浮城社長との面接の中で“世界で一番のソーシャルゲームの会社を目指している”というチャレンジスピリッツに共感したからです。
 実際に入社してみると、同僚となった開発メンバー全員がハイスキルで、ゴール達成意欲が高く、例外なく世界中で親しまれるゲームをつくり上げようという夢を持っていました。だからでしょうか、開発上のさまざまな苦労がそれほど大変には思えない雰囲気でした。少しずつ、確実にゲームアプリができていく毎日は楽しかったですね。アバターが歩き始めたのを画面上で見た時は、ちょっと感動したのを今も覚えています。
 また、開発チームのメンバーの出身国が日本とシンガポール以外にも、マレーシアやベトナム、インド、フランスなどと多国籍であることが、『Japan Life』がヒットした原因の一つだと思います。国籍が違うと視点も常識もセンスも異なります。本当にいろいろな意見やアイデアが噴出します。その中のいくつかはゲーム開発におけるダイヤの原石です。プログラマとしては、そんな数々の魅力的なアイデアを、技術的な面からすべて実装していけるようにチャレンジしていきたいと思っています」

早急なマネタイズよりも多くの人に楽しんでもらうことを優先

 アジア人の心を捉えた日本をテーマにしたゲーム、シンガポールに集結した多国籍の開発陣のケミストリー、新しいプラットフォームへの果敢な挑戦と、「Japan Life」が成功した要因が次々と浮かび上がった。どれ一つ欠けても、成功には届かなかったように見える。ところが話を聞くうちに、ほかにもNubee独自の考えによる戦略で、多くのユーザーを引き寄せた様子が見えてきた。前出のJeffrey氏は、ゲームの構造に高い収益性を求めなかったことが、普及に一役買ったと考えている。

「浮城社長が開発スタッフに求めた理想は、とても高いものでした。まず、シンプルに楽しめるゲームであること。企画が複雑すぎてはいけない、操作が難しくてはいけない、そう何度も言われました。レビューの時は、ダメな部分ははっきりと理由を示した上で、却下されました。ここはこうした方が、より多くの人に楽しんでもらえるはずだ、などと言われることも多かったですね。でも、課金のための工夫についてはほとんど要求されませんでした。目指したのは売上追求型のゲームではなく、純粋に楽しめるゲームだったのです。ゲーム開発者として、仕事に集中できたのは言うまでもありません」(Jeffrey氏)

Jeffrey Chee氏
Nubee Pte.Ltd.
Senior Technical Manager
Jeffrey Chee氏
今後もグローカルな視点でJapan Lifeに続くタイトルを開発

 最後に、桑水氏にNubeeの今後のゲーム開発についての展望を聞いた。
「私だけではなく、開発メンバーはみんな、『Japan Life』はまだまだダウンロード数を伸ばしていくと考えています。ただ、『Japan Life』や、それに続いたいくつかのヒットゲームを通して、アジアを中心に多くのファンを獲得したのは事実。今後は、その膨大なファン層からの高まる期待に、キチンと応えていかなくてはならないという意識は相当高いですよ。そのために、ここ半年でシンガポールスタジオ100名、東京スタジオ30名という開発体制を整えました。

 私たちはアグレッシブな課金はせずに、たくさんのお客様に長くNubeeのゲームを楽しんで頂きたいという思いでゲームを作ってきました。そのため、すでに日本以外の地域においても長くゲームを楽しんでいただいているアクティブなユーザーが相当数います。今のユーザーに次のゲームを紹介する事でランキングも上位を獲得でき、この新しいゲームは毎回必ず良いスタートが切れます。Nubeeはまだ始まったばかりの会社ですが、この海外ユーザー数という点において圧倒的なアドバンテージをもっており、そのポテンシャルを信じて開発を行なっています。あとは、本当に面白いものをどんどんリリースしていきたいと思っていますので、私たちの姿勢に賛同いただけるエンジニアやクリエイターの参加を心よりお待ちしています。

Japan Life
Japan Life

 まだまだここでは紹介し切れないほど、他の大手SAPと異なるたくさんの特長を有するNubee。ゲームエンジニアにとっては、常に目が離せない企業と言えるだろう。

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