超こだわりの“一筋メーカー”探訪記 この分野なら任せなさい! |
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缶詰一筋89年!
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7種類のおでんがたっぷり!5代目の「こてんぐ」
リニューアルで変わるおでんの具材、見込み違いも?
おでん缶「こてんぐ」。左が「牛すじ大根入り」、右が「つみれ大根入り」
「今、おでん缶の『こてんぐ』は5代目なんです。私は3代目から担当していますが、中の具材はかなり変わっていますよ。味付けも同様です。例えば、4代目にがんもどきを入れたのですが、5代目では外しました。売れなかったんです(笑)」
アキバで人気のおでん缶を開発しているのは、天狗缶詰株式会社の市古政幸氏と、彼の部下の女性のたった2人。というより、同社の新製品開発はこの2人が担っている。
おでん缶には通常の「こてんぐ」に加えて、賞味期限3年保証の「災害・備蓄用」、5年保証の「長期保存」がある。基本的な中身は同じで、「さつまあげ」1個、「三角こんにゃく」の串刺し1本、「結びこんにゃく(しらたき)1個、「ちくわ」1個、「うずら卵」2個、「大根」1個に加えて、「牛すじ大根入り」は「牛すじ」が2個、「つみれ大根入り」なら「つみれ」が2個加わる。
「おでん缶はホットベンダー(加温できる自動販売機)で売られる場合もありますよね。缶を長時間加温するとその高い温度で繁殖してくる菌もありますから、菌を抑制する資材(具材や調味料など)選び、検証を重ねています。販売先にも一定の期間で新しいものに交換するようお願いしていますから、品質はご安心ください(笑)」
品質管理から開発専任になった「缶詰の技術者」
天狗缶詰株式会社 |
市古氏が高校卒業後に進学したのが、「日本で唯一の包装容器及び容器詰め食品のプロを育てる」という東洋食品工業短期大学。「缶詰の技術者」を育てる大学でもあり、卒業後に天狗缶詰に入社した。今年で19年目になるベテランだ。 |
初代の発売は1985年、リニューアルの試行錯誤が続く
社内の情報共有と業務管理は、していなかった?
災害・備蓄用のおでん缶(3年間常温保存)
今年8月に発売された、5年間の長期保存ができるおでん缶
市古氏によれば、開発部門が立ち上がってから業務の進行が次のようになったという。
顧客や営業部門から開発の依頼がくると、その内容は社内システムで共有され、社長や部長などの管理職が案件を決裁する。許可された案件については、様式に沿った書類が作成され、スケジュールが組まれる。そして、具体的な開発が始まる……。
これって、とっても当たり前の業務プロセスではないのか?
「それまでは注文が入るとメモ書き程度で書類をつくり、その場その場で対応していました。まあ、勝手にというとあれですけど(笑)。開発が増えてきたので、システム化されたんですね」
そんな市古氏がおでん缶を担当したのは「3代目」から。その話の前に、おでん缶の歴史を簡単に見ていこう。
初代のおでん缶が生まれたのは1985年。195gのジュース缶の中に、「さつまあげ(串刺し)」1本、「三角こんにゃく(串刺し)」1本、「ちくわ(串刺し)」1本、「つみれ2個+うずら卵1個」(串刺し)1本が入っていた。
おでん缶が誕生に至った経緯とは?
「う〜ん。当時の担当者がもういないので、ちょっと……」
3代目から3種類を発売、4代目には「がんも」にチャレンジ
市古氏と共に開発を担当する女性 品質検査室 |
リニューアルした2代目は1993年の発売。1990年に串刺しを三角こんにゃくだけにしたマイナーチェンジの後で、290gの「7号缶」にしてボリュームをアップさせ、「さつまあげ」2個、「三角こんにゃく(串刺し)」1本、「三角こんにゃく」1個、「ちくわ」1個、「うずら卵」1個とした。さらにイージーオープンの蓋を採用した。 |
現在の「5代目」が完成!備蓄用に長期保存できる製品も
さつまあげを減らして、うずら卵を増やす……なぜ、今ごろ?
「『がんも』は挑戦だったんですけどね、人気が出なかったんですよ。それと、昆布がね。缶の内側に貼り付いてしまうことが多くて、入っているかどうかもわからないことも……。で、5代目からはこの2つは外しました」 |
品質検査を行っている缶詰の材料 |
つくって終わりではなく、「賞味期限」との闘いが続く
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その後、中身は変えずに3年間の常温保存ができる「災害・備蓄用」が、今年8月には5年間の「長期保存」が発売された。ただ、5年へと保存期間を延ばしたことで、新たな問題も出てきた。 |
加熱殺菌の熱がおでんを変える、ぎんなんは使えない……
カレー味、洋風味、味噌味など、おでんの味付けを検討中
今後のおでん缶について市古氏は、さらなる備蓄用の開発を考えており、新しい味付けのテストもしているという。その味は、カレー、洋風、味噌などだそうだ。開発の壁となっているのが、保存期間の長い缶詰に欠かせない「加熱殺菌」。 |
加熱殺菌を行う殺菌装置 缶をいくつも並べて入れる、殺菌装置の内部 |
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超こだわりの「一筋メーカー」探訪記
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