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リストラ、提携、再編成、技術の空洞化…復活への提言

製造業

製造業はどうなる?
   メーカー技術者400人の声・後編

「製造業はどうなる?メーカー技術者400人の声・前編」に続いて、アンケート結果の後編を発表する。日本のモノづくりの中核を担ってきた彼らは、「今の製造業」をどう見ているのか。

(取材・文 総研スタッフ/高橋正志) 作成日:12.10.17

4割以上が「製造業は日本の主力産業でなくなる」と予測


日本の製造業に勤務するエンジニア400人にアンケートを実施した。内訳は「回路設計」「半導体設計」などの電気系職種が200人、「機械設計」「プロセス設計」「生産技術」などの機械系職種が200人だ。業界別では「自動車」「家電」「機械」「その他」で各100人、年齢は20代と30代で200人ずつとした。
前回の「製造業はどうなる?メーカー技術者400人の声・前編」で見たように、今後の製造業について現場の技術者は、4割以上が「下降を続けて日本の主力産業でなくなる」と予想している。

製造業で「消滅していく分野」は「AV家電」「半導体」…「自動車」も?


では、どんな分野が主力産業の座から降りていくのか。「日本の製造業で『消滅していく分野』は?」との質問に、フリーアンサーで答えてもらった。
飛び抜けて多かったのが「AV家電」で180票。「家電」や「デジタル家電」などと書く人が多かったが、製品名では「テレビ」が最も多くて98票。2位の「音響機器」と「DVD」がわずか2票なので、「テレビの消滅」をリアルに感じているのだろう。

2位は「半導体」(57票)。国内半導体メーカーの衰退を考えればうなずけるが、3位に「自動車」(50票)が入った。そして、この「自動車消滅」を特に強く感じているのが、クルマの基幹部分を担ってきた機械系エンジニアなのだ。57票中の33票が彼らの票だ。
同じ傾向は「半導体」にも見える。半導体開発の中核職種である電気系エンジニアが、50票中の8割となる41票を投じている。どちらの職種も、自分たちが主役の製品・産業が消えていくと考えているのだ。

自虐的とも取れる。だが、機械系職種はガソリン車では主役でも、EVが普及すれば活躍の場は減る。そんな予測が票を投じさせた可能性もある。一方の半導体は参入メーカーが少なく、そのコアな情報に触れる機会が多いのは電気系職種のはず。そんな彼らの強い実感が投票数を伸ばしたのかもしれない。

製造業で「生き残る分野」は「自動車」、B to B型の産業に期待か?


逆に「日本の製造業で『生き残る分野』は?」という質問もしている。圧倒的な1位が「自動車」で、半数以上の206人が挙げている。そのうち20票が「電気自動車」や「ハイブリッドカー」などのエコカーと記載した。自動車が「消滅していく」としたのは機械系エンジニアに多かったが、「生き残る」と考えたのも機械系に多く、110票だった。

2位は「精密部品」(44票)。ここには「高精度金型」「センサー」「計測器」「高耐圧デバイス」「電子制御部品」「モーター」「MEMS」などを含めた。3位は「精密機器」(36票)で、その通りに「精密機器」と書く人が多かったが、製品名では「カメラ」が14票と多かった。
どちらも電気系からの票が多く、「精密部品」は28票、「精密機器」は19票だった。

このようにランキングを見る限りでは、B to C型の製品は「自動車」と「カメラ」くらいだ。これら以外は、サプライヤーやマザーマシンのメーカーといった、B to B型の産業ばかりなのだ。
一般消費者には知名度が低くても、協業先や納入先の企業から厚い信頼を得ているB to B型メーカーは今でも日本に数多い。今後はこの傾向が産業全体に広がり、「ジャパンブランド」は裏方として技術力を発揮していくのだろうか。

現場のエンジニアが提言!ジャパンメーカー復活への秘策

製造業復活のためには「選択と集中」「政策支援」「経営努力」…


アンケートの最後に、「日本の製造業が復活するためには、一番何が必要だと思いますか?」という質問をした。いわば復活のためのアイディアだ。これらを編集部でカテゴリーに分けると、「得意分野への選択と集中」が80票でトップとなった。具体的な回答は以下のようなものだ。

・完成品の組み立てなどは他社に任せられるので、中核となる部品に高性能なもの、新しい素材を開発し、部品単品での性能強化が必要だと思う[20代後半:機械系職種:機械業界]。
・自動車や家電のように汎用+付加価値という分野はマーケティングに注力することが重要だが、付加価値のない低価格なものでは勝てない。「特殊性や高精度で勝負する」「他国が真似できない分野を伸ばす」「新分野の開拓」が肝要[30代前半:電気系職種:機械業界]。
・上級志向のハイエンドモデルと、過給・大衆向け低スペック低価格製品の、生産の割り振り、見極め[20代後半:機械系職種:家電業界]。
・「Made in Japan」をもっと強調して海外へ売る。日本人は日本製がブランドであることを自覚していない。何のために中国の富裕層が日本製品を日本まで買いに来るのか[20代前半:機械系職種:その他業界]。
・職人といわれる伝統的な技を残していき、そこから新たな分野に活かしていけばよいのでは。小さい製造企業に着目するのもよいと思う[20代後半:機械系職種:機械業界]。

2位は「国の政策支援」で57票。中でも「円高の解消」(19票)と「減税・税制優遇」(16票)が多かった。

・リーマンショック後のマネーサプライを欧米並みの比率で増やして円高を解消、法人税率ダウンなどの政策実行、海外での官民合同によるインフラ物件の受注活動[30代後半:機械系職種:その他業界]。
・少子化対策および現役世代の負担減。実需増と購買意欲の向上による景気回復が望まれる[30代前半:機械系職種:その他業界]。
・派遣制度を廃止して正社員を増やすことで、事業の取り組みを専念化させる。「ALL JAPAN」を意識させるように、海外向けの外販に力を入れる。内需拡大は高齢化社会で難しい[30代後半:電気系職種:自動車業界]。
・国債発行→公共投資→国内生産増加→賃金アップ→雇用増加→デフレ脱却[30代前半:電気系職種:その他業界]。
・国内企業の統廃合と政治的な優遇(韓国と同様)[30代前半:電気系職種:家電業界]。

3位は「経営努力」(31票)。具体的には「経営者のリーダーシップ」と「組織改革」が多かった。

・トップダウンで経営判断するカリスマ経営者[20代後半:電気系職種:家電業界]。
・経営陣の柔軟性。コストカットやリストラばかりじゃダメ[20代後半:機械系職種:家電業界]。
・早い決断力と実力主義[20代前半:電気系職種:家電業界]。
・自分の会社では部門単位の成果制度があるため、開発部門、品質部門、保守部門などの連携が悪い。状況に応じた流動性を持たせることが、まずは大事だと思う[20代後半:電気系職種:家電業界]。
・モノづくりの組織を変える。大勢の合議制ではなく、少数精鋭で企画する製品開発が必要[30代後半:電気系職種:自動車業界]。
・技術者の待遇向上。本当にクリエイティブな製品やその製造を行う人々の評価をもっと適正なものとし、製造業の中堅層のモチベーション向上を図る[20代後半:機械系職種:自動車業界]。

「技術者であること」に誇りを持つ人が9割!これこそが復活のカギだ


こうしたアイディアとともに救いがあるのは、技術者が技術者であることに誇りを持っていることだ。「現在の職種に満足していますか?」という問いに約8割の人が「満足」と答え、「別の技術職になればよかった」を含めると、約9割の人が技術の仕事を大切に思っているとわかる。
製造業に携わる、そんな彼らに期待したい。

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