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スマホ急増、クラウド、ビッグデータ…

1年間で激変!
Web業界VS SI業界の採用トレンド

変化のサイクルが早いIT業界の採用市場。その中で今回は特に変化の激しいWeb系とボリュームゾーンの多いSI系におけるエンジニア中途採用のニーズやトレンドのここ1年における大きな変化について、専門家に聞いてみた。

(総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:12.04.18

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株式会社リクルートエージェント
リクルーティングアドバイザー兼テクニカルアドバイザー
大月 英照氏

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株式会社クライス&カンパニー
ゼネラルマネージャー
シニアコンサルタント
半藤 剛氏

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サーチファーム・ジャパン株式会社
常務取締役
篠原 光太郎氏

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Web・モバイル業界エンジニア採用トレンドの、この1年における変化とは?

SAP企業の増加によって引き続き採用ニーズは拡大中。高待遇だけでなく、福利厚生の充実に力を入れる傾向が


以前から中途採用市場全体を見渡しても、特に採用ニーズの動きが活発だったWeb・モバイル領域のエンジニア採用だが、去年から今年にかけてその動きはさらに活発化しているという。その原動力となっているのは、SAP(ソーシャル・アプリケーション・プロバイダー)企業だ。
「以前からソーシャルゲーム向け大手プラットフォーマーが積極的にエンジニア採用を展開していましたが去年の春以降、スマートフォンの急速な普及に伴ってSAP企業もまた急速に増えたため、結果的に採用ニーズが1年前よりさらに拡大しています」(大月氏)
しかしその一方、エンジニアの採用基準などの「採用の質」に置いても、1年前と比べて変化してきているという。それはプラットフォーマーやSAP企業問わず、大手とベンチャーでその内容が異なってくる。

まず大手の場合、職種の細分化・専門化が進んでいるという。
「従来のアプリ開発という大きな枠組みによる採用からデータ分析、品質管理やクライアントアプリ開発などより専門的な知識や経験が求められる職種が増えてきました。その理由として考えられるのは、スマートフォンの普及でUIやHTML5・グラフィックなど開発側の立場からできることが増えたこと。そのため各社、独自の付加価値を付けていくことで差別化を図っていく必要に迫られていることが、採用職種の細分化につながっているのだと思います」(篠原氏)
またベンチャー系の場合は逆に少数精鋭のため、開発者一人に対する責任が重く、アプリからインフラ領域まで、ある程度一人で対応しなければならないケースも多く、それが採用のハードルを上げている。

こうした変化によって、企業側・応募者側にとって採用のハードルが昨年に比べてさらに上がっているという。その打開策として、大手を中心とした採用企業側がここ1年で特に力を入れるようになったのが「福利厚生の充実」だ。
「これまでは給与や賞与といった報酬を高く引き上げることで優秀なエンジニアを一人でも多く採用しようとする傾向がありましたが、最近では『ランチ無料』『家賃・PC購入補助』『より交通の便が良い一等地に勤務地を移転』など福利厚生の充実を図ることで、応募者側に対してより長く、安心して活躍できる環境を構築し、アピールする企業が増えています」(大月氏)
またさらに一部の企業では、社内にWebエンジニアを育成するための学校を作ることで未経験採用を拡大させたり、女性エンジニアや外国人エンジニアの獲得に力を入れるなど、採用対象をできる限り広げることで採用ハードルを下げる努力を続けている。

SIからWeb・モバイルへの転職の動きがさらに活発化&Javascriptの流行で経験者の市場価値アップ

そしてもうひとつ、大きな変化として表れてきているのが「SIからWebへの転身」を図るエンジニアがこの1年で、さらに増加しているという点。
「もともとSIのエンジニアの中には、自分で作ったものを形として世の中に出したいという思いや、多くの方々に使ってもらえるシステムを作りたいという思いをお持ちの方も多く、最新技術に対するアンテナの高い方々と合わせて、Web系の企業に対して興味・関心をお持ちの方は少なくありません。またWeb系の企業も基盤系の領域を強化する動きがあるため、特に基盤系・プラットフォーム領域の開発経験のあるSI出身のエンジニアを採用しようとする動きがこの1年で目立ってきました。その結果、SIからWebへの動きがさらに活発化しています」(半藤氏)
また先ほど紹介したように、これまでのWeb業界は「とにかく報酬が高い」というイメージが先行していたが、福利厚生の充実によって従来のSI企業に負けないほど「長く安心して活躍できる」イメージが浸透してきたことで、これまで躊躇していたSI出身エンジニアがWeb系に踏み出したことも大きいという。

さらにWeb系で現れたこの1年における大きなトレンドとして挙げられるのが、「Javascript」の流行&「分析スキル」の採用ニーズ上昇だ。
「これまでJavaやPHP、Perlなどの言語が採用条件として圧倒的多数を占めていましたが、昨年あたりからJavascript経験者の採用ニーズが高まってきています。その理由としては、iPhoneやAndroid、HTML5などあらゆる環境に柔軟に対応できるJavascriptの特性が注目を集めたことが大きいですね」(大月氏)
「ビッグデータを活用しようとする動きがこの1年で活発化してきた影響から、データマイニングなどの分析スキルを有するエンジニアの採用ニーズが大きくなってきて、今後その動きはさらに加速していきそうです」(篠原氏)

このように昨年からのここ1年を切り取ってみても、これだけ大きな動きが起こっているWeb・モバイル系。特にスマートフォンの普及によってデバイスに大きな変化が生じると、その影響を特に大きく受けやすいのがエンジニアの中途採用市場だ。だからこそ、その動向には常に注目していく必要があると言える。

SI業界エンジニア採用トレンドの、この1年における変化とは?

「金融」「通信」「自社開発企業」など特定のジャンルで、採用ニーズは大きく上昇中


Web・モバイル系に比べるとリーマンショック以降、これといって大きな動きが見受けられなかったSI業界。しかしスマートフォンの急速な普及で採用ニーズがさらに高まったWeb系と同じく、SI業界でもスマートフォン向けのアプリ・システム開発ニーズがこの1年で少しずつ高まってきているという。
「例えばこれまでフューチャーフォンで可能だった金融機関の振り込みなどのサービスを、スマートフォン対応させるための『B to B to C』案件が増えてきています。その影響から、特にパートナー企業であるSI企業の採用ニーズは今年になって増えているようです」(大月氏)

また大月氏が例で挙げた金融系を中心に、特定のジャンルにおいて昨年から引き続き、採用ニーズは安定していると半藤氏は語る。
「最近社会問題となりつつある、通信障害に対応したシステム開発案件の増加もそのひとつ。スマートフォンの急速な普及により、通信キャリアはインフラ整備のための設備投資を拡大しています。安定したサービスを提供できるか否かは、今や企業の存続問題にもつながりかねない重要なテーマになっています」

その一方、別の視点からSI業界における採用ニーズの明暗が分かれていると、篠原氏は指摘する。それは「自社開発している企業と、そうでない企業」だ。
「ワンストップで開発できる高い技術を持つ自社開発企業の場合、受託企業に比べて開発案件の変動の波に影響されず、新しいサービスを開発するニーズが常にあるので、採用も継続してあります。特にSIでもWeb系企業の社風に近い新興企業はここ最近、特に高待遇を売りに採用を活発化させていますね」

マネジメントは管理より推進スキル、自分で開発できる技術力がより求められる傾向に

このように採用ニーズの数の面における変化は、特定の領域において昨年に比べて少しずつではあるが増加傾向にある。その一方で「採用の質」の面に注目してみると、そのひとつの動きとして先ほどの「SI→Web」への動きと逆の、つまり「SI企業が、Web系のエンジニアを採用しようとする動きが生まれている」と、大月氏は指摘する。
「SIでもスマートフォン向けのシステム開発が活発化してきたことで、モバイル向け開発・インフラ系エンジニアを採用しようとする動きはここ最近、少しずつ出てきていますね」

またもうひとつ、変化のポイントとして挙げられるのは特にマネジメント・リーダークラスの採用における、応募者に求める条件・スキルの変化だ。
「もともとSIではマネジメント・リーダークラスの採用ニーズは高めに推移しているのですが最近、そのマネジメントの具体的なスキルレベルとして単にメンバーやスケジュールを『管理』するレベルから、プロジェクトの立ち上げから戦略、課題改善提案から実現に至るまでプロジェクト全体を『推進』できるレベルがより強く求められる傾向にあります」(半藤氏)
「マネージャーと言えども、自分で開発できる技術力が求められる傾向がここ最近、特に強まっていますね。例えばインフラの負荷分散プロジェクトをマネジメントする場合でも、きちんと負荷分散の技術を理解した上で、そこに特化したマネジメントが求められるため、一通りの技術を理解したマネージャーが必要なのです」(篠原氏)

このように一見、変化があまり生じていないと見られているSI業界においても、厳しい経営環境の中で各社生き残りをかけて、これまで以上に他社との差別化を図る新しい事業や、開発難易度の高いニッチな領域への進出、また海外展開といったテーマに必死で取り組んでいる。当然、その中で求められるエンジニアのスキルはより専門的なレベルであったり、マネージャーでも自分で開発できる技術力を求められたりと難易度は上がっていながらも、採用ニーズは着実に高まってきているようだ。

そこでWeb・SI問わず、まずは自分の市場価値がどう評価されるのかを確認することで、今の自分に足りないスキルは何か、逆に自分を高く評価してくれるスキルは何かを理解した上で、今後のキャリアを考えてみてはいかがだろうか。

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