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「自分の役割」を演じて、職場の中での「評判」を高めよう

異動を変えろ!
人事を有利に導くエンジニアの基本術

4月は異動の季節。希望する部署に行けた人もいれば、「なぜここに……」と嘆いている人もいるはず。その人事、少しでも自分の有利に進めたいと思いませんか? ましてその行為が自分を高めるものだとしたら、やってみる価値はありますよね?

(取材・文・撮影 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:12.04.12

評価ではなく「職場での評判」が人事を左右する


株式会社HRアドバンテージ
代表取締役社長
相原孝夫氏

大抵の会社は4月に「異動」がある。エンジニアだって同じこと。密かに希望していた部署に行ける場合も、意に沿わない部署を指示される場合もある。しかし、多くの人は「自分ではどうにもならない」、あるいは「頑張っていればいつかは報われる」と考えていないか。本当にそうだろうか。
「異動はほとんど人事部が決めますね。このとき、彼らは情報を集めて各人の『人となり』を見ようとします。同じ部署の上司、同僚、周辺の関係者、社内公募制なら異動を希望している部署の人たちから、『評判』を聞くのです」

こう語るのは、組織や人事のコンサルティングを行うグローバル企業、マーサージャパン株式会社で副社長を務めた相原孝夫氏だ。『会社人生は「評判」で決まる』(日本経済新聞出版社)の著者としても知られる。
同書にもあるが「評価」と「評判」とは似て非なるもの。評価とは金額や件数、プロセスなどを基に点数が付けられたデータだが、評判とは周囲からの主観の集合体であり、人間的な情報である。例えば、「技術力はチームトップで、年間の案件数も多い」が評価なら、「自分勝手な性格で人望がない」が評判になる。いくら仕事ができても人望がないエンジニアを「ぜひうちに」と誘う部署があるだろうか。
このように評判は異動の判断の基になるものであり、ネガティブな情報が出てしまうと人事の可能性を逸してしまう。

「会社の規模が大きくてもエンジニアの場合は、普段接して仕事をするチームは小さいことが多いと思います。5〜10人という場合も少なくないはず。少人数であればあるほど、周囲の発言の影響が大きくなるものです」
そして、昇給や賞与などの基準となる評価が短期的な指標であるのに対して、評判は長期的に形成されていく。このことを相原氏は、部下に好かれる「やさしい上司」と部下に厳しい「鬼上司」を例に説明する。この2人のマネジャーが新しい部署に異動したとしよう。

「多くの場合、やさしい上司は最初の評判はよいものの徐々に下がっていき、鬼上司は最初は皆に嫌がられても評判はしだいに上がっていくものです。なぜなら、やさしい上司はやさしいがゆえに当初は好印象を持たれますが、しだいに優柔不断など弱い部分が明らかになり、鬼上司は逆に、厳しくする真意が部下に伝わっていくからです。このように『評判のよい人』はすぐには生まれません」

評判を上げるには、自分の役割を理解し、演じ切る



では、どのようにして評判を上げていくのか。
「評判を上げるためには『自分の役割』を演じ切ることです。顔色をうかがって周囲に合わせる必要はありませんし、むしろ逆効果。そもそも企業の本質は社会のニーズを満たすことであり、会社員の本質は企業のニーズを満たすこと。そのために一人ひとりに役割が与えられているわけですから、自分の役割に徹することが評判を上げるのです」

チーム内でポジションが違えば役割も異なる。新人ならば下働き的な仕事をやり抜く、サブリーダーであればメンバーをまとめてリーダーの補佐役に徹するなどだ。このように主にポジションによって役割は違ってくるのだが、この役割を勘違いしてしまうとミスマッチが評価を下げる。
「日本の企業では個々の役割を明確にしていないケースもあります。例えば、マネジャーの仕事を『部下の育成』と考える人がいれば、本来なら会社が『部下の育成は業務の3割』などと伝えるべきなのですが、なかなかできていません。それでも、日々のプロセスの中で考えれば気付くはずですし、上司との話し合いの中でメッセージは出ているもの。迷ったら上司に聞いてもよいと思います」

また、評判をよくするためには「態度」も大切な要素となる。業績のよい人は周囲に横柄な態度を取りがちになるから、謙虚さを保つ。リーダーやサブリーダーは部下にご機嫌を取りすぎず、かといって高圧的にもならない。
「中間管理職の立場は確かに難しいのですが、上司と部下とのバランスをうまく取ることが大切です」
今の職場での評判を上げることが、望む部署に行くための前提になる。しかも、評判を高めれば周囲との信頼関係が生まれ、上司からは頼りにされ、会社からは将来を期待される。それが社外に伝わればお客さんからも一目置かれ、新しいネットワークも生まれる。このような状態で仕事がうまくいかないはずもない。

いきなり「営業に行け」との異動が決まったら



異動での悪いパターンを考えてみよう。あなたが希望しない部署への異動が決まった。例えば営業職だ。学校での専攻が理系学部で技術職を志望し、当たり前のようにエンジニアになったあなたなら、「冗談じゃない!」と怒るだろう。だが、一度決まった人事は覆らない……。
しかし、多くの好業績者(ハイパフォーマー)に取材を続けてきた相原氏によれば、彼らには「向いていないと思っていた仕事」に就いている人が少なくないという。
「予想外の異動があるのがサラリーマンの面白み。そう考えたらどうでしょう。新しい職場で『自己の再発見』があるかもしれませんし、大手企業に顕著ですが、あえて未経験の仕事を経験させる会社もあります。以前の職種に戻るために転職する人もいますが、割り切って2〜3年は続けることをお勧めします」

新しい仕事が気に入るかもしれないし、マネジャークラスになると広い範囲の仕事を見る必要が出てくるので、将来にはプラスになるかもしれない。先の営業職への異動を例とすれば、顧客の話を直に聞くことで気付けなかった改良点が見つかるかもしれないし、コミュニケーション力を磨くまたとないチャンスともなるだろう。ちなみにこのコミュニケーション力は、エンジニアにとってかなりの武器になりそうだ。

相原氏によれば好業績者、特に技術職の好業績者に共通しているのはコミュニケーション力が高いことだという。特にマネジャークラスに多いそうだ。
「技術的に質の高い製品を納期までに仕上げる。これができれば、エンジニアはコミュニケーション力がなくてもよいとする風潮もあるのでしょうが、間違いです。それは甘えであり、自分で可能性を狭めているのです。天才的なスーパーエンジニアなら許されても、そんな人はまずいません」

 

嫌いな部署からの脱出も社内公募も「評価」がポイント




ただ、どうしても異動先の仕事が合わない、違う部署に行きたいと感じたらどうするか。そのときは新しい部署で、少なくとも平均的な実績と高い評判を上げて、「発言力」を高めることだという。
「上司や同僚は仕事ができない人の話は聞きません。しかし、評判が上々であれば耳を傾けます。そうなったら元の部署に戻りたいなどのアピールができますし、組織で生きるためには適応力も必要ですから、そのスキルを見せるチャンスにもなります。ただ、ある程度の評価は必要ですから、仕事で平均的な実績は残さないと難しいでしょう」
あえて仕事をさぼって「あいつは不向きだ」と思わせ、元の部署に戻してもらうという方法もないではないだろう。しかし、その会社での評価はぐんと下がってしまう。望む仕事もできなくなり、将来も期待されなくなる。いちばんやってはいけないのが「不貞腐れること」だと相原氏は語る。

あなたが、今いる部署から新しい部署に移りたいと思っているとしよう。そして会社には社内公募制やフリーエージェント制といった、異動を希望できるシステムがある。
「そんな場合は中長期的な展望をアピールしたいですね。自分が先々まで利益を生み出せること、会社のメリットになることを主張するのです。その部署の現状、業界の中での位置づけ、将来性、自分の勉強、提案などを述べて『本気度』を見せましょう」
希望する部署以外の、他部署の人たちとコミュニケーションを取っておくのも有効だという。さまざまな情報が入手できるし、積極的に行動すれば効果的な評判が形成されやすくなる。他のプロジェクトや技術分野に関心を持ち、そのチームの人たちと活発に議論をするエンジニアに、かかわる人はもちろん人事部も好印象を持つものだ。
また、その部署の部長クラスに直接アピールする機会は少ないだろうから、その下にいる先輩クラスの「影響力のある人」に相談して、自分の意思を伝えておくのがいいだろうと相原氏。

「いわば根回しですが、否定的に考える必要はありません。実際、ちょっとした根回しがないために人間関係がぎくしゃくする場合も多くあります。何より本気で異動したいのなら、できることはすべてやっておくべきです」
異動の時期、当然ながら全員の希望がかなうはずもない。行きたい部署に行けないのが普通なのだ。まずは今の職場で精一杯努力すること。そして役割を果たして評判を上げること。
「ひと言で言えば『貢献度高く働く』ということです。これは組織の中で可能性を広げるための行為であり、逆をすれば可能性をつぶしてしまう。社外においても同じことが言えると思います」

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