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全国各地のWeb開発者の勢いを取り込み、今年も元気よく開催されたマッシュアップアワード。その総決算にあたる最終審査会が、12月、品川のホールに突如出現したボクシングリング上で開催された。会場の熱気をレポートする。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:12.01.10
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マッシュアップアワード(Mashup Awards:以下、MA)は、リクルートの実証・研究機関であるメディアテクノロジーラボ(MTL)が主催する、Webエンジニアの祭典。協賛各企業から提供される複数のAPIを組み合わせて開発された新しいWebサービスを、企画、アイデア、技術の側面から審査・評価するコンテストだ。今年は7年目(MA7)を迎えた。
Webサービスやアプリケーションの内部では、オープン仕様・独自仕様を問わず、多くのWeb APIが利用されている。Webアプリケーション開発者にとって、これらのAPIを活用した設計・実装は必須の技術だ。そのスキルを磨くと同時に、コンテスト作品づくりの過程で、開発者同士の交流を深めるという狙いもある。
今回は全国規模で予選会を開催し、地方の開発者の活動をサポートしたことが特徴の一つ。全国からの応募は500件に達した。米国でも予選会を開き、受賞作品の中に海外からの応募作品も並ぶなど、グローバルを意識させるイベントでもあった。もう一つの特徴が女性エンジニア・クリエイターの参加。最近、注目が高まる女性ITコミュニティ(IT女子会)がグループや企業の壁を越えて、AKB48ならぬ「MUP48」を結成し、イベントを盛り上げた。
技術的にはソーシャルグラフの活用、スマートフォン・タブレット向け作品の充実が目立った。また、23件の震災復興支援サービスがエントリーするなど、「震災・復興に際して技術者ができることは何か」という意識が強く表れたのも今年の特徴だ。
3カ月に渡る長丁場のイベントの集大成として、12月11日には、約200名の参加者を集め、東京・品川グランドホールで、最終審査会・表彰イベントが開かれた。全国規模で開催される予選会を勝ち進んだ作品が授賞式当日の最終審査会にノミネートされる審査方式「Mashup Battle」は新しい試みだ。 会場中央には本物そっくりのボクシングリングが設営されている。リングアナウンスと共に「選手」入場。500の応募作品の中から選ばれた最優秀賞ノミネート5作品の最終プレゼンテーションがリング上で行われた。それを評価する審査員は、イベント協賛のパートナー各社から来た10名だ。グランプリの賞金は100万円。作品のコンセプトや技術だけでなく、当日のプレゼン内容も評価の対象になるという。 結果的に最優秀賞を獲得したのは、「ミブリ・テブリ -QUIZ kinect-」という作品だ。マイクロソフトのKinectでプレイする◯×クイズゲームで、体を使ったジェスチャー・インターフェイスの可能性を感じさせた。
開発にあたったのは、福井県越前市に本拠がある株式会社イグノートのエンジニアたち。
中西氏は、業務としてはWindowsの業務アプリ開発を手掛け、個人的にはiOSアプリ「むげんメモ」などを開発してきた。最終プレゼンでは、福井予選を共に闘ったエンジニア仲間たちとのWeb会議の接続が失敗してしまったが、これも愛嬌。転んでもただでは起きないフォローが会場を沸かせ、審査員に好印象を与えたようだ。
【優秀賞】
「alarm everyone」
「engraph for Android (BETA)」
「smoon」 |
最優秀賞の
「ミブリ・テブリ -QUIZ kinect-」
株式会社イグノート 代表取締役
中西 孝之氏 |
今年の「Tech総研賞」は、モンブランサックスの「tipshare.info」(http://tipshare.info/)を選んだ。エンジニアが開発時に役に立ったTipsを投稿し共有するサイト。 ブログに書く時間が取れない人でも簡単に投稿することができ、また、ハッシュタグをフォローすることで、自分の関心のあるテーマのTipsを定期的に知ることができる。Evernote APIを用い、Tipsの個別ページよりEvernoteにTipsをクリップできるようにする機能もある。
モンブランサックスは、田中弘治氏(株式会社ダイレクトサーチジャパン代表取締役/元ヤフーの企画担当・37歳)と市川快氏(株式会社エイゾク代表取締役/元日立製作所の研究者・32歳)らのユニット。開発コンセプトなどを次のように語っている。
Tech総研賞を受賞したモンブランサックスの市川快氏(左)と田中弘治氏(右)
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受賞者たちをリング上に案内するエスコート役を務め、「こんなに女性の多いエンジニア・イベントは珍しい」との声も聞こえるほど、会場の雰囲気を盛り上げたのは「MUP48」のチーム。自ら「MUP48賞」を設けてエンジニアの取り組みをサポートした。受賞作品は、一日一枚、印象的な瞬間を写真におさめてカレンダーに残すiPhone用の思い出共有アプリ「My365」(My365 Project Team)だ。
MUP48事務局の岩根敬子氏(リクルートMTLプランナー)は、 MUP48のメンバーは現在65人ほど。MA7のサポートを通して、結束力が高まった。来年のMA8ではこの中から応募作品が生まれるかもしれない。今後は、ソーシャルメディアを使ったキャリア形成など、毎回に気になるテーマを設定して、ゲストを呼び、メンバーがライトニングトークするなどのイベントを2カ月に一回程度開催していきたいという。 海外からの参加が多かったのも、今回の特徴だ。10月には、初の海外の開発者向けイベントとなる「MA7 Ninja Challenge Palo Alto」を米国カリフォルニア州・パロアルトで開いた。日本市場へのWebアプリ、Webサービス事業展開に関心のある米国の開発者・スタートアップ企業が自社サービスをプレゼンテーションする機会。発表した10社のうち評価が最も高かった「Dolphin Browser」は、MA7最優秀賞に向けた一次予選のシード権を獲得し、協力企業賞の一つ「Evernote賞」を受賞した。
授賞式に合わせて来日した「Dolphin Browser」の開発企業、Mobo Tap Inc.のゼネラル・マネージャー、タック・チェン氏はこう語る。
授賞側企業の一人として会場にいた、Evernote Japanの外村仁会長は、 |
リクルートMTLプランナー
岩根 敬子氏
Mobo Tap Inc. ゼネラル・マネージャー
タック・チェン氏
Evernote Japan 会長
外村 仁氏 |
MA7のオーガナイザー
リクルートMTL・チーフアーキテクト 川崎 有亮氏 |
今回は初の海外開催としてパロアルトでイベントを開いたが、70人以上のエンジニアが集まり、マッシュアップ技術と日本市場への関心の高さがうかがえた。その勢いが、東京での授賞式にも持ち込まれた。日本はモバイル・インターネットの技術では最先進国と評価されている。世界に注目されているということを日本の技術者も忘れず、これからはどんどん世界に飛び出していってほしい。今回は100作品が作品説明を英語でも書いている。グローバル市場を意識した一つの傾向だ。 MAの全体を通して、優れた技術を人に伝える力を高めることを目標としてきた。今回も、プレゼン作品に対して、みんながコメントを付け合うという仕掛けを工夫した。それらを通して、エンジニアのプレゼンテーションスキルも次第に高まってきた。私は来年1月から米国勤務になるので、今後はアメリカから日本市場を見ながら、よりグローバルな視点でMAを盛り上げていきたい。 |
MA7のプロデューサー役
リクルートMTL所長 羽野 仁彦氏 |
グランプリは逃したものの、審査委員の間には「東日本大震災アーカイブ」の評価は高かった。さまざまな技術、さまざまな人を結びつけるというMAのコンセプトの一つの集大成だと思う。これまでMAの取り組みの金字塔であり、貴重な財産として、長く記憶にとどめたいと思う。
今後はクラウド技術の活用や、Webとリアルの結合ということがテーマになる。その兆しが、グランプリ作品の「ミブリ・テブリ」や優秀賞の「smoon」に現れている。 |
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