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ユーザーの隣で開発を行う金融ITコンサルティング集団
大手金融機関がシンプレクスのシステムを採用する理由
起業から約8年で東証一部上場。金融機関が収益を生み出すフロントと言われる領域でシステムシェアトップクラスを走るシンプレクス・コンサルティング。大手金融機関が同社のシステムを採用するのはなぜか?取締役副社長の福井康人氏にその理由を訊ねた。
(取材・文/平岡勝年 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:11.07.11
ユーザーの隣で、という開発姿勢

 もし、あなたの隣の席で、あなたの業務や業務で使用するアプリの話を聞きながら、使い勝手の良いアプリをつくってくれるエンジニアがいたらどうだろうか。しかも、そのアプリは世界最高峰レベルのパフォーマンスを兼ね備えているとしたら。今回、紹介する金融ITコンサルティングのシンプレクス・コンサルティングは、まさにその姿勢で、業界トップクラスのパフォーマンスを備えたアプリをつくってきた企業である。

 経営メンバーは、かつてソロモン・ブラザーズ証券(現:シティグループ証券)で世界最高峰と称されたディーリングシステムやリスク管理システムを統括したスペシャリストたちである。実際に世界トップクラスのプロの金融ディーラーの隣で彼らはディスカッションをしながら最高のシステムをつくりあげた。そして、彼らは1997年に起業、2005年には東証一部上場と起業からわずか8年という異例のスピード上場を果たす。これは彼らのソリューションが国内の大手証券、メガバンクなど多くの金融機関から求められていた証でもあった。

 現在のシェアも驚くべき数字だ。債券ディーリングシステムでは大手・準大手証券会社の10社中9社が同社のシステムを採用している。FX(外国為替証拠金取引)システムでは、東京金融取引所の「くりっく365」参加24社中9社が採用、大阪証券取引所の「大証FX」では参加13社中10社が採用という圧倒的なシェアである。2009年には大阪証券取引所の取引所システムも手がけ、金融IT業界ではニュースにもなった。プロの金融ディーラーが売買を行うことで収益を生む部門や、エンドユーザーがインターネットで取引を行うことで取引手数料を生むところを、金融業界では「フロント」と呼ぶがこの領域でのシステム提供で実質、国内トップクラスシェアを握っているのが同社だと言えるだろう。

部品も含めてすべて自社開発
福井 康人氏
株式会社シンプレクス・ホールディングス
株式会社シンプレクス・コンサルティング
取締役副社長

福井 康人氏

 注目すべきは、現在も同社は創業時と同じ方法「ユーザーの隣でつくる」ことを続けている点である。同社のエンジニアたちはエンドユーザーと直接会話をしながら開発やメンテナンスを行っている。シンプレクス・コンサルティング取締役副社長の福井康人氏は同社の特徴をこう言う。
「自分たちでモノもつくる、お客さまにコンサルティングもしていく、細かいことを含めて現場のユーザーに様々なサービス提供ができるのが私たちの特徴でしょう。私たちのエンジニアはお客さまと直接話すことで、閃いたり、アイデアが生まれたり、それを開発の中にどんどん取り込んで行く。コンサルとエンジニアを分けている企業ではこれはできないと思います。現場で生まれた小さなアイデアはお客さまに大きなイノベーションを与えることもよくあります。“神は細部に宿る”という言葉を実感できるときがよくあるのです。

 さらに、私たちのエンジニアは現場で考え、学び、成長していると言えるでしょう。私もかつては金融ディーラーの横でプログラミングをしていましたし、今も新しいサービスの企画立案をはじめ、大きなプロジェクトは中に入りフォローアップを行っています。やはりエンドユーザーさまと時間を共有できているところが今でも面白いと感じているところです」

 実際、同社では開発はほぼすべて社内で行っている。コンサルティングから設計、構築、運用、保守のほぼすべてが社内。アプリ、プラットフォーム、インフラまでほぼすべてが自社製である。
「私たちが開発しているのはNo.1を目指すハイパフォーマンスなシステムです。例えば現在提供中の『Voyager Trading Cloud』というクラウド型トレーディングシステムでは、レート配信レイテンシーは2ミリ秒、注文執行レイテンシーは8ミリ秒、そして注文処理は1秒あたり最高1,000件という業界最高レベルの高速処理を実現しています。この速度を実現するには、高速メッセージングとオンメモリデータベースの採用をはじめ、独自のミドルウェア『Galaxy』を採用しました。

『Galaxy』は2009年の大阪証券取引所の取引所システムで開発したもので、国内取引所では最高レベルのパフォーマンスを叩き出した実績があります。今回はクラウド仕様にバージョンアップしています。私たちは部品も含めて自ら開発できる。自分たちでボトルネックを解決していける。そんな醍醐味があると自負しています」

モノづくりならでは発想から生まれたビジネスモデル

 もうひとつ注目したいのは、モノづくりができる企業ならではのこだわりを感じる同社のビジネスモデルだろう。例えば、開発したシステムの「著作権」を自社で保有する点だ。
「やはりモノをつくっている人がものごとをいちばん良く考えているので、著作権はできるだけ主張していこうと会社設立時に決めました」と福井氏は言う。同社が主導でサービスを含めてシステムを開発した場合は、同社が著作権を保有する。そして、システムの汎用的な部分をコンポーネント化し、これをシンプレクス・ライブラリと呼んでいる。同ライブラリは次の開発へ転用が可能なため、開発スピード向上とコスト抑制が図れるメリットがある。

 また、2006年からサービスを開始した金融ASPは現在、株、FX、CFD(差金決済取引)などで大手証券をはじめ多数のネット証券が同社のサービスを利用しているが、これは月額使用料+成功報酬型課金というビジネスモデルである。お客さまの利益と同社の利益が連動したWin-Winの関係を実現できている。こうしたことができるのもお客さまである金融機関から対等のパートナーとして認められているからだろう。これらのビジネスモデルは結果的に国内SIerの平均の約3倍となる営業利益率17.1%(2011年3月)を叩き出しているのも同社の強さだ。

世界と戦うための戦略と競争優位

 金融業界のフロント領域でトップクラスの同社、今後を見据えているのは世界なのだろうか、福井氏に語ってもらった。
「私が意識してやりたいと思っているのが、やはり金融の中でもいちばん複雑で新しいものが試されるようなデリバティブ(金融派生商品)の市場です。その中心的な市場はロンドンです。世界中から優秀な金融ビジネスパーソンや金融ITのメンバーが集まっています。このロンドンのマーケットで私たちのやり方である、お客さまの隣でシステムをサポートしていく部隊をつくりたいのです。これが実現できれば、世界最先端のノウハウがどんどんたまっていきますし、その横で新たなサービスをつくっていくことができる。グローバルでも競争優位にたてる可能性はまだまだあると思っています。

 もちろん、その前段階として、国内金融機関のお客さまと一緒に海外展開をさせていただければと考えています。実際、すでにアジアの投資家向けサービスのなかで当社のソリューションが採用され始めています。また、今年の上半期でグローバル市場の調査を独自で行っています。その結果を受けて下半期から新しいソリューションを立案して、来年からR&Dの予算をとり新規サービスの開発をしたいと思っています。2〜3年後くらいにはグローバルのお客さまの一角を担う新しいソリューションを提供できたらと考えています」
 実際に社内でもバイリンガルの社員が増えて来ているそうだ。

国内はリテール&ホールセールの切り口で

 では、国内向けの戦略はいかがだろうか。
「リテール向けには、今年の6月に『Voyager Trading Cloud』の開発をリリースしました。これはシステムアーキテクチャーを階層化しているため、アプリ、ミドル、インフラなど各階層における設計の自由度が増し、システムのスケーラビリティをお客さまの事業スケールに柔軟にあわせて提供することが可能です。また、クラウドとしてサービスを提供するため、システム導入期間を大幅に短縮し、TCOを劇的に低減することに成功しています。エンドユーザーさまはシングルプラットフォーム・マルチ環境で同一画面で複数商品の取引が可能となります。この『Voyager』のロールアウトがまずひとつです。

 そしてもうひとつはホールセール向けのソリューションを強化していきます。これまではセルサイドの金融機関さまにアプローチをしてきましたが、今後はバイサイド、生損保やアセットマネジメント企業にも、フロント領域はありますので提案を行って行きたいと考えています。ひとつ私たちの弱みをあげるとすれば、私たちはわずか400名弱の企業ですから、大手SIerのように多くの人員を1プロジェクトに割くことはできません。ではどこで差別化を図るかと言えば、やはりユーザーさまの声を聞いて、ちょっとしたアウトプットからプロトタイプをつくって提案していくことだと思います。あとは先ほど申し上げたようにミドルウェアをはじめ私たちは市販されているものを利用していません。このようなところで差別化を図っていきたいと考えています」

いつもお客さまのそばで悩みを解決している人に

 同社には次々と新しいサービスやプロジェクトが生まれつつあるようだ。ちなみに『Voyager Trading Cloud』のR&D費は約15億円である。400名弱の企業でここまでモノづくりに投資を行う企業は少ないと思う。最後に、同社で楽しめるエンジニアとはどんなタイプなのだろうか。
「いちばんいい判断ができるのは、いつもお客さまのそばで、悩みを聞いて解決している人だと思います。お客さまのためにシステムを提案して、こんな風につくりたいという意志があり、お客さまとどんどん合意していって、これでいいですよねと最後に承認を取りにくる。決裁権はないけれど、すべて自分で決めて動いている人。そういう人が仕事も面白いと思いますし、お客さまも信頼してくれる仕事の仕方だと思います。そんな人がシンプレクスに来てくれると非常に、本人にとっても私たちにとってもメリットがあります」

 実際に、金融以外の領域から同社に転職してきているエンジニアも多い。転職してきた彼らは、やはり同社の開発スタンス、モノづくりのこだわりにほれて来た人たちばかりである。ITエンジニアにとって、チャレンジのしがいは十分ある企業ではないだろうか。知られざる日本のモノづくり企業を、金融ITの中で見つけた気がする。

株式会社シンプレクス・ホールディングス 株式会社シンプレクス・コンサルティング 取締役副社長 福井 康人氏

創業メンバーの一人である同氏はソロモン・ブラザーズ・アジア証券やリーマンブラザーズ証券などを経て、独立後、シンプレクスに参加。現在は、経営の傍らホールセール向けサービスの統括責任者として、新サービスの企画やプロジェクトをマネジメントしている。

<シンプレクスへの転職者/インフラエンジニアに聞く。>シンプレクスならではの仕事とは? やりがいとは?
最初から最後まですべて面倒を見るような仕事に

 入社から1年が経過した今、転職したことに非常に満足しています。もともと巨大な外資系メーカーの一プリセールス担当者として、サーバー、DB、ネットワーク、一通りの経験を積み、技術的にも面白く満足はしていました。しかし、「手に職をつける」ために就いた仕事だけれど、いまの肩書きを取ったら自分は何ができるのだろうか? 一プロダクトの技術に特化するだけで一人でやっていけるのだろうか? そんな悩みがついてまわり、エンジニアとして生きていくなら、最初から最後まですべて面倒を見るような仕事に就くべきだろうと思い、シンプレクスを選びました。

入社3カ月でキャパシティなら大東に聞け!が定着
大東 由幸氏
株式会社シンプレクス・コンサルティング
サービスプラットフォームグループ

大東 由幸氏

 最初から最後までの希望は入社後すぐにかなえられました。というよりも、任されたのは期待以上のスピード感と広範囲な仕事でした。「現在、稼働している30プロジェクトすべてのキャパシティを見てほしい。〆切は3カ月後」。前職でキャパシティ分析が得意だったこともあり、システムのキャパシティ観測、性能問題への改善提案、システム拡張の影響予測などを任されました。正直、逃げ出したい気持ちもありましたが、前職でお世話になった人たちに示しがつきませんから必死にやり遂げました(笑)。

 この仕事のおかげでキャパシティなら大東に聞け!が社内で定着し、会社から評価もいただきました。入社時の給与は前職より少しアップした額でしたが、1年後の現在はその金額から10%アップ。インフラという評価の見えにくいところですが、シンプレクスはインフラを事業としてとらえ、各プロジェクトからチャージをいただいています。そのチャージに見合う価値は残せたか?各プロジェクトが評価してくれるのです。

 インフラはコストセンターではない。システム及びビジネスの市場価値を上げ、生産性を高める存在として、それには何が必要なのか、何をすべきなのか、根源的なところから物事をとらえていきます。アプリの開発以外はすべてインフラが担当していることもあり、存在価値が非常に大きいのがシンプレクスのインフラエンジニアです。

何をすべきから考えられる人に最適な環境

 いまは30プロジェクトの保守全般を担当しながら、アラートに対する対処方法のあるべき姿と仕組み化を私が考えています。今年の秋導入に向けて、メソッドとして何が正しいのか、どういう手続を踏めばいいのか。自分が正しいと思うことを考えてつくり、つくったものには責任を持つ。前職では経験したことのないやりがいです。シンプレクスにはやらなくてはいけないことがたくさんある。今この会社で自分は何をすべきか?そこから考えて自ら動ける人には、仕事がたくさん見えてきますし、さらに成長できるいい環境だと思います。本当の「手に職がつく」会社だと実感しています。

株式会社シンプレクス・コンサルティング サービスプラットフォームグループ 大東 由幸氏

1981年生まれ。外資系メーカーにて、サーバーやストレージ製品などのプリセールスを担当。2010年5月に同社へ。現在、サービスプラットフォームグループのチームリーダーとして稼働している30プロジェクトの運用保守全般を担当する。

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