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SE→プリセールス、SE→企画職、現場開発を続ける

とどまるor動くべき? 30歳からのSE、3つの選択肢

SEのキャリアステップの選択肢は無数にあるが、どんな価値観に基づいて自分のキャリアを選択したらいいのか思い悩むこともある。そこで今回、3つの事例を通してSEにとってベストなキャリア選択について探ってみたい。

(総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:11.04.20

ネットワークSEから、プリセールスへ。ソリューション視点を持ったことが、キャリア選択の大きな転機に
株式会社オプティム 成田氏のケース

ソリューション視点を持つことの意味を実感し、プリセールスの道へ


株式会社オプティム
セールス&マーケティンググループ
プリセールスエンジニア/マネージャー
成田 清志氏

オプティマル事業(インターネットやPC環境設定サポート)やeラーニング、プロモーション、セキュリティ事業等を展開している株式会社オプティムに2年前に転職してきた成田氏(34歳)。これまでにも何度か転職してきた成田氏は現在、プリセールスエンジニアとして、顧客のもとに出向いて技術的な観点から、自社サービスの提案やサポートを行っている。しかし数年前まではネットワークやインフラ系のSEとして、12年のキャリアを積み上げてきた。

「Windows95が発売されて、インターネット元年とも言われた1995年にネットワーク系のSEとして、キャリアをスタートさせました。PCやサーバの保守から、ネットワークの運用などに関わってきたのですがある時、自分の業務の本質的な目的がパッと見えてきたんです。
これまでは顧客からの要望をそのまま忠実に実行していくスタイルでした。しかしその顧客からの要望が『メールができない』『プリンタに出力できない』などおおよそ、似たような要望で、さらにその原因を探ると『LANケーブルが抜けている』などの設定ミスが7割くらい。そのことに気づいたとき、自分にはもっとやるべきことがあるのではないか?そう疑問に思ったのが、今のキャリアを選んだ大きな要因です」。

自分にはもっとやるべきことがあると語る成田氏は、さらに続けてこう話す。
「例えば『メールができないから直してほしい』と顧客から言われた時、最初は正直、それほど重要なトラブルではないと考えていました。しかしある時ふと、SEというポジションから一歩離れてみたとき、メールができないことがどれだけ顧客の業務に悪影響を及ぼすか実感できたんです。トラブルが起こってから対応するよりも、トラブルが起こる前にこちらから提案して、未然に防ぐことができれば、それだけでかなりのリスクを回避できるのです。
そこに気づいたとき、プリセールスへのキャリアを現実的に考えるようになりました」
ネットワークSEとして、さまざまな現場体験から得た豊富な知識やノウハウを、ただ顧客から要望が来た時にこたえるのではなく、もっと早い段階でこちらから顧客に提案していく。つまり「ソリューション視点」を持ちながら、自分の経験をもっと有効的に活かせる仕事にシフトさせたいと成田氏は考えたのだ。

その後、成田氏は本格的にプリセールスへのキャリアを目指して転職した。

顧客に提案することで、会社の利益につながる面白さを実感。技術力がすべてではない


プリセールスとしてキャリアチェンジした成田氏は、早くもその仕事ならではの面白さを実感できたそうだ。
「自分の提案によって、顧客が喜んでくれる姿を間近で見られるのが目に見えるやりがいですね。またその提案によって『それならいいルーターを教えてほしい』『提案したシステムを導入するためには何が必要なのか』といった形で仕事がどんどん広がっていく。その結果、自分発信の小さな提案から大きなビジネスを生み出し、顧客と自社、それぞれに利益を生み出すことができる、これがSE時代には決して体験できなかった面白さなんです」

しかし成田氏にとって、ネットワークSEからプリセールスへキャリアチェンジする際、大きな不安を抱えていた。それは「ハードとソフトの大きな違い」だという。
「ネットワークSEのころは、ルーターなどのさまざまな機器の開発はすべてメーカー主導であるため、顧客からの要望や修正はメーカーに対応してもらえばよかった。でも今勤務している企業は、自社製品のソフトやサービスを販売するソフトの世界。何もかも自分たちで対応しなければならないことで正直、やっていけるのか不安はありました。
それでも顧客に最も近いポジションであるプリセールスとして、顧客の喜ぶ顔を見たいという思いが不安よりも強かったからキャリアチェンジという道を選択しました。実際にプリセールスというポジションで顧客と対応したとき、顧客からの細かな要望に対して、その機能をソフトに盛り込んで迅速に対応できるのは、ネットワークSEのころと大きく違う点。要するに顧客の抱える課題を解決するための道筋を、身近で実現できることが私にとって大きな発見でしたし、また今のキャリアを選んで良かったと実感しましたね」

現在もプリセールスとして、さまざまな課題を抱える顧客に対して課題解決につながる提案を積極的に仕掛けている成田氏。その一方、成田氏が属する企業が開発した、PCの省電力設定を自動的に行うソフトウェア「Optimal Green」(※今回の東日本大震災の節電支援活動として無料配布中)の展開や無料配布の舵取りも担当している。その本人が、キャリア選択の際に参考になったノウハウを教えてくれた。
「相手の仕事を一度でいいから実際にやってみるということですね。相手の仕事をすることで、自分に足りない知識や視点、考え方に気づくんです。そこに気づいたとき、今の自分が何をすべきかがわかるし、それが自ずと次のキャリアへの道標になってくれると思います」

ソフトハウスのSEからプロデューサー兼エンジニアへ。将来の独立に向けたベストなキャリアを選択
株式会社シーエー・モバイル N氏のケース

携帯のサイトを作りたい、事業を学びたいという思いで異業種に転職


株式会社シーエー・モバイル
ソーシャルメディアディビジョン
システムグループ
ゼネラルマネージャー
N氏

情報処理の専門学校に在籍中、アルバイトとして仕事をしていた前職のソフトハウスにそのまま入社したという、株式会社シーエー・モバイルのN氏(33歳)。入社後、生産管理システムから研究シミュレーター、また地図サービスなどBtoB向けのシステム開発に携わることに。
「要件定義から詳細設計、テスト、リリースから保守運用に至るすべての工程に携わっていました。その中でCやC++、BASICなどのプラグラム言語やオラクルなど含め、SEとして必要な知識や経験を積むことができたのが良かったですね」と、その当時について語るN氏。

しかし入社して5年の月日が経過したころ、転職を決意することになる。
「もともと将来的には独立したいという漠然とした願望がありました。独立するために必要なものとして考えたとき、確立した技術基盤を持ちつつ、サービスの立ち上げノウハウであったり、事業運営についてもっと深く学ぶ必要があると判断したのです。技術に関しては5年間の経験を通してある程度の基盤は築けたと考えたので、それ以外の要素を経験できる企業に移ろうと考えたのが、転職のきっかけです」

そこで転職先として選んだのが、現在勤務するシーエー・モバイルだった。N氏が転職を決意した2005年当時、携帯電話が単なる電話やメール機能以外にも、SNSやゲーム、ワンセグ、おサイフケータイなど急速に多機能化が進んだ時期と重なる。そうしたモバイル市場の急拡大を受けて、N氏は「モバイルを事業の核に急成長していたベンチャー企業であるシーエーモバイルに入社することで、自分の考える携帯サイトを作ったり、事業経営ノウハウを学べる」と考え、転職したのだ。

最終責任者が自分であるプロデューサーの仕事に大きなやりがいを感じる


入社後1年間、ECサイトのプログラミングを担当した後、新たにソーシャルゲームのプラットフォームを作る新規プロジェクト5人のメンバーの一人として参加することに。
「プロデューサーとして自分のやりたいことを実現できる立場になったことが、これまでクライアントの意向を尊重して業務を進めるSEとの大きな違いを実感しました。特に今回のようなBtoCサービスの場合、プロジェクト成功の判断はクライアントの要望に沿ったシステムを作ることではなく、どれだけ多くのカスタマーに利用してもらえるかにかかっています。そのため、サービスの最終意思決定者であるプロデューサーの責任は重い一方、カスタマーの反応がダイレクトにわかることが面白いし、大きな刺激にもなるのがプロデューサーになって実感したメリットですね」と、プロデューサーならではの魅力をN氏は語る。

その裏では、これまでのBtoBビジネスと全く違う分野へ飛び込むことや、経験のないperlなどの言語を覚えなければならないなどのリスクや不安もある中で、結果的にはそれ以上に「サービスを立ち上げたい」という強い思いを持つことで、ハードルを乗り越えてきた。
また現在はプロデューサーとしての役割が強い一方、エンジニアとして開発にも携わっているという。
「前職と違い、このモバイル業界は本当に最新技術の変化が激しい世界。いくらプロデューサーといえ、最低限の最新技術を常にキャッチアップする必要があるし、また自分が『技術出身』という気持ちを常に持っていたいから、今も開発に参加している面もあります」

今後、さらにカスタマーにとって価値のあるサービスを生み出していこうとしているN氏から、最後にこんなアドバイスをもらった、
「実はSI時代に培った技術を、モバイル業界や私が担当する事業でもかなり活かせます。何かしら自分なりに『こんなサービスを生み出したい』というアイディアを具現化したいのであれば、SEがプロデューサーのキャリアを選択することはこれからの時代、大いに“アリ”だと断言できますね」

一貫してセキュリティ関連開発SEの道を歩む。プライドの持てるものを作り続けていきたい
トーテックアメニティ株式会社 青野氏のケース

上司と開発の方向性がマッチしないことで、転職を決意


トーテックアメニティ株式会社
クラウド事業推進室
青野 和仁氏

青野氏(33歳)は前職、そして現職でもセキュリティ関連のソフトやサービス開発のSEとして活躍している。
「前職では4年ほど、サーバやネットワークのリモート監視システムやアプリケーションの開発に携わっていました。転職したきっかけは、当時の上司と開発の方向性がマッチしなかったこと。そもそも上司と言っても開発スキルが不足していて、開発言語の能力を十分発揮できないようなスタイルを私に対して求めたこと。また『オブジェクト指向なのに、クラスの継承はしてはならない』など、開発規約の方針でも納得がいかないこともありました。私としては開発者として一人前になりたいという意識が強かったので、これまでのスキルを活かしながらキャリアアップできる環境を求めて、5年前に転職を決意したのです」と、前職から現職への転職理由について語る青野氏。

そして現在、担当しているのはトーテックアメニティ独自のアプライアンス製品である
「NetRAPTOR(ネットラプター)」の開発。製品リリース後にプロジェクトに参加して以来、一貫して開発を担っているという。
「NetRAPTORには、リアルタイムでネットワーク上の通信データを捕捉し解析することでネットワークインフラの不正使用検出等、内部統制対策を可能とするための非常に高度な技術が使用されています。しかしその分、ネットワーク、ハードウェアの知識、また開発言語に関してもJava、C++、XMLなど幅広い知識が必要になる上、非常にハードな環境で業務を担当していますが、開発者としてのやりがいもまた大きいですね」

低コストかつ高品質な製品開発で、技術者としてのプライドを持てるモノを作り続けたい


10年近いキャリアを積んできた青野氏が、今でも現場のSEとして開発にこだわっているのには、青野氏ならではのポリシーがあるからだ。
「自分が作ったモノに対して『ここまで作りこんだんだ!』というプライドを持てることを、自分の中で常に意識して開発に取り組んでいますね。しかし悪く言えば単なる『自己満足』と言えるかもしれません。それでも、納得のいく設計、コーディングができた時の満足感が、開発に対するモチベーションを維持していく上で、非常に重要だと思うんです」

開発に対する妥協なき取組を続けていくことで、今後も現場の開発にはこだわっていきたいと語る青野氏だが、今後のキャリアについてはこんな考え方を持っている。
「いずれはPMのポジションを目指す必要があると考えていますが、例えそうなっても現場の開発経験をできる限り活用して、モノづくりにこだわるキャリアを積み重ねていきたいですね。その経験はきっとマネジメントする立場になっても必要なものだと思いますから」

今後の青野氏の目標は、低コストでより品質の高いものを作りつつ、社内で使っているフレームワークを全く新しいものに入れ替えていくことだそうだ。そしていつまでスペシャリストとして技術にこだわり続けられるのか?をライフワークに今後も、現場のSEとしてプライドを持てるモノづくりと向き合っていく。

本レポートは総合転職サイト「リクナビNEXT」連動コンテンツです。 Supported by リクナビNEXT

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