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「リーマンショックの後はもう、何やってもあかん。そんなとき、異業種交流会で京都EV開発の岡田さん(顧問の実氏)と会ったら、『マイクロカーならできる。リチウムイオン電池なら提供する』と言ってくれたんです。ただ、EVはどこでもやっているでしょう。ならばメイド・イン・ジャパンを出すデザインが必要だと感じて、デザイン事務所にお願いしました。ワイン研究会で知り合って、会うの二度目だったんですけど(笑)」 |
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そこで始めたのが、関西の中小企業が集まって独自のEVを開発する「あっぱれEVプロジェクト」。小倉氏が「総合プロデューサー」になり、ボディや部品は淀川製作所、同社ではできない大型レーザー加工は近畿刃物工業、リチウムイオン(Lion)電池やモーターなどの電送系は京都EV開発、デザイン全般を九創設計室が担当した。プロジェクトは昨年6月から動いていたが、10月に大阪府地場産業等総合活性化補助金を受けて、本格スタートとなる。補助金は100万円、各社で持ち寄った資金は100万円で、開発費は材料費込みで合計200万円(最終的には230万円ほど)。全員が「手弁当」だ。 ところが、淀川製作所の社員は全員が反対、周囲からも見知らぬ人からも「そんなことできるか!」と誹謗中傷、加えて時間もなかった。補助金から3月までに結果を出さねばならず、開発期間は6カ月しかなかったのだ。 「女房にからは『もうからなければやめたらええねん』と言われましたが、そうもいかない。お金も時間もない中でアクセル踏むのはすごくエネルギーが必要でしたし、休みなしで仕事をやりすぎるとリンパ腺が腫れるとわかりました(笑)」 |
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徹底してこだわったのが「差別化」だ。モチーフは“純和風”で、牛車をイメージさせる3輪車にした。曲線を生かしたかわいらしいボディ、外装は朱色の漆塗り、床には竹を敷き、ハンドルには竹紐を巻いた。ドアは番傘を広げたような和紙細工、サンルーフも和紙で開閉可能だ。漆塗りでは老舗の佐藤喜代松商店、竹材加工には東洋竹工に依頼したのだが、「料金はもちろん、値切ってばかり」(小倉氏)。 |
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今、Meguruは「中小企業総合展2010」などのイベントに引っ張りだこだ。小倉氏も講演に呼ばれることが多くなった。ただ、プロジェクトはここで終わりではなく、小倉氏は受注生産による量産化を計画している。 EVといっても正確な扱いは自動車ではなく「側車付軽二輪」。サイズは車幅1.15m、全長2.5m、車高1.6mで、運転席の後ろに2人乗り。Lion電池は1時間の充電で40q走り、最高時速は40q。いわば街中の「チョイ乗り用」で、京都や奈良など観光地を巡るタクシーとしての利用を考えている。 想定する価格は1台100万円以下。ただ、Lion電池などの原価を考えると100万円以下で漆塗りや竹材加工はさすがに無理なので、「プレミアムモデル」と「一般モデル」を分けて受注する予定でいる。 ただ、実際に量産になれば製造工場が要る。淀川製作所には3つの工場があるが、どれにもスペースの余裕はない。さりとて、新規に工場を建設するにはかなりに資金が掛かる。ということを取材中に話していると、たまたま社屋に寄っていた近所の工場の社長さんに……。 「河野さんのとこ、空いてる工場あったよな? 30坪くらいか。6台くらい置けるやろ」「いいえ、乗用車で4台くらいですね」「いけるいける、EVなら6台OKや」 不況の風はまだまだ強いけれど、腕のあるエンジニアがそろえばEVだって開発できる。ただのEVでなく、ユーザーの気持ちを動かすような商品ができる。大きなビジネスにつなげるには時間がかかるかもしれないが、大きなモデルケースは生まれた。 「家電の街から先陣を切って、何が何でもEVを出したかった。恰好よくいえば男のロマン(笑)。夢はMeguruを量産してEVメーカーになること。3年後にはあちこちでMeguruが走っていること」 |
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「以前に会社(外資系大手化学メーカー)の出向で、産総研(産業技術総合研究所)さんの研究者と燃料電池の研究をしていました。隔壁にイオン交換樹脂を使い、触媒の白金を探知するためにメッキ処理していたのですが、イオン交換樹脂が動いてしまった。動いては困るんです(笑)。なら逆に、メッキで動くイオン交換樹脂でアクチュエータを作れないかと、14年前にNEDOのプロジェクトとして立ち上げました」 |
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イーメックス設立後には研究対象を増やした。ノーベル化学賞を受賞した白川博士の導電性高分子(導電性ポリマー)だ。イオン伝導アクチュエータは発生力が弱いので、導電性高分子の利用を考えたのだが、当時の伸縮性が3%程度。この伸縮性を上げないとアクチュエータとして使えない。 |
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太陽電池の開発は思わぬところから始まった。去年秋に学会で技術を発表したところ、会場にいた九州大学の教授から「ぜひ一緒に」と声が掛った。以前から研究していた太陽電池の性能向上に、同社のメッキ技術を使いたいという申し出だ。共同研究が始まって2カ月後には、発電部(図の下の赤い部分)の性能が300倍アップしたという。 こうして開発した太陽電池は厚さが0.2ミリ、セルにイオン交換樹脂シートを用いて、正極に金、負極に白金をメッキする。太陽光を正極に当てると、金属表面で光と電子が共振するプラズモン共鳴により電子が発生し、負極に運ばれる。 |
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大きな特徴は電極の表面積が平版の1000倍ということ。また、通常使われる透明電極を使わないので、50%ほどカットされる紫外線や赤外線のエネルギーが利用できる。雨天でも赤外線で発電できるため、発電量は従来の15%から50%に向上するという。さらに、電解液が不要になるので耐久性も大きく向上する。 「コストはシリコン系の10分の1以下になると思います。価格の多くを占める透明電極が不要ですし、金を使うのは表面だけなので素材も安価。製造方法は樹脂のロールにメッキを巻く『Roll to Roll』ですから工程もシンプルです。問題は現在の変換効率が1%という点ですが、すぐに10%を実現できると思います。我々にとって『動かないもの』は割合簡単(笑)」 今後は導電性高分子の導電性アクチュエータを、介護の分野で使いたいと語る。現在の伸縮率は15%以上で、1センチ角の正方形なら220sを持ち上げられるという。関節部にいくつものモーターを内蔵したロボット型でなく、まさに通常のスーツのような介護用ロボットスーツも夢ではない。瀬和氏は各デバイスの製品化を望むが、いくつかの壁があるようだ。 「今まで200社くらいの企業さんとお会いしましたが、皆さんなかなか『一緒にやろう』とは言ってくれない。責任者としてリスクを恐れているのでしょうが、それでは中国、韓国、米国などに負けてしまう。われわれは常にリスクにチャレンジしています。大手企業さんは設備は本当に素晴らしいし人材も多い。でも、ベンチャーの我々とは『気合い』が違うのです」 |
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