地方の老舗店と提携、JR九州とコラボ、モバゲーでゲーム…… |
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日本を元気に!“位置ゲー”のコロプラが止まらない |
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携帯電話のGPS機能を使った位置情報ゲーム、「位置ゲー」で断トツ人気なのが「コロニーな生活☆PLUS」だ。コロニーの育成にハマる大人が続出する一方で、同社が掲げる「地方から日本を元気にする」も成果を上げている。新しいベンチャー企業の姿を見つけた。 (取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/杉村秀樹)作成日:10.01.26
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1km移動で1プラ獲得、現在のユーザー数は82万人
コロプラのコロニー
株式会社コロプラ
代表取締役
馬場功淳さん
コロニーな生活☆PLUS(コロプラ)とは携帯の中でコロニーを育てるゲーム。食糧、酸素、水を入れると住人が住み始めて、自分の街が育っていく。資源やアイテムの購入に使うのは仮想通貨「プラ」で、1kmの移動で1プラを獲得できる。移動距離を出すのはGPSでの位置登録だ。長距離になるほど通貨が貯まるので、出張が多いビジネスマンに愛好者が多いとか。
ほかにも、同じ市区内のコロプラユーザーと交信できたり、数千種類のアイテムでコロニーがつくれたり、500エリアに600個以上ある地域限定の「お土産」がゲットできたりと、実は奥が深いゲームとなっている。そして、すべてのサービスはタダ、個人情報の取得も一切していない。
「コロプラの利用は無料で、プラも購入できません。個人情報は登録できないだけでなく、誰かに伝えることを規約違反にしています。ただ、ユーザーはコロニー番号で識別されるのですが、相手の番号にニックネームを付けられます。例えば、京都でお土産(アイテム)をもらった人の番号に『舞妓はん』と付け、次にどこかで交信したら『舞妓はん』と表示されます。逆に言えば自分のニックネームはわからない。こちらのほうが面白いでしょう」
こう語るのは、前身となる「コロニーな生活」を2003年に立ち上げた馬場功淳社長。独力でゲームを開発し、自宅にサーバを置いて、趣味として始めたのだが、携帯電話のGPS機能が普及するに従ってユーザーが激増。2008年10月に株式会社コロプラを設立した。現在では30人ほどの社員がいる。
口コミで広がったというユーザー数は約82万人(1月19日現在)、昨年12月の月間総ページビューは9億4000万を突破した。コロプラがここまで成長した理由を馬場さんは「ユーザーとの信頼関係」と語る。無料で安心できる健全なゲームであることが、時間とともに認知されていったようだ。信頼の厚さはこんなところにも表れている。
「ユーザーからのメールには皆で目を通しています。『線が細くて見えにくい』『メールで通知する機能が欲しい』などのご意見もいただくのですが、ほとんどを反映して機能やデザインを改修しています。個人の感想でも、同じ内容が集まれば客観的なデータになると思うからです。10人が集まればまず正しいですね」
「日本のよいもの」で地方から日本を元気にしたい!
提携店舗ごとに異なる特製の「コロカ」
提携店舗の人気商品
ユーザーに課金しない同社はどう収益を上げているのか。ひとつはユーザーからの寄付である「投げ銭」。そして、魅力的な地域の小売店からの広告収入だ。リアルとバーチャルを掛け合わせた、とても「真っ当」なビジネスモデルである。
提携すると店舗と商品の情報が、コロプラの「取材記事」で紹介される。関心を持ったユーザーが出掛けて買い物をすると、金額により特製のプラスチックカード「コロカ」がもらえる。そこにあるシリアル番号を入力すると、特製アイテムの「スポンサーお土産」も取得できる。そしてコロプラ社には、コロカの配布枚数に従って店舗から広告料が支払われる。
ユーザーは地域限定の人気商品、店舗特有のコロカ、特別なアイテムが一度に入手でき、店舗は初期費用なしで広告が出せて、商品が売れるほどコロプラ社の収入が増える。誰もが喜ぶ幸せのサイクルだが、リアルな商品が魅力的でなければ回転しない。そのため商品は「わざわざ出かけて行く価値のある日本のよいもの」に厳選している。
例えば、東京浅草の「壱番屋」(雷おこし)、兵庫県神戸市の「菊正宗酒造記念館」(清酒)、佐賀県有田町の「しん窯」(有田焼)、宮崎県宮崎市の「染織こだま」(呉服)などで、地元で評判の老舗店が多い。昨年12月の1カ月間で、全29店舗(現在は33店舗)で約1万2000人が商品を購入したという。これはシリアル番号入力からの購買者数なので、来訪者数はこの数倍になりそうだ。
「社員が実際の店舗を訪れ、社員全員でその商品を食べたり、飲んだり、手にしたりして、『間違いのない日本のよい商品』を選んでいます。その店舗で買っていただきたいのでネット販売はしていません。私たちの目的は『地域を活性化して日本を楽しく』です。地方に出掛けると移動、飲食、宿泊などで消費が生まれますよね。この消費で地方を元気にして、その勢いで日本全体を元気にしたいと思っています」
一般的なITベンチャーと異なり、コロプラの知名度は地方のほうが高い。地域で有名な老舗店にいきなりお客が増え、売り上げが増加した理由を、地方の新聞や媒体が話題にするからだ。
開発からサポートまでを自社で行うエンジニア集団
コロプラバスツアーの様子
JR九州のコロプラ乗車記念カード
コロプラの勢いは止まらない。昨年の8月と9月にはコロプラユーザーに向けた「コロプラバスツアー」を企画し、一泊二日で約120人が九州を回った。移動でプラを、各地でアイテムをゲットし、提携店舗での工房見学、遊覧クルーズ、盆栽作り体験など盛りだくさんの内容だったという。
昨年11月から今年の3月まではJR九州と提携。九州各地の50駅を巡る「九州一周塗りつぶし位置ゲーの旅」を実施中で、「コロプラ★乗り放題きっぷ」も発売されている。切符の地域に応じたコロカが配布され、ゲームの達成度に応じてアイテムが与えられる。
「JR九州さんは車両のデザインにこだわったり、カーテンにすだれを使ったり、車内を木目調にしたり、その遊び心に弊社と共通するものを感じて提案しました。本音を言えば、まさか受けていただけるとは(笑)。先日、社員のひとりが九州に旅行したときに『現地調査』をしたというんですね。そうしたら、列車内にはこの企画のポスターがずらりと並び、駅にはコロプラ仕様の小型時刻表が積んである。現地の人と話したら、コロプラが何かを知らなくても、皆がコロプラを知っていたそうです。社員はもちろん『コロプラ★乗り放題きっぷ』を使いました(笑)」
1月にはモバゲータウン内で「コロニーな生活♪peace」(コロピ)の提供を開始。コロプラのメインユーザーが20〜40代なので、モバゲーに合わせてユーザーの年齢層を低めに設定し、ゲーム性を高めたという。コロプラもそうだが同社のサービスはすべて自社開発だ。
「私たちはエンジニア集団。開発、デザイン、運用、サポートまですべてを自社で行っています。弊社の開発はつくって、眺めて、失敗して、またつくる、の繰り返しで、仕様書がない文化です。それでも品質を落とさず、モノづくりのできる人間が集まっていると思います。実はこれって……結構しんどいんですけどね」
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