【緊急連載】大不況が何だ!逆境転職に成功したエンジニア奮闘記 |
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世田谷or地方? |
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不況下転職に成功したエンジニアたちを紹介していく短期集中連載企画。第5回目は技術を追求するよりも、技術を利用した独自のサービスを生み出したいという意思を強く持つ30歳SEの転職エピソードを紹介したい。 (総研スタッフ/山田モーキン)作成日:09.08.18 |
受託開発に内部統制業務。30歳にして自分が本当にやりたいことを求め転職へ
転職エンジニア
株式会社SAKURA CUBE
企画開発 S氏
今年5月に転職したSE、Sさん(30歳)は過去にも何度か転職を経験している。いずれも受託開発や社内システムの開発などを中心に担当し、Sさん自身もそうした経験を通して、エンジニアとしてのスキルを磨いてきた。
しかし、就職当時からずっと抱いてきた「やりたいこと」を実現させるべく今回、不況期の厳しい採用市場の中で転職を決意。それでもわずか1カ月で、本人が望む企業への転職に成功したのだ。
なぜ短期間で理想の企業に転職できたのか、具体的な経緯について本人に語ってもらった。
技術だけで終わりたくない!独自のサービスを生み出したい思いで転職
今回の転職までに2度ほど転職経験があります。
最初の就職時、ベンチャー系のIT企業で主に中小企業向けのシステム開発やサポート運用などの受託開発業務を1年ほど担当しました。
その後、ある事情で(笑)転職することになったのですが、2社目も社員30人程度の企業で受託開発業務を担当することに。
こちらも1年ほどして会社の経営が厳しくなり、将来性に疑問を持つようになったこと、そしてちょうどそのころに「やめるのならぜひうちに」とクライアントからのお誘いもあって、2度目の転職をしました。
それが前職になりますが、ここでは社内受託コンサルやJ-SOX法に絡む、内部統制システム対応などの業務に関わりました。
しかし、私には就職当時から仕事に対するひとつの大きな希望がありました。
それは自社開発による独自のサービスに関わりたいということ。……とはいいつつ、何も技術開発にどっぷりつかりたいわけではなく、技術を活用して世の中が求める独自のサービスを生み出したいという思いです。
しかし現実として1、2社目では受託開発を担当し、前職ではさらに開発業務そのものから遠ざかってしまったのです。
そこで30歳というひとつの節目を迎えた時、もう一度、自分のやりたいことができる環境に身を置きたいと考え直し、転職を決意しました。
世田谷or地方、ベンチャーor大企業 両極端選択で理想の企業にたどり着く
そこでまず条件としてあげたのは、独自のサービスを自社開発している企業であること。そして次に挙げたのは「勤務地」と「会社の規模」。
まず勤務地では、「東京都世田谷区」もしくは「地方」というかなり両極端な選択肢です(笑)。
世田谷は自分の住む地域で、利便性がいいこと。一方、地方は全く住んだことも勤務したこともない地域で逆に仕事をしてみたいという好奇心からです。
それともうひとつの会社の規模も、「ベンチャー」もしくは「大企業」とこちらも両極端。 今まで勤務してきた企業はそのどちらでもないような、中堅クラスが多かったことから、
・ ベンチャー 小回りがきき、リスク覚悟で新規事業に勝負できる
・ 大企業 今まで経験できなかったような大規模な新規プロジェクトに参加できる
といったそれぞれの利点に魅力を感じて、選択しました。
活動を開始したのは今年の4月。不況で採用ニーズが大きく落ち込んでいるのはわかっていましたし、それほどすんなり転職が決まるとは思っていませんでした。
しかし私としては、少なくとも半年は転職活動しようという気持ちが固まっていましたから、焦らずじっくり理想の職場を探していくつもりでいましたね。
しかし意外にもその後、すぐに2社応募してそのうちの1社、つまり今の職場から連絡があり面接を受けることに。そして同社の独自コンテンツサービスのビジネスの特徴や、技術を売りにするのではなく、あくまで魅力的なサービスを提供していくことを第一とする社長の理念に共感して、転職を決めました。
結果的にわずか1カ月で決まり、今は新規プロジェクトの立ち上げで多忙な日々を過ごしています。
今回の転職ではあまり不況というものを意識せずに、自分が本当にやりたいことができる職場を見つけることだけに集中して転職活動に取り組みました。そして、今振り返ってみるとそのシンプルな目的と、マイペースな行動がいい結果に結びついたのではないかと思います。
Sさん採用企業・株式会社SAKURA CUBEの採用戦略
採用責任者
代表取締役社長 鳥海 忠氏
当社は「アーティストを支援したい!」という強い意思の元、2008年6月に設立してからようやく1年たったばかりの、ベンチャー企業です。
現在、売り上げの4割を占める主力事業が、1点モノのオリジナル漫画を製作するサービスでまずは漫画家というアーティストを、ITを活用することで支援しています。
そのほかの受託開発案件も含め、おかげさまで順調に事業が推移していることから今年の4月、初めての中途採用を行いました。
この不況下の折、当社にも50人ほどの方からご応募いただき、その中で今回、Sさんを採用させていただきました。Sさん採用の決め手として第一に、技術はあくまで目的を果たすための手段として捉え、独自のサービスを生み出して社会に貢献したいという意思を持っていることが、当社の理念と一致している点。その上で当社の求める技術スキルの条件を満たしていたこと、さらに留学経験があり英語といった語学力も含め、コミュニケーション力が高いことです。
今後、当社では漫画家以外のアーティストも積極的に応援していくつもりで、そのための新たなサービスを生み出す準備を着々と進めているところ。ゆくゆくは当社が生み出したコンテンツを世界に発信していくつもりですので、そうした理念に強く共感してもらえる方に力になってもらえたら、うれしいですね。
転職成功のカギ 長期戦覚悟で目的を絞って、あとはひたすら自分の信念を貫くのみ
今回のSさんのケースでは、まず「世田谷」もしくは「地方」、そして「ベンチャー」もしくは「大企業」という、両極端な選択肢をそれぞれふたつ用意し、その上で自社サービスを開発できる企業という明確な枠組みを確立してから、企業を探した。
一見、目的を絞ることで応募できる企業数も少なくなり、それが特にこの不況期においてはデメリットだと思い勝ちである。
しかし当然のことだが、最終的に転職するのは1社のみ。
それにSさんの場合、景気の波は全く気にせず最初から長期的な転職活動を覚悟してまで自分の理想を追求し、少数ながら理想に該当した企業に対しては淡々と、自分の理念や目標を語り続けた姿勢が、結果的に短期間での転職成功に結びついた。
短期間で大量応募することも不況期の転職成功のひとつの手段である一方、今回のように長期戦を視野に入れつつ、あくまで自分の理想を求め続ける活動スタイルも不況下転職においてデメリットになるわけではないのだ。
【次回予告】8月31日掲載予定
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