|
|
久しぶりに「人員リストラ」という言葉を聞くようになり、エンジニアも自らの雇用に不安を抱える。グローバルな金融危機や急速な円高が、国内製造業の業績を直撃。深刻な不況に突入しつつあるこの厳しい時期を生き延びるべく、最近始めた節約・副業についてエンジニア500人に調査した。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:09.01.30
|
2008年12月エンジニアに聞いた現在の不況に対する実感では、「給与や賞与に不況の影響を感じるか」という質問には、「かなり感じる」36%、「やや感じる」39%を合わせると、回答者の75%が不況の影響を感じていた。年を越した段階での景況、例えば日銀による経済成長率予測の下方修正や、大手企業の正社員リストラ策発表のニュースなどは反映されていない。しかしそれでもエンジニアの危機感は高まっているようだ。 |
DATA1 給与や賞与に不況の影響を感じる? |
前回の本欄の「2008年冬のボーナス調査」でも少し触れたが、たとえ冬のボーナス額には影響がなくても、景気の先行きを考えると、「2009年夏のボーナスは厳しいかもしれない」という不安を感じる人は少なくない。また、一部企業で始まった正社員の賃金カットのニュースは、たとえ現時点では自分の会社は大丈夫でも、「この先はわからない」という不透明感、不安感をかき立てる。「明日は我が身」という嫌な予感がするのだ。 回答で目立つのは、「残業が減った」「残業ができない」という声だ。基本給カットまでは踏み込まない企業でも、実際に仕事が減り、売り上げが少なくなれば、残業時間規制などで無駄なコストを減らすしかない。しかし、それは残業代に一部依存していたエンジニアの生活に少なからずの影響を与える。何らかの生活防衛策が必須になってきているようだ。 |
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
進行する不況に対して、一人ひとりのエンジニアはどう対処すればいいのか。最も多いのが「節約」の36%だが、「特に何もしない」という人がほぼ同じ割合の35%いるのは、少々意外だ。対策が思いつかないほど状況の変化のスピードが速いのだろうか。対策としてはほかに、「貯蓄・投資」19%、「スキル・キャリアアップに投資」8%、「副収入を上げる」2%となっている。節約の中身をみると、まず会社が要請する省エネ・省資源・省経費などの節約策に、社員として呼応しようという動きが見える。 |
DATA2 現在の不景気に対して、自分なりに講じている対策 |
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
グローバル不況に対して、単に政府や会社の無策をあげつらうのではなく、全社一丸となって無駄なコスト削減に取り組み、なんとか危機を乗り越えようとする涙ぐましいまでの努力を感じる。 ここでは企業の一員としての取り組みと、個人としての節約は、必ずしも矛盾しないのだ。例えば「不使用の電気機器の電源オフ」を職場の節約法として挙げたエンジニアは、家庭でも「無駄な電気を消す。暖房の温度を控える」と答えている。オフィスの省エネ意識が家庭の省エネに繋がり、家計のスリム化が逆に職場の無駄を気づかせる。そういう循環が生まれている。さらにエンジニアらしい不況脱出策を示唆するコメントもある。 |
|
|||||||
こうしてみると、各自が取り組む不況対策は、職場のCO2削減などの環境対策や業務効率改善にも繋がるもの。今回の不況をネガティブに捉えるのではなく、エンジニアらしい切り口で、改革・改善のチャンスとして捉えようという動きが見えるのは、なんとも頼もしいことである。 |
「プライベートの家計や趣味などに関して心がけている節約法」では、「外食を減らし、自炊する」「習慣となっていた嗜好品の節約」「節電」「ネット通販や価格調査サイトなどの活用」「電車や車をやめて自転車で通勤するエコ通勤」などを挙げる人が多かった。 |
DATA3 プライベートで実践している節約法 |
以下、ちょっとユニークな節約法を答えてくれたコメント紹介しよう。 |
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
みんな頑張っているなあ。しかしながら、こうした小さな節約策の積み重ねが、結果的に内需消費を冷え込ませ、さらに不況を長引かせる要因になるかもしれないと考えると、少々複雑ではあるけれども。 |
給与やボーナスなど収入源の危機を迎えたエンジニアは、節約を意識すると同時に、何らかの手段で収入を増やすことを考えなければならない。本業の片手間にできる副業からの副収入をアップさせるのだ。
そこで今回のアンケートでは「副業・副収入」についても聞いている。500人中、115人が回答してくれた。回答の中で多いのは、FX・株式などの「投資」、アフリエイト・アドセンス・ネットアンケート・ポイントサイトなどの「ネット活用ビジネス」、インターネット・オークションによる「ネットでの売買」さらにWebサイト制作・ソフトウェア開発・パソコン出張サポート・雑誌の記事執筆など「本業もしくは趣味の知識を活かしての副業」だ。 |
それで得られる金額は人によってまちまちだが、なかには株式で毎月30万円とか年間最大400万円というスゴ腕もいる。株価低落が続くこの時期に、どうやったら儲けられるのか、そのテクニックをぜひ聞いてみたいところだ。なお預貯金や投資を含むエンジニアの資産形成については、次回あらためて紹介する予定だ。 副収入の全体をみると、月1〜5万円の範囲がもっと多い。たかが1万円といっても、賃金カットで残業がゼロになってしまったような人にとっては貴重な収入。それが定期的なものであれば、一時の「定額給付金」などよりは、よほどありがたいといえる。 回答の中には、「新聞配達・月9万円」「人材派遣・月5万円」「同業他社での顧問業・月10〜15万円」「日雇い労働・1回1万円」「風俗産業の送迎・月10万円」などユニークなものがあった。 |
|
||||
このレポートの連載バックナンバー
エンジニア給与知っ得WAVE!
キャリアプラン、ライフプランの設計に「お金」の問題は欠かせません。エンジニアのお金に関する疑問に独自調査データとトレンド情報でお答えします。
このレポートを読んだあなたにオススメします
残業ゼロ、給料激減、部署廃止…歴史的経済危機にじっと耐え忍ぶ
ドS不況VSドMエンジニア 100年に一度の攻防戦
100年に一度といわれる世界的な経済危機の影響を今、モロに受けているというエンジニアたち。今回、その悲惨な現実の数々を紹介すると…
高い技術力、幅広い人脈、上司へのゴマすり…どれが有効?
リストラ対象エンジニア 明日からできる10の回避策
トヨタ自動車が増産を発表するなど、最近になってようやく明るいニュースも聞かれるようになってきた。しかしながら、米国政府が景気後退…
エンジニア給与知っ得WAVE!
不況で減額もやむなし?2008年冬のボーナス額と満足度
急激な景気後退の中で、企業の設備投資や生産調整、人員調整が続いている。日本経済には、急に暗雲が立ちこめ、雷鳴轟き、嵐が吹きすさぶ…
エンジニア給与“知っ得”WAVE!
賛成?反対?会社の経費削減1位はエアコン設定温度
原油をはじめとする材料価格の高騰で、企業は利益を捻出するのに必死だ。省エネ、省資源、経費削減体質は一般的になってきたが、今年はさ…
エンジニア給与知っ得WAVE!
30代エンジニア832人で考察する今どき年収実態
人生と仕事の基盤を築くうえで重要な時期にあたる30代。結婚や子育てなど、個人のマネーライフの中でも、しっかり稼いで、しっかり貯め…
IT業界、生保業界…7人の人事に聞いたウラ事情
人事担当者が告白!転職者の給与はこうして決まる
「前給考慮」「経験能力に応じて優遇」などは募集条件でよく見る言葉。でも前給や経験能力を、具体的にどう考慮して給与を決め…
あなたのメッセージがTech総研に載るかも