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働かない上司が手柄を独り占め、結婚翌月に海外単身赴任の辞令… 第1位は「ダメ上司にウンザリ」――エンジニアが転職を考えた瞬間
「こんな会社、辞めてやる!」──どういうきっかけで、人はこんな思いを抱くようになるのか。転職を考えるようになった瞬間とその顛末(転職に至ったかどうか)を、エンジニア300人にアンケートにより、明らかにしていく。
(総研スタッフ/関洋子 イラスト/takashi kuwahara)作成日:08.09.10
8割の人が一度は転職を考えた瞬間がある
 Tech総研では25〜40歳のエンジニア300人に「転職を考えた瞬間」についてアンケートを実施した。最初の設問で、「これまでのエンジニア人生の中で、転職したいと考えた瞬間があったかどうか」を聞いた。その結果、約8割の人が一度以上は転職を考えた瞬間があると答えた。だがここで注目したいのは2割の人は、転職を考えた瞬間が一度もないということ。編集部ではほとんどの人が一度くらいは転職を考えた瞬間があるのではないかと予想していただけに、現状に満足をしている人も意外に多いこともわかった。また一方で3回以上、転職を考えた瞬間があると答えた人も約4割いた。
 次に、一度は転職を考えた瞬間があるというエンジニアに対して「どんな瞬間に転職を考えたのか」を聞いた。その結果はグラフを見ればわかるように、約7割強の人が人間関係および評価・待遇関係の問題により転職を考えるようになっていた。しかし、この4つのカテゴリーは、さらに詳細な理由に分かれる。次からはさらに詳しく、転職を考えた背景、その顛末を見ていこう。
図1.これまで何回、転職を考えた瞬間がありましたか?
図2.どういう瞬間に転職を考えましたか?
エンジニア300人に聞く「転職を考えた瞬間」大公開
瞬間1 人間関係:37.4%
 そのうちの80.7%が上司(社長を含む)との関係を挙げている。その次に多いのが、同僚・部下との関係。当たり前かもしれないが、顧客との関係により転職を考えるケースはほとんどないことがわかった。
「手柄を横取りする上司にキレた」(29歳・生産管理A.Nさん)
自分が時間を費やし、頭を絞って考え抜いて作成した研究レポートを上司へ提出したら、上司が勝手に自分の名前に書き換え、上司の上司へ報告されていたこと。このことに対して上司の上司に弁明をしたが聞き届けられなかった。そして、賞与の査定が低く抑えられた。今回の成果の横取りだけでなく、これまでも実験データの偽造、改ざん、偽証などを業務命令という形で強いられて、つくづく今の会社のダメなところをいくつも見せられており、徐々に転職への気持ちが高まっていった。
結果
すかさずいくつか転職サイトを物色して転職先を探し、転職。

今回の行動におけるA.Nさんの満足度:60%(転職先でまだ働いていないため)
「うつ病への理解がまったくない社長に失望」(37歳・システム開発R.Gさん)
同僚がうつ病になった際、社長は「うつ病などこの世にはない。怠け病・甘え病だ」と言い、治療に行くことも許可せずこき使って働かせた。これに失望して転職を決意。
結果
派遣会社に登録したが転職せず。

今回の行動におけるR.Gさんの満足度:60%(どの会社に行っても状況は変わらないのではないかと考えたため)
「責任をなすり付ける上司にがっかり」(35歳・制御設計T.Wさん)
デザインレビューなどで社内の承認を得て、進めた内容でトラブル発生。その責任をすべてなすり付けられ、責められたこと。
結果
転職サイトに登録、試験を受け、内定までもらったが、転職せず。

今回の行動におけるT.Wさんの満足度:10%(妻が出産するなど、プライベートな状況により転職が難しくなり、強引に気持ちを収めた)
まだまだある人間関係における転職のきっかけ
●社長の奥さんのKY発言にあ然
社長の自宅で社長の奥さんに「駅の近くにいい土地があるの。がんばって儲けてくださいね」と言われた。こっちは給料1割減っているのに。(40歳・システム開発)
●品質管理の仕事とはISO9001の認証だ!?
「品質管理の仕事は、ISO9001の認証のためにあるのであって、おまえらにはそれ以外何の仕事があるんだ」と、当の品質管理の長から言われたとき。(36歳・品質管理)
●真剣に取り組んだから見つけられたバグなのに…
システム稼働中にプログラムのバグを見つけ報告したときに、バグの責任は仕事に対して真剣に取り組んでいないからだと上司に言われたとき。(39歳・システム開発)
●うそつき上司の横暴に愛想が尽きた
上司が業務の方針を決める際、従業員全員にうその報告を行い、無理やり方針を決定したこと。(31歳・テクニカルサポート)
●打ち上げの席の年上部下のきつい嫌み
PMとしてプロジェクトを成功させたとき、打ち上げのメンバーに「あなたにはしかられた覚えしかない」と泣かれたこと。(30歳・ITコンサルタント)
瞬間2 評価・待遇への不満:34.5%
 そのうちの4割強の人が、報酬に関する不満がきっかけで転職を考えていた。ボーナスの支給がなくなった、昇給がほとんどないなど、景気が上がらないという現在の世相を反映した答えも多く見られた。
「市民税は天引きされているはずなのに督促状」(38歳・システム開発A.Oさん)
市民税は給料から引かれているはずなのに、市役所のほうから、督促状がきた。この瞬間、辞めてやると思った。
結果
求人誌を買い転職。

今回の行動におけるA.Oさんの満足度:60%(転職をもう少し、落ち着いて考えればよかった)
「浪人した同僚が先に昇進するのは年功制だから?」(27歳・コンサルタントH.Nさん)
今年度の人事の結果で転職を考えた。実績もそれほどないのに、一年浪人している同僚(年齢は1歳上)が先に昇格していたこと。そこまで年齢重視かと思った。
結果
転職サイトへの登録をしたが、転職せず。

今回の行動におけるH.Nさんの満足度:50%(結婚を控え、退職を考えているため。私生活が落ち着いてから転職先は新たに考える予定)
「評価が給料にまったく反映されないなんて」(39歳・通信・インフラ設計Y.Sさん)
ほかの社員とは違い、私にしかできないことを何度となくやってきているが、給料に反映されないこと。実力での評価がまったくされないことに気づいた。
結果
転職サイトに登録したり、メールサービスを受信したりして情報収集しているが、転職はまだ。

今回の行動におけるY.Sさんの満足度:40%(いまだ納得のいく転職先が見つからないため)
まだまだある評価・待遇問題における転職のきっかけ
●楽しみにしていた海外旅行が水の泡に
夏休み直前に、装置トラブルが起こり、海外旅行に行けなくなった。(28歳・生産技術)
●評価の基準がわからない
こちらが大忙しで毎日残業を重ね必死に仕事をしているのに、40歳過ぎの先輩社員Aがやっていることといえば、お菓子を食べているか、ネットオークションをやるか、自分のメガネをふいているか。ほかの人は全員週休1日なのに、Aさんは完全週休2日で、週末には家族でキャンプやスキーを楽しんでいる。さらに家を新築し、同時に車も購入。これを聞いて、さすがにこんな不当な評価をする会社を辞めたくなった。(30歳・機構設計)
●仕事があまりにも暇で
仕事があまりに暇で毎日が単調過ぎたから。(28歳・研究)
●うその片棒は担ぎたくない
うそを説明するための資料を作らされたとき。(33歳・機械設計)
瞬間3 労働時間・職場環境:17.0%
 職場環境をきっかけに転職を決意する人は約2割弱。このカテゴリーには残業時間の多さをきっかけとした人も含め、その答えが7割弱と大半を占めた。また意外にも多かったのが転勤や異動を提示された瞬間を挙げた人で25.6%だった。特に家族(子供)がいるほど、転勤が転職へのトリガーになることが多いように思われる。
「月間労働時間は400時間超え。身も心もボロボロに」(32歳・パッケージソフト開発Y.Yさん)
月間労働400時間超えは当たり前という過酷な生活を強いられていた。このままでは命の危険性も感じたから。
結果
この会社の同僚・上司などに恩義を感じ、転職せず。

今回の行動におけるY.Yさんの満足度:50%(このまま居ても改善はされないのはわかっているが、義理人情も捨てられない)
「新婚1カ月目に単身赴任の辞令はひどすぎる」(37歳・金型設計S.Oさん)
結婚した翌月に海外単身赴任を言い渡されたとき。
結果
転職サイトへ登録し、実際に就職活動を行ったが、妻が海外赴任に同行することになり転職せず。

今回の行動におけるS.Oさんの満足度:100%(家族も同行できるようになったため)
「スローガン唱和という文化にはなじめない」(28歳・システム開発T.Gさん)
会社の全体会議では必ず、会社のスローガンを大きな声で言わされる。この企業文化になじめなかったため。
結果
友達から情報を収集し、転職。

今回の行動におけるT.Gさんの満足度:70%(文化の合わない会社にいるのは不幸だと思う)
まだまだある労働時間・職場環境問題における転職のきっかけ
●お盆休みも取れない
春から月に1回しか休まず働き続けていたのにもかかわらず、夏に五日のお盆休みを申請したら、「ほかの連中も働いているのに何を考えている」と言われ、取得できなかったとき。(33歳・素材)
●技術的な論理が優先されない
技術的な論理より対外的な面子が優先される風潮が根付いている。(28歳・プロセス開発)
●休みの日も休みじゃない
休日にも遠慮なく電話がかかってきてまったく休めない状況が続いていて、改善されない。(30歳・運用)
●内示もなく勝手に異動?
知らない間に部署が変わっていた。(34歳・システム開発)
瞬間4.将来・キャリアへの不安:9.4%
 現在の会社や部署にいても、将来が見えない、キャリアが築けないという不安を感じた瞬間に転職を考えた人は、全体の9.4%しかいなかった。おそらく、将来やキャリアへの不安は瞬間的に感じるものではなく、継続的に感じているものだからだろう。つまり将来やキャリアへの不安を感じながら、上記3つの要因がトリガーとなって転職を考えるようになるからだと考えられる。この回答の6割以上を占めていたのが、自身の将来への不安ではなく、会社の経営状態への不安を感じての転職。イマドキの世相を反映している。
「説明もなく給与を遅配するなんて」(34歳・ITコンサルタントN.Kさん)
給与遅配が続いていたが、会社からは何の説明もない。このママいてもいいことは何もない。早く抜け出さねばと感じた。
結果
人材バンクに登録し、転職。

今回の行動におけるN.Kさんの満足度:70%(経営陣が信頼できなくなっていたため)
「どんどん社員が辞めていく」(30歳・運用監視M.Tさん)
社員がどんどん辞めていき、会社としての魅力がなくなっていったとき。
結果
転職サイトを閲覧したり、転職した人に話を聞いたりしたが、転職せず。

今回の行動におけるM.Tさんの満足度:70%(家族がいるため、思いきった行動が起こせなかった)
「3日の出張予定を1カ月間に勝手に延長」(35歳・生産技術A.Hさん)
3日間の海外出張3日間の予定が別件対応の指示を受け、交代要員が入るまで1カ月間人質として置き去りにされたこと。
結果
仕事はいくらでもあるとの考えがあったのでとりあえず退職し、転職。

今回の行動におけるA.Hさんの満足度:50%(短気は損気。少々のことは我慢したほうがよいと感じた)
まだまだある将来・キャリアへの不安における転職のきっかけ
●よい技術は不良品の救済の手段
よい技術を、よい製品を作るためではなく、不良品の救済に使われたとき。(28歳・生産技術)
●短期間にころころ変わる組織に不安
合併と分割を繰り返していた。(31歳・システム開発)
●組合に強制参加させる会社
脂の乗っている研究者が組合に強制参加させられたこと。(34歳・研究開発)
●危機感のない経営陣
業績が悪化しているのに、社内の実績報告会議で危機感が全く感じられなかったとき。(35歳・ミドルウェア開発)
短期は損気。よく考えて転職しよう
 実は今回のアンケート結果では、実際転職をした人は34.9%だった。つまり65%以上の人が転職を考えても、転職には至っていない。多くの人は転職を新しいことへチャレンジできるステップアップの機会、自分の可能性を広げるチャンスというように、人生のよい転機のひとつとしてとらえてはいるものの、中には危険なギャンブル、最後の逃げ手段、ゼロからのリセットというようにリスクのあるものとしてとらえている人も多かったからだ。また当たり前とはいえ、家族のいる人や30代半ばの年齢になればなるほど、転職に対しては消極的になるからだろう。
 以下にアンケートに協力してくれたエンジニアのみなさんからの転職に対するアドバイスを紹介する。
図3.転職を考えた結果、転職しましたか?
「隣の芝生は青く見えるもの。一度冷静になり、一歩引いたところで自分の置かれている環境を見定めよう」(37歳・システム開発)
「自分にとっていちばんの楽しみが何かを考えて、それを満たしてくれるところにいけばいい」(30歳・ITコンサルタント)
「"転職しない"という選択肢も常にもっておく」(35歳・ミドルウェア開発)
「本当に転職すべきかどうか、いま一度考えてみること。現在の職場環境で解決できるなら解決できる方向に考え、周りの人の意見を聞き、転職はそれでも解決できないときの最終手段にすべき」(33歳・サービスエンジニア)
「人間関係などでの転職であれば次の職場でも必ず問題は起きる。やりたいことがあるから転職するという転職でないと成功はない」(28歳・プロセス開発)
「転職するかしないかよりも、まず、自分が将来どうなりたいか、何をしたいかを考えるべき。将来が明確になれば、転職するか、しないかの結論もすぐに出るし、その後の転職活動もスムーズにいくと思う」
 ほんの些細なことから、転職を考える瞬間は訪れることもある。しかし短期は損気。まずはいま一度、自分自身のことを振り返り、本当に自分は何をしたいのかを見定めてから、行動を起こしてみても遅くはないだろう。
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関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ 関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ
私が前職の会社を辞めた理由は、度重なる給与の遅配など経営状況の悪化を感じたことが主なきっかけだった。しかし、本当に決意できたのは、「この会社に居続けても、自分のやりたいことができない」とわかったから。転職を考えた瞬間から決意するまでには、それなりの時間がある。それをこれからのエンジニア人生を考える時間として有効に使えば、いい結果が得られるのではないだろうか。

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