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明日に向かってプログラめ!!PARTU vol.9/10 小飼弾@Perl Encodeは、1冊10分で本を読む
私は読書が大好きなのですが、小飼弾さんには到底かないません。ご自宅の広いリビングの壁一面に高さ3mの大きな本棚が並び、ここに2万冊、別の部屋に1万冊があるとのことです。その読みっぷりからブログでの書評も好評ですが、当然ながらプログラミングにも一家言おもちです。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/関本陽介)作成日:08.05.23
プログラミングとは、PCの解釈を段取る手段である
小飼弾さん
小飼さんのブログ「404 Blog Not Found」
小飼さんのブログ「404 Blog Not Found」
JavaScriptで実装したブログ内の計算式
JavaScriptで実装したブログ内の計算式
1日10冊を読んでいるが、アウトプットがもどかしい!
ブログがとても人気ですね。特に書評が話題です。

そもそものきっかけはライブドア問題でした。オン・ザ・エッヂ(旧社名)時代に取締役だったのでいろいろな媒体から取材を受けたのですが、言っていないことをテレビで流されたりした。そこで、本当の気持ちを伝えるカウンターメディアとしてブログを始めたのです。そのうちに文章を書くことに慣れてきて、amazonのアフィリエイトコードも取っていたので、書評もやってみるかと。ですから、献本はいつでも大歓迎です(笑)。

毎日のように更新していますし、5〜6冊を載せている日もあります。毎日どのくらいの本を読むんですか?
平均すると献本で届くのが5冊、自分で買うのが5冊で、1日10冊くらいかな。もっと多くの書評を載せられますし、読むだけなら今の5倍は大丈夫だと思いますが、そこまで手が動かない。
 人間にはインプットは大量にできて、私にもまだまだキャパシティはありますが、アウトプットはもどかしいほど時間がかかるでしょう。それも、筋肉を通してしか世の中とかかわれないので、結局は手になりますよね。だから、とりあえずあと2本ほど手が欲しいですし、理想的には義体化してコンピュータとつなげるなどもいいかと。
1日10冊ですか! どのくらいのスピードで読むのですか? 小飼弾さん
1冊で10分。もっと早いかもしれない。たいていは何かをしながら読んでいて、いちばん多いのはほかの本を読みながらですね。本のジャンルは科学技術系が多くて、以前に比べて小説はあまり読まなくなりました。
 ただ、筒井康隆は全部読んだと思います。彼はすごい。小説も書評もエッセイもどれも最高で、日本のダビンチと言っていいんじゃないでしょうか。あとは小松左京や星新一も読みましたし、同じSF作家の神林長平は「日本語が読めてよかった」と思える作家ですね。
ブログの中でプログラムを書かれていますね(上の画像)。
この計算式はJavaScriptで実装したものですね。ハッカーに多いと思うのですが、私は文章を書くのとプログラムを組むのを明確に区別していないんです。プログラミングは楽ですしね。
 両者を分けるとすれば、文章は読者を想定するものですが、受け手によって解釈が異なるので、ある程度の幅をもって書くようにしています。一方のプログラムはコンピュータが読者なので、その反応が実験できるところが面白いですね。ブラウザの上で動かせるのはやはり便利ですから、最近ではJavaScriptが気に入っています。ちょっとしたものをつくるならC++が最適ですね。Perlはもちろん使っていますが。
Perlに携わるのはオープンソースへの恩返し
(Perlの開発者である)ラリー・ウォール氏と親しいようですね。 小飼弾さんのキーボード
最初に会ったのは米国外で初めて開催された、東京でのPerlのパワーカンファレンスでした。ラクダ本(ウォール氏の著書である『プログラミングPerl』[邦題])にサインしてもらいましたよ。まさかうちの賓客になるとは思いませんでしたが(笑)、彼には「人生これでいい」と背中を押してもらったような気がしています。
それは何かを話してもらったとか?
はい。いろいろあるのですが、中でも「Perlは世界初のポストモダン・プログラミング言語である」というスピーチかな。何度か翻訳しようとしたのですが、英語を目いっぱい使っているので難しい。読みたければ英語を勉強したほうが早いかも。
小飼弾さん 今はPerlのEncode Moduleのメンテナンスをしていると聞きました。Ver5.8の開発にもかかわったとか。
オン・ザ・エッヂ時代にもJcode.pmのメンテなどをしていましたが、退社したころにVer5.8の開発メンバーを探しているとMLで知って、それじゃ俺がやろうと。辞めた年は収入ゼロで時間もありましたから、半分恩返しになるかと思って始めました。
今でもプログラムを書かれているんですよね?
もちろんです! ブログのもそうですが、内容は本当にさまざまです。私は意外と受け身の性格ですので、「弾さんでないと無理かな」と依頼される仕事が多いですね。仕様さえくれれば何でもつくりますし、予算をもらえればGoogleのシステムだって開発できます。
 ただ、単にプログラミングをするのではなく、「プログラム+α」が大事だと思うんです。プログラミングは、コンピュータ上で何かを動かす仕組みをつくる手段、コンピュータが解釈できる段取りを組む手段であって、それ自体は全然大したことがない。大切なのはプログラマが「何をするか」を決めることで、かなり難しいのだけれど、がぜん楽しい。
ただ、本当にプログラミングを楽しんでいる職業プログラマは少ないですね。早くSEになりPMになりたいと思う人も多い。
そう思ってしまうのは、つくる対象を選べないからでしょう。人を動かすにも技術が必要ですが、私は手を動かす人のほうが好きだなあ。仕事が選べる、あるいは自分で決められる立場の人は、誰もがプログラミングを楽しんでいますよ。仕事としては簡単ではないですし、お金になりにくい面もありますが。
 例えば、Rubyを開発したまつもとゆきひろさん。プログラミング言語をデザインするなんて究極の楽しみですが、これが儲からない。だって、英語を使う人は多くても誰も使用料を払わないでしょう。それが、その英語でハリー・ポッターを書けば莫大なお金にもなるわけです。私は後者に行ってしまったので、今はオープンソースで恩返しをしているのかな。お金になりにくい分野の開発には、足長おじさん(パトロン)が必要なのかもしれません。
プログラミングを始めたきっかけは何ですか?
PC8000やAppleUなどが出始めた時期が子供のころで、触れたことはありましたが、本格的に始めたのはカリフォルニア大学のバークレー校時代からです。入学当初は分子生物学を選択していたのですが、私は実験がヘタで、データをいじるときにコンピュータを使い始めました。それから正規の授業で習って、プログラミングを覚えていきました。
プログラミングの面白さとは何でしょう? 小飼弾さん
何かをつくるのは誰にとっても面白いことでしょう。特にソフトウェアは設計図も材料も不要で、出来上がりが早く、思い描いた形に近いものが完成させられる。実際のモノですと微妙なズレなどが生じますが、プログラミングはきちんと書けば、自分の意図をそのまま反映させられます。
目下の心配事は「50年後の日本語の力」
ところで今のお仕事、収入という意味ですが、主に投資から得ているとか。
20代のころから勉強と思って運用してきましたが、今は外貨投資が中心です。ただ、あまり積極的ではないですね。月に1回ポートフォリオを動かすなどもあるので、時間にしたら30秒とか(笑)。
私は株も何もしたことがないのですが、難しいものではないですか?
もちろん成功も失敗もありますが、元本次第だと思います。例えば、数十万円単位で儲けるには時間がかかるので、同じ時間で働いたほうがはるかに効率的です。数百万円単位でもほったらかしにはできませんから、実際には数千万円オーダーからでしょうね。仮に1億円を年利6%で運用すれば、税金は別にして600万円の利益が出ますが、6%とは昔の「郵貯」の金利なんですね。今では年平均6%は大変だから、税金を除いた生活費を稼ぐとしたら、運用資金は3億円からでしょうか。
 ただ、広い意味での投資は誰でもしていることです。あなたが私にアポを入れて取材をしているのも投資で、リターンを得ているわけでしょう。そもそもビジネスとはオッズのわからないギャンブルだと思いますし、心掛け次第でオッズはよくも悪くもなる。思うようにはならないけれど、想像以上の成果が出る場合もある。
これからやってみたいこと、興味のあるものはありますか?
今の私はやりたいことをやっていますので、最近は「職業は弾でOK?」なんて言っています(笑)。ただ、興味というか、50年先を考えたときに、日本語の力をどれだけ温存できているかが心配です。その国の言語の力は若い話し手がどれだけいるかで決まると思いますが、少子化でいなくなるし、英語などと違って日本人以外の話者がほとんどいません。
 例えば、日本語の力が衰退すると日本語で高等教育が受けられなくなります。日本では日本語で博士号を取れますが、世界的に話し手が多いスペイン語でも、スペイン語が母国の国で博士号取得に英語が必要だったりします。また、日本では日本語で本を書いてまだ食べていけますが、フランスではほかに仕事をもたない職業作家が一ケタくらいに減ったと聞きました。
 私は日本語にそうなってほしくない。言語の強さは経済にも直結するので、言語力の弱さは日本の国力低下も招きます。また、言語は文化的多様性の根本であり、文明の仲介者でもあるので、一言語の衰退はほかの言語にとっても危機を招きます。 小飼弾さん
私も日本語が好きなので、そうはなってほしくないですね。
本当に豊かな言葉だと思いますよ、日本語は。少子化よりも国外で話す人がいないほうが原因なのかもしれません。本当に心配だなあ。
小飼弾さん 小飼弾さん(38歳)
1969年生まれ。中学卒業後15歳で大学検定に合格し、17歳のときに米カリフォルニア大学バークレー校に入学。冬季休暇で帰国中に実家が火事になり、そのまま中退する。1999年に株式会社オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)の取締役就任。99年には最高技術責任者に就任し、2001年に退任。PerlのVer5.8や日本語コード変換モジュールJcode.pmの開発に携わり、現在は主にEncode Moduleのメンテナンスを担当する。
04年よりブログ「404 Blog Not Found」をスタート。1996年設立の個人資産管理会社ディーエイエヌ有限会社の代表取締役。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
小飼弾さんは走り方が愛らしい! ご自宅の広いリビングでお話をうかがったのですが、二度ほど小走りで部屋を出て行かれたことがありました。電話が鳴ったときと、著書の『小飼弾のアルファギークに逢ってきた』を取りに行かれたとき。こちらに気を使って急いでいらしたのですが、その小走りの後ろ姿がとても子供っぽかった(失礼!)のです。なぜか、すご腕のプログラマにはこうした人が多いですよね。

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