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懐かしの“アレ”がエンジニアの原点だ! Vol.36 限界まで音を詰め込む魂の叫び!「ヘヴィメタル」 「ヘヴィメタル」
「エンジニアはメタルがお好き」。これまで編集部が接したエンジニアから、幾度となく耳にしたことばだ。レアメタルでもベアリングメタルでもない、音楽ジャンル「ヘヴィメタル」がエンジニアの心をわしづかみにする理由とは?
(取材・文/ぱうだー 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:08.04.07
今回のテーマ:ヘヴィメタル
ヘヴィメタル
1970年代にハードロックの一派として生まれたヘヴィメタル。ヘヴィメタル特有の、重いディストーション(※1)をかけたギターとアタックの強いバスドラム(※2)が奏でる「重低音+疾走感」は、音響機材の進化と切り離せない関係にあった。ヘヴィメタルの全盛期である1980年代には、ロサンゼルスを中心としたLAメタル(※3)が生まれ、MTVの強力バックアップのもと、多くの伝説的メジャーバンドが現れた。その後、ヘヴィメタルのムーブメントは旧西ドイツ・イギリス・日本をはじめとした世界各国に広がり、地域による独自性をもったサブジャンル(※4)が数多く生まれた。1990年代に一時ヘヴィメタルは下火となったが、2000年代からは音楽業界における「再結成ブーム」も手伝い、モトリー・クルーやヨーロッパといったベテランバンドが改めて脚光を浴びている。
原田真吾氏
原田真吾氏
ライブハウス・エアーズのプロデューサー。さいたま市を拠点とし、地域の音楽シーン活性化を目的に日夜活動している。ライブハウス一筋、アイアン・メイデンを愛する27歳。

今回、ハードロック/ヘヴィメタルファンのためのライブイベントを10年にわたって開催しているライブハウス・エアーズを訪問。ここでは定期的に「ハードロック・ナイト」というイベントが開催され、多くのハードロック/ヘヴィメタルバンドが出演している。毎夜、感動のステージを演出する原田氏に、ライブ主催者側からみたヘヴィメタルの魅力をうかがった。
回のテーマ「ヘヴィメタル」のファンの特徴は?
高校生から40代まで、いろんな世代のファンがいることですね。「ヘヴィメタル」だけに限ったことではありませんが、ファン同士の結びつきは強いと思います。こちらのハードロック・ナイトがきっかけで出演者同士のつながりができたり、それでまたバンドの活動の幅が広がったりすることもあるんですよ。

う〜ん、あとはやっぱり長髪でしょうか?(笑)。ヘヴィメタルファンにはポリシーでずっと長髪にしている人が多いように思います。アイアン・メイデン(※5)などのバンドTシャツを着ている方も多いですよ。Tシャツはメタル文化のような気がしますね(笑)
さまざまな光を演出するステージライト
ステージ上のスピーカー
原田さんのエアーズでのお仕事とは?
僕がこの業界に入ったのは高校時代、バンドをやりながらここでアルバイトを始めたのがきっかけです。もともと音楽が大好きだったので、自然にこうなったという感じです(笑)。

私の仕事は、音響・PA・ミキサー・照明・バーカウンターと、ステージにかかわることはすべて。このほかにも、ライブイベントの企画やバンドのブッキングなども担当しています。たまに受付にいることもありますよ(笑)。
エアーズでは基本的に音響や照明などを専門的に担当するスタイルではなく、複数のスタッフで運営していますので、気づいたら何でもできるようになってました(笑)。
ミキサー側からステージをのぞむ
今日のライブに向けて調整中
ライブハウス運営の魅力とは?
ライブ中、楽しそうに演奏している出演者やファンの笑顔をみた瞬間ですね。やっていてよかったなと思います。バンドが4人だった場合、僕らスタッフは「自分は5人目のメンバー」だと思っているんです。ライブを成功させる、よい演奏にするためのパートナーというスタンスで、いつもお手伝いしています。何回も出演しているバンドとは、ミーティングというかたちで、「今日はここがよかった」「悪かった」などのアドバイスをさせていただくこともあるんですよ。

アーティストだけでも、ライブハウスだけでもいいライブは実現しませんよね。出演者・お客さま・ライブハウスが一緒になって、初めてライブは成り立つと思っています。ライブハウスに集まる人に共通しているのは音楽が好きだということ。皆さんで好きな音楽で一緒に盛り上がれる場をつくれるよう、出演者の気持ちになってサポートできるのは大きな喜びです。
リハーサルを待つ出演者
ステージのドラムセット
エアーズで定期開催しているイベント「ハードロック・ナイト」とは?
主にハードロック/ヘヴィメタルファンが交流するイベントで、数えたことはないんですが(笑)恐らく今までに100回以上は開催されてると思います。
このイベントではアイアン・メイデンやアンセム(※6)のコピー、10年以上自分たちのやりたい音楽を続けているバンド、そのほかに衣装やメイクまで本物そっくりな「完コピバンド」などいろんなバンドの出演で毎回、大変盛り上がっています。

出演にあたってはハードロック/ヘヴィメタルが大好き!という皆さんであればプロアマチュア問わず、コピーやカバーでもOKです。オーディションもありませんし、年齢や形態も問いません。「昔、バリバリハードロック/ヘヴィメタルバンドをやってた」という皆さんには、ぜひ一度遊びにいらしていただきたいです。
「ハードロック・ナイト」の開催風景
当日は4組のバンドが、熱いライブを繰り広げた
これからの夢&「メタルファンエンジニア」へのメッセージ
これからもいろんなジャンルの出演者やお客さまと一緒にミュージックシーンを盛り上げていきたいですね。
まだ出会えていないハードロック/ヘヴィメタルファンの皆さんとエアーズを通して出会えることを願っています。

いま全国的にハードロック/メタルは盛り上がりつつあると思います。休止していたメジャーアーティストの活動再開も増えていますよね。「若いのにすごい!」と思うメタルバンドも多くて、びっくりすることもしばしば。ヘヴィメタルには若い世代にも支持される、古くならない魅力があると思います。

エアーズに出演するバンドには、学校の先生だけどメタルが好きで、バンドをやっている人もいます。メタルファンのエンジニアのみなさんも、ぜひ仕事とは違う趣味の一面を、ライブハウスで楽しんでいただければと思います。
地下に降りる階段はフライヤーだらけ
演奏で使うベース
読者インタビュー メタルファンエンジニアに聞く!
さて、前半ではライブハウスをプロデュースする原田さんに、ステージに立つたくさんのバンドを通して、ヘヴィメタルの魅力を語っていただいた。後半では、筋金入りのヘヴィメタルファンである読者エンジニアにインタビュー。エンジニアの目からみたヘヴィメタルの魅力に迫る!
「ヘヴィメタル」に夢中だった読者のプロフィール
  佐山さん(仮名・34歳)
ネットワークエンジニア
どうしても着てしまうメタルTシャツ
ヘヴィメタルに夢中になったきっかけは?
佐山: 中学生のころ、早朝のMTVで。僕は朝早く起きて受験勉強というスタイルだったんですが、朝6時ごろかな、TVをつけたらMTVでイギリスのデフ・レパードの『Pour Some Sugar on Me』がビデオクリップで流れていて、そのかっこよさにくぎ付けになりました。

中学生ではありえない「全員男性なのに長髪」というのも衝撃的でね(笑)。このころ、『Pour Some Sugar on Me』はMTV TOP100で1位、この曲が入ったアルバム『ヒステリア』 (Hysteria)も、当時1000万枚を超える大ヒットでした。
ヘヴィメタルにのめりこんだころ
佐山: 好きな曲を知るきっかけは、だいたいMTV。あとはTBSの深夜枠でやっていた伊藤政則の『ピュアロック』かな。音楽雑誌は『BURRN!』や『プレイヤー』を筆頭に結構読んでましたね。でもこのころまわりにファンがいなくて孤独でした(笑)。

高校生で始めたバンドでは、ハードロックやヘヴィメタルバンドの曲をコピーしていました。僕はベース担当。早弾きで有名なビリー・シーン(※7)に憧れて、彼と同じDチューナー(※8)を使ったり、リストバンドを何個も巻いたり(笑)、奏法をまねたりしてました。LAメタルのラットのベーシスト、フォアン・クルーシェもかっこよかった。『Dancing Undercover』というアルバムをひたすらコピーして、ライブでは彼のアクションもコピーしてましたよ(笑)。
ヘヴィメタルの魅力とは?
佐山: とにかくかっこいい。すべてにおいて尋常でないところがいいですね。あのスピードと重い音、音数の多さ、それから心に響くハイトーンボーカル(笑)。スピードメタル、ジャーマンメタル、スラッシュメタルなど、いろんなジャンルがあるのも面白いですね。北欧メタル特有の、メロディと構成の様式美は素晴らしいと思います。

ライブでのお約束も楽しい。バンドにはお決まりのポーズというのがあるんですね、派手に腕を振り上げたり、ギターをマシンガンのように客席に向けたりとか(笑)。 ギタリスト固有の特徴のある弾き方や技もそう。ライブでこういうシーンはものすごく盛り上がります。

そしてライブといえば、どうしても着てしまうメタルTシャツ。黒字にアルバムジャケットやツアーがあった地名なんかが書いてあるアレです。冬なんか会場で上着を脱ぐと、みんなが前回のツアーTシャツを下に着ていたりする(笑)。 言葉を交わさなくてもファン同士、Tシャツを通じて「俺は好きなんだぜ」とか「このバンドもありだよね」というメッセージが飛び交う。そんなところも魅力ですね。
エンジニアにはヘヴィメタル好きが多い?
佐山: たしかにそうですね。技術者+メタル+アニメ好きは三つぞろえな気がします。僕のまわりだけかもしれませんが(笑)。メタル好きにはこだわり派が多いんですが、考えてみれば技術やアニメも同じこだわりの世界ですよね。

ヘヴィメタルはエレキギターの音が重要ですが、エフェクター(※9)の組み合わせやアンプのインピーダンス(※10)とか、ファンにはマニアックな知識をもってる人が多いと思いますよ。バンドをやっていれば楽器の改造は当たり前、電気の知識があれば、エフェクターを自作してしまう人もいます。考えてみると、音へのこだわりってエンジニアリング的ですよね。
ヘヴィメタルと仕事はどこかでつながりますか?
佐山: メカに愛着をもって、こだわってよいものをつくる点は似てますね。僕もバンドでは、グライコ(※11)で特定周波数の音をブースト/カットしながら、ベースの音をどう作るか、かなり追求します。楽器やアンプに対しての愛着も相当です(笑)。これは仕事で自分が扱う製品をよくしていこうというのと、同じこだわりだと思います。
あなたにとってヘヴィメタルとは?
佐山: いちばん燃える音楽ですね。僕にとってなくてはならないもの。聴くなといわれたら死んでしまう(笑)。ほかのジャンルと比べても、もっとも気合が入る音楽ですね。通勤時におすすめです(笑)

ヘヴィメタルはメロディや構成に凝っているので、音量を除けば年を重ねても聴けるジャンル。ライブの前列は無理でも、後ろで腕を組んでうなずきながら聴く、そんな楽しみ方もできるのでは? 今では古いとか、おじさんくさいといわれがちなヘヴィメタルですが、また脚光を浴びてブームになる日がくるといいなと思います。
ディストーション(※1)
ディストーション(distortion)とは「歪み」を指し、電気的に音を増幅させ、歪み・ひずみのある音をつくるエフェクター。

バスドラム(※2)
ドラムセットの一部で、正面に置かれている一番大きなもの。ペダルを足で踏み、先についたビーター (Beater)でたたく。バスドラムは通常ひとつだが、ヘヴィメタルバンドでは楽曲の迫力を増すためふたつにしていることが多い。

LAメタル(※3)
ヘヴィメタルのサブジャンルのひとつ。ヘヴィメタルでありながら、曲調や歌詞が欧州と比べるとアメリカ西海岸らしく明るく陽気。代表的なアーティストはモトリー・クルーやラット。

サブジャンル(※4)
地域別では上述のLAメタルのほかに、イギリスや欧州、日本などで独自のジャンルがある。そのひとつ「ジャーマンメタル」はLAメタルに比べて、ドイツのクラシック音楽の影響も感じられる叙情的なメロディを特徴としている。地域に限定されないものでは、ヘヴィメタルにハードコア・パンクの過激さが加った「スラッシュメタル」やスラッシュメタルをさらに破滅的に、死や地獄というキーワードの歌詞を特徴とした「デスメタル」など、その数は数十にのぼる。現在も分化が進み、新しいジャンルが生まれている。

アイアン・メイデン(※5)
1975年に結成されたイギリスの代表的なヘヴィメタルバンド。NWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)ムーブメントの筆頭にあげられる。バンド名は中世ヨーロッパの拷問器具「鉄の処女」を意味する。現在も活動中。2008年2月には来日ツアーも実現。
アンセム(※6)
1981年に結成された日本のヘヴィメタルバンド。1992年に解散したものの、2000年にドラムにラウドネス・本間大嗣を迎え再結成。現在も活動中。

ビリー・シーン(※7)
ニューヨーク出身のベーシスト。1953年生まれ。ピックを使わないフィンガー・ピッキングの超絶速弾きで有名。ハードロックのDAVID LEE ROTH BAND、Mr.Bigのバンドメンバーであったほか、日本でもB‘zのレコーディングに参加した。音楽雑誌で何度かベスト・ベーシストに輝き、彼の奏法を学ぶための教則本やDVDも存在する。

Dチューナー(※8)
エレキギターのヘッドにつける専用チューナー。通常いちばん低い弦はEに調弦されているが、Dチューナーはスイッチひとつで1音階下のDにすることができる。YAMAHAからDチューナーつきのエレキベース、「ビリー・シーンモデル」が発売されている。

エフェクター(※9)
エレキギターなどの電気信号に変換された音に一定の効果を加え、さまざまな音に変化させるもの。ほしい効果によってさまざまな種類があり、いくつかのエフェクターを組み合わせて使うこともある。

インピーダンス(※10)
交流回路における電圧と電流の比。よりよい音をだすためのアンプとスピーカーの関係で考慮される。

グライコ(※11)
グラフィックイコライザーの略。いくつかの周波数帯域ごとに、つまみなどによってゲインを増減して音質をコントロールすることができる回路。
最後に:エンジニアだからこそ、メタルのよさがわかる
ヘヴィメタルならではの重低音とスピードは、音楽機材のエンジニアリングと、音へのこだわりがあってこそ実現される。たくさんの音が凝縮されたヘヴィメタル。複雑・かつ美しいソースコードを鑑賞するように、エンジニアだからこそ、緻密に計算された曲の構成を楽しめるのかもしれない。
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