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家電にはエンジニアゆえのこだわりがある。そうだろ? 性能?静音?エンジニアは自作PCのどこにこだわるか
既製品を購入するより自作で組んだほうが安かったデスクトップPCも、いまやBTOによって、以前より手軽に自分好みの製品を手に入れられるようになった。しかし、それでもまだ自作PCにこだわるエンジニアは多い。彼らは手間ひまかけて、なぜ自作PCを組むのか。アンケート調査から、その真相を探ってみた。
(総研スタッフ/タニー只野 イラスト/にぎりこぷし)作成日:08.03.25
はじめに 自作PCの魅力は「パーツ単位でのカスタマイズ」
 今回、Tech総研で200人の自作PCを組んでいるエンジニアを対象に、自作PCについてのアンケート調査を行った。自分好みのスペックで、安価に作れる自作PC。特にどんなトコロが魅力か聞いてみた。
 自作PCの魅力、その第一位は「パーツ単位でカスタマイズできる」というもの。パーツ単位で自由に組むことで、無駄な機能を削り、最大限に自分の求めるスペックを強化することができる。しかも故障したときにパーツを取り替えることで、メーカーに依頼して高額な料金と日数をかけることなく修理できることも、パーツ単位のカスタマイズにおける魅力のひとつとして挙げられた。なかには「完成品だとどのメーカーの部品を使っているのかわからない。それぞれ好きなメーカーの部品を使いたいから自作している(39歳 男性 生産技術、プロセス開発)」という声も。
自作PCの魅力はドコにある?
 続いて第二位はコストパフォーマンスのよさ。こちらはバルク品やジャンクを利用して、拡張性よりも安価に作ることが目的のようだ。そして第三位、第四位は、「作るのが楽しいから」「PCの勉強になるから」という、まさにエンジニアらしい回答。「最近では既製品のほうが安価であることも多いので、結局のところ好きだから自作PCを使っているという理由が一番かも(31歳 男性 システム開発(汎用機系))」という声に代表されるように、パーツの組み合わせをあれこれ考え、組み立てていく過程を楽しむエンジニアが多いようだ。
 なお、少数意見ではあるが、「奥さんの目をごまかしつつ新しいPCを手に入れるため。ケースは10年前のものだが、中身はnForce430+Athlon 64 X2でVista Ready(39歳 男性 パッケージソフト・ミドルウェア開発)」という隠密派の存在も。見た目を変えずして中身を変えられるところも、またひとつの魅力なのかもしれない。
特にこだわっているパーツは?ランキング編
 パーツまでこだわれるのが、自作PCの魅力。すべてのパーツをハイエンドにしたいとこだが、どうしても予算は限られる。そんなジレンマと戦いつつ、自作PC派のエンジニアがどうしても譲れないパーツは何だろう。回答の多かったものからご紹介していく。
第1位 CPU
CPU  アンケート結果の第一位はやはりCPU。製品名まで聞いてみたところ、回答者の使用しているCPUは、Intel社のCore2QuadやXeonといった高性能の製品が散見され、その主な目的は「仕事」か「ネットゲーム」と両極端。どちらにしろPCを常時稼働させているケースが多かった。また、「あえてIntel社ではなく、価格を抑えてシェアトップに挑むAMD社のCPUを使用している(32歳 男性 サービスエンジニア)」という、メーカーへのこだわりを見せる声も目立った。
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子供用のPCも含め、複数のPCを使用しているのでファイルサーバを構築しているが、常時稼働にしたら電気代が上がったと言われたので、Pemtium-Mシリーズの753とか、CoreSoloのU1300とか、省電力ノートPCでしか使用されていないような低消費電力CPUを使っている。(37歳 男性 研究、特許、テクニカルマーケティングほか)
CPUは交換したくなったときには、規格が変わってマザーボードに対応していないことが多くほぼ全交換になってしまうことが多いので、CPUは最初にいいものをつけて3年くらい使っている。(32歳 男性 機械・機構設計、金型設計)
仕事でも使っているので、開発アプリケーションのマルチCPU対応を確認するため、コアが多いCPU(Quad)を使っている。実際に開発したプログラムを動作させてみたら、2つのコアしか動作しておらず、プログラムの対応に迫られた……。(39歳 男性 システム開発(Web・オープン系))
第2位 静音向けパーツ
静音向けパーツ  第二位は、使っているパソコンをできるだけ静かにするための静音パーツがランクイン。できればファンレスが望ましいとしながらも、大口径ファンの低速回転で静音化を目指したり、ケースを工夫したりと音を消すためのさまざまな対策を行っているようだ。気になりだすと止まらないパソコンの音。特に家族への配慮から静音を工夫する既婚エンジニアたちの努力が光る。
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ファンの音がうるさくいかにも電源が入っている感じだったので、電気代がもったいないといきなり妻に切られたことがある。それ以来、ファンは静音、LEDの配線はあえてつながないなど工夫している。(39歳 男性 パッケージソフト・ミドルウェア開発)
家族から、うるさい、熱いとクレームが入ったので、ケース類は市販品をベースにエアフロー改善の加工やファン追加、またファンも大径ファンを降圧して静音化している。ものによっては可変ファンを使用して、用途に応じて回転数を変えている。(37歳 男性 研究、特許、テクニカルマーケティングほか)
ワットチェッカーを使って、パーツごとの消費電力を推測し、いろいろ組み合わせてできるだけ消費電力を少なくした。本体は最大でも110W程度に収まるようにチューニングしてあり、消費電力を意識していない一般的な自作の構成よりも20%以上低いと思う。(32歳 男性 機械・機構設計、金型設計)
第3位 メモリ
メモリ  続いて声が多かったのは、「メモリの容量」。処理スピードの向上のために「メモリは予算の許す限り積めるだけ積む」という声が多かった。また、回答者の特徴として、常にアプリケーションを立ち上げっぱなしにして取引を行いたい人が多いためか、使用目的にオンライントレードを挙げる人が目立ち、静音については「慣れれば気にならない」と重要視しない傾向が見られた。
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CPUを速くしても、メモリ容量が小さいとパフォーマンスが上がらない。だったら、周波数が低い安いCPUを買い、その差額をメモリ増強に回したほうが費用対効果がいいと思う。(35歳 男性 システム開発(マイコン・ファームウェア・制御系))
結構平均的な性能は確保できていると思いますが、メモリ2GBの威力は大きく、ほとんどページングファイルが発生することはなくなりました。メモリ価格も下がっているので、もう2GB追加しようかと検討中です。(39歳 男性 ネットワーク設計・構築(LAN・Web系))
動画ファイルのサイズが大きいので、メモリが少ないとHDDへのアクセスが多くなり、ガリガリうるさいし、動画の音声も聞こえなくなる(37歳 男性 半導体設計)
第4位 PCケース
PCケース  ランキング第四位は、インテリアの一部として見た目のデザインにこだわっているエンジニアからの声が多かったPCケース。せっかく自分の好みに組めるのであれば、外観も気に入ったものにしたい!という意識が高く、LEDを使うなどスタイリッシュなデザインを求める人と、コンパクトな筐体を求める人、またエアフローを意識した設計を重要視する人の3パターンに分かれた。
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いかにも自作です!って感じがしないほうがいい。また、オープンベイにカバーが付いていて、ドライブが見えないものを使っている。さらに、ケースが黒なので、ドライブのフロントも黒いDVDドライブにしている。(34歳 女性 回路・システム設計)
日本に代理店ができるかできないかくらいのころのGatewayのでかいケースでかっこいい。ATケースにATXのボードなので、後ろ部分が使いにくいが、それでも今後も使い込んでいく予定。(36歳 男性 システム開発(Web・オープン系))
コンパクトにしたかったのでケースを小さくしたため、電源とCPUクーラーの間に隙間がなく、冷却するための空気の流れが悪くなった。HDDクーラーを改造して強制的に空気を流すように自分で加工して使っている。(38歳 男性 システム開発(マイコン・ファームウェア・制御系))
第5位 ハードディスク
ハードディスク  第五位はHDD。もはや画像ファイルなどでなく、容量の大きいテレビの録画データなどを大量にハードに保存しており、とにかく容量重視で自分のPCを強化したいという声が多く集まった。また、故障時にも対応ができるよう、RAID構成で使っているという意見が多く見られ、データの保護という観点から、信頼性のあるメーカーのHDDを使用する傾向が高いようだ。
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 HDDの故障は買い替えるしかないし、失われたデータはあきらめるしかないが、基本的に複数のHDDに同じデータを保存するようにしている。ディスク容量は全部で3TBあるので、アクセスは速い。(39歳 男性 システム開発(Web・オープン系))

現在はRAIDで6台、内蔵用HDDをUSB変換ケーブルで4台使用。テレビの録画をためているので、どうしても容量が必要。当初DVDなどに落としていたが収拾がつかなくなったので結局HDDごと管理するのが今の時点ではベスト。今後、特大容量の製品が出ることに期待している。(39歳 男性 生産技術、プロセス開発)

HDDをRAID0でミラーリングしており故障対策している。2台目はトレード専用に4画面モニタを搭載。用途に合わせていつでもカスタマイズできるところが自作機のいいところだと思っています。(32歳 男性 システム開発(Web・オープン系))
ああ、自作って楽しいなあ……と思う瞬間
 それでは自作PCって、具体的にどんなところが楽しいのか? エンジニアの自作にかける熱い思いを聞いてみたところ、そこにはエンジニアという職業との、深いかかわりが見えてきた。自作PCのプロセスと仕事の楽しさ、ひょっとして共通しているのではないだろうか?
限られた予算で最大の効果を追求したとき
低予算で最高の組み合わせを見つけるために、あらゆる可能性を追求する点。高額なメーカー品と同等の能力を出せたときには達成感がある。(36歳 男性 品質管理、製品評価、品質保証、生産管理)
設計を模索しているとき
あのパーツを使って、このパーツを使って……と悩んでいる時間。すごく楽しいです。例えるなら宝くじを買ってこれが当たったらこれしてあれして、って頭を悩ませている時間と似ている。もちろん組み上がったときに思うように動作した喜びもありますが。(36歳 男性 運用、監視、テクニカルサポート、保守)
トラブルが解決したとき
うまくいかずにトラブルではまってから、必死になって復帰させるのが意外に楽しい瞬間だったりする。(32歳 男性 品質管理、製品評価、品質保証、生産管理)
既存の仕組みでアップグレードするとき
既存のパーツを生かしつつ、新パーツとの組み合わせを考える時が、自作PCを作るうえでのいちばんの腕の見せどころでしょうか。(32歳 男性 システム開発(Web・オープン系))
組み立てている最中
何よりも物を組み立てる行為が楽しい。プラモデルと同じ感覚。トラブルシューティングさえ、自分で解決したときは難しいパズルを解いたような感覚になる。(35歳 男性 素材、半導体素材、化成品関連)
総合テストしているとき
OSをインストールし終わってほっとしたあと、お茶を飲みながらケースを眺めつつ、性能を確かめるために複数のベンチマークを走らせてみるとき。(38歳 男性 パッケージソフト・ミドルウェア開発)
問題点を少しずつ改善していくとき
まだまだ改善の余地があると思うのでとことん突き詰めていきたい。そんな不完全なところを一つひとつつぶしていくのが楽しかったりする。きっと一般の人にはわかっていただけないと思うけど……。(27歳 男性 社内情報システム、MIS)
自作PCの世界に足を踏み入れてみよう
 ここまで自作PCに寄せるエンジニアたちの熱い声をご紹介してきた。でも、いいことばかりではなく、気をつけたい点もある。例えば「地方ではパーツが手に入りにくい」「相性の問題もあり、不具合の特定が難しい」「データ破損やトラブルは基本的に自己責任」「衝動買いや失敗などで、結果的に無駄遣いをしていることがある」などが挙げられる。
 それでも世界で一台だけの理想のパソコンを作る過程は、構想を練るときも、購入するときも、組み立てるときもきっと楽しいだろう。また、壊れた部分を取り替えることで、末永く使うこともできる。もしあなたが自作PCに興味をもったなら、ぜひその世界を楽しんでみてほしい。
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タニー只野(総研スタッフ)からのメッセージ タニー只野(総研スタッフ)からのメッセージ
アンケート結果にもありましたが、私もHDDの中に動画が着実に蓄積しつつあります。以前はPCの容量が小さかったので、定期的にパソコンのファイル整理を行っていましたが、最近は容量が増えたおかげで見ないファイルまでどんどん増えるばかり。録画したら満足して、見ないままたまっていくビデオテープのようです。

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