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食べる側も作る側も、カップラーメンはエンジニアリングだ! 我らの友カップ麺、工場潜入で見たこだわりの技術とは
モニター見ながらのお手軽ランチに、小腹がすいた三時のおやつに、納期近づく夜のお供に。エンジニアの食生活に溶け込んでいるカップ麺。今回は、カップ麺好きエンジニアに向けて、消費データからおいしい食べ方、カップ麺開発秘話まで徹底レポートしました。
(取材・文/総研スタッフ タニー只野)作成日:08.03.14
データで見る、エンジニアとカップ麺の深い関係
手間いらずで素早く食べられるうえに、外食するより割安なカップ麺。エンジニアはどのくらいカップ麺ライフを楽しんでいるのだろうか。まずはデータでエンジニアのカップ麺消費状況を探ってみることにした。
34%のエンジニアが、週に一度はカップ麺! 25〜39歳までのエンジニアにアンケート調査を行い、カップ麺をどのくらい食べているか聞いてみたところ、約半数が「月に1〜3個程度」という結果に。また、週に1個以上カップ麺のお世話になる人は、全体の34%を占めた。なお、週に4個以上食べるカップ麺のヘビーユーザーは全体の5%と、実はそれほど多くないようだ。どちらかというと、献立のひとつとしてなじんでいるということか。また、配偶者に料理を作ってもらうのを考慮し、既婚・未婚でデータを比較したが、それほど大きな違いは見られなかった。

 次に、カップ麺を食べる機会がいちばん多い時間帯を聞いてみたところ、職場・自宅ともに「昼食」が圧倒的な回答。また、職場よりも自宅で食べることのほうが多いこともわかった。注目すべきは、仕事が忙しいからか、はたまた一杯飲んで帰ってきてササっと食べられるからか、次に多かったのはなんと「夜食」という回答。エンジニアのメタボリック事情が気になる結果ではある。

「多忙でカップ麺」派は56%にもおよぶ 続いて、カップ麺を食べる理由を聞いてみたところ、「大好きで積極的に食べている」「食事のひとつとして好きで食べている」と回答したカップ麺愛好家は21%、嗜好はさておき「時間がなく手軽だから」という多忙派は56%にもおよんだ。どうやら忙しくて調理するのが面倒くさいので、ついついカップ麺に手を伸ばすエンジニアのほうが多いようだ。ただ、「仕方なく食べている」人は6%と少数で、「忙しい」という理由はあれど、カップ麺が好きな人は全体の70%以上と、エンジニアの食生活に深く浸透していることがうかがえるデータとなった。
どのくらいの頻度でカップ麺を食べていますか?
どんなときに一番カップ麺を食べますか?
カップ麺を食べる理由はなんですか?
カップ麺をさらにおいしく食べるには?

カップ麺は、お手軽なところが魅力だが、食べすぎると栄養価の面で不安が残る。そんな心配を解消するため、いつもと違う食べ方にチャレンジしてみるのもひとつの手。そこで、エンジニアがおススメした、おいしくて栄養面も配慮した食べ方をご紹介したい。普段食しているカップ麺に一工夫加えて、さらにカップ麺道を追求してみよう。

お手軽野菜ラーメン その1:お手軽野菜ラーメン(回路設計 男性 37歳)
「麺職人に、刻みキャベツやネギを入れるとおいしい」という声を参考に、コンビニで手軽に買えるキャベツサラダをカップ麺に投入することで、不足がちな野菜を摂取することができる一石二鳥のアイデアレシピ。サラダはカップ麺ができ上がってから投入したほうが、野菜のシャキシャキした食感と麺のハーモニーを楽しむことができる。
ひきわり納豆ラーメン その2:ひきわり納豆ラーメン(非鉄金属業研究員 男性 37歳)
「サッポロ一番塩ラーメンに納豆を入れる」という斬新な組み合わせが光る一品。あえてひきわりを選択することで、麺と納豆が見事にコラボレーションしている。納豆効果でスープにもとろみがつき、塩ラーメンのおいしさを最後の一滴まで味わうことができる。カップ麺のスパイスが効いているので、納豆特有のにおいを感じさせない仕上がりになる。
イタリアンラーメン その3:イタリアンラーメン(ブログ読者投稿)
「カップヌードルのチリトマと牛乳はベストマッチ」「さらにチーズも合う」というコメントを参考に、チリトマを加熱した牛乳で作り、チーズを合わせた洋風レシピ。スパイシーさとコクが見事にマッチしている一品だ。チーズは入れすぎるとカロリーオーバーになるので、量は加減しよう。
進化し続けるカップ麺に秘められた、開発の裏側に迫る
 世界に誇る、日本のインスタントラーメン。以前は手軽でスナック感覚だったカップ麺も、近年では本物の麺の食感を追求したノンフライ麺に人気が高まっている。なかでも異彩を放つのが十勝新津製麺株式会社だ。麺のおいしさにこだわり抜いた結果、インスタント麺の常識を覆す独自の製法を開発。全国に多くのファンをもつその確かな味は、4年で同社の売り上げを8倍にした。成功に導いた独自製法の開発秘話を聞いた。
代表取締役 新津正夫 十勝新津製麺株式会社 代表取締役 新津正夫
主にゆで麺を卸していた十勝新津製麺。麺づくりにこだわり抜いた結果、十勝新津製麺の製品を主婦が指名買いすることが注目され、地元の販売店から声がかかり、さらには大手スーパーからも発注を受けることに。拡大する発注に応えるために工場は昼夜フル稼働。うれしい悲鳴で増産を続けるも、やはり生産ラインの限界が生じ、事業拡大を行う。しかし、急激な事業拡大に加え、思わぬところから甚大な不渡りを出してしまい、急成長していた会社は一転、資金繰りが困難に。そして、和議によるマイナスからの再出発。借金だけが残った会社を立て直すため、畑違いのカップラーメン開発に着手する。
カップヌードルに感動し、未経験のインスタント麺づくりに挑む

 それまでゆで麺を商売にしていたのに、いきなりカップラーメンに着手したのは、あの安藤百福さん(※編集部注:日清食品の創業者にしてチキンラーメンの開発者)が開発したカップヌードルに衝撃を受けたことがきっかけ。鍋を使うわけじゃなく、何かを入れるわけじゃなく、単にお湯を入れるだけなんだよ。本当にすごいと思った。でも麺はフライ麺だから、どうしても本物の食感を出すには限界がある。うちはずっと麺づくりにこだわっていたから、これまで培ってきた技術やノウハウを使って、本物の麺のおいしさをもったカップラーメンを作れるんじゃないか、と思った。
 でも最初は試行錯誤で、従業員も「社長が変なこと始めた」と半ば呆れていた。事業は相変わらずゆで麺中心だったから、「なぜカップ麺なのか?」と不思議に思ったんじゃないかな。当時、麺を卸していたのは個人商店が中心だったけど、時代の趨勢で大型スーパーに駆逐されて売り上げも減っていたから、別の形態に注目したのは今にして思えば先見の明があったのかもしれないけど、当時はそんな雰囲気。カップ麺なんてやったことないからね。
 まずはおいしい麺を作ろうと、とにかくいろいろやってみた。でもぜんぜんうまくいかない。ひとつ問題点をクリアすれば、またひとつ問題点が出てくるような。そんなとき昔のことを思い出した。僕が小学生のときに信州のおばあちゃんが教えてくれた、「そばは一晩凍らせて乾燥させるとおいしくなる」という「凍りそば」の話。試しに作ってみようと、とりあえず素麺を屋外に出して凍らせてみたら、これがおいしい麺ができたんだよ。「これはいける!」と思って、製品化できるようにあれこれ試してみるんだけど、ここからがまた苦難の連続。大量生産しようとして量を増やしたとたん、冷凍した麺の凍り具合にばらつきが出て、均一に凍らないんだよ。

ばらつきのない冷凍麺を実現するために

 行き詰まった新津は、全国の大学・研究所を訪ね、解決策を模索する。だが、色よい回答を得ることはほとんどなかったという。そんなとき、ひとつの出会いがある。当時、東京学芸大学で氷核活性細菌の研究を行っていた渡辺道子教授がその人だ。「麺を均一に冷凍したい」という思いを綴った手紙と試作品を送り、連絡を受けて研究室に行ってみると、10人くらいの学生と、渡辺教授が待っていた。


「あなたはすごいことをしたわね」そう言ったんです。でも、ぜんぜんうまくなんかいってない。なんのことかさっぱりわからず聞いてみたら、「麺を割ってごらんなさい、中に空洞ができているでしょう。お湯を入れると、お湯が麺の空洞を通ってデンプンとグルテンが膨張し、膨張した結果空洞をつぶす。それがコシのある麺を生んでいるのよ」と……。そしてこうも言った。「ラーメンは凍らないわよ」と。え?いや、実際にラーメンは凍っている。凍らせているんです!――先生は、それでも「凍ってない!」と。
 よくよく聞いてみたら、「ラーメンが凍るんじゃない、ラーメンに含まれている水が凍っているんだ」と続けるんだ。その言葉に目が覚めて、すぐに本社に戻って当時の開発部長に「おい!麺じゃない!水だけ着目してみよう!」と叫んだよ。このときから、行き詰まっていた冷凍麺の開発がやっと一歩踏み出したんだ。

冷凍はできたが、お湯で戻すとまた問題が……

 新津と開発スタッフたちの試行錯誤の末に、麺を均一に冷凍する技術はようやく実現。コシがあり、インスタントとは思えないカップラーメンの製品化が可能になったと確信したのもつかの間、またしても新たな問題が発生した。
 今度は、冷凍し、乾燥させたあとお湯で戻したときに、一部の麺同士がくっついてしまう。おいしくできている製品もあるのに、なぜすべての製品がお湯を注いで数分で均一にパラパラとほぐれるようにならないのか。完成まであともう一歩のところで、開発はまたつまずいた。


 借金もあるしね、売り上げも上げなきゃならない。味はおいしくできていたから販売はスタートしながら研究開発を続けていたんだけど、やっぱり納得できないものは売らないことに決めた。ある日、従業員にきっぱりと「投げてしまえ」と言ったんだ(編集部注:「投げる」は、「捨てる」の北海道の方言)。
 作っている従業員の誰もが、製品をお客さんに食べてもらいたいから、みんな「ええ!投げるんですか!?」とびっくりしていた。そうなると、開発メンバーも僕もなんとしてでもこの問題を解決しようと思って、いままで以上に一生懸命研究したよ。開発中は、朝の4時5時くらいから夜中まで工場にいた。家に帰っても、ふと新しいアイデアが浮かんだり、気になることがあると工場に戻って試しての繰り返し。気がついたら一日3回工場に帰ったこともある。

 そんなとき、奇跡が起きた。
 開発中は、新津の試作品と開発スタッフの試作品を複数用意し、一連の工程を経て結果を検証する。このときも複数の試作品を冷凍庫に入れ、乾燥させてお湯を注いだところ、新津の試作品だけが均一にパラパラとほぐれた。理想どおりにほぐれて散っていく麺。なぜ新津の試作品だけが成功したのか。


 その日もいつもどおり試作品を冷凍して、乾燥させて、お湯で戻した。でも、このときは開発スタッフでない従業員が試作品を冷凍庫に入れたんだ。そしたら今までなにをやっても実現しなかったのに、なぜかうまくいったんだよ。
 それで、彼にどんなふうにして冷凍庫に入れたのか聞いてみたら、開発スタッフ用の試作品をいくつも縦に積み上げて、その横にひとつだけ僕の試作品を置いて冷凍させたって言う。話を聞いて、すぐに冷凍庫を見て答えがわかった。冷凍庫の内壁にはファンがついてるんだよ。だから試作品を高く積み上げちゃうと、風をさえぎっちゃう。風をさえぎった状態で冷凍したから、僕の試作品はうまくいった。問題は風だ、風なんだってね。

 試行錯誤の末にできたのが、現在特許を取得している「氷結乾燥法」だ。この製法でつくられた乾燥麺は、お湯を注いで4分(※製品による)で、生めん同様の味わいに再現される。先人の知恵が、現代の「インスタントラーメン」という製品を通して実現している。

開発なくして、進歩と向上はない

 経営と開発というふたつの領域で困難を乗り越えてきた同社は、本格的な味を追求する「名店のカップ麺」という新たなジャンルを切り開いた。有名ラーメン店の店主も納得し太鼓判を押す、味の再現度の高さから商品は飛ぶように売れた。売り上げを順調に伸ばすも、2004年に再度暗礁に乗り上げる。親会社の倒産、抱える負債。しかし、これまで築き上げてきた技術に裏打ちされた商品力で、コンビニなど各所からオファーがかかり二度目の復活を遂げている。打ちのめされては立ち上がる、その原動力と、目指すものはなにか。


 カップ麺の開発は、常に失敗の連続だよ。それでも、開発なくして進歩と向上はないし、いい製品づくりを一生懸命していれば、どこかでちゃんと認めてくれる人がいる。声をかけてくれる販売店の人たちや、ファンになってくれるお客さん、ほかにもたくさん連絡をくれる人がいる。
 もちろん借金をしてきた身だから、お金も大事なことはわかっているけど、でもそれ以上に、人のためになっているとか、誰もが安心して食べられる、おいしくていいものを作りたいという思いのほうが重要。だから今後も、扱う製品は原材料も含めてすべてにこだわっていきたい。

 今、まったく新しい製品を開発中。お金もかかるし大変だったけど、開発中の製品が社会の役に立てるんじゃないかと、そう思って作ってるんだよ。
麺は熟成させるために、いったん寝かせてからゆでている。
一気にゆでの工程へ。ここだけは熱気が立ち込めていた。
一食分ずつ分けて、ゆでた麺を急速に冷やしていく。
冷凍室は風が当たらない設計になっている。時間や温度は企業秘密!
乾燥室のファンの下でゆっくりと乾燥し、熟成される麺たち。
熟成途中段階の麺。まだ表面は、ゆで麺のようなみずみずしさが残っている。
かなり乾燥が進んだ麺。見た目はかなりインスタント麺に近づいているが、さらに寝かせるとのこと。
ついに麺が完成した!ここまで長い長い道のりだった……
具材は一食ずつ機械的にパッケージ。クルクル回っている。
これは味噌ラーメンの調味料。機械でゆっくりと攪拌される。
全部で5〜6日を要してできた製品たち。手間がかかる分、生麺同様の味わいに。
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タニー只野(総研スタッフ)からのメッセージ タニー只野(総研スタッフ)からのメッセージ
昨年の夏にカップ麺を自作しました。当然、素人なのでうまくできるわけもないのですが、とにかく麺づくりの難易度の高さを実感し、試みは失敗に終わりました。すぐに戻るような製法だと麺にコシが生まれないし、麺の食感を生かそうとするとうまく戻らないし……。今回お話をうかがって、あらためてその難しさを実感した次第です。

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