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懐かしの“アレ”がエンジニアの原点だ! Vol.35 住まいを変える究極のカスタマイズ!「DIY」の魅力 「DIY」
「Do It Yourself」の略であるDIY。自分の頭と手を使い、もっと便利で快適に、自分の住まいをカスタマイズするその魅力とは?
(取材・文/ぱうだー 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:08.03.10
今回のテーマ:DIY
DIY
「Do It Yourself」の略である「DIY」は、第二次世界大戦後、ロンドン市街地復興の合言葉として生まれた言葉だ。その後1960年代後半になってアメリカでDIYホームセンター(※1)が出現し、世界中にDIYマーケットが拡大するに至った。それまでプロのための道具や商材ばかりだったのが、消費者ニーズの高まりとともに、一般の人でも使いやすい道具や材料がたくさん開発されるようになった。現在アメリカ同様、日本でも数多くのDIYホームセンターが生まれ、多くの人たちの「個性的な暮らし」をサポートしている。
永沼靖弘 氏
永沼靖弘氏
社団法人日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会主事。「DIYアドバイザー委員会」や「リフォーム委員会」、「広報委員会」などを担当して16年。

DIY
http://www.diy.or.jp/
 
今回は社団法人日本DIY協会を訪問。協会の主事である永沼氏は協会歴16年、これまでDIYを支える協会としてのさまざまな活動を通し、日本のDIYを見つめてきた。永沼氏ご自身も、お休みの日はホームセンターで材料を手に入れ、ご自宅の補修をすることもあるそうだ。
社団法人日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会とは?
協会が発足したのは1977年。当初は任意団体としての「日本DIY協会」でしたが、1980年に通商産業省(現在の経済産業省)の許可を得て現在の社団法人となりました。公益法人として、当協会では「DIYの健全な普及を通じて、DIY産業の総合的な発展を図るとともに、豊かな国民生活の形成に寄与すること」を目指してさまざまな活動を展開しています。

DIY産業に属する製造業、卸売業、小売業が一致協力することで、業界全体でDIYの普及に努めようという基本姿勢は多くの企業の賛同を得ておりまして、発足当初260社だった会員社は2008年1月末現在601社に増えています。
協会の活動としては、1978年から続く「DIYショウ」をはじめとして、ホームセンターなどで消費者のみなさまをサポートする「DIYアドバイザー」関係事業など、幅広くDIYを推進しています。

ちなみに「DIYショウ」とはDIYに関する商品と情報を一堂に集め、商談と情報交換を行う大イベントです。1978年に東京で開かれたのを皮切りに、大阪での開催を含め長い歴史をもっています。業界では最大級のショウで、昨年までの来場者数は延べ510万人を突破しています。 2008年は8月28日〜30日の3日間、幕張メッセで開催予定です。2日目まではバイヤーズ・デーですが、最終日は一般PRデーとして公開しています。毎年一般PRデーには毎年多くの方々がいらっしゃいます。ちょうど夏休みが終わるころなので、子供連れのお客様も多いですね。ここ数年でリフォーム・ガーデニング(※2)コーナーの人気も高まっていますよ。
日本DIY協会20年以上の歴史が掲載された資料
そもそもDIYとは?
よく「DIY」=日曜大工と思われがちですが、DIYにはもっと幅広い意味があるんですね。DIYというのは、住まいと暮らしをよりよいものにするために、自らの手で快適な生活空間を創造することをいいます。

「DIY」は第二次世界大戦で荒廃したロンドンの街を再建するための合言葉として唱えられたのが最初なので、実はそれほど古くはないんですが、もともと人間は自分を取り巻く住環境をもっと便利に、快適にと努力してきました。DIYの概念は昔から人間生活にあったものなんですね。

住まいから始まったDIYはいまやインテリアやアウトドアレジャーなど、生活全般に浸透するようになりました。自分の手で個性的な住空間をつくり、それを楽しむというゆとりは広がりつつあると思います。

また、DIYでは自分だけのオリジナルをつくることができますが、自分で仕上げたものには愛着もひとしおですよね。最近地球規模での環境問題が取り上げられることが多いですが、買い換えるのではなく自分でカスタマイズできるDIYには「ものを大切に」という精神が息づいていると思います。
DIY協会の会報誌と今年開催されるDIYホームセンターショウのパンフレット
DIY、昔と今
DIYと密接な関係をもつホームセンターが日本で最初にできたのは1972年でした。ちょうど日本での高度経済成長のもとで発展したモータリゼーション(※3)の中、国道沿いに広い敷地と駐車場を有した、アメリカと同じスタイルでの登場でした。

そのホームセンターも現在では全国各地に約3900店舗にまで拡大し、最近では店舗がますます大型化しています。

DIYを実践する人は着実に増えていると思います。例えばNHK教育テレビの「住まい自分流〜DIY入門〜」(※4)など、DIYを扱ったいくつかの番組は長い間、根強い人気があるようです。
昨年開催されたDIYショウの模様
DIYの魅力とは?
水柱の水漏れや、水道管の調子が悪くなったり、網戸(※5)が破れたり……毎日暮らしている住まいには定期的な手入れ、補修が必要です。最近職人さんが減ってしまったため、修理をお願いした際、昔に比べて人件費が高くなることが多くなってきました。ちょっとしたことなら、プロに頼まず自分でできれば材料費だけですんでしまう、そんなところはDIYの魅力のひとつですね。

もうひとつはなんといっても自分だけのオリジナルがつくれること。DIYで好きなように創造力を働かせてつくり出した住まいはどれも個性的です。気に入ったものがないという前につくってしまう、それは人間が自然にもっている精神的な豊かさの表現だと思います。
昨年開催されたDIYショウの模様2
DIYのこれから
まず「DIY」という言葉、行動をもっと普及させていきたいですね。ホームセンターを窓口にして、DIYの楽しさや魅力をもっと一般の方々に感じていただきたいと思います。

またみなさんがDIYをより楽しめるようになるためには、専門知識をもってアドバイスできる人材が増える必要があります。ホームセンターに行ってもたくさんある商品や道具の中から何を選べばよいかわからない、なんていう声をよく聞きます。
協会としては、ホームセンターなどでお客様に的確なアドバイスができる「DIYアドバイザー」を養成していまして、現在1万1800人の方が認定されています。アドバイザーが数多く活躍することを通して、これからも多くの人が、よりよい住まいを自ら創る楽しさを実感できることを、力強く応援していきたいと考えています。

DIYを趣味としていらっしゃるエンジニアのみなさん、機会があればぜひDIYアドバイザー認定試験(※6)を受けてみてください。合格率は33%と少し難易度が高いかもしれませんが、趣味として日々DIYを楽しんでいる方なら、合格の可能性は高いと思います。高齢者へのボランティア活動などで地域社会に貢献したり、積み重ねたDIYの経験はいろんなところで生きてくると思います。

DIYと接点が少ない人は、ぜひ小さなことからでも始めてみてはいかがでしょう。意外に簡単にできたりすると、だんだん面白くなってくると思いますよ。ぜひみなさんもDIYの中から何か楽しいものを見つけて、すてきな住まいをつくっていただければと思います。
DIYのよりいっそうの普及活動について語る永沼氏
読者インタビュー DIYは「大きなプラモデル」
さて、前半では社団法人日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会の永沼氏にDIYの魅力について語っていただいた。後半では実際にDIYを実践している読者エンジニアにインタビュー。工具を使いこなし、思いどおりのものをつくるその楽しさを語っていただいた。
「DIY」に夢中だった読者のプロフィール
  まささん(仮名・45歳)
プリセールスエンジニア
技術は大工から見て盗む!
DIYに夢中になったきっかけは?
まさ: たまたまハワイに行ったときに訪れたホームセンターがきっかけですね。お店の中を何げなく見ていたら、タイルミラー(※7)に目が留まりました。日本だと1枚数千円もするものが、ここでは同じ値段で1ダースも入ってました。

ちょうどこのころ、実家を新築しましてね。これからインテリアをどうしよう?と思っていたところだったので、とりあえずそのお得なタイルミラーを買ってみました。新しい家のリビングにでっぱりがあったので、そこに張ってみようと思って。実際やってみたら初めてだったのに意外とうまくできて、自分でもおどろきました(笑)。
その後のDIYは?
まさ: その後、またすぐ家を建て替えることになりましてね。今度はもっと住みやすくしたいと思ったので、注文住宅(※8)でお願いして、内装はすべて自分でやることにしました。

というのもプロは時間給、私が納得いく仕上がりになるまでに時間切れになると思いまして。自分でやれば気に入るまでいくらでも時間をかけられると思って、妻と2人、3年がかりで思いどおりの内装に仕上げました。壁紙を海外から取り寄せたり、壁の塗料に珪藻土(※9)ホタテ(※10)を使ったりと、すごくこだわりましたよ。
DIYで思い出深いエピソードは?
まさ: 天井の作業が大変でしたね。仕事が休みの日に、天井の作業をする大工さんの技術をじっくり観察したりしましたが、なかなか難しい。こう、斜めに勾配があるところの作業って、普段しない態勢を長時間続けるので本当に疲れるんですよ。だんだん慣れてくると今度は気が抜けてきて、そういうときにケガしたりするんですよね(苦笑)。

それに比べると壁紙(※11)は楽しいですね。壁紙は日本では90cm幅なんですが、欧米は53cmなんです。私は欧米の幅が狭いほうが柄合わせしやすくて楽ですね。天井の作業と違って壁紙はそんなに体力もいらないし、とにかくやっていればできてしまう。DIYの中でもかなり達成感があると思います(笑)。

ほかには床材の余りをもらって屋上バルコニー用のテーブルとイスを作ったり。職人さんは材料を余分に持ってくることが多くて、余って持ち帰るのに困る場合、もらえることがあるんですね。よい素材だといい家具になりますよ。
DIYの魅力とは?
まさ: やはりでき上がったときが楽しいですね。自分のイメージがかたちになるのはわくわくします。私は図面を引かずに直感的につくってしまうんですが、それがまた面白い。
できたものがたとえ妻に「使いにくい」と言われても(笑)、また壊してつくればいいと思えば新たなモチベーションになります。

小さいころ、男の子は誰しもプラモデルに夢中になったと思いますが、DIYは私にとって大きなプラモデル。自分のイメージどおりの大きな世界をつくってそこに住むことができる。こんな面白いことはありません。
エンジニアのお仕事とDIYに共通するものは?
まさ: 私の仕事はCAD/CAM設計・製造に関係しているので、モノづくりという意味で、自然とお客様との目線が合うことは多いですね。

また仕事でたまに「できる・できない」という話になることがありますが、私は「やる・やらない」という考え方のほうが重要だと思っています。DIYでも「できる・できない」ではなく、「できるようにする」ことが大切。最初は「できない」と思っていても、意外とできちゃったりする。そんな考え方を仕事で意識することがありますね。
あなたにとってDIYとは?
まさ: イメージしたものを具現化する手段ですね。どういうかたちだったら自分が使いやすいかを考えて、実現していく。DIYはゼロからつくらなくても、あるものに何かをプラスするだけでもいいんですね。自分のイメージをつくっていくことには限界はない、それは自由を感じる瞬間でもあります。
ホームセンター(※1)
日本で初めてのホームセンターは、1972年のドイト与野店といわれる。最近のホームセンターでは、DIYだけでなく、BIY(Buy It Yourself)、SIY(Supervise It Yourself)にも対応するようになってきた。BIYは機器の購入をホームセンターで行い、取り付けを専門業者に頼むこと。SIYは、ホームセンターが機器の選び方や専門業者をアドバイスすること。

ガーデニング(※2)
家庭園芸を指し、農業や造園とは異なる意味をもつ。主に個人の住宅やベランダで草花を楽しむもの。野菜やハーブなど、食用の植物を楽しむ人も多い。

モータリゼーション(※3)
自動車が大衆に広く普及し、生活必需品化することを指す。日本では1964年に開催された東京オリンピックが契機となった。

住まい自分流〜DIY入門〜(※4)
2005年よりNHK教育テレビで放映されている番組。住まいの応急処置やDIYに使用する道具の説明など、毎週さまざまなテーマを取り上げている。

網戸(※5)
虫の侵入を防ぐため、窓枠に網を張ったもの。消耗品なため、10年くらいで張り替えるのが望ましい。張り替え費用は1枚1000円程度。シンプルな構造なので、素人でも作業が可能である。最近では外の景色がよく見える黒や、目が細かく防虫効果が高いハイメッシュが注目されている。
DIYアドバイザー認定試験(※6)
毎年8月に札幌、東京、大阪、名古屋、福岡で実施される。学科のほかに、実技試験もある。合格者はホームセンターなどの生活関連のショップや、講習会、サークルでの指導などで活躍することができる。

タイルミラー(※7)
タイルのように四角く、装飾が施された鏡。複数のパーツを組み合わせて使用することもある。欧米ではアンティークも存在し、インテリアパーツとしての人気が高い。

注文住宅(※8)
建売とは異なり、注文者の希望どおりに建てられた住宅を指す。間取りや仕様などの詳細を決めてから、施工会社に依頼する。建売住宅と比べ、時間とお金がかかる贅沢な住宅である。

珪藻土(※9)
別名ダイアトマイト。珪藻の殻の化石からできた堆積岩を原材料とする。もともと耐火性と断熱性に優れているうえ、壁土としてはその保温性・吸湿性が評価されてきた。近年、自然素材への回帰から、改めて注目を浴びている。

ホタテ(※10)
ホタテの殻を高温で焼き、粉末化した塗料。脱臭性、抗カビ性、抗菌性などに優れ、室内を快適に保つといわれる。また最近問題とされるシックハウスの面でも安全性が高い。

壁紙(※11)
壁面に張られる紙や合成樹脂でできたシートを指す。クロスと呼ばれることもある。シックハウス対策として、ホルムアルデヒドを含まない接着剤への転換が進んでいる。
最後に:気軽に自分だけのオリジナルを
自分の住まいを自分の手で、もっと便利に使いやすく。ちょっとしたところからDIYを始めるうちに、プロ顔負けの工房をもってしまう人もいるという。既製品を消費し続けるのではなく、自分にあったものを気軽につくるDIYは、環境問題がクローズアップされるいま、私たちが改めて思い出すべき価値観ではないだろうか。住まいに自分だけのオリジナリティを追求するDIYは、究極に贅沢なカスタマイズといえるかもしれない。
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山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ 山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ
私の地元(静岡)では、昔から日曜の朝に地元のホームセンターがスポンサーになっているDIYのテレビ番組を放映していて、子供のころによく見ていた覚えがあります。あらゆる工具を駆使して、さまざまな材料を加工していく鮮やかなテクニックに目を奪われ「自分も!」とホームセンターに駆け込んだことも……。でもその末路は、自分のあまりの「不器用さ」を自覚したことでした。

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