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昨年10月から施行され、知らないうちにこんなに変わった 運用開始!求人広告「年齢制限禁止」を正しく理解せよ
 転職で気になるのは「年齢の壁」。30歳をひとつの区切りとすれば、35歳は世に言う「限界説」、まして40歳以上になったら……。しかし、こうした求人広告の年齢制限が原則禁止となっていることを、あなたは知っていただろうか。「エンジニアと転職時の年齢」はこれから大きく変わる。
(総研スタッフ/高橋マサシ イラスト/よしたに)作成日:08.02.06
例外事由 求人広告で年齢制限が認められるケースは極めてまれ
 改正されたのは雇用対策法第10条。求人広告における年齢制限の緩和や撤廃は以前からあったが、企業に課されていたのは「努力義務」。それがこの改正で「義務規定」に変わった。ここではエンジニアに関係するポイントと全体像を見ていこう。
年齢制限禁止の例外事由 募集広告での年齢制限が認められない事例
1
35歳未満のシステムエンジニアを募集 35歳未満のシステムエンジニアを募集
(職務経験不問)

※年齢制限は上限のみ。
新卒者と同等の処遇で、期間の定めのない労働契約である
(C++での開発経験のある方)

※職務経験を求めることは不可
35歳未満のシステムエンジニアを募集

(契約期間6カ月)

※期間の定めのある労働契約は不可。
新卒者と同等の処遇であることが必要
2
40歳までのコンサルタントを募集 40歳までの建築士を募集
(情報セキュリティアドミニストレータの資格者)

※免許・資格を求める場合は、実務経験なしで取得できるもの
(二級建築士以上)

※実務経験を伴う免許・資格を求めることは不可
3
回路設計者として30〜39歳の方を募集 回路設計者として30〜39歳の方を募集
(30〜49歳で、特定の年齢層[5〜10歳の年齢幅]の労働者数が、その上下の同じ年齢幅の労働者数と比べて2分の1以下)

※回路設計者の30〜39歳が10人、20〜29歳が20人以上、40〜49歳が20人以上である
※期間の定めのない労働契約である
(30〜49歳で、特定の年齢層[5〜10歳の年齢幅]の労働者数が、その上下の同じ年齢幅の労働者数と比べて2分の1以下でない)

※回路設計者の30〜39歳が10人、20〜29歳が19人以下、40〜49歳が19人以下である場合は不可
4
若年トライアル雇用対象者として35歳未満の半導体エンジニアを募集 若年トライアル雇用対象者として35歳未満の半導体エンジニアを募集
(ハローワークでの求人)

※特定の年齢層の雇用を促進する国の施策の対象者
(一般の求人広告)

※トライアル雇用はハローワークでの求人紹介のみ認められるため、求人広告における募集は対象外
5
60歳未満のシニアコンサルタントを募集 60歳未満のシニアコンサルタントを募集
(定年60歳)

※年齢制限の上限が定年年齢
(定年65歳)

※年齢制限の上限は定年年齢でないと不可
45歳以上60歳未満のシニアコンサルタントを募集

(定年60歳)

※下限を設けることは不可
年齢制限+実務経験は不可、免許・資格は限定的に
 上記の左右の違いを見てほしい。従来でも例外事由は10項目あったが、これらが見直されて実質6項目になり、必要最小限に限定された。これらの「義務」に違反した事業主には、指導や勧告などの行政指導が行われる。
 法改正の目的は年齢にかかわりのない均等な労働機会の提供であり、主に中高年層の雇用促進にある。そのため1のような場合は、年齢を制限するなら職務経験を不問にし、かつ契約期間を定めず、新卒と同等の処遇で採用することが必要になる。
 また、年齢制限+免許・資格を条件にすることはよいが、資格は実務経験なしで取得できるものに限られる(2)。ただ、技術資格の場合は「現実的に」実務経験がないと取得できないものも多く、今後の課題は多そうだ(後述)。
年齢分布是正の年齢制限はできるが、規定あり
 3は従業員の「年齢分布のひずみ」を是正する例外事由。例えば、35〜39歳の年齢層が少ない場合にはその層を中心に採用するなど。ただ、その上下の同じ年齢幅の数と比べて「半分以下」で、「特定の職種」であり、「30〜49歳」に限られる。
 ここで問題になりそうなのは、かなり細分化されている技術系職種をどう定義するかと、企業の規模や特性による労働者数の考え方だ(後述)。例えば、大手企業なら「SE」は何百人といるだろうが、業務内容は多かれ少なかれ異なるし、所属している部署はいくつにも分かれるだろう。
年齢制限をする場合は同時にその理由も明示する
 
 一方、「トライアル雇用」(4)とは、特定の年齢層を雇用促進するための国の施策で、試用期間(原則3カ月)中に双方が合意すれば本採用となる。そのため年齢制限はできるが、窓口はハローワークに限られる。一般の転職サイトや転職情報誌には掲載されない。
 高齢者を対象とした年齢制限(5)では、期間の定めのない労働契約の対象として、上限年齢を定めずに募集をするか、その上限が定年年齢でなくてはならない。その場合は下限を設けることはできない。
 このように年齢制限をする場合には厳格なルールが課せられ、制限の理由を求人広告などに明記することが望ましい。それができない場合は、応募者の求めに応じて書面やメールなどで回答しなくてはならないのだ。
影響予測 年齢の記載がなくなるとエンジニアの転職はどうなる?
 求人広告などでの年齢制限が禁止されると、中高年層の転職が一気に増加するのか。エンジニアの採用では、ほかの職種と異なる特有の影響が起こるのか。雇用問題に詳しいリクルート ワークス研究所の角方正幸氏は、「年齢で自分を規制するな」と語る。
資格、職種、労働者数などの判断が今後の課題
 今回の年齢制限の撤廃は大きな変化です。例外事由はあっても雇用の阻害要因にならないことが前提であり、行政指導もある。ただ、昨年10月1日から施行されているのに、現在でも年齢制限のある求人広告は見かけます。この理由は、企業の長年の雇用慣行や求人意識が急激に変化しないことを知る、厚生労働省の「猶予期間」でしょう。
 しかし、その期間はせいぜい半年程度、4月からは「取り締まり強化」が始まるかもしれません。
 この法改正はすべての職種が対象ですが、とりわけ技術職は判断の難しいところがあります。例えば、「実務経験なしで取得可能」な技術資格はかなりの割合になると思いますが、机上の知識だけで合格できる資格は少なそうです。その意味では「グレーゾーン」ですが、受験資格に実務経験が問われないのですから、掲載許可と見られるでしょう。

 また、特定の職種で年齢層別に採用する場合の「特定の職種」とは、総務省統計局の「日本標準職業分類」や厚生労働省の「労働省編職業分類」によりますが、現実とのギャップを感じます。私は総務省の職種分類の委員もしていますが、これらの職種と民間で使われる職種は必ずしも一致せず、民間のほうがより細かく、より現実的な傾向なのです。
株式会社リクルート ワークス研究所 主幹研究員 角方正幸氏
株式会社リクルート
ワークス研究所
主幹研究員
角方正幸氏
 年齢層別の労働者数にしても、人数の少ない中小企業ならともかく、何千人、何万人と社員のいる大手企業では全従業員を同一職種と考えるのか、事業部や部署単位で計算してもよいのかなどがはっきりしません。こうした判断は4月以降に徐々にはっきりしてくるのではないでしょうか。
必然的に長く、詳しくなる募集要項の内容
 求人広告に年齢が記載できなくなると、それ以外の方法で求める人材要件を伝えることになります。どのような人ならできる(できない)仕事なのかを、より明確に詳細に文章表現するわけです。
 企業にとっては採用時の手間が増え、しかも応募者が多くなることも考えられ、希望の人材を採用する確率は低下するかもしれません。このことから、しばらくは何らかのトラブルが発生することも考えられます。
募集要項の内容によく目を通そう
企業に問われる「年齢制限禁止」への努力
 われわれも年齢制限禁止の啓蒙活動を、企業に対して行っている最中です。少子高齢化は今後も続き、若年層の労働力は少なくなるでしょうから、当然のようにベテランの採用が広がります。労働者の平均年齢も上がるので、中高年を採用しやすい環境にもなります。
 ですから、今回の法改正を含めて、年齢という色眼鏡は徐々に外されると思いますが、時間は掛かるかもしれません。ならば、年齢制限禁止の取り組みに積極的な企業を選ぶ方法もあります。こうした企業努力が社会的にますます問われてくるのです。
年齢制限に関して先進的な企業を探そう
エンジニアにとってチャンスは確実に広がる
 私は、細かな年齢はもう考えなくていいと思います。年金制度の将来を考えると70歳まで働くことが一般的になるでしょうから、30歳の人ならあと40年働くわけです。この40年で何ができるのか、どうありたいのかを考えるべきです。
 特にエンジニアなら経験やノウハウ、技術力などがものをいう領域であり、活躍の対象は全世界です。現在のスキルを伸ばす、別分野に挑戦する、マネジメント経験を積む、外国語を学んで海外転職を視野に入れるなど、あらゆる方向に可能性があります。年齢よりも「できること」が評価される時代に移りつつあるのです。
仕事内容を考えて自己主張しよう
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
 私見ですが、日本人は年齢にこだわりますよね。「70年生まれですか?でも2月生まれなので学年は1つ上ですね」などが自己紹介になったりして。私の友人には20代も60代もいますが、お酒とか飲んで話すとそんなに変わらないですよ。仕事でも、年齢で刻んで秤に掛けるほどの差はないと思うんです。40代が20代の賃金で20代の仕事をしてもいいわけですしね。

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