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景気回復に伴い、日本企業が好調さを増している。業績が上向きというだけではない。技術開発をみてもIT、電子、自動車、材料など、多くの分野で「世界一」という言葉が飛び交っており、テレビ、新聞、雑誌などのメディアも日本企業のパワーを連日のように報じている。 が、本当に日本における技術開発は、手放しで喜べるような状況なのだろうか。量産品ではない“本物の最先端”を手がけている科学者、識者からしばしば聞かれるのは、「日本の有力企業は儲けが出にくい先端技術には冷淡」「バイオやエネルギーなど、大事な分野で後れを取っている。日本は大事なニッチ技術を育てられない」といった声だ。 そこで私、Techスナイパーは考えた。「日本においてニッチな最先端技術をモノにして、世界をリードしている企業はどんな仕事をしているのだろうか」と。さっそく興味本位で資料をあたってみると……。厳しい環境のなか、元気に研究開発をやっているニッチ企業はやはり存在した。まだまだ日本の未来は捨てたモンじゃない!さっそく現場を訪問し、テクノロジーのトップランナーたちに話を聞き、元気を分けてもらった。 |
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Techスナイパー・井元康一郎
鹿児島県出身、年齢不詳。経済誌や自動車誌などで、自動車、宇宙、航空……などを得意とする技術&マニア系ジャーナリスト。技術をこよなく愛すがゆえに、Techスナイパーに。心優しき音楽家という別の顔も持つ。 |
世界を圧するニッチな先端テクノロジーという、いささかマニアックな基準で選んだのは、プラネタリウム業界において世界ブッチギリの性能と世界シェア約4割を達成した五藤光学研究所と、ナノテクノロジーの研究開発に不可欠な電子ビーム描画装置のほぼすべてを作っているエリオニクスの2社。世界最先端の研究開発スピリットを探る。 |
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ニッチ分野の開拓が苦手といわれる日本だが、ニッチな技術で世界を席巻している企業も決して少なくはない。YAGレーザー技術を得意とする片岡製作所は、リチウムイオン電池のレーザー溶接機で世界シェア約5割。海水の塩分、温度測定器を主力とする鶴見精機は、船舶からの投入型海洋観測装置で世界シェア10割。宇宙観測機器、医療機器で知られる三鷹光器は、脳外科手術用顕微鏡スタンドで世界シェアナンバーワンだ。大阪のテクノスジャパンは、重度障害者向けの脳波スイッチを世界で初めて商品化。回転ずしの自動給茶装置付きコンベヤーを考案した石野製作所は、回転ずしシステムの世界シェア6割。船舶のスクリューを手がけるかもめプロペラは、船舶のCO2排出量削減効果が期待できる可変ピッチプロペラで世界首位となっている。さらにギネスにも認定された沖縄・美ら海水族館や大阪・海遊館などの大型アクリルパネルの製造・施工を行う日プラは、世界シェアの5割を超える。 もともとモノづくりを得意としてきた日本だけに、こうした光るニッチ商品は数多く存在するが、一方で利益率だけを優先する“資本の論理”の横行で、こうした草の根ハイテクへの育成はむしろ衰退傾向にあると指摘する声が増えているのも事実。ぜひこうしたニッチなハイテクを、国を挙げて育てていっていただきたい。Techスナイパーとしても、これらの技術を応援するため、またいつか潜入取材を敢行したい。 |
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