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プログラマから設計技術者へ、夢をかなえた第2新卒の転職

航空機業界のベストパートナーとして躍進するジャムコへ

ジャムコは航空機内装品、航空機器、航空機整備を事業の3本柱とする。中でもギャレー(旅客機用厨房設備)やラバトリー(化粧室)といった内装品分野では、高い技術力を背景に世界トップクラスのシェアを握る。今回は、そんな同社へ応募した第2新卒転職者の面接現場をリポートする。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:07.07.02
株式会社ジャムコ
応募したエンジニア 企業の面接担当者
桑島阿友美さん
桑島阿友美さん
(当時25歳)
結城和徳氏
内装品工場 技術部
部長
結城和徳氏
当時の職種
プログラマ
募集職種
旅客機内装品設計技術者
業務内容
生命保険会社向けWindows系ファイル転送システムの運用・保守
仕事内容
大型旅客機用ギャレーやラバトリーの設計、航空機メーカーやエアライン各社との調整。
職務経歴
国立大学理工学部卒。中堅SI企業へ入社し、保険会社に常駐して顧客管理システムやファイル転送システムの運用保守を3年弱。
応募資格
大学理系学科または工業高専卒。家電や自動車の外装・機構・筐体設計経験、産業機械の実装設計経験などを歓迎。
志望動機
以前から興味があった航空機関連のハード設計をしたいため。
募集背景
新型旅客機向け、エアライン各社のリニューアル向けとニーズが増加しているため。
面接の流れ
最初に人事部長が選考、次いで内装品カンパニーの技術部長が選考する。
技術部長、技術部の専門部長、内装品カンパニーの総務課長の計3人で面接する。所要時間は約30分。
内装品カンパニー長、人事担当役員、人事部長の計3人で面接する。所要時間は約30分。
2次面接後、5営業日以内に連絡する。
【通過率:6〜7割】

【通過率:約9割】

Part1
職務経歴・転職理由・航空機への関心度
顧客常駐でシステムの運用保守を担当
結城:
  それでは桑島さんの選考面接を始めさせていただきます。今日は自宅から真っすぐこちらへ来られた?
桑島:
  はい。
結城:
  時間はどのくらい掛かりましたか?
桑島:
  正味30分ちょっとでした。
結城:
  そうですか。割に近いですね。 【Point1】ところで、桑島さんは○○大学(地方の国立大学)のご出身。そこを選んだ理由は何でしたか?
桑島:
  特別というわけではありませんが、国立の総合大学という点から選びました。
結城:
  大学の理工学部を卒業後は×××(中堅SI企業)に入社し、現在も勤務中ですね? 【Point2】担当している業務の内容を簡単に教えてください。
桑島:
 【Point3】生命保険会社に常駐し、システムの運用保守を何社かの協力会社さんと一緒に行っています。
結城:
  その作業にはプログラム開発も含まれているのですか?
桑島:
  はい。運用・保守の作業を行いながら、必要に応じてツール類の作成などのプログラム開発をしています。
航空機が好きで機械工学科へ進学
結城:
  プログラミングという現在の仕事は面白いものだと思うのですが、【Point4】なぜ当社へ転職したいのですか?
桑島:
  航空機に興味をもったのは高校生のときでした。機械工学科に進学したのもそのためです。しかし、大学在学中に徐々にソフト技術へ関心が移ったため、学校で勉強したのは機械でしたが、最終的にIT業界へ就職しました。確かにITは面白く、入社後にソフト技術を苦労して勉強したかいもありました。
 ところが半年ほど前から、ハードウェアエンジニアを目指した10代のころの気持ちがよみがえってきて、航空機に関連した形あるものをつくりたいと思うようになったのです。そうした中で御社の求人をたまたま見かけ、原点に戻って再出発できたらと思いました。
結城:
 【Point5】そもそも航空機に興味を抱いた理由は何だったんですか?
桑島:
  気持ちが落ち込んで元気がないときに、飛行機に乗ったことがありました。そうしたら、地上では味わえない窓外の景色や丁寧なサービスにいやされるところがあり、飛行機の何かをつくってみたいと思うようになりました。
結城:
  そういう場合、大学の学科は航空宇宙を選ぶと思いますが、航空宇宙のある大学はほとんど東京です。東京の総合大学へ進む気はなかったんですか?
桑島:
  できるだけ親に頼らずに進学しようと思いましたから、東京では生活費が心配でした。また、航空機の勉強を本格的にやるのなら、大学院へ進む手もあると考えました。
結城:
  しかし、大学院へは進まず、今勤めるSI企業へ就職したと?
桑島:
  はい。情報システムへの関心が強まりましたから。
結城:
  就職のとき、航空機業界も選択肢には入っていたんですか?
桑島:
  はい。 【Point6】ただ、あまり熱心に探さなかったせいもあってか、航空機関連メーカーの求人は見つかりませんでした。
結城:
  IT業界のほうをよく探した?
桑島:
  はい、そうです。
Point1
[面接官]これは応募者すべてに聞く質問ではありませんが、桑島さんの場合、わざわざ地方の大学を選んで入学したように思えたので尋ねました。というのも、私は応募者の人物像における「一貫性」を最も重視し、いろいろな角度から判断材料を集めたいのです。
Point2
[面接官]第2新卒の採用では、これまでの技術経験が当社の業務で直接的に生かせるとは考えていません。入社後に一から育てることを前提にしています。従って、職務経歴の説明でチェックしたいのは、技術経験の内容やスキルでなく、現在の業務をどのようにとらえ、いかに明確に説明できるかという点だけです。
Point3
[応募者]3年弱の実務経験しかありませんし、その内容はジャムコでの仕事に役立つとは思っていませんでしたから、あっさり答えました。面接官のほうもそう考えているはずだと推測したんです。
Point4
[面接官]転職理由と志望動機に関する質問は必ずします。人物像を探るのに役立つ情報が出てきますから。
Point5
[面接官]当社への応募者はほとんどの人が「航空機に興味があります」と言いますが、あまりにも強く「興味」を訴える応募者には逆に、「本当なのか?」「この場限りではないのか?」と疑いたくなるケースさえあります。そのときには、私が重視する「一貫性」の点から突っ込んで尋ねます。
 なお、航空機への興味は仕事に対する情熱と直接的につながりやすい要素ですから、採用判定のポイントのひとつにしています。
Point6
[面接官]桑島さんの「航空機への興味」はそう強いものではないと感じていましたが、この答えを聞いて、やはりと思いました。大学の就職活動時と現在とでは志望の度合いが違っているにしても、根っからの航空機ファンではないという判断です。
[応募者]航空機オタクと競争したら、私に勝ち目はありません。別の面でのよさを見てもらいたいと思っていました。それで、このように正直に話したのです。
Part2
英語力・仕事のブランク

仕様書は英語で書かれているが成績は平均点
結城:
 【Point7】キャリアシートを見ますと語学の欄は空白ですが、英語はいかがですか? たとえばTOEICを受験したことは?
桑島:
  これまで英語の勉強には重点を置いてきませんでしたから、TOEICで腕試しをするなどといったことはしていません。しかし、英語の必要性は感じています。今後は力を入れたいと思います。
結城:
  高校時代の英語の成績はどうでしたか?
桑島:
  えーと、まあ、普通だったと思います(笑)。
結城:
  苦手ではなかった?
桑島:
  はい。得意科目でもありませんでした。
約3年のブランクは持続力と覚えの速さで克服
結城:
 【Point8】桑島さんは大学卒業後3年近く設計や製図から離れていますが、当社に入った場合に不安はありませんか? また、ハンデがあると考えますか?
桑島:
  現職のITに関しても、出身は機械ですから、初めての知識に近いものでした。情報工学出身者に比べて苦労しましたが、仕事を続けてきた自信があります。そういう苦労を乗り越えた体験を生かせば、3年間のブランクは問題ないと思います。
結城:
  率直なところ、本当に不安は感じませんか?
桑島:
  不安がないわけではありませんが、やりたい気持ちのほうが圧倒的に強いです。その気持ちをバネに必死になれば、できないはずはないと思っています。持ち前の持続力と覚えの速さで頑張りたいです。
Point7
[面接官]当社が受注する際、お客さまからの仕様書はすべて英語で書かれています。話せる必要はないのですが、工業英語辞典で専門用語を引きながらでも理解できなければ仕事になりません。求めるレベルは高校卒業程度の読解力です。ただし、英語が苦手だからといって、1次面接で不採用にすることはありません。
[応募者]この質問には少しドキッとしました。転職をするうえでTOEICを受験しておかなかったのはうかつでしたし、突っ込んで尋ねられるのかなと思ったからです。
Point8
[面接官]3年間の設計ブランクは、客観的に見て何ら問題ではありません。しかし、本人の心理はどうなのか。その自信や立ち向かう意志を知りたくて質問しました。
[応募者]この質問の意図はすぐにわかりました。意欲と努力でカバーできると思っているところを示せばいいと思いました。
Part3
設計への自信・現職で学んだこと
IT業界で学んだ人との強調と事前の検証
結城:
  この3年弱の仕事経験の中で大変だったこと、それを通じて学んだことがあれば教えてください。
桑島:
  今の常駐先には、協力会社さんから来ているスタッフが大勢います。彼らと私たちとでは考え方や作業の仕方などで異なる点が多々あり、すり合わせが大変でした。
 【Point9】一方的に私の考えを伝えるのではなく、また彼らの考えをうのみにするのでもなく、総合的に判断して、最も妥当な考え方や作業法で行うことの重要性を学びました。
結城:
  ほかには何かありますか?
桑島:
 【Point10】はい。プログラミング作業を頼まれた際、大体これでできると経験的に感じても、ある程度の事前検証をしてから実作業に着手すべきであるということを学びました。
できると思ってやってみたらダメで、二度手間になった、時間が2倍かかったという苦い経験によるものです。以来、事前に条件を当てはめて予測を立てるようにしています。
プレッシャーは成長のためのチャンス
結城:
  大勢の外注さんと一緒に仕事をするというのは入社当初からですか?
桑島:
  いえ、違います。1年目は画面開発がメインでしたから、同じ会社のメンバーが多かったです。今申し上げたのは2年目以降の運用保守の担当になってからです。
結城:
  事前検証の話も運用保守に変わってからのことですか?
桑島:
  はい。システムの運用保守では、稼働中のシステムに手を加えるという性格上、ミスは絶対に許されないという緊張感に加えて、少しでも早くという要請がきます。二重のプレッシャーなんです。そういう中では学べることも多いですし、それだけ成長できるというのが私の考え方です。
(このあと結城氏は、ぜひ話しておきたいことと質問したいことを桑島さんに促した。桑島さんは実際の設計内容と育児時短制度について尋ねた)
Point9
[応募者]この答えは、今回の転職にあたって最も優先すべき自己PRと考えていました。ですから、応募書類にも記載しました。チームワークとリーダーシップの両方を、実務の現場で発揮できることを知ってもらいたかったのです。
Point10
[面接官]これは当社の設計業務にも通じることです。短い社会経験とはいえ、そこで学んだ教訓、エンジニアの心得として好感が持てます。他分野であっても、全体を見て計画的に実務をこなしてきた経験は評価できます。
面接官はココを見た!
●自律的に仕事ができるか。
●仕事に対する情熱はあるか。
●協調性に問題はないか。
 若手の場合は人物面中心に審査する。最大のチェックポイントは自律的なエンジニアかどうか。入社して1年もたてば特定の分野を任せ始めるため、自らを律して自ら動けることが不可欠。これは面接全体の印象から探り出す。次に、仕事に対する情熱を見る。経験業界に関係なく、担当業務にどんな姿勢で取り組んできたかでチェックする。ヒューマンスキルでは協調性を重視する。スポーツやサークル活動、これまでの業務の体制などから得手不得手を調べる。
桑島さんはコレで決めた!
「返答に困るような質問はなく、面接の雰囲気も和やか。
設計内容は前から知っていましたから、あとは会社の雰囲気だけだったのですが、
面接を受けて申し分ないとわかって入社の意思が固まりました」
 もっと厳しい質問をされると思っていたのですが、返答に窮するような質問はなく、自分のありのままを話せばよいと感じました。面接は一貫して和やかな雰囲気だったことを覚えています。ですから、私としては、とても素直な気持ちで対応することができました。私が転職の決心をしたのはジャムコの求人を見たからなのですが、面接を通じて職場のムードも申し分ないと想像でき、ますます入社したいという気持ちが高まりました。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
桑島さんが一から学んだ3年間のプログラミング技術は、当座の仕事には関係なくても、将来的にはかなりの資産になると思います。回り道に見える彼女の経歴も、実はステップアップのために雌伏期間だったのではないでしょうか。特にハードウェアの世界では珍しい女性エンジニアに、編集部からエールを送りたいと思います。

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