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【番外編】「人気企業の採用実態」から読み解く業界・採用動向 2007年度スタート!人気企業のエンジニア採用予測
Tech総研の記事「人気企業の採用実態」は、2004年5月12日「ソニー」から2007年4月25日「日本IBM」まで、合計で23本の記事を掲載してきました。今回は新年度のスタートに合わせて、これまでの記事とTech総研取材班の情報から、今年度の人気企業の採用動向を考えたいと思います。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ)作成日:07.05.17
IT系企業 業界全般で「案件はあるのに人手がない」が継続中
大量採用はITベンダー、コンサルファーム、ネット系企業……と全方位
相変わらず旺盛な企業のシステム投資

 IT企業の採用意欲は相変わらず旺盛だ。その源泉となっているのは「内部統制」「セキュリティ」「M&A」「新規事業・サービス」「総合ITサポート」などのニーズに牽引される企業のシステム投資。数年前から見られる傾向だが、勢いは止まるどころか拡大中である。
 システム投資で最も積極的な業界のひとつが「金融」だ。ここ数年来の金融業界の再編に加え、金融自由化に伴う商品の多様化、業界全体での業績向上も重なり、大手ITベンダーやSI企業への発注が止まらない。しかも、案件単位の金額や規模が大きく、二次請け、三次請け企業を含めた業界全体への波及効果も大きい。
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急増する内部統制系のビジネス案件

 一方では、法律と社会的背景を推進力として生まれたマーケットもある。来年度決算から施行される日本版SOX法と、強まる企業内部統制を軸とした、業務プロセスの改善とそのためのシステム構築だ。大手を含めた主要企業で既に進行しており、案件を受注するコンサルティングファームやSI企業ではエンジニアを大量募集している。
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大手ITベンダーが注力する総合ITサポート

 大手企業の約7割がアウトソースしているとも言われるシステム運用でも、この数年で新しい変化が起きている。大手ITベンダーがこぞって注力しているのは、「総合ITサポート」ともいうべきものだ。
 製品、システム、工程などを問わず、企業の情報システム全体を一括してサポートするサービスで、担当マネジャーが窓口となって各専門分野のエンジニアで対応する。運用監視や障害対応だけでなく、顧客の事業計画に合わせたバージョンアップやシステム導入の提案なども行うケースが多い。
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日本市場を狙う外資系インターネット企業

 インターネット業界も元気だ。数年前なら「ベンチャー」と呼ばれたインターネット系企業には、淘汰を勝ち残って「大手」へと成長した企業が少なくない。こうした企業は外資系も国内系も人材獲得に動いている。
 外資系企業で目立つのが日本での本格的な事業拡大。世界展開の一環というよりも、肥よくな日本市場をターゲットに独自の戦略を仕掛けているケースが多い。そのために積極採用しているのが、日本の事情に精通した優秀な日本人エンジニアだ。
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技術志向に走る国内系インターネット企業

 国内系インターネット系企業では少々事情が異なる。ベンチャー時代であれば、インターネットを媒介とした新奇的なビジネスモデルが収益源となった。しかし、M&Aを含めて新規の事業・サービスを継続的に提供するには、社内の中核技術が不可欠となってきた。大手各社が本格的な「技術志向」となったのは昨年あたりからだ。
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採用動向とエンジニアへの待遇を選択ポイントに
 誤解を恐れずに言えば、「仕事はいくらでもある」というのがIT業界全般の現状だ。そのため求人職種もSE、PM、コンサルタント、サポート、セールスなどと幅広いのだが、大手企業でもエンジニアは思うように採用できていない。
 その理由は、業界全体での求人数が多すぎること、IT業界が好景気でエンジニアが多忙になったこと、他業界に転職するエンジニアが増えてきたこと、優秀なPMクラスを求める企業が多いことなどだ。
 優秀なPMクラスとは「利益の出せる案件をつくれる人材」であり、SI企業やITベンダー、コンサルティングファームに顕著だ。ITバブル後の不況期から案件によっては低価格化が進んだが、景気が上向きになったからといって値上げはできない。そこで、効率的にプロジェクトを動かして利益を出せる、マネジャーやコンサルタントが重視されているのだ。ただ、転職市場に少ない人材であり、各社で争奪戦になっている。

 エンジニア不足への対応は企業により異なる。大きく分けると、採用は継続するものの当面は現有勢力や外部スタッフを中心とする企業と、採用基準を緩和してポテンシャル採用枠を広げる企業になる。後者は人材を育成する負担が増すわけだが、将来的なエンジニア不足も考慮して早めに手を打つというスタンスだ。
 こうした企業差はあっても、ITエンジニアのニーズは止まる様子を見せない。新卒採用が空前の売り手市場と言われる中でも、中核となる人材の中途採用者数は増加する一方だ。ITエンジニアはそもそもナレッジ集団であるはず。業界全体で待遇改善の動きがある中(下のコラム参照)、エンジニアの成長を促すような企業を見極めたい。
IT系企業で増加する「エンジニア待遇改善運動」
「残業・休日出勤が多い」「年収が低い」といった理由でIT業界から「脱出」するエンジニアが増えている。そこで社員の転職を引き留めるべく、一方では優秀な転職者を向かい入れるべく、従業員の待遇改善に努める企業が目立ってきた。
 例えば、プロジェクト終了後に数日の休暇を与える、選択的なキャリアコースを用意する、無理のない段階的な成果給を設ける、就業の場所と時間を緩和して在宅勤務を認めるなどだ。こうした社内制度・規則への取り組みも、転職先企業を選択する要素となる。
製造業 企業間で差はあるものの大手メーカーは人材獲得を急ぐ
自動車や電機に加えて化学や重工も専業分野に積極投資
完成車メーカーが引っぱる自動車業界

 主要企業の2007年度中途採用計画が新聞発表され、大手メーカーが軒並み前年度比増、数百人を予定する企業もかなりの数に上った。業種は自動車、電機、精密、化学、重工と広範囲で、技術系職種の採用拡大が話題となった。大手メーカーすべての業績が堅調なわけではないが、エンジニア大量採用の背景にあるのは、各社の専業分野や新規事業への意気込みだ。
 自動車業界では完成車メーカーのほとんどで増収増益。海外販売が急伸していることもあり、世界各地での生産を担うエンジニアを国内で育成するといった採用も目を引く。また、この業界は関連企業のすそ野の広さが特徴だが、サプライヤーも技術開発熱と採用意欲が非常に旺盛だ。
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専業分野も好調な大手電機メーカー各社

 大手電機メーカーでも企業差はあるものの業績好調が続く。ただ、電機メーカーの場合は各社のコアビジネスが異なるため、全社が同じマーケットで競っているわけではない。確かにFPDやデジタルカメラなどで競合企業の熱戦は続くが、より大きなスケールで収益事業を見れば、デジタル家電、半導体、ストレージ、FA機器、モバイル端末などに分かれるという意味だ。
 それぞれの分野で競合他社はいるので「すみ分け」とは言わないが、各社が強みを生かして事業を拡大しているのは間違いない。
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化学系・重工系メーカーが中途採用に本腰

 新しい業種として注目されるのは、化学・素材系メーカーと重工系メーカーだ。従来は「生え抜き社員」を中心に研究開発を行ってきたが、需要に人材が追いつかないこと、自社にない技術を導入する必要に迫られていることなどから、ここ数年で積極的に中途採用者を増やしている。化学メーカーであれば、顧客である完成車メーカーの素材系エンジニアを採用して新規開発を行うといった具合だ。
 これらの企業は「人気企業の採用実態」ではまだ取り上げていないが、取材の計画は複数あるので今後の記事に注目してほしい。
製品、業種、業界を超えた「技術の生かしどころ」を考える
 自動車から化学まで、大手メーカーはエンジニアの大量採用を進めている。しかも募集職種は、電気・電子、メカトロニクス、半導体、化学・材料などハード系全般に加えて、社内に制御系やアプリ系の開発技術を根付かせたいとソフト系を募集する企業も増加中だ。一方で、エンジニアの大手メーカー人気は相変わらず高く、特にコンシューマ製品を開発する企業に「憧れる」人も多い。ならば相思相愛で需給が合致すると思いきや、実は大手メーカーの多くは採用に苦労している。
 理由はいくつかあるが、老舗の大手企業が多いだけに社風との相性を重視すること、将来の幹部候補生も視野に入れているので相対的な採用基準が高いこと、そのために人材が充足しなくても採用基準をなかなか下げない(外部スタッフで対応する)ことなどだ。ただ、現場は即戦力のエンジニアを熱望しており、企業内でのマッチングの乖離(かいり)が人材不足の一因と言えなくもない。

 ただし、応募側から仕掛ける解決策もある。まず、前述のように大手メーカーは社風を大切にし、技術力を含めたスキルの評価が高いことは、思ったよりエンジニアに実感されていない。採用基準を下げないとはいえ、各社の採用意欲は高く、従来に比べれば門戸は格段に広がっている。これらのポイントを理解して書類審査や面接に臨めば、通過率はかなり向上するだろう。
 もうひとつは、自分の専門の汎用性を考えること。A社で液晶テレビの回路設計をしているエンジニアがB社で液晶テレビの回路設計をするような転職事例は、全体から見れば非常にまれだ。こんな「ベストマッチ」が希少なことは企業も理解しており、だからこそ別製品の開発者や別業界からの転職者を受け入れているのだ。一方で、各メーカーの柱となる収益事業に差はあっても、求める職種やエンジニア像はほとんど同じだ。
 すなわち、現在の製品、業種、業界、あるいは職種にも固執せずに、自分の技術や専門性の生かし方を考えたほうがよいということだ。
エンジニア争奪戦を生んだ一因は全般的な好景気
 この十数年の間、時代の節目には業界間での人材流動化が見られた。ITバブル期ならばIT業界全体が伸びた一方でメーカーの業績が厳しかったため、メーカー系のエンジニアがIT企業に転職するという流れが起きた。
 しかし現在は、個社の事情は別にして「景気の悪い業界はない」ので、別業界から人材流動は期待できない。まして優秀なエンジニアは企業が「出さない」ようにしている。人材紹介会社や転職サイトへの登録者は増えても、実際の転職者数が横ばいなのはこうした理由にもよるのだ。
「好景気はいつまで続くのか」という危機感から、大手企業は上期に勝負
 見てきたようにIT業界も製造業も絶好調だ。ソフト・ハードの職種を問わず人材不足は深刻化しており、大手企業であってもエンジニアの売り手市場となっている。明らかにチャンスなのだが、この状態は果たしていつまで続くのか。
 取材などによると「上期の様子を見て決める」という大手企業が多い。この好景気は数年前から続いているので、「いつかは下降線を描くだろう」という危機感と、「もし続くのなら早めに人材確保を」という期待感が交錯しているようだ。確かに各社がこの2年ほどで中途採用したエンジニアは相当数になるので、事業の拡大が望めなければ、採用リスクを負うことに消極的にもなるだろう。

 Tech総研編集部の印象としても、昨年に比べると募集職種のピンポイント化や、採用基準の上昇を進める企業は多い。業界や企業により差は出るだろうが、上期の判断で下期のエンジニア採用を控える大手企業が現れても不思議ではない。
 しかし、IT業界も製造業も多様化が進み、エンジニアの働ける領域が広がってきたことは事実。この実情を熟知しているのは、エンジニアよりも採用側だろう。また、先行きは不透明でも、ほとんどの業界のほとんどの職種でエンジニアを募集している。現実を甘く見るのではなく、「自分はこんなこともできるのでは?」と発想することで、新しい一歩が踏み出せるかもしれない。上期の企業動向に注目だ。
大手の採用動向から読み解く今年度の転職ポイント
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
おかげさまで「人気企業の採用実態」は毎回評判がよく、私たち編集スタッフもとてもうれしく感じています。ただ、これまでを振り返ると、ハードメーカーの割合が少なかったですね。トピック的に飛びついて(?)聞き出す記事ですので、年間計画などはないのです。私もメーカーは大好きですので今後は増やしたいと思いますが、皆様が希望する企業があればぜひ教えてください。

このレポートの連載バックナンバー

人気企業の採用実態

あの人気企業はいま、どんな採用活動を行っているのか。大量採用?厳選採用?社長の狙い、社員の思いは?Tech総研が独自に取材、気になる実態を徹底レポート。

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