ビジネスパーソンの出張準備を代行してくれるPC向けサービス。出発地と目的地を指定すると、経路、周辺の宿泊・食事施設などが表示され、出張計画書まで作成してくれる。審査員から「メチャクチャにリアル」と絶賛された一品。

　この作品の「現在地」のデフォルトは北海道庁。「なぜ？」という審査員の質問に、「実は私、北海道庁に勤める地方公務員なんです」と答える黒田さん。会場からウォーという声援が上がる。「仕事柄で出張が多いのですが、そのたびにPCで目的地を探し、最寄り駅を探し、ルートを検索して宿泊場所を……としていると、半日つぶれてしまうこともあるんです。大切な税金をそんなことに使っちゃいけない、と思って作りました」と続けると、スーパー公務員の出現に会場の拍手は鳴りやまない。

　実は黒田さん、前職は民間企業のエンジニアだった。しかし、「ずいぶん前なので知っているのはHTMLとJava Scriptくらい。だから、Ajaxやライブラリは使っていないんです」。作業は土・日、食事時間を除いた1日12〜13時間を開発に充て、エラーを一つひとつつぶしていく「開発手法」だったという
　一方でこだわったのがUIだ。画面には必要なボタンを常にひとつだけ表示してユーザーを誘導し、操作ミスをなくすため徹底して装飾を排除した。唯一のデザインは、友人に頼んで描いてもらったサメのイラストくらいだという。
「でも、今の作品は20〜30点。料金の精算（計算）、画面からのホテル予約、時刻表との連動と、やりたいことはまだまだあります。基本は使い手の論理を素直に並べること。これがMash upのコンセプトではないかと感じました」
　会場からは「そのとおり！」という気持ちを表す拍手が、再び巻き起こった。

常に穏やかな対応で取材を受けてくれた黒田さん

GPSとPlaceEngineを利用。現在地の周辺にある飲食店などに情報を書き込み、ユーザー同士で共有できるPC／携帯向けサービス。Doodleとは「落書き」や「いたずら書き」という意味。

「石丸が地図上で位置情報や周辺情報を表示させるソフトを、1人で開発していたんです。どうにかして世に出したいと思っていたらMA2を発見しました。一晩考えて、『落書きだ！』と思い立って英語を調べると『doodle』。ごろで決めました（笑）」（小山さん）
「3人とも携帯キャリアが違うのでそれぞれでテストして、今では全キャリアに対応。PSPやDSもOKですし、QRコードでGPS機能がなくても使えます。何とか事業化にもっていけないかなあ」（石丸さん）
「僕らは書き込みのことを『ドゥドゥる』って呼んでます。どこか検索エンジンみたいで覚えやすいでしょ（笑）。3人で100歳を超える僕らに、携帯の開発はできるかと心配でしたが、やり遂げました」（中村さん）
　100歳オーバーといっても、そんなに超えていません。まだ落書きが少ないので、皆でアクセスしてドゥドゥりましょう！

「開発日記」を読むと次回応募の参考になるかも

左から中村さん、石丸さん、小山さん

PC・携帯電話のメールかSkypeチャットとのやり取りで、キーワードに関連したブログやWebサイトを検索できる。例えば件名に「おしえて」、本文に「鉄橋」と入れてメール送信すると検索結果が返信される。

「会社の後輩に鉄橋オタクがいるんですけど、マニアのブログを探すのが大変だというんです。それを聞いて、『よし！俺がマニアックなキーワードから探せるMash up作品を作ってやる！』と始めました」（金子さん）
「3人とも同じ部で同じ課の同僚なんです。仕事はWebアプリの開発なんかをしています。私はSkypeとのAPIを主に担当しました。ぜひ気軽に使ってほしいですね」（土屋さん）
　レスポンスが早くて使いやすい。趣味はもちろん、仕事にも大いに役立ちそうです。

画面右が「鉄橋」に返信された関連サイトの一覧

左から土屋さん、金子さん、杉山さん

GPS機能を使って現在地周辺の飲食店などを検索し、地図情報とともに一覧表示する携帯電話向けサービス。最短2クリックで探せるという急場の実用性が、審査員に高く評価された。

「この春に就職する大学院生なんですけど、修士論文を出した後に作り始めました。ですから、すぐに使えるものを短期間で作りたいと思ったんです。出来上がったものをmixiで張って、書き込みを参考にしながら修正していきました。飲むのも好きですけど、今後は周辺のスタバ情報とかも載せたいですね」
　そんなこと言ってますが、スタバ検索は授賞式の翌日にアップされてました（笑）。研究室の友人が大手企業に就職する中、橋本さんが選んだのは有望なITベンチャー。理由は「自分が伸びそうだったから」。カッコいい！

ドメインを取るのに苦労したとか。なるほど

このときは某有名大学の大学院生だった橋本さん

英和辞典、和英辞典、ウィキペディアから検索した、オリジナルの単語カードを作るPC向けサービス。カードには見出し語を隠す「暗記モード」や本文を隠す「勉強モード」があり、PDFで保存・印刷もできる。

「百式の『食べならべ.com』からカード的なイメージが沸いたんです。昨年の第1回目でも応募して落選したので、ダブル受賞は本当にうれしいです。ただ、こういうサイトは『見るだけ』の人が多いと思うので（笑）、ぜひ使ってみてください」
　たんきゅうさんは高校時代からHPを作っていたものの、技術は独学。というより、大学では考古学を専攻、現在の仕事は実家の蔵元「宮下酒造」で新規事業部という、およそ技術とは無関係な経歴の持ち主。そんな人がMash upで受賞するなんて、非常にうれしいです。

名刺には「極聖」（日本酒）と「独歩」（ビール）のマークが

ダブル受賞者となった、たんきゅうさん

人気急上昇の仮想世界「Second Life」の中で、検索したブログサービスVoxの実写を映し出すPC向けサービス。仮想と現実を一緒に体験するというアイデアは、「これほどクオリティの高い作品がいきなりくるのか」と審査員一同を驚かせた。

「友人がSecond Lifeに参加していて思いつきました。Second Lifeが面白いのは、Flickrなどと違って複数が同時に楽しめること。とても興味がありますね。今後は日本語版が出る予定ですから（3月21日現在）、デベロッパーがMash UPするためのファーストステップに使ってもらいたいです」
　北野さんの本業は大手企業でのミドルウェアの開発。「あんまりMash upとは関係ないですけど」と笑いますが、質の担保が課題なのは同じですよね。

Voxの写真（スライドショー）と音楽（ジュークボックス）を楽しんでいる様子

大手メーカーに勤める北野さんはバリバリのエンジニア

Skypeで山手線の駅名を告げるだけで、駅周辺の飲食店が検索できるPC向けサービス。Skypeの音声認識エンジンに日本語版はないため、英語版を工夫している点がミソ。ハンズフリーの操作性が高く評価された。

「例えば恵比寿をローマ字にすると『Ebisu』ですが、それだと「イービス」と認識されてしまうので、『A besu』としています。本当は日本全国の駅を対象にしたかったんですけど、こうした理由でちょっと大変。山手線の29駅に絞りました。操作は英語なので、次の検索結果を見る場合は『NEXT』と言います。正確な発音はある程度必要ですが、そこはゲーム感覚で楽しんでください（笑）」
　こう語る石原さんは仕事でアメリカに住んでいた経験をもつ。そりゃ、あなたの発音はいいでしょうけど……。

「Back」や「Search」などの発音はネイティブ風に

フリーエンジニアとして活躍する石原さん

サン・マイクロシステムズ株式会社
マーケティング統括本部
システムズ・マーケティング 専任部長

株式会社リクルート
チーフプランナー
Federation of IT　企画室
戦略推進グループ　BIチーム