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アクセンチュア、インテル、DTS……各ITベンダーで活躍中 若手ITアーキテクトを直撃「結局どんな仕事なの?」
多くのIT企業では今、ITアーキテクトという職種を積極的に採用、または育成しようという動きがある。言葉としては定着しつつあるITアーキテクトだが、どんな仕事に携わるのかわからないという方も多いのでは。本特集では実際の仕事概要を明らかにする。
(総研スタッフ/関洋子)作成日:07.03.07
あまりに知られていない「ITアーキテクト」の仕事
ITアーキテクトに「なりたくない」「わからない」が75%を占める訳
 Tech総研では今回の特集を企画するにあたり、25歳〜39歳までのITエンジニア300人にアンケートを行った。その結果、なんとITアーキテクトに「なりたい」と答えた人は22.3%。「なりたくない」「わからない」と答えた人は75%にも上った。
 だが、「なりたくない」「わからない」と答えた人のほとんどは、ITアーキテクトという仕事を否定的にとらえているわけではないということ。「なりたくない」「わからない」と答えた理由の大半が、「ITアーキテクトの仕事の内容がわからない」「業務内容を知らない」「職種を知らない」というものだった。
あなたはこの『ITアーキテクト』になりたいと思いますか
ITアーキテクトの定義づけは難しい
 Tech総研では昨年の10月に「技術の総合責任者“ITアーキテクト”という選択」という特集で、システム開発におけるITアーキテクトの役割や職務内容、SEからのキャリアプランについて紹介した。だが、ここで紹介しているITアーキテクトはあくまでも「システム・アーキテクチャ」におけるITアーキテクトである。
 しかしながらITアーキテクトという職種は、なにもシステム・アーキテクチャを扱う人だけではない。ネットワークやソフトウェア(アプリケーション)、ハードウェアなどの技術分野別のITアーキテクトもいれば、ビジネスや組織活動の全体最適化を実現するための構造設計を行うITアーキテクトもいる。
 このように多岐にわたる職種だからこそ、「ITアーキテクトはこんな仕事」と定義づけられないというわけだ。したがって、アンケートの答えのように「仕事の中身がわからない」と答える人が大半になってしまうのだろう。
 それでは実際にどんな仕事なのか、次のコーナーで紹介しよう。
ITアーキテクトの仕事とやりがい、キャリアステップ
 ここでは経営コンサルティング領域に強みを発揮するアクセンチュア、独立系の総合ITソリューション企業のDTS、半導体メーカーであり先進的なプラットフォーム技術を提供するインテルの3社における、ITアーキテクトの仕事とやりがい、キャリアステップについて紹介する。
Case1 アクセンチュア しがらみや利害関係などに引っ張られず、システムのあるべき姿にこだわる
J・TさんのITアーキテクトとしての仕事
 ITアーキテクトとしての初仕事は、官公庁向けワークフローシステムのインフラ系のアーキテクチャ設計でした。プロジェクトの終盤に参加したこともあり、インフラ構成で問題点となっているところを解明していくことが主な仕事でした。
 次に携わったのはある企業サイトのリニューアルプロジェクト。アプリケーション・アーキテクチャの設計だけではなく、同サイトと連携する各アプリケーションの技術的なサポートまでも行いました。
 今年の1月から官公庁の国家プロジェクトに参加しています。現在はそのシステムを構築するうえで必要となる基盤部分の要件定義を行っている段階です。システム構成からハードウェア、ソフトウェア、どんな方式でシステムを構築していくのか、検討しています。
仕事の面白さ、難しさ!
 最大の面白さは、自分で思い描いたシステムが形となり、動くこと。それが達成感にもつながります。
 一方、最も難しいのは、システムとしてのあるべき姿(理想の姿)と顧客、開発ベンダーの考えを調整して、落としどころを見つけていくことです。ここで難しいのは、これまでのしがらみや利害関係などに引っ張られないよう、技術的な観点から説得すること。またメンバーが力を出してもらえるような環境づくりをすることも、重要な仕事です。メンバーとはなるべくコミュニケーションをとり、問題点やリスクをできるだけ早い段階でも見つかるよう、気配りをすることも大事です。
J・Tさん
J・Tさん(30歳)
立教大学経済学部卒業後、7カ月間インテリア関係のルートセールスを経験。その後、SIベンダーに転職し、プログラマ、SEを経てアプリケーション・アーキテクチャの設計に携わる。2006年1月アクセンチュアに転職。
求められるスキル
全体最適の観点からシステムのグランドデザインを描くことができる技術力
理想の姿と顧客の要求、開発ベンダーの考えなどを調整し、折り合いをつけるバランス感覚
メンバーを納得させ、システムデザインを貫き通す意志の強さ
ITアーキテクト転身までのステップ
Case2 インテル 国内はもちろん、世界で通用する無線システムの標準化、法制化に携わる
庄納さんのITアーキテクトとしての仕事
 インテルに入社以来、UWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線)やWiMAX(IEEE 802.16)という次世代無線技術の標準化活動と、それらの新しい無線技術の利用が法的に認められるよう、総務省の委員会における技術検討への参加や、各方面に働きかける業務に従事しています。
 無線技術は電波という限りある資源を用いるため、その利用については各国で厳しく規制されています。新しい無線技術が現れ、それを利用しようとするときは、既存の無線システムと干渉しないような技術的な枠組みを決め、それを電波法の体系の中でしっかりと規定する必要があります。新しい無線技術を法的に認めてもらうために、技術の詳細だけでなくその技術が社会に与えるインパクトを広く理解してもらうことが必要ですが、場合によっては、実証実験を行って検証し、そのデータの提示によって理解を促進することも必要となります。このような、次世代無線通信方式の標準化と法制化を進めていくことが私の仕事です。もちろんUWBやWiMAXは世界標準技術であるため、IEEE(米国電気電子学会)の作業部会に参加したり、ITU(国連傘下の国際電気通信連合)の委員会などに日本代表団の一員として参加しています。
 2004年からUWBとWiMAXの法制化に携わってきましたが、UWBは最初の大きな法制化が望ましい形で既に完了し、WiMAXについても現在ほぼ法制化のめどがついてきました。これらが終了すると、また新たな次世代の無線技術についての標準化や法制化に携わっていくことになるでしょう。
庄納崇さん
庄納崇さん(35歳)
インテル株式会社
研究開発本部
ワイヤレス・システム・グループ
シニア・リサーチャー
工学博士

慶應義塾大学大学院修了後、日本電信電話(NTT)に入社。横須賀の未来ねっと研究所で約7年間、中長期を見据えた無線システムの研究に従事する。2004年インテルに転職。
仕事の面白さ、難しさ
 この仕事の面白さは、一言で言うと「無から有を作り出す」ことに貢献できることです。新しい技術は、新しさの度合いが強いほどそれに対する抵抗が強くなる傾向にあります。しかしながら、それを導入することでユーザーに極めて大きな利益があると考えられれば、その抵抗を乗り越えて何もなかったところから具体像を作り出すことに懸命になることができます。新しい無線技術を導入する活動において、不可欠かつ最初に突破しなければならない壁が標準化と法制化であるため、極めて重要で責任の大きいものです。そのような仕事で成果を出せたときの喜びは、格別なものがあります。
 このような活動には達成すべき目標が明確でありながらいくつもの超えるべきハードルがあります。その中で、どのような手段を用い、どのような相手と交渉し、どのような決着の仕方を探っていくか、その時々の事情に応じて的確に判断する能力が必要になります。標準化なり法制化は一人あるいは一社でできるものではないため、多くの支持を集めるための努力も必要です。つまり、技術はもちろん大前提で重要なことですが、政治的な調整力も極めて重要になります。いろいろ大変なことも多いですが、正しいと信じるところを突き進めばそれは必ず通るという信念の下、日々活動しています。
求められるスキル
深い技術知識とともに、それを論理的にわかりやすく展開できる能力
コミュニケーション能力と政治的な調整力
業界動向に対する幅広い知識
ITアーキテクト転身までのステップ
Case3 DTS 得意な分野はもちながら、広くさまざまな技術動向を見て、情報を仕入れる
加藤さんのITアーキテクトとしての仕事
 転機が訪れたのは入社4年目のころです。きっかけは大手SIerがWeb系アプリケーション開発をソリューションで提供するため、フレームワークや開発プロセスの保守、テストを担当するメンバーにアサインされたこと。フレームワークを一から作り直し、開発の手順書やテストの実施要綱の作成、さらにはそのフレームワークを採用したプロジェクトの支援を担当することになったのです。つまりインテグレーションのアーキテクトという位置づけでした。
 現在はITアーキテクトとして、複数のプロジェクトを掛け持ちしています。基本的に私が担当するのは、システム全体のアーキテクチャ設計ではなく、Web系アプリケーション部分のアーキテクチャ設計です。どんなフレームワークを採用するとよいか、などを検討しています。同じプロジェクトにはインフラや業務機能の設計を行うアーキテクトもいます。そのため、ほかのITアーキテクトとの調整も重要な仕事です。
 今はフレームワーク分野を中心としていますが、今後は技術分野を広げていくと同時に、業務知識も身につけ、アーキテクトとしてレベルアップを目指したいと思います。
仕事の面白さ、難しさ
 ITアーキテクトとしての仕事の難しさは、教科書どおりの美しさを求めつつ、現場が使えるシステムという相反しがちなものを、どうやってバランスをとるか。エンドユーザーはもちろん、開発に携わっている人たちみんなが幸せになれるアーキテクチャを、自分の手で生み出せることが、やりがいです。
 そのためにも得意な分野はもちながら、広くさまざまな技術動向を見て、情報を仕入れることも重要です。
 もうひとつ大変なのが、ITアーキテクト同士の調整です。例えば先のSI企業のプロジェクトの例では、複数のITアーキテクトがいることがあります。私はフレームワークの分野が専門ですが、技術分野ごとにいるITアーキテクト同士で調整を行うのです。そのためにも広い技術的知識を仕入れなければなりません。
加藤佑介さん
加藤佑介さん
株式会社DTS
ネットワーク事業本部
NW開発事業部
NW開発第一部
シニア・ITアーキテクト

2000年青山学院大学経営学部卒業後、DTSに入社。1年ぐらい通信業向けC/Sシステムのプログラミングに従事。2〜3年目からSEとして詳細設計に携わる。4年目からはWebシステムの開発におけるフレームワークや開発プロセスの保守、テストなどに従事。2006年10月に社内認定制度で、シニアITアーキテクトに認定される。
求められるスキル
業界動向の把握
プロジェクトマネジャー(PM)やほかのITアーキテクトと連携するための説明能力
PM向けにプレゼンテーションするためのドキュメント作成能力
多くの課題を抽出し、それを収束へと導く管理能力
ITアーキテクト転身までのステップ
すべてのエンジニアが、ITアーキテクトを目指せる
企業によって異なる仕事内容
 これまで見てきたように、ITアーキテクトの仕事には、さまざまな内容がある。これは企業によって「アーキテクチャ」のとらえ方の違いも関係している。インテルのように通信方式の策定という、社会システムのインフラ・アーキテクチャの設計という非常に幅広くとらえているものもあれば、アクセンチュアやDTSのように、あるシステムにおけるアーキテクチャ設計というものもある。また同じシステム開発におけるアーキテクチャ設計とはいえ、アクセンチュアとDTSでは、設計対象となるアーキテクチャの大きさが違ったりする。
1次請け、2次請けでもITアーキテクトになれる!?
 冒頭で紹介したアンケートの中には、「1次下請け、2次下請けの会社ではITアーキテクトという職種はなく、なれないのでなりたくない」という答えも多かった。だが、DTSのようにITアーキテクトを用意する会社も登場している。いまや個別のシステムとはいえ、独立して稼働するものはほとんどない。下請けとはいえ、自社が担当する部分をほかのシステムとうまくつなぐためには、一定の基準やルールを設定し、それにのっとっていることが重要になるというわけだ。担当部分以外の技術やインタフェースを考慮したうえで、最適なモノを選択して、プロジェクトマネジャーに提案するのである。
 ITアーキテクトは決して、特別な職種ではない。ITエンジニアであれば、誰もが目指せる職種である。ある技術に特化し極めていくという人ではなく、システムを俯瞰的に眺め、理想のシステムをつくってみたい、という思いを抱いている人に合う仕事だ。そのためには、まずアプリケーションやネットワークなど、自分が専門としている分野の幅広い知識を身につけること。そこからITアーキテクトへの道が始まる。
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