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技術面接なら「技術」という接点がある。入社を希望しているわけだから、職種や業務内容が全く異なることもないだろう。しかし、人事面接はどうか? 主に1次面接として行われるため、ここで落ちたら不採用だ。しかも採否のポイントはわかりにくい「人物像」。そんな疑問を3人の人事面接官に聞いてみた。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ イラスト/根津あやぼ) 作成日:06.12.06
思わず採用した自己PR、大幅減点の態度、必ず尋ねるマル秘質問 人事面接官3人が覆面で語る「技術以上にヒトを見る」
今回取材した3人の人事面接官
Part1 こんなエンジニアはダメ!会ったときからすぐわかる
 まず聞いたのは「こんな人はNo Thank You!」といった応募者。実務経験や技術力を語る以前にこの「烙印」を押されてしまうと、採用において圧倒的な不利になる。取材前はどんなエンジニアだろうかと興味津々だったが、聞いて思わず納得した。
江藤氏:態度で相手に不快感を与える人はダメです
 困るのはビジネスマナーを知らない人です。コートを着たまま応接室まで行き、コートを脱いで勝手にハンガーに掛け、カバンを隣の席(イスの上)にさっさと置く。また、「面接に来てやっている」という尊大な態度で接する。こんな人を仲間として迎えて、お客様の前に出せるでしょうか。
 私が受付に出て部屋までご案内し、お茶を出すこともありますが、この1〜2分での人物評価は8割方当たります。2次の技術面接でも同じ意見が出てくるのです。それは、こうした不快感を相手に与えていることに、当の本人が気づいていないからでしょう。つまり、その人の「地」なのでリカバリーが難しい。マナーや態度だけで不採用にはなりませんが、人事も現場も「こりゃダメだ」と思ってしまうのは間違いありません。
熊谷氏:でかい態度でうそをつく人は採りません
 ため息をつく人は嫌ですね。「しょうもない質問するんじゃないよ」といった態度の自信家タイプで、採用意欲が一気に減退します。そんな人に限って「これもあれも自分でやった」と吹聴しますが、質問を続けるとうそだとわかってくる。採りません(笑)。
 また、自分のペースでしか会話ができない人も減点です。転職理由を聞いているのになぜか自己PRを始め、苦労した経験まで続けてしまう。用意してきた内容を一本調子でしゃべっているだけで、会話のキャッチボールができないんです。こうした態度や言葉は、技術力が高くても不採用になりがちです。
 目を見て話さない人はどうしても評価が低くなります。それと不潔な人。服装が清潔であることは、社会人として当たり前のことです。
竹下氏:チームを考えない自分中心の人は断ります
 例を挙げると、金融系システムのプリセールス募集でした。職種、実務経験、経歴とまさにぴったりな人物で、現場は今すぐに欲しいという。しかし私は、人物面で難があると思いました。プロジェクトの失敗談を聞くと、「上司が悪い」「あいつがヘマをした」などと他人を非難する言葉ばかり。こんな人では、チーム内にあつれきを生むと思ったのです。
 弊社の採用は現場の権限が強く、「とんがった人でもいい」と言われましたが、私は「ならば人間的な成長を約束できますか」と主張して、別の応募者を探すことを約束しました。現場が「今の仕事」を基準にするのに対して、人事は「長期的に双方が幸せになれること」を見ていますから。
 また、年収を上げたい、技術力を高めたいと、自分の希望ばかりを求めてくる人は困ります。そんな人の多くは今の会社を出たいだけなので、入社後に何がしたいか、できるのかを語れないのでしょう。
編集部のコメント:普通のことは普通にしよう!
 Tech総研には面接に関する記事も多いため、人事担当の方とざっくばらんな話をする機会も少なくない。そこで、これまでの取材経験も踏まえて、「人事面接官の言いたいこと」をまとめてみます。
 ここで皆さんが言いたいのは単純で、「普通のことを普通にしてくれ」だと思います。会う前にコートを脱いで手にもつとか、うそをつかないとか、人の悪口を言わないとか、当然ですよね。ただ、社外の人と接する機会の少ない技術職もあるので、ビジネスマナーについては学び直したほうがよいかもしれません。技術力ならともかく、こんなことで評価が下がるのは納得できないでしょう。
Part2:こんなエンジニアだったら、もう採用せずにはいられない
 Part1では手厳しい言葉が並んだが、望んでいるのはどんなエンジニアなのだろうか。何年も人事面接を担当してきた彼らに、ぜひとも採用したい人物像を語ってもらった。個人的な資質も関係するから、現実的には難しい人もいるだろう。
熊谷氏:相手の気持ちに立てる人とは相思相愛になれる
 配慮のできる人です。細かなことでは、きちんとあいさつができたり、退出時にイスの位置を直したりするような人。理想的には、質問していないのにこちらの気持ちをつかんで、フォローするような内容を話してくれる人。こんな人は的確で論理的な会話ができますし、話していて面白いんです。
 もちろん、技術力や実務経験はチェックしていますが、そこに疑問があっても2次面接に上げます。現場でも気に入ると思いますし、不足している部分は本人に伝えて、研修を受けてくださいなどとアドバイスもします。既に当確なわけです。こうしたエンジニアは人物面での評価も高いのですが、リーダーとしての資質も感じますね。
竹下氏:タフで、行動的で、問題を解決できる人は引く手あまた
 自律・自立していて、精神的なタフさを感じる人がいいですね。例えば仕事でトラブって、会社が自宅のようになり、必死で解決策を探って、どうにか成功に導いた。それを「してやったり!」と喜ぶような人です。こうした経験をもつ人は口下手であっても、聞けばいくらでも事例が出てきます。常に行動的に動いている証拠です。
 弊社で採用が難しいのは、ひとりで開発をしてきたプログラマや工程管理だけを行うプロマネなど、経験の幅の狭い人なんです。しかし、上記のタイプなら、プログラマなら独学でネットワークやOSの勉強をする、プロマネなら開発実務の中身を別の人からヒアリングするなど、自分の仕事を検証して行動しているものです。
 タフで問題解決能力に長け、行動力がある。これに技術スキルが伴ったエンジニアなら、どんな企業でも欲しがるのではないでしょうか。
江藤氏:真摯で積極的な人に「心意気」でこたえることもある
 最初の印象が大切ですから、ほほ笑んでほしいです。こちらの対応も自然と優しくなります。どんな職種でも他者と接する機会はあったはず。社会人なのですから、無愛想な態度が許されたとは思えません。まずは笑顔です。
 そして、真摯な一生懸命さです。開発経験3年、退社後の半年でJavaの勉強をしていたという応募者がありました。弊社の希望する技術や業務内容ではなかったのですが、「1カ月はタダ働きでも構いません。私を見てください」と言うのです。「彼はやるな」と感じて通過させました。入社後はものすごい勢いで技術をキャッチアップし、現在では欠かせない戦力となっています。
 また、不採用となった応募者から電話があり、理由を伝えたら、「それならこうした経験があるのでカバーできる」と言われ、最終的に採用したケースもあります。「心意気を買う」ことも現実には多いのです。
編集部のコメント:相手(面接官)のことを考えた積極的な姿勢で
 応募者に期待しているのは、「相手を思いやる気持ち」と「前向きな行動力」だと思います。前者は簡単なようで難しい。なぜなら、エンジニアにはわがままな人が多いし(笑)、性格は付け焼き刃的に変えられないから。ただたいていの人なら、初対面の人には愛想笑いをしたり、話題を探して振ったりするものです。相手は面接官なのですから、それ以上の気遣いを見せてもいいでしょう。
 後者では仕事で努力した経験や、入社への熱意が問われています。これらが足りない人の評価が下がるのは、面接官の立場になればわかることです。もしこの2つがないのなら、転職するには時期早尚かもしれません。
Part3:応募者の真実を知るために「面接で必ず聞く質問」
 応募者の本音や実力を探るため、面接官はさまざまな言葉を投げかける。ベテランになるほど、採否の決め手となる質問を用意しているものだ。それは人事面接官であっても同じこと。面接で必ず質問するというフレーズを教えてもらった。
竹下氏:「負荷が掛かっている状態とはどんなときですか?」
 負荷の内容よりも解決方法を知りたいのです。ただ、自力だけで解決策を探す人、周囲を巻き込んだ方法を考える人などいて、正解はありません。ですので、私が感心した例を挙げます。
 その方は上司と顧客の間に挟まれて悩んでいました。顧客の立場でベストな選択を上司に提案したのですが、会社の事情から却下されました。私にもその選択が順当と思えたのですが、彼はその案件から降ろされてしまうんですね。ここまで聞くと失敗例ですが、実は彼と顧客が相談していたのです。すべてが白紙に戻った後で、同じ顧客の仕事を別の案件として提案し、最終的に受注が決まったのです。「やるなぁ」と思いましたよ。
 また、競合他社への応募を確認した後で、「あちらの会社への志望動機は何ですか?」と聞くこともあります。少しいやらしい質問ですが、こうした回答から応募者の悩みややりたい仕事が徐々に見えてきます。
熊谷氏:「あなたはなぜ転職したいのですか?」
 しつこく、何度も繰り返して聞きます。理由は、転職しなくてもすむ人がいるためと、弊社に転職してもやっていけない人がいるからです。
 前者の例では26歳の若手SEがいました。技術の現場を外されたことが転職理由でしたが、よく聞くと、彼を育てるために経験を積ませていたのです。しかも、異動から1カ月しかたっていない。その企業を知っていたこともあり、「いい会社だから転職せず、1年して状況が変わらなければ考えたら?」と伝えました。人材紹介会社経由でしたが、しばらくして「転職をやめた」と連絡がありました。
 後者の例では、ポジションを若手に代えられた、40歳のプロジェクトリーダーがいます。質問を続けると仕事に工夫がなく、管理者としても適任とは思えない。今の会社もそう評価して若手を登用したのだと合点し、採用には至りませんでした。そもそもリーダーとして成果を出している人なら、転職理由はもっと積極的な事柄のはずです。
江藤氏:「周りからはどんな人だと言われますか?」
 長所と短所を質問してもほとんど同じ答えになりますが、こう聞くとかなりの差が出ます。それに、後で整合性が取れなくなりますから、言われていないことは答えられません。例えば、「見かけと違って優しそう」と聞くと、「物事を頼みやすい人かな」と思うわけです。
 ただ、一度だけでなく、「ほかにはどう?」といくつも別の答えを求めます。すると、長所というよりも、本質的なものの考え方や行動様式、それにコミュニケーションの特徴がわかってきます。
 人事の視点は「この人と一緒に働きたいと思うか」で、技術スキルや経験を判断するのは現場です。ただ、現場が人物面で採否を迷っているときにはアドバイスをします。将来的にお互いが苦労しそうな人材なら、「ノー」と言う場合もあります。
編集部のコメント:質問を想定するよりも「なぜ転職するのか」を整理する
「必須の質問」をもつ面接官は実に多くいます。その内容は三者三様ではなく百者百様ほど広がりますが、取材をしていて感じるのは、その応答が「面接の核」となることです。核の要素は業界、職種、企業、面接官によっても異なりますし、どの質問かを事前に知ることはできません。
 ただ、面接官が聞きたいのは「転職者の本音」です。下手な小細工をするより、誠意をもって対応すべきです。伝えたいことをまとめておくのは面接の常套手段ですが、彼らはプロなのでうそは見抜かれます。これまでの仕事と今後の希望を一貫させて、何かしらの「芯」をもつことが大切だと思います。
Part4:エンジニアへの思いと、それぞれの人事の本音
 技術職だけではなく営業や事務、そして同じ人事職まで、基本的には全職種の採用に携わるのが人事担当者だ。彼らの目にエンジニアはどう映っているのだろうか。人事という仕事の中身と併せて語ってもらった。
熊谷氏:「キャリアアップをしたい」だけではうさん臭い
 弊社では半期ごとに各部署から、業務内容、職種、役職などの採用ニーズを出してもらいます。部署は25程度で、不明な点があればこちらから聞きに行き、内容を確かめて募集・採用となります。今週は9人ほど面接する予定です。
 技術職とほかの職種の差はあまり感じません。どんな職種でも明朗な人もいれば寡黙な人もいます。いや、営業には寡黙な人はいませんから、やはり差はありますね(笑)。私はある程度の緊張感をもち、ソフトな語り口で話す人が好きです。こちらもリラックスできますし、面接というより話そのものが弾みますから。
 現在の会社に中途入社し、人事を担当して8年ほどになります。弊社はほとんどが技術職なので多くのエンジニアを面接していますが、「キャリアアップをしたい」というだけの人は、どうもうさん臭く感じてしまうんですよ。こうした「カン」が面接官にはあるのだと思います。
竹下氏:プロセスを語るエンジニアは接しやすいんです
 面接は週に3〜4回です。多いときは週に20回ほどありましたね。私はおしゃべりですので人と話すのは苦になりませんが、最初のころは採否を決めるのに迷いました。応募者の評価が3段階で違ってきたのです。
 当落ラインの人がいたとします。面接中は相手に感情移入しているので、「2次にいかせてあげたい」と思います。それが面接終了後は逆になり、「まてよ、本人のためにも断ったほうがよいか」と思い直します。そして1日たつと気持ちが整理され、冷静な判断ができていました。丸一日間は「グレー」の状態だったのです。これは応募者に失礼でもあるので、今では面接の直後にイエスかノーかを決めています。
 営業職は売り上げなどの成果をPRしますが、技術職はスキルや経験を積んできたプロセスを話します。前者が表面的で裏を読みづらいのに対して、後者は実際の行動ですからとても納得できます。実際に正直な方も多く、私は接しやすいと思っています。
江藤氏:うちはベンチャーで課題が山積み、誇大表現は無用です
 エンジニアの方はまじめで大人しい人が多いようです。営業職と比べると、自己表現が得意でないかもしれません。しかし、正直です。この正直さをもっと生かしてほしいです。
 応募者の中には自分をよく見せようと誇大な表現をする人がいますが、逆効果なんです。無理に100点を取ろうとするより、できることとできないことが自分でわかっている人のほうがいい。伸びしろを感じますし、こちらも教えやすいのです。
 よい人材がいない場合は、幅を広げて採用する場合もあります。育成に多少の苦労はしても半年後には戦力になりますが、半年後に望む人材が採れる保証はないからです。ですので、できないこともはっきりと伝えてください。多少の弱みを見せられると共感できる部分もありますし、弊社はベンチャーですので、会社自体にも課題がいっぱいなんです(笑)。
編集部のコメント:面接官も人間だから、こわくない、こわくない
「書類選考で現場が断った人だけど、私は気に入ってとりあえず会って、もう一度『ぜひに』と押したけどダメだった。残念無念」(竹下氏)。「友人のように話せる人はいいよね。こんなプロジェクトがあるから来てよって、思わず言っちゃった」(熊谷氏)。
「うちに新卒採用はないので若手を入れて活性化したいのですが、現場の負担が重くなる。悩みどころです」(江藤氏)。
 人事面接官も人の子だ(失礼!)。技術を知らない堅物と思う人がいるかもしれないが、技術で稼ぐ会社の人事が、技術を知らないわけがない。構える必要は全くありません。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からメッセージ
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「なれなれしいメールを書く人もいるんです。実は……エンジニアに出現率が高いんですよ」とは江藤氏の言葉。記事に入れなかったのは武士の情け。技術や実務以外はあまり評判の高くないエンジニアですが、腹を割って近くの同僚に「エンジニアの見られ方」を聞いてもいいかも。態度で評価が下がるのは、どう考えてももったいないです。
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