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運用保守から開発へのキャリアチェンジを望む25歳の転職

技術者育成で独自色を出すシステムインテグレータへ

システムインテグレータはパッケージとSIとコンサルを事業の3本柱とする。パッケージはECサイトを構築する「SI Web Shopping」やOracleの開発を支援する「SI Object Browser」、など、独自色に富む。SI事業に関連しての常駐・派遣も行わない。そんな企業に開発職希望で転職した、若手の運用保守SEをレポートする。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:06.05.17
システムインテグレータ
応募したエンジニア 企業の面接担当者
曽根信也さん
曽根信也さん
(当時25歳)
梅田弘之氏
代表取締役
梅田弘之氏
当時の職種
運用保守SE
募集職種
SE
業務内容
共済組合の財務系サーバーインフラ、Webアプリサーバーの運用保守。
仕事内容
パッケージ製品の企画・開発。またはC/S、Web、基幹業務システムの設計・構築。
職務経歴
大学文学部を卒業後に中堅SI企業に入社。サーバー運用保守を2年8カ月担当。
応募資格
アプリ開発経験。または各種ネットワークインフラ、DBの設計・構築・運用保守の経験。
志望動機
もともとの開発志向を満たすため。高い開発技術環境に身を置きたいため。
募集背景
蓄積してきた実績と開発力をベースに、より一層の攻めの姿勢へ転じるため。
面接の流れ
すべての応募者の書類に専務が目を通して選考する。
専務が1対1で面接する。所要時間は約1時間。1時間30分の筆記試験も行う。
所要時間は2時間30分。2次面接の判断材料とする。
社長が1対1で面接する。所要時間は約1時間。
2次面接後2〜3日以内に連絡する。
【通過率:約5割】

【通過率:10割】

【通過率:ほぼ10割】

Part1
職務経歴・転職の理由
システム基盤の運用保守を約3年間
梅田:
 はじめまして。社長の梅田です。よろしくお願いします。
曽根:
 曽根信也と申します。こちらこそ、よろしくお願いします。
梅田:
 【Point1】曽根さんのお住まいは遠そうですね。弊社までの通勤時間はどのくらいですか?
曽根:
 1時間半くらいです。
梅田:
 【Point2】結構かかりますね。もし当社に入社したら、そこから通いますか?
曽根:
 いえ、会社の近くに引っ越してくるつもりです。
梅田:
 わかりました。曽根さんは大学を卒業して今の会社に入社し、3年弱、主にお客さんのシステム基盤の運用保守をしてきたようですね。その内容をもう少し具体的に説明してください。
曽根:
 サーバーとクライアントマシンのセットアップ、技術者がそれぞれ使用しているデータのバックアップとリカバリー、WebサーバーとDBのメンテナンスなどです。
当初の希望だったシステム開発がしたい
梅田:
 サーバーはPC系ですか?
曽根:
 Solarisです。
梅田:
 ならば、DBはOracleですね?
曽根:
 はい、そうです。
梅田:
 【Point3】別の仕事へ移りたいと思っているのは、どんな理由からですか?
曽根:
 新卒で今の会社に入ったとき、私は開発をしたかったのです。開発ができると思って今の会社を選んだともいえます。ところが、配属先は運用保守部門でした。その時点でギャップは感じましたが、運用保守という仕事も、やってみるとつまらないものではない。1年、2年とそれなりに充実感がありました。
 しかしながら、本来のシステムを構築したいという気持ちが強まってきました。今は会社を出ようと決心し、転職活動をしています。
梅田:
 【Point4】今の仕事では、お客さんとの接触はありますか?
曽根:
 【Point5】まったくないわけではありませんが、システム基盤の保守という性格上、ほとんど接することはありません。
梅田:
 縁の下の力持ちという立場ですね。
Point1
[面接官]面接の冒頭では、応募者をリラックスさせるようにいつも心掛けています。通勤時間などを話題にすることが多いですが、この段階のやりとりに特に意味はありません。
[応募者]社長の第一印象は朗らかさでした。最初の話題も住んでいるところについてで、フレンドリーな感じがしました。
Point2
[応募者]忙しくて残業が多いからこんな質問をするのかなと、実際の面接のときには勘繰りました。しかし、単純に通勤が大変だと心配しての質問だったようです。
Point3
[面接官]今の会社に入った目的と今回の転職理由は気になる事項です。必ず尋ねます。ここでは転職理由から先に聞きましたが、曽根さんは入社の目的を踏まえて話してくれました。こういう明快な答え方には好感がもてます。
Point4
[面接官]当社のSI事業は上流工程からです。お客さんと接するのは日常的で、コミュニケーション能力は欠かせません。また、エンジニアはお客さんによって育てられる部分が多分にあります。曽根さんはお客さんとは接する機会は少ないだろうと思ったのですが、念のために尋ねました。
Point5
[面接官]この答え方は好ましく感じました。というのは、お客さんと接することは重要であり、接したいと願っているというニュアンスがくみ取れるからです。
Part2
保有資格・習得スキル

チェックポイントは保有資格が象徴する向上心
梅田:
 当社の業務内容は前回来社の折にも説明しましたが、開発が主体となります。【Point6】特に多いのはWeb系で、言語はJavaと.NETがほぼ半々の割合です。曽根さんとしては、どちらをやってみたいですか?
曽根:
 どちらか一方であればJavaを希望します。今の仕事はJavaやサーブレット、JSPでのメンテナンスですし、JavaではSunの資格も取りました。経験を生かすという意味で、Javaへの思いのほうが強いです。
梅田:
 シスアド、情報処理、Java、Oracle Masterのゴールドと、資格をたくさん取ってきたのですね。今の職場では、こんなふうに資格を取る人が多いんですか?
曽根:
 いえ、多くはないです。
梅田:
 【Point7】自分自身でモチベーションを維持しながら取ってきた?
曽根:
 そういうことになります。
梅田:
 当社では、会社全体で資格取得を奨励しています。常に技術力を向上させるためです。このあたりは曽根さんの志向性と合いそうですね?
曽根:
 はい、そう思います。
下地は幅広い技術と接するインフラ整備の実務
梅田:
 運用保守という仕事は実際に大切なものであり、学べる部分も多いと思います。【Point8】この3年弱で何が身についたと思っていますか?
曽根:
 インフラ整備ではいろいろな技術に触れられます。触れざるを得ないというべきかもしれません。例えばWebアプリサーバー、DB、OSなどについてです。これらひと通りの経験をして、技術者としての下地は獲得できたのではないかと思っています。
梅田:
 【Point9】これまでの経験の中で、大変な思いをしたことは何かありますか?
曽根:
 本番稼働しているサーバーをフェールオーバーさせてしまったときは、もうびっくりして青くなりました。
梅田:
 そのとき、システム自体はどうにか動かせたんですか?
曽根:
 数分間、止まった程度ですみました。その体験から、本番稼働中のサーバーに触る怖さを学びました。
梅田:
 ハードディスクがクラッシュした経験はありませんか?
曽根:
 開発サーバーでクラッシュしたことはありましたが、本番のほうではありません。
梅田:
 それでは、さほどひどい目には遭っていないですね。きちんと管理しているのでしょう。
Point6
[面接官]どちらを選んでもらっても構わないんです。SEから見て当社の魅力的なところを示し、マッチングの度合いを測るのが目的ですから。面接はお見合いと同じで、双方がよいところを出し合ってこそ、おつき合いに発展するんです。
Point7
[面接官]この質問は向上心の強さを確かめるためにしました。資格は、資格そのものの価値よりも、向上心がある証拠とみなすべきだと私は思っています。向上心のある人は新技術のキャッチアップも速いですからね。
[応募者]私も資格自体が「売り」になるとは思っていませんでした。真剣に技術力アップに取り組んできたこと、それを踏まえて開発へ移りたいと望んでいることを、知ってもらえればありがたいという気持ちでした。
Point8
[面接官]この質問とその次の質問は、技術力をある程度判定するのが狙いです。答えの内容次第で細かな質問を続けることもあります。ただし、曽根さんの場合は仕事で失敗や苦労した経験があまりなく、空振りだったようです(笑)。まあ、基礎的なところは大丈夫なのだろうと判断しました。
Point9
[応募者]この質問の狙いが技術力のチェックにあるとは思いもしませんでした。実務経験の内容を具体的に聞きたいのだろうと受け取ったのです。狙いがわかっていれば別の話か、同じ話でももっと説明を加えて返答したと思います。
Part3
入社後の志向性と貢献度、志望動機
先輩にもまれて上流工程から開発ができる
梅田:
 この自己PR文には「新しい技術にどんどん触れていきたい」と書かれています。当社に入った場合、どんな技術を学び、どんなスキルを身につけ、最終的にどんなエンジニアになりたいと考えていますか?
曽根:
 【Point10】WebとDBを連結するようなシステムの構築に携わり、その要素技術の向上に努めたいと思っています。工程も上流から下流まで一貫して経験し、一流の技術者としてやっていけるようになりたいです。
梅田:
 わかりました。曽根さんなら進んで勉強しそうですから、その希望もかなうと思います。それでは伺いますが、【Point11】曽根さんがそもそも当社を志望する動機はどんなところにあるのですか?
曽根:
 志望動機は大きく2つあります。ひとつは、私が望んでいるWebとDBを連結したシステムを、上流工程から担当できそうだからです。もうひとつは、書籍や雑誌に執筆している技術者が御社には大勢いらっしゃって、そういう技術力の高い人たちがいる環境でもまれれば、自分も高いレベルに上がれると思うからです。書籍や雑誌に執筆できるエンジニアはハイレベルにあると私は思っています。
新しい会社で新しい風を吹かせる
梅田:
 最後の質問ですが、【Point12】曽根さんを採用したら、当社に対してどのようなメリットをもたらすことができますか?
曽根:
 私が今いる部署では、配属当時、自ら勉強して資格を取ろうといった空気はほとんどありませんでした。ところが、私が資格を取得していくにつれて、徐々に空気が変わったんです。その結果、ほかの部署に比べて、複数の資格をもつ者が多くなりました。それだけ向上心の風を吹かせたのだと自負しています。同様に、御社でもより前向きな風を吹き込めるのではないかと思います。
(このあと、梅田氏は曽根さんに「どんなことでもいいですから、質問があればどうぞ」と促した。曽根さんはSI事業部の体制と方針について尋ねた)
Point10
[面接官]この答えは理想的です。当社がSI事業で行っている仕事の大部分に当てはまります。
Point11
[面接官]この質問はどの応募者も想定しています。事前に回答を用意して、暗記もしてきているでしょう。ですから、内容自体はそう重視しません。むしろ、答えるときの目に注意します。目に力がこもり、本気で入社したいと思っているか。ポイントはそこです。
[応募者]この質問の答えは用意していました。「大きく2つある」と言い切り、それぞれを簡潔に説明するという作戦。志望動機を整理してきて悪い印象をもたれるはずはないと思いました。
Point12
[面接官]「自己PRをしてください」と言うと、主観的な事柄が返ってきます。しかし、「どんな貢献ができるか?」と問うと、客観的な事柄を挙げねばならなくなります。ここでチェックしたいのは、貢献できるという内容もさることながら、客観的な視点に立って考える力があるかどうかです。
 
面接官はココを見た!
●向上心は強いか。
●コミュニケーション能力があるか。
●基礎的な技術力は備えているか。
 採用にあたっては向上心を最も重視する。自主的な勉強、新技術への志向の強さ、転職の動機などから探る。次に重要なのがコミュニケーション能力。質問に対して、ピントを外さずに明快かつ印象よく答えを返せるかどうか。技術力については基礎的な知識と経験があればよしとする。習得技術が事業内容と適合する応募者ほどプラスに評価するが、採否判定での比重は小さい。なお、希望する仕事とのマッチングは1次面接で確かめる。
曽根さんはコレで決めた!
「技術重視・技術者育成優先の事前イメージが
2回の面接を受けて確信に近づきました。
また、社長と専務共に印象のよい人物だと感じました」
 ホームページには多様な情報がたくさん掲載されていて、技術重視かつ社員の育成を優先させる会社だと感じていました。しかし、それは推測の範囲でしかありません。2回の面接を受けてみて、この2つが確かなものだと感じました。自分の希望にぴったりでした。また、1次で面接官だった専務はとてもフランクな方で、2次面接の社長は笑顔が多い方でした。こういうエンジニアの下でなら働きやすいと思ったんです。
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  高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ  
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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記事のように曽根さんは多くの資格を取得していますが、大学は文学部で、パソコンに触ったこともほとんどなかったとのこと。それが3年弱の間に、スキルと資格の両方を積み上げてきたわけです。こんな若いエンジニアなら、確かに新風を吹き込みそうですね。今後もさまざまな面接シーンを紹介していきます。
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