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懐かしの“アレ”がエンジニアの原点だ!Vol.13 ソフトの数だけ興奮がある「セガゲーム」アーケード編(前編)
「スペハリ」「アフターバーナー」「アウトラン」「BEEP」「メガドライブ」こんな単語に胸ときめくエンジニアは今なお多いはずだ。今回はそんなセガゲームに魅了されたエンジニアたちの原点に迫ってみたい。
(取材・文/金沢桃子 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:06.04.05
座談会テーマ:セガゲームはエンジニアにどのような影響を与えたか?
 今回の座談会には、アーケードのころからずっとセガを愛し続けているお二人のエンジニアに来ていただいた。あまりに白熱し、「アーケード編」・「家庭用ゲーム機編」(5/3掲載予定)と2つに分かれるほど、座談会は熱く濃い話が展開された。
セガとは?
1951年創業のゲームメーカー。アーケードゲーム機、家庭用ゲームソフトの開発・製造・販売、アミューズメント施設の運営をコア事業として行っている。国産初のジュークボックス「セガ1000」から始まり、1964年にアーケード用ゲーム機器の製造を開始。1983年に8bit家庭用ゲーム機「SG1000」を発売し、1985年には世界初の体感ゲーム「ハングオン」発売。同年「UFOキャッチャー」発売。以降、さまざまなアーケードゲームや「メガドライブ」「セガサターン」などの家庭用ゲーム機を開発、販売。2001年には家庭用ゲーム機製造販売から撤退するも、現在も魅力的なゲームソフトやアーケードゲームを開発・提供を続けている。
セガゲームにほれ込んだエンジニア2人のプロフィール
恒田さん 片野さん
恒田さん(仮名・28歳)
半導体関連プログラマ
片野さん(仮名・37歳)
通信会社サービス開発
まずはセガゲームとの出合いについて教えてください。
片野:
ハングオン
古くからゲーセンに通っていたんですよ。ですので、セガとの出合いは大型筐体が出始めたころからですね。ハングオン(※1)はあまりやらなかったのですが、スペースハリアー(※2)からはまりました。家庭用ゲーム機はそもそもアーケードが好きだったんで家庭用なんてと見下してたのですが(笑)、ゲーセン仲間がマークV(※3)を持っていて、1週間本体とソフトを貸してくれたんですよ。それでマスターシステム(※4)を自分で買いました。ファンタジーゾーン2(※5)をやり込みましたね。
恒田:
アウトラン
自分の場合は逆で小4まではファミコンでした。ある日、スーパーの屋上のゲームコーナーで、アウトラン(※6)アフターバーナー(※7)をやって「これはファミコンとは違う!」とすっかりはまってしまいました。ちょうどその冬にメガドライブ(※8)が発売されて、家でも移植版の体感ゲームをしていました。
主に熱中したアーケードゲームは何でしたか?
恒田:
バーチャファイター2
親の目を盗んでいつも行くほどアウトランにはまっていました。BEEP(※9)で学んで「ギアがちゃ」(※10)とかやってましたよ。あとはもう少し後の話になりますがバーチャファイター2(※11)はゲーセンで50人抜きをするほどやりこみました。
片野:
体感ゲームにはものすごくはまりました。ハングオン、スペースハリアーときて、アウトランで頂点でしたね。スペースハリアーはギャラリーがいる中、「ワンコインクリア」(※12)とかしてました(笑)。
体感ゲームの魅力はなんでしょう?
恒田:
ファミコンは絵がチープだったんですよ。それと、RPGやシミュレーションは自分でこのキャラはこんな声かなとかいろんなことを頭で補完してやるのですが、体感はそうではなく、疑似体験。頭で考えるのではなく、体で直接感じる。最初やったときは、今まで味わったことのない感覚に衝撃を受けました。
片野:
自分が主人公の視点になれることです。ただハングオンは最初のころ、自分でバイクを倒さないと、動かしてる画面の中のキャラクターも倒れなくて。400ccくらいの筐体だったので中高生では動かすのも大変でした。スペースハリアーはモーターで動いたし、主人公の視点になれました。
恒田:
R-360
アフターバーナーは、体感ゲームでは今でも最高のゲームだと思いますが、主人公の視点という点で言うと、ゲーム画面の中の自分の機体が回転する一方、自分の乗っている筺体が回らないというのがちょっと残念でした。何かそこだけ自分が取り残されたみたいな(笑)。でもその後にR-360(※13)という、回る筐体が出たんですけどね。
片野:
体感はテーブルゲームより高速で処理するので、その技術に触れているだけでも楽しかった。アフターバーナーなどは複数のCPUで処理(※14)をしていたんですが、それに触れて感動したのが、ひょっとしたら今の技術屋としての原点になっているのかも。
恒田:
ソフト屋からすれば複数のCPUは拷問ですけどね(笑)。
片野:
BEEPでそういう性能のすごさとかを読んで感心していましたよね。
恒田:
そうそう、セガゲームにはまった原因の半分はBEEPです(笑)。
アーケードならではの魅力のひとつである、グラフィックや音楽が素晴らしかったゲームは?
恒田:
グラフィックで強く印象に残っているゲームは、ゴールデンアックス(※15)ですね。画面に奥行きがあって、火柱が上がったりするんですよ。小学生の自分から見て、ダイナミックで動きのあるゲームだと思いました。ファミコンは動く場所が少ない。それに比べてエフェクト(※16)とかキャラの動きがいろいろあった。どういう機能を使って表示してるんだろうと思いましたね。あとでBEEPで知ったのですが、あれは二重三重の多重スクロール(※17)でソフト屋があまり苦労しないでいいように、ハードで処理してるんですよ。
片野:
セガは3次元グラフィックが得意ですからね。キャラを拡大する機能・回す機能がファミコンとかと違った。座標軸を変えて大きさを変えていくから、急にキャラが大きくなったり小さくなったりというのではなく、徐々に大きさが変わる。
恒田:
音楽だとアウトランが走る風景でロックやラテンなど次々と曲が変わるのですが、ポップスしか知らない自分には衝撃的でした。
片野:
ゲームミュージックの質はどれも高かったので、テープレコーダーを家から持参して、ゲーセンで録音してましたよ。新しいゲームが出たとき、その音楽カセットが出るまでのつなぎにしていました。スペースハリアーとかをとっていたんですけど、アフターバーナーはメロディーがなくてベースしかなかったのでとらなかったですね(笑)。
恒田:
自分はアフターバーナーの曲をとって、それを元に自分でメロディーを作って弾いて、ミックスしてましたよ。高校生になってデジタルサックスをまじめに勉強して、それでメロディーを作ってパソコン上でやってました。
アーケードならではの楽しみは?
恒田:
通っているうちにゲーセンにいる人と親しくなって、情報交換をしたりできることですね。いろんな世代の人と話しました。サラリーマンの人から「これどうやってるの?」って聞かれたりとか。
片野:
自分は学校の友達との交流でしたね。一緒に攻略を考えて、ゲーセンにみんなで練習に行きました。どこにどんな筐体が入ったよとかの情報交換もしましたね。
恒田:
自宅で練習をして、ゲーセンでその技を披露することも楽しみでした。「あんなちびっ子が」と見られながらゲームをやるのが快感でした。あと、小学生のくせにファミコンをやっている友達に、「おまえたちとは違うことをやってるんだ」と思ってました(笑)。
片野:
ギャラリーがいるのが家庭用と違うところですよね。スペースハリアーとかで最後までクリアして、最終画面がこうなんだーとギャラリーが見ている中、自分はスタッフロールを見ないでその場を立ち去る、とかしていました(笑)。クレジットは入れないんですよ。
恒田:
それが美学ですよね(笑)。
あなたにとってセガのアーケードゲームとは?
恒田:
小学生のときからゲームセンターに通いだして、大人のコミュニティーに自分が行ってるんだっていう思いがありましたね。人が楽しんでいるものに自分が参加する。そこにいる人と話すのも楽しかった。その中で特にセガの体感型アーケードゲームが話題の中心でしたから、セガゲームは自分にとって大切なコミュニケーションツールでした。
片野:
ゲーム雑誌で読んだことが現実に試せる場所でした。自分の能力を試す場所でもありましたね。人がいない閑散としたゲーセンで鍛錬を積んで、夕方、人がいるときに見せる。他にうまい人がいると敵対心を持ったり、残念な気持ちになったり。特にセガゲームは難易度の高いソフトも多かったですから、よりヒートアップしましたね。
ハングオン(※1)
1985年にセガが発売したバイクレース型アーケードゲーム。実物大のバイク型筐体に乗り、自分で傾けて操作するもので、ハンドルの前に画面がついていた。自然なコーナリングと滑らかな3D画面で人気となった。

スペースハリアー(※2)
1985年にセガが発売したアーケードシューティングゲーム。超能力戦士ハリアーとなり、ドラゴンランドを救うために敵を倒していく。操縦に合わせて筐体が前後左右斜めに動いた。

マークV(※3)
1985年にセガが発売した家庭用テレビゲーム機。グラフィックや音声機能などでは、ファミコンを上回るスペックを誇った。ソフトには、ゴールドカートリッジ、シルバーカートリッジというものがあった。

マスターシステム(※4)
1987年にセガが発売したマークVのグレードアップバージョン。拡張機能だったFM音源、連射ユニット、3Dグラス端子を内蔵している。ソフトを差さずに電源を入れると、スペースハリアーの音楽とともにデモが流れる。

ファンタジーゾーン2(※5)
1986年にセガが発売した横スクロールシューティングゲーム。ショップ風船でお買い物をしたり、最終面でそれまでの面に出たすべてのボスが出てきたりと、後のシューティングに影響を与えた。キャラクターである「オパオパ」はアニメのキャラにもなっている。

アウトラン(※6)
1986年にセガが発売したアーケードレースゲーム。アメリカの西海岸を舞台に真っ赤なスポーツカーを運転し、レースを勝ち抜いていく。「スペースハリアー」「アウトラン」「アフターバーナー」等々の鈴木裕氏が作ったゲームと川口博史氏の作った音楽。この2つの要素は当時不動の人気を誇った。2003年には続編であるアウトラン2、2004年にはアウトラン2スペシャルツアーズが登場している。

アフターバーナー(※7)
1987年にセガが発売したフライトシューティングアーケードゲーム。戦闘機に乗り込み、敵の攻撃をかいくぐり、目的地まで飛ぶ。
グラフィックのみならず、メロディーラインがカットされたBGMが衝撃を与えた。現在「アフターバーナー クライマックス」の発売が予定されている。

メガドライブ(※8)
1988年にセガが発売した16bit家庭用ゲーム機。デュアルCPUになっており、真っ黒な機体に16-BITと金字で書かれていた。メガアダプタを使うと、マークV、マスターシステムのゲームも遊ぶことができ、「メガCD」というCD-ROMドライブを追加する周辺機器も1991年に発売され、多くの名作を生んだ。特に、アメリカでは多くの人気を獲得した。

BEEP(※9)
1984年にソフトバンクが創刊した、日本最初の家庭用ゲーム機専門誌。BEEPはその後も、「BEEP!メガドライブ」「SEGA SATURN MAGAZINE」とずっとセガのゲームを追い続けていく。全タイトルを読者に採点させ、その結果を掲載する読者レースが人気で、上位よりも最下位争いが話題を集め、常に読者の話題に上っていた。

「ギアがちゃ」(※10)
シフトレバーを激しく操作すると、車から煙が立ちのぼり、その間はスピードが落ちないというテクニック。ギアがちゃをすると、減速してしまうはずの道も、スピードを落とさずに進めたため、より速くゴールすることができた。

バーチャファイター2(※11)
1994年にセガが発売した3D対戦型格闘ゲーム。初代のバーチャファイターが、世界初の3DCG格闘ゲームであり、その後の格闘ゲームに多大な影響を与えた。本シリーズはコンピュータソフトウェアに歴史的な足跡を残したと評価され、スミソニアン博物館にも展示・保存されている。

「ワンコインクリア」(※12)
ゲームをコンティニューせず、1回分のお金だけでクリアすること。

R-360(※13)
1990年にセガが発売した大型体感筐体。ソフトとして戦闘機フライトシミュレーター「G-LOC」、レーシングゲーム「ラッドモビール」などが搭載された。上下左右の揺れでは物足りない、360度回転するものを!というコンセプトで作られ、縦に360度回転する外枠と、さらにその内側に別方向に360度回転する内カゴを取り付けた二重構造の筐体となった。

複数のCPUで処理(※14)
通常は1つのCPUで処理をするため、複雑な処理ができないが、アフターバーナーは16ビットCPUを2個使い、地表の風景を変化させ、軌跡を描いて飛び回るミサイルなどを表現し、家庭用ゲーム機ではできないようなグラフィックを実現した。

ゴールデンアックス(※15)
1989年にセガが発売したアクションゲーム。剣と魔法で敵を蹴散らしていくファンタジー系のアクションで、横スクロールなのだが、奥行きがあった。2人同時協力プレイが可能。敵からドラゴンを奪って乗れたり、3人のキャラが大地の魔法、炎の魔法、雷の魔法を繰り広げる、豪華なグラフィックが特徴。

エフェクト(※16)
音声や映像の効果のこと。ゲームでは特殊効果のすべてを表すことが多い。派手な魔法の演出や乗り物などの動き、攻撃が発動したときの輝きなど、効果が多いほど、華やかなグラフィックに魅せられる。

多重スクロール(※17)
複数のスクロールを使った処理。背景の高さや遠近感などを表現するため、スクロールを重ね合わせ、違う速度で動かし、奥行き感のある演出を行える。例えば戦闘機の下に流れる風景、空の風景、自分の敵とは違うところで戦っている敵戦闘機の動きなど、臨場感を演出できる。

この後、話題はいよいよ「メガドライブ」を中心とした、セガ家庭用ゲーム機へ……。
後編(5/3掲載)ではより深いセガゲームへの愛、そしてエンジニアの原点が明らかに。
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山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ  
山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ
私自身はアーケードよりもマークVやセガサターンなどの、家庭用ゲーム機をプレイしていたので、今回のアーケードの魅力を伺って、セガのお店にでも行ってみようかな、と思っています。次回はその家庭用ゲーム機の話題を中心に、セガゲームの魅力の真髄?に迫る予定ですので、ご期待ください。

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