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フリーターから「日本発の世界トッププロダクト開発」を目指す転職

「Ajax Builder」で一躍脚光を浴びる新興ベンチャーHOWSへ

Webアプリを一新するだろうとIT業界がこぞって注目する実装方式「Ajax」。そんなAjaxを使った動的Webアプリ構築ツール「Ajax Builder」をいち早くリリースしたのが、2005年5月設立のベンチャー企業HOWS(ハウズ)だ。同社は「日本発の世界トッププロダクト」づくりへ邁進中。独創的な発想力は人材観にも生きている。一風変わった選考スタイルを見てほしい。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:06.03.15
HOWS
応募したエンジニア 企業の面接担当者
中司和宏さん
中司和宏さん
(当時23歳)
庄司 渉氏
代表取締役 副社長
庄司 渉氏
当時の職種
無職(フリーター)
募集職種
製品開発技術者
業務内容
コンビニエンスストアの深夜勤務スタッフ。
仕事内容
Ajaxを利用した製品の開発・研究。
職務経歴
大学の工学部電気工学科を中退後、主にコンビニ店で働く。情報処理との接点はなく、PCすら所有していなかった。
応募資格
自分の目標をもっていさえすれば、一切不問。
志望動機
未経験でも熱意と目標があれば一流のソフト技術者に育成する、と聞いたため。
募集背景
製品開発体制を増強するため。
面接の流れ
行わない。すべての応募者を面接する。
庄司副社長が1対1で面接。所要時間は1〜2時間。1次面接のみで内定とする場合も珍しくなく、中司さんの場合がこれに当たる。
庄司副社長が再度面接する。所要時間は1〜2時間。
1次面接でも2次面接でも、内定の場合は必ずその場で告げる。
【通過率:2〜3割】

【通過率:約5割】

Part1
職務経歴と志望動機、応募者の熱意
大学中退後にフリーター。技術は未経験
庄司:
 はじめまして。中司さんですね?
中司:
 はい。中司和宏と申します。本日はありがとうございます。お送りした履歴書は見ていただけましたでしょうか?
庄司:
 【Point1】僕は事前に履歴書を見ないで、会ったときのその場の反応で決めるようにしています。
 【Point2】まず、どうして君はうちに応募してきたんですか?
中司:
 【Point3】応募資格を見ましたら、開発未経験でもやる気があれば採用するということでしたので、それならと思いました。自分の先行きの不安を解消したいのです。こちらの会社はとてもユニークだと知り合いから聞いています。
庄司:
 【Point4】今まで何をしてきて、現在は何が不安なのか? 将来はどんなふうになりたいのか? なぜうちの会社へ来れば問題が解決すると思うのか? そのあたりを聞かせてください。
中司:
 私はアルバイトをしながら大学に通っていたのですが、お金が続かなくなって中退しました。それから約2年間フリーターをしていますが、特にできることもなく、この先が一体どうなるのか不安です。
 そんな中で、こちらの会社では未経験者を一流のソフト技術者に育て上げてくれると聞きました。熱意がありさえすれば、経歴に関係なく採用するとのこと。ならば、私にも可能性があるのかなと思いました。

 ソフト技術というものを具体的には知りません。私が願っているのは、何かの分野で確かな能力を身につけ、少しでも将来の不安をなくすことです。打ち込むことで能力を上げていける仕事に就きたい。できるものならば、こちらの会社が目指している世界一の製品づくりに加わりたい。そう考えています。
庄司:
 【Point5】では、うち以外に面接を受けた会社は?
中司:
 面接は……。
庄司:
 何社か応募はしたけれど、どこも書類選考で落ちた?
中司:
 はい、そうです。
入社後2年間はすべての指示に従ってほしい
庄司:
 「やる気はある」「打ち込む」といったけれど、僕の指示には何でも従ってくれるかな?
中司:
 はい。学べることは何でもします。
庄司:
 例えば、この本を読め、このプログラムをこうつくれ、ソースコードをこう管理しろと指示したら、文句なしに信じて、そのとおりに行動する気持ちがありますか?
中司:
 もちろんです。
庄司:
 【Point6】僕のいうことを聞き、本当にそのとおりにしてくれたら、僕は君を一流のエンジニアにする自信がある。けれども、それ相応の覚悟をしてもらわなくてはいけません。少なくとも2年間は僕を信じて、僕に従ってほしい。

 途中で自分の考えから別のやり方をするようになったときは、僕のほうも約束を守れない。そのくらい僕は真剣に育てる覚悟だから、君も2年間は覚悟してほしいわけです。もちろん、2年後に君が育ってからは、君が考える方法や方向をいってくれて構わない。君に最も合った道へ進めるようにアドバイスもします。どうですか、それだけの覚悟ができますか?
中司:
 お考えはよくわかりました。ありがたいお話です。何でも従います。
Point1
[面接官]応募者について先入観をもたないようにするためです。私が重視するのは過去ではなく入社後の伸び幅。実績や経験則に縛られていない人がいい。
[応募者]最初にこう宣言され、本当に経験不問の会社なんだと思いました。
Point2
[面接官]この質問への答えで好感がもてるのは2パターンあります。ひとつは、世界一を目指す技術ベンチャーに自分も参加して、ワクワク感を共有したいというもの。もうひとつは、これまでの自分は挫折続きだったけれども、ここで頑張って可能性をつかみたいというもの。後者の場合、能力があるのに本人はそれに気づいていないケースが多いのです。
Point3
[面接官]この答えには彼の誠実な人柄が現れているし、現状を変えたいという「もがき」がうかがえます。こういう人に見込みがあるんです。
[応募者]この答え方が上手だとは思いません。ただ、素のままの自分を受け入れてもらいたくて、こう話しました。
Point4
[面接官]うちのようなベンチャーに何も知らずに応募してくる若者は、多かれ少なかれ挫折感を抱いていて、大体は自己表現が下手です。しかし、それでもいい。欲しいのは正真正銘の意欲と潜在能力、いわば「磨けば光る原石」です。そこで僕はかみ砕いて質問し、応募者の実体をつかまえるわけです。
Point5
[面接官]この質問の意図は挫折体験の再確認です。どの程度挫折していて、そこからはい上がろうとしているかどうかを知りたい。
Point6
[応募者]「この人はすごい」と思いながらこの話を聞きました。自分の境遇を変える、もっといえば人生を変えるチャンスなのかもと感じました。
[面接官]この話は面接する全員にします。「覚悟がある」という答えを聞くよりも、この話をしているときの応募者の表情に注意し、本当に覚悟する心積もりかどうかを探ります。もしおじけづく気配が見えたら、不採用とします。
Part2
 感性と成長意欲

モノづくりのマンガを読ませて感性を見る
庄司:
 【Point7】それじゃ、僕からの最初の指示なんだけど、このマンガを読んでもらえませんか?
(ここで庄司氏は『ZERO(ゼロ)』[原作:愛 英史、画:里見 桂、集英社ヤングジャンプコミックス]を3巻手渡した。
『ZERO』は「この世の物ならどんな物でも複製する」という神の手をもつ究極の贋作者・ゼロを主人公とする1話完結型の物語。中司さんは約1時間かけて読んだ)
庄司:
 【Point8】どう? 面白かった? 感想を聞かせてくれないかな?
中司:
 いやあ、面白かったです。会社の面接でこんなに感動的なマンガを読ませてもらうなんて、想像もしていませんでした。
庄司:
 この本は初めて読んだ?
中司:
 はい。
庄司:
 どこに感動したかな?
中司:
 【Point9】だれにも本物と見分けがつかない複製をつくるのにとことんまで調べる。本物の創作者と同じ気持ちにまでなる。そのすごさ。モノづくりのプロがもつ姿勢。そこに感動しました。
技術よりもプログラマの内面性を重視
庄司:
 僕が知ってほしかったのは、ひとつの物を完成させるには魂を入れることが必要で、主人公のゼロが命懸けで取り組むというプロセスなんです。それはソフトをつくるのでも同じだと思う。そういう気持ちになれそうですか?
中司:
 確かに命懸けでモノをつくる大切さが描かれています。そういうことがコンピュータソフトの開発でも必要なんだろうと思います。
庄司:
 うちの会社では「この映画を見て」とか「この小説を読め」という話が日常的に出て、その感想を求めます。というのは、うちの会社の特徴のひとつとして、プログラムをつくる人間の内面性を重視しているからです。
 【Point10】つまりは、人間性を伸ばすというスタンスがないとうちではやっていけない。
 単にプログラミングのテクニックが上達すればいいというものではないんです。
中司:
 わかりました。
Point7
[応募者]こう言われて、「エッ!?」という感じでした。入社面接でマンガを読ませられるなんて、聞いたことがありません。読み出した最初のうちはどんな感想をいおうかと気になっていたんですが、すぐにそんなことは忘れて、普通に集中して読んでしまいました。
Point8
[面接官]実は、この質問にはさほど意味がありません。彼が食い入るように読んでいたからです。感動し切っていた。それだけでこのチェックポイントは合格なんです。
Point9
[面接官]私は『ZERO』をマンガの名作と思います。うちの社長も涙して読んだほどです。僕たちが感動するものに同じように感動する人に入社してもらいたい。普遍的な感動を受信できる感性がないと、普遍的なプログラムは書けない。これは僕の持論です。
Point10
[応募者]高度な話なのでしょうが、このときは単純に人生の勉強もさせてもらえる会社なんだと思いました。毎日が技術の話に終始するのではない職場がイメージされて、何だかホッとしたことを覚えています。
Part3
待遇と入社日
待遇・入社日についても審査の対象に
庄司:
 【Point11】ところで、今現在の手取り月収はどのくらいですか?
中司:
 12万円くらいです。
庄司:
 うちに入社したら、いくらくらい欲しいですか?
中司:
 それは特に考えていません。
庄司:
 例えばだけど、5万円とか6万円でもいいの?
中司:
 最初はそれでも構いません。
庄司:
 でも、それじゃ生活していけないでしょ?
中司:
 それはそうですが……。
庄司:
 こちらとしては、一生懸命にやってくれるのであればいくらでも払います。生活ができなくてほかでアルバイトをし、うちの仕事がおろそかになるのでは困るんです。君に覚悟を決めて来てもらう以上、安定した生活を確保し、うちの仕事に全力を注いでもらう必要があります。最低いくらなら、生活に困らずにすむのかを答えてほしい。
中司:
 そういう意味では手取り15万円です。
庄司:
 今までは足りなかった?
中司:
 はい。少々不足していて、やりくりが必要でした。
庄司:
 15万円なら、自宅での勉強も含めてうちに専念でき、不安なく健康を維持して働ける?
中司:
 そうです。
庄司:
 【Point12】仮にこの場で「採用」といったら、いつからうちに来られますか?
中司:
 【Point13】今晩の勤務でコンビニを辞め、明日から出社します。
 (このあと庄司氏は正式に内定の旨を告げた。それに対して中司さんは「よろしくお願いします」と頭を下げた)
Point11
[面接官]現在の月給と入社後の希望月給を正直に話せることが重要です。誠実さのバロメーターと考えています。基本的には現収を下回らない待遇で雇用しますが、高額の方には待遇を話題にして、仕事観まで掘り下げて審査します。
Point12
[面接官]この質問への回答も審査のひとつです。出会いはお互いにチャンスなので、瞬時の決断力も必要です。それはビジネスのシーンを想像すれば納得できるはず。実際には店長の要請で2週間後の入社になりましたが、彼のセンスのよさは「買い」です。
 現職が正社員の場合、「引き継ぎに3カ月かかります」などという人がいますが、それではダメ。職場への迷惑を短期間で最小限に押しとどめて、遅くとも1カ月以内に移ってないと、大体はよい働きをしてくれません。
Point13
[応募者]絶対にこの会社に入りたい、庄司さんにかけたいという気持ちになっていました。アルバイトのことは頭から飛んでしまって、ストレートにこう答えました。
面接官はココを見た!
●誠実な人物か。
●この会社で一生懸命になる覚悟があるか。
●今の環境を変えようともがいているか。
 まず誠実かどうかを、面接全体を通じて探る。志望動機と待遇に関する回答には特に注目する。次に、入社後2年間、何でも指示に従う覚悟ができるかどうかを確認する。言葉に現れているかどうかは別として、とにかくやっていきたいという熱意が重要。さらに、もがき苦しんできたかどうかを見る。現状を抜け出し、世界一の製品を開発するという夢に参加したいと本気で思っているか。このほか、魂を込めたモノづくりへの共感度もチェックする。
中司さんはコレで決めた!
「実際に会ってみたら、庄司さんはものすごい人でした。
この人についていけば
私の人生が一気に変わるのではないかと思ったんです」
 知り合いから、HOWSのユニークさや庄司さんというエンジニアのすごさは聞いていたんです。でも、実際に会ってみたら想像を超えていました。マンガを読ませて感想を聞く選考法にも驚きました。この会社に入れば、私の人生が一気に変わっていくのではないかと思ったんです。ただ、そういう気持ちの一方で、庄司さんの期待に私自身が沿えるだろうかという不安がよぎったのも事実。私の可能性を掘り出してくれた面接でした。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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庄司さんに最初にお会いしたのは、「厳選★転職の穴場業界」の『Google Mapsでユーザーの度肝を抜いた「Ajax」』の取材でした。やることなすこと型破りなエンジニアと思っていたら、採用面接もかなりユニーク。「挫折した人間だから伸び幅がある」という考え方には共感しました。中司さん、2年後のスーパーエンジニアを期待しています!
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