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ますますヒートアップ!  派閥抗争から小学生レベルのケンカまで いつ見切る?バブル入社上司たちのあきれた出世争い
陰湿な派閥抗争から小学生レベルのケンカまで、バブル入社上司たちの出世争いにまつわるトラブルが現在、続発中! そこで早速、そのトラブルに巻き込まれたエンジニアたちの“悲惨な実態”に迫ってみた。
(取材・文/植村恒有 総研スタッフ/山田モーキン イラスト/能美勉) 作成日:06.01.04
その1:上司同士の抗争に巻き込まれる、エンジニアの悲惨な現実
「上司同士の抗争」は当事者が勝手にやればいいのに、必ずといっていいほど周りが巻き込まれる。巻き込まれる部下のほうはたまったものではない。そこでまずは、一つの典型的な「上司同士の抗争」シーンを紹介したい。
注:なおこの話は、今回実施したアンケート結果に基づいた、世にも恐ろしい「実話」である。
 
ステージ1:あきれた出世争いの背景  
 私(28歳)は、商社系大手SI会社産業2部に所属するSE。2年前からはサブシステム構築のリーダーも任され、スキルレベルは同期入社の中でも上位と自負している。ただし、バブル入社上司の何人かとは折り合いが悪く、とくに直属の上司のT田課長には嫌悪感すら抱いている。上の人間には徹底的にゴマをすり、下の人間には無理難題ばかり押し付け、そのくせ自分はPCでこっそり遊んでいるからだ。
 わが社は金融・流通業界のシステム構築で豊富な実績を持ち、最近は公共インフラ分野の受注にも力を注いでいる。その努力が実って西日本地区のガス会社からの大規模プロジェクトの受注に成功した。立役者はF崎常務。もともと商社から天下ったA山専務とSE出身のF崎常務とはライバル関係にあり、今回の受注成功でF崎常務が一歩リードというウワサ。巻き返しを図る専務派と勢いづく常務派は、近く勇退する産業2部部長のポストをめぐって一触即発の状態に。
 
     
ステージ2:“バトル・ロワイヤル”に発展  
 抗争は当初、経営マネジメントレベルでの主導権争いだったが、今回の部長ポストをめぐる代理戦争をキッカケに管理職全体に波及した。T田課長は、自分も次期部長候補の1人とカン違いして常務派上司へのゴマすりに拍車をかける。ふだん存在感の薄い隣の部署のI川課長まで技術力をアピールしようと、「SOA(オブジェクト指向開発の新技術)を5分で説明できるか」などと周囲に議論を吹っかける。技術陣が手薄な専務派に自分を売り込む魂胆らしい。
 大多数のSEたちは「派閥抗争なんてバカなことをいつまでやっているんだか……」と冷ややかに見ていたが、今回の大規模プロジェクトは常務派で構成されるというウワサが流れてから様子が一変。プロジェクトのメンバーになればSEとしてスキルを伸ばす絶好の機会で、実績にもハクがつく。にわかに会社全体を巻き込んだバトル・ロワイヤルの様相を呈し始めた。
 
     
ステージ3:エスカレートする陰湿な争い  
 こういうときに異常に張り切るのがバブル入社上司たちの共通する特徴だ。自分の上司が専務派と知るや、上司の頭越しに常務派の部長に根回しを始めるY沢課長。彼は自分の部下は常務派でまとめたなどとありもしない政治力を誇示する。それをご注進とばかり専務派の上司にチクるO村課長。自派の上司はもちろん、対立派の上司にまでタダ酒をたかっている。常務派のS井課長と部下のK藤女史がホテルに入るのを見たとスキャンダルを流す専務派Z沢課長とその部下のSE。彼らはウワサにとんでもない尾ひれを付けて流すのが得意だ。常務派SEはガス会社とのつながりを生かして既存システム構成図や重要情報を独占し、専務派SEには一切流さないetc……。
 バトル・ロワイヤルは、もはや歯止めが効かない状態になってしまった。
 
     
ステージ4:あきれた出世争いのてん末  
 一番困惑しているのは、派閥争いに嫌気が差し、あくまで中立を決め込んでいたSEたちで、私もその一人。当初、派閥争いに加担するSEはごく一部に過ぎなかったが、いつの間にか専務派常務派に二分されてしまった。常務派は、ガス会社の経営幹部を動かして別会社を作ると息巻く。一方、専務派は親会社の資本力で他のSI会社にM&Aをかけるから、常務派が全員辞めても平気とうそぶく。両派とも私たち中立派SEのことなんか眼中にない。中立派のSEたちは、「今さらどちらかに尻尾を振っても手遅れ」「どちらが勝ってもわれわれは勝ち組の下でこき使われるだけ」とすっかり意気消沈。転職活動をする気にもなれない私は、「何もしていないのに、どうしてこうなってしまったのか」と途方に暮れている……。
 
     
その2:もういい加減にしてくれ! エンジニアを窮地に追い込む上司同士のトラブル事例
 転職を何回か繰り返さないと、なかなか他社のバブル入社上司同士の抗争の実態をうかがい知ることができない。だが今回、上司同士の出世争いやトラブルに巻き込まれた経験のあるエンジニアに対するアンケート調査を実施したところ、リアルな実態が浮かび上がってきた。
ケース1:仁義なき勢力争い編
  部下のモチベーションが低下する、度を越した上司同士のライバル争い
 
ライバル同士の部長代理がお互いの企画案をことごとくつぶし合い、その争いに部下たちが巻き込まれている。そのため、部下たちは新しい企画案を考えなくなってしまった。
  (システム開発・32歳)
研究所所長は外部から招聘された優秀な研究者で、開発部長は内部からのたたき上げ。研究開発組織は所長派と部長派に分かれ、互いにミスを探し合う。所長が長期プランの作成を勝手に進めたところ、部長派はヘソを曲げてしまった。
  (研究・36歳)
グループ長は出世を競っているライバルに対して故意に仕事の情報を流さなかったり、忙しいから忘れていたフリをしたり、情報発信者に連絡ミスと小言をいったり……。部下たちは皆気づいているが、巻き込まれるのが嫌であたらずさわらず。
  (システム開発・29歳)
 
 アンケート調査でもこのケースがいちばん多かったのが、対処法としてはやはり“かかわらない” “中立を保つ”といった意見が多数を占める結果に。こうしたライバル同士にある上司は、部下に尻尾をつかませない傾向が見られるため、実行力のある経営陣に働きかけ、徹底した意識改革を断行するしか、抜本的な打開策は見当たらないのかもしれない。
 
ケース2:“反り”が合わない編
  志向性の違いから上司同士が反目し、そのとばっちりが部下に
 
有名大学卒の部長は高卒の課長を内心では見下している。一方、課長は部長を人の気持ちが読めない人間と軽視している。ある大きなプロジェクトの編成で、その課長と部下全員が外されてしまった。
  (通信インフラ設計・26歳)
隣の部署の上司は執行役員だが、部下を好き嫌いで出世させたり転勤させたりするタイプ。私の上司は数値化した結果を評価するタイプで両者は互いに嫌っていたが、ついに私の上司が執行役員に降格されてしまった。
  (システム開発・28歳)
経営企画部長と私の上司の情報システム部長は有名な犬猿の仲。情報システム部門が提案するシステム拡張案を経営企画がコスト/プロフィットの観点から却下したため戦争勃発。その結果、部下も含めて部門対立の構造が生まれてしまった。
  (社内情報システム・33歳)
 
 仕事の方向性の違いが生み出す上司同士のあつれきもあった。だがそれ以上に圧倒的に多かったのが、「こいつとは反りが合わない」といったような性格の違いによる対立抗争。上司同士の性格が合わないだけでトラブルに巻き込まれてしまう部下にとっては、やはりやりきれない思いがアンケート結果からにじみ出ている。
 
ケース3:子供のケンカ編
  ささいなことが原因でつかみ合いになる上司同士のケンカに周囲はあきれて……
 
私の上司(開発部長)と製造部の部長はライバル大学の出身で事あるごとに衝突している。先日も工場で発生した不具合の原因をめぐってつかみ合いのケンカをしていた。
  (システム開発・29歳)
上司の課長と部長は仲が悪く、お互いに生理的に受け付けないらしい。うちの会社は神戸にあるのだが、阪神・淡路大震災のとき、東京出身の課長が心配している実家の親に顔を見せに戻ったら、部長が激怒。「仕事を放棄するな!ここは戦場だ!」
  (システム開発・26歳)
もともと仲の悪い上司同士が、プリンターを箱から出す出さないでつかみ合いのケンカに。あまりにも低レベルのケンカを部下たちは軽蔑のまなざしで見ている。
  (回路システム設計・31歳)
 
 「いちゃもんをつける」「無視」「責任のなすりつけ合い」etc……。アンケートに寄せられたキーワードの数々は、まさしく子供レベルのケンカと差異はない状態。もはやこのレベルに達してしまっている場合にはタイトルどおり、「見切る」ジャッジを下すときなのかもしれない。
 
「抗争の半分はささいなケンカ」バブル入社上司同士の抗争を徹底分析
 
 今回、「上司同士の抗争」の実態を把握するため、エンジニア200人にアンケート調査を実施したところ、約50%が「上司同士の感情的な(好き嫌いのレベル)の衝突・もめごと・ケンカ」と回答している(表1)。それに対して、「上司同士も含めた、全社的な派閥間の対立・抗争」という深刻なレベルの対立・抗争はわずか8%弱にすぎない。しかも、争いやトラブルの根本的な原因として「上司個人の問題」を80%近い人々が挙げている(表2=複数回答)。アンケート結果からは、上司同士の抗争は会社を割るほど深刻なものは少なく、個人レベルの根の浅いものが大半を占めていることが判明した。
 
表1/表2
 
 このことは、各社でバブル入社の上司たちが大半を占めていることと無関係ではない。近年、どこの企業でも積極的にプロジェクト・マネジメントを導入した結果、マネジャーやリーダーとして不適格、もしくは経験の浅い上司たちが続出したためと思われる。重要なプロジェクトから外されればストレスがたまり、ついトラブルを引き起こす。バブル入社の上司たちの衝突・もめごと・ケンカに巻き込まれて被害を被らないように、中立的な立場で距離を置いて対応しているというのがエンジニアたちの職場環境の実態だ。
 
コラム:傍観することから抜け出すための、 自己防衛策のルール
 上司同士の抗争を巻き起こしている当事者たちは、自分たちの問題行動を改めるどころかますますヒートアップ。職場環境は悪くなり、部下たちのモチベーションは下がる一方。こういう状況の中で、エンジニアたちにとって有効な自己防衛策はあるのだろうか。企業内組織のトラブル事情に詳しい(株)スコラ・コンサルトの柴田代表は、今回のアンケート調査の結果を一読して「ひと昔前なら全社的な派閥間の抗争を公然と行っている企業はいくらでもありましたが、今そんなことをやっている企業は淘汰されてしまいます」と、まず指摘する。今や企業は、変革に次ぐ変革を実践し続けないと生き残れない時代。もし、自分の会社が派閥間の対立・抗争に血道を上げているようなら、さっさと見切りをつけ、転職活動を始めるほうが得策だ。

 問題は、いちばん多い「上司同士の感情的な(好き嫌いのレベル)の衝突・もめごと・ケンカ」に対して、どのような自己防衛策が有効なのだろうか。回答の中で比較的多いのが「中立的立場で被害を避ける」。この回答に対して柴田氏は「中立的というのは問題解決の先延ばしで有効な防衛策にはならない」と否定的。「むしろ会社を辞めるくらいのつもりで、上司たちの上長に自分の意見をぶつけてみてはどうか。上長たちは部下の衝突・もめごと・ケンカを意外に知らないから、有効な対策を講じるかもしれない」と提案している。

 もし、その上長が何の対策も打ち出さず、その場しのぎで問題解決を先延ばしするようなら、その企業のマネジメントに明日はない。そのときこそさっさと見切りをつけ、転職活動に全力で取り組むべきであろう。
柴田昌治氏
柴田昌治氏
スコラ・コンサルト代表。1983年にビジネス教育の会社を設立後、企業の風土・体質問題に目を向けて変革支援を始める。文化・風土といった人のありようの面から企業変革に取り組む「プロセスデザイン」というやり方を実践の中で結実させてきた。
著書に、『なぜ会社は変われないのか』(日本経済新聞社)、『会社を変える「日本式」最強の法則』(ダイヤモンド社)など多数。
 
 
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[] 山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ []
山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ
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争いの中身を探ってみると記事にあるとおり、「これがホントにいい年した大人のやること?」と疑いたくなる事例が続発。この先の日本の行く末を本気で心配になってしまいました……。今この記事を読まれている方ご本人が、「バブル入社上司」の立場である場合も多くいらっしゃると思いますが、ぜひ率直なご感想をお伺いしたいと思っています。
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