「もしもオレが社長だったら」50連発

だれだって、会社や経営者に、不満のひとつやふたつは持っているもの。そこで、「オレが社長になったら、会社をこんなふうに変えてやる……」というユニークアイデアを大募集。ぶっ飛んだ意見から、実現性の高そうなマジメな提言まで、たっぷりご紹介しよう。

(文／白谷輝英　総研スタッフ／根村かやの　イラスト／イージー栄作)　作成日:05.01.12

	「うちの経営者は、現場のことがわかってない！」「今の社長なら、オレのほうがよっぽどマシだ！」―― そんなふうに感じている技術者は、決して少なくないはず。そこで今回は、今、自分が勤めている会社の社長になったら、どんな施策を打ち出すのか、100人のエンジニアにアンケートを実施した。　アンケートでは、「給与関連」「技術方針」「開発環境」「経営戦略」「人事制度・就業形態・待遇など」の5分野ごとに、したいことを聞いた。そのうち、4割近い人が「いちばんしたい」と答えたのが、給与関連の施策。やはり、給与制度や給与額に対して不満をもつ人が、いちばん多いようだ（グラフ参照）。　なお、今回意見を寄せてくれたのは、25歳から39歳までのエンジニア。Web、オープン系のシステム開発に携わる人が、比較的多かった。　では、どんなアイデアが集まったのか、分野ごとに紹介していこう。

年功序列制度を廃止し、出来高制にする。無能で高給取りの年寄りが多いから。

成績の悪い人の給与を、下げられるようにする。いちばん成績の悪い人でも給与が前年と変わらないのは、理不尽。

役職者の給料をもっと高くする。今は責任が重くなってもほとんど昇給せず、役職につくメリットがない。

各社員に「成長見込み給」を給付。会社にとっていちばん大事なのは、人を育てること！

年齢給の上昇を35歳でストップさせ、35歳以上には年齢給を廃止する。この制度ならば、給与を上げるためには能力給と成果給を上げる必要があり、40代・50代の仕事をしない給料泥棒はいなくなる。

退職金の廃止。仕事しないで定年まで待つ人がいて迷惑だから。

自分以外の余計な取締役や重役を、即解任！　現場の人間が日銭を稼いでも、彼らのせいで利益率が低い。

日本式の固定給に戻す。不完全な能力給は、社員のやる気をなくさせるだけ。

男尊女卑の給与体系を変える。何で使えない男性のほうが、能力のある女性より給料がいいのかわからない。
そういうことをするから使える女性がどんどん流出していってしまうのに……。

各部署の利益に応じた給料を支給する。利益、売り上げ共にトップの部署にいるのに、親企業への献金に利益が回され、給与額が低いのは納得いかない。


	「能力給の導入」という意見が、とにかく多かった。特に若い世代ほど、能力給を望んでいるようだ。また、役員や管理職の数を減らすという提案も目立った。年齢と給料は高いのに全く働かない上司に、うんざりしているエンジニアが多いことの証明だろう。一方、「プラン8」（電気・電子・機械系／37歳）のように、成果連動型より固定給を望む意見にも、それなりの説得力を感じるのだが、いかがだろうか？



	エンジニアには、個室を用意。集中力が高まりそう。



	開発用の機材は、最長2年で新調。古い開発環境で苦しむのはイヤ！



	グループに必ず1人は、事務職の女の子を入れる。職場が活性化するはず。



	休憩ルームの居心地向上。リラックスできない休憩所なんて、意味ないです……。

職場で犬を飼う。社員に癒しを与え、仕事の能率UPを目指す。

シャワールームの設置。泊まり込みが多いので（涙）。

開発関連の情報・知識の共有化。作業効率を高めるため、社内資料を電子化し、全員で利用できるようにする。

事務所を都心に移転。今の会社は通勤にも外出にもあまりに不便……。

スーパーコンピュータを導入。処理速度が増し、作業効率アップ間違いなし！

エンジニアのイスを、マッサージチェアに変える。常に全員肩こりや腰痛に悩まされているし、マッサージ店に行くとお金もかかるので。


	シャワールームの設置、マッサージチェアの導入などは、回答者の忙しさが伝わるようで、何だか身につまされた（Ｔｅｃｈ総研も、皆さんと同じような職場環境なんです）。また、「プラン13」（電気・電子・機械系／31歳）に近い意見として、助手や秘書が欲しいというものも散見された。　また、「プラン11」（IT・通信系／29歳）で紹介した「エンジニアに個室を与える」という意見より、実は「パーテーションで机を仕切る」という案のほうが、ずっと数が多かった。作業効率も大切だが、経費を抑えるのも大事だという、経営者としてのバランス感覚が働いた結果かも？



	「目の付け所が◎◎でしょ」といえるような、画期的な開発を目指す。そうすることにより、知名度も上がり営業もしやすくなるはず。



	西武ライオンズの買収に乗り出す。売名のみで、実際には購入しない。



	ものすごいHPを作る。HPがヘボいところに仕事を頼もうとは思えないから。



	社名を変える。今の社名は覚えにくいし、インパクトに欠ける。

開発部門の人材のみを自社社員でまかない、総務部などを全廃。派遣社員に切り替えて人件費の徹底抑制を図り、その分研究部門に予算を回す。

クルーザーを100台買い、従業員は自由に使ってよいことにする。社員のリフレッシュに役立つし、話のネタにもなる。

会社の外壁を明るい色に変える。今の建物は、あまりに暗いイメージ。

社員の英語力を高める努力をする。グローバルに活躍できる人材を育てたい！

単位株数を、1000株から100株にする。投資しやすい環境をつくり、個人投資家を集めるため。

東京23区内に、超高層の自社ビルを建てる。会社の知名度向上と、環境による社員のモチベーション向上の、一石二鳥。


	「プラン22」（IT・通信系／37歳）、「プラン26」（IT・通信系／34歳）など、楽しいコメントがたくさん集まったのがこの分野だった。クルーザーを買っても、乗りに行く時間がないのでは……というツッコミは、この際ヤボというもの。　また、一般の投資家の投資しやすさに注目した「プラン29」（素材・医薬品他／28歳）を出したのは、かなり経営センスのあるエンジニアと見た！

コアタイムなしのフレックス制度を導入。現在は、オン・オフのメリハリがつかない。

完全フレックスはもとより、自宅勤務も許可。家でも仕事はデキるのに、何で往復2時間以上かけて通勤しなくちゃならないの？

有給を100%消化できるようにする。取れなければ、給与に反映する。だって、今年は20日近くある有給のうち、3日しか取れていません。死ぬかも……。

朝のラジオ体操は廃止にし、出勤は9時にする。8時に出勤してラジオ体操をするなんて、ばかげてる！

エンジニアは、私服で通勤可能にする。開発部門に制服、スーツは不要！

介護休暇、育児休暇の整備。優秀な人材に、細く長く活躍してもらいたい。

プロジェクト終了後、10日のリフレッシュ休暇を与える。残業が多い職種なので、せめて仕事が一区切りついたときくらい休ませたい。

社内FA制度などを導入し、人材の流動化を促進。そのほうが、斬新なアイデアが生まれそう。

上司だけでなく、部下も査定をする「360度評価」を導入する。上司も、部下からの評価を受けるべきである。

同族経営の禁止。何もわからないバカ息子がいきなり部長で入社してくるのは、だれ一人納得できません。


	何と半数以上の人が、「フレックス制度の導入」を提案していた。自宅での勤務を認めるべきだという意見も多く、自由な勤務形態を望むエンジニアは予想以上にたくさんいるようだ。「プラン36」（サービス系／39歳）、「プラン37」（IT・通信系／32歳）のように、休日に関する提案も多かった。企業にとって、人材はいちばんの宝。エンジニアの皆さんは、リフレッシュ休暇の導入や、託児所の設置によって優秀な人材を確保すべしと考えるようだ。

Windowsアプリケーション開発に力を入れる。今は組み込み系がメインだが、ユーザーに近い分野に力を入れて知名度アップを図る。

研究技術開発部門を増強し、独自の強みをもつ分野を多くする。高付加価値をもつ製品で勝負をしなければ、収益は望めない！

的を絞って集中投資を行う。今はいろいろな製品があるが、すべてが中途半端。伸びているところにはもっと迅速に集中的に投資すべきだ。

高い技術を持った人材をヘッドハンティングすることで、技術力の強化を図る。企業買収より費用がかからないし、リスクも小さい。

システムコンサル系企業を買収し、商談獲得の専門部隊として活躍してもらう。自社の営業部門は無能だから、その力
を持つ会社を買収して解決。

つまらないプライドを捨てて、技術レベルの高い会社と提携。無駄な開発費を削減する。

目新しい技術にすぐに飛びつかない。コストもかかるし、不具合も起こりやすいんだから……。

OEMでもいいから、自社のCopyrightのソフトウェアを制作する。そうすれば、社内に技術が残るから。

下請け業に徹し、他社のノウハウを盗み取る。そのほうが経費もかからず合理的！

R&D部門で先端技術開発に力をいれ、ケータイ決済系を発展させる。業界としてこれから伸びが期待できるはず。


	「プラン45」（その他の業種／35歳）、「プラン46」（電気・電子・機械系／28歳）に代表されるように、企業買収や技術提携を行うことで、他社の優れた技術やノウハウを手っ取り早く得ようという意見が多かった。移り変わりの早いエンジニア業界だから、自社でじっくり技術開発をする時間がもったいないということだろうか。また、Webなどの成長業界に、資本を集中投下したいという意見も多数あった。

　もっとふざけた提言が集まるかと思いきや、すぐにでも実施できそうな、現実性の高い意見が寄せられて驚いた。また、給与や開発環境、人事制度の分野で、エンジニアがどのような不満をもっているのかが垣間見られて、非常に興味深かった。
　この記事を読んでいる経営者の皆様、ぜひこれらのプランを実行してみては？　エンジニアのモチベーションが、グッと上がること間違いありませんよ！

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根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ

「育児休暇の充実」「子どもができても働けるようにフレックス制度導入」「会社に託児所を設ける」、これらはみんな女性エンジニアから出た意見。男性諸氏、事務職の“女の子”とか言っている場合じゃないです……。「社長になったつもりで考えてみる」と同様に、同僚やパートナー、子どもをもった未来の自分の労働環境も想像してみては。