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元大工で初心を貫いて転職を成功させた

パッケージソフト開発実現のため2度転職したY・Mさん(30歳)

大工出身という異色の経歴を持つY・Mさん。しかし、彼の仕事観と現在までのキャリアステップには一本の筋が通っている。30歳を過ぎた今ではシステムコンサルタントへの転身も現実的になってきた。そんな彼のたどった道とは……。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田せいめい) 作成日:04.11.24

キッカケ編
パッケージソフトを開発したい

大工の仕事とシステム開発はそっくりだった

 情報処理の専門学校を卒業したのは10年前。C言語やCOBOLでプログラムを書く基本スキルを身につけることができた。そして卒業を迎え、友人たちの多くはSI企業やソフト開発の企業へ就職した。自分もソフト開発会社への就職が決まっていたが、ただ単にプログラムをコーディングする仕事に疑問を感じ、大工への道に進路を急転換させた。
 建設現場で働いた3年間は中身が濃かった。給料もよい。でも、次第にコンピュータシステムの世界に戻りたくなっている自分に気づいた。正確に仕上げるために常に計算が必要で、段取りよく、早く、効率的に作業を重ねていく大工の仕事の面白さは、コンピュータシステムの構築とまったく同じだと気づいたのだ。社会人として自信がついたこともあり、新たな世界にチャレンジする気持ちが固まっていた。

派遣された企業で、中身の濃い仕事ができた

 当時は賢く転職する術など知らない。とりあえず職安に行き、システム構築の仕事がしたいと希望を言ったところ、すぐに紹介してもらえた。ソフトウェアの受託開発会社で、面接に臨んだところ、その場で採用となった。

 入社と同時に中堅SIerのA社に常駐することになった。A社は評判の高い流通業界向けパッケージソフトをもつ、業界でも知られた存在である。そのパッケージを扱う部門に配属された。同パッケージの採用を決めたクライアントと接し、カスタマイズするための要件定義から導入支援まで任されたのだが、設計図を描き、段取りよく工程を進めていく仕事は確かに大工のそれと等しく、最初から戸惑うことも少なかった。企画的な業務もあれば、設計作業や工程管理の業務もあったが、全力で取り組むうちに慣れていった。顧客の業務にも強くなり、交渉力も磨かれたように思う。

 A社に常駐した5年目には実力が認められ、パッケージソフトの24時間対応サービスセンターの立ち上げにもかかわらせてもらった。そのシステムづくりには、A社でも技術力の高いと目されるメンバーが集められたのだ。

PROFILE
パッケージベンダー
開発兼システムエンジニア
Y・Mさん(30歳)

1994年にコンピュータの専門学校を卒業。ソフト開発会社に就職が決まっていたが大工の道へ。紆余曲折を経て、現在はパッケージベンダーでエンジニアとして活躍中。
Y・Mさんの転職活動DATA
前勤務先 技術者派遣企業
システムエンジニア
転職した時期 2003年 11月
活動期間
(決意〜内定)
約3カ月
転職理由 エンジニアとしてステップアップできる仕事がしたい
会社選びで優先したこと 仕事内容、キャリアの発展性、待遇
実際に応募した社数 3社
内定社数 2社
落ちた社数 1社
辞退した社数 1社

応募からの日数
B社:情報システム会社
C社:大手ITアウトソーシング会社
D社:パッケージベンダー
 
B社
C社
C社
書類選考
7日
7日
2日
1次面接
10日
14日
9日
(内定)
2次面接
14日
21日
 
3次面接
17日
28日
 
4次面接
20日
35日
(内定)
 

前の派遣先とやりがいが違う

 5年間がたち、A社常駐から自社内での完全請負開発の部署に異動となった。今度は一から自分ですべて開発できる、そう思って発奮した。ところが受託した案件は難しくないものばかり。もっと高度な案件にチャレンジしたいと考え、次第に担当業務も開発側より営業的な内容に変わってきた。

 そうして1年間ほど試行錯誤を重ねた末に浮かび上がったのは、「優れたパッケージソフトを扱う開発に戻りたい」、さらに「パッケージソフトそのものを開発してみたい」という願望だった。まして20代後半に差し掛かった今は、エンジニアとして最もスキルを吸収できる年代のはず。ネットワーク技術なども身につけておきたい。すべてを勘案すると、今の会社では5年後の自分が不安という結論に達した。
転職準備編
自分のキャリアを洗いだす

履歴書と職務経歴書を何度も書き直した

 転職しようと決断したときに真っ先に思ったのは、今度は賢くじっくりと活動したいということだった。前回は職安に勧められるままに転職した。でも、今はSEとしての実績がある。安易に決めたくはない。

 そこでインターネットの求人サイトを活用していくことにした。その前に自分のキャリアを洗いだして履歴書と職務経歴書をざっと書いてみた。でも何だかしっくりこない。こんな人間を雇うだろうか……。自分でもつまらない経歴書のように思えた。自分はこんなはずではない。面倒だったがこれまでの仕事を一つひとつ思い出し、プロジェクトの規模やそこで任された業務内容でLinuxを活用したこと、さらにDBのバージョンなどまで記載していった。何度も書き直し作業を重ね、徐々にアピール度を高めていった。

 もちろん、ただたくさん書けばいいというものではないはず。そこは、面接者や人事担当者が何を知りたいのかを想定しながらまとめた。また「自分は何をした」に加えて「何をやりたいか、新たに何がやれるか」をイメージできるような文章表現を心がけた。
活動編
仕事内容はもちろん、待遇面もこだわった

最初の会社は折り合いがつかず

 転職サイトで最初に目にとまったのは、中堅SIerのB社だった。システム受託開発をメインにしながらも、商品力の強いパッケージソフトをもっている。そう、A社のイメージを重ね合わせたのだった。履歴書を送付し、その1週間後に面接を行った。1次、2次と技術リーダーの面接に合格。が、最後の人事面接で話がこじれた。待遇で折り合いがつかなかったのだ。大工は力量に応じて収入が増減する。エンジニアも同じような専門職だと思ったから、自分の引いた最低給与ラインを割りこみたくなかったのだ。
内定をもらったのは、客先派遣会社

 次に注目したのは技術者派遣・ITアウトソーシング大手のC社である。客先での開発は前職のA社派遣で好印象をもっていた。それに大手だけあって高度な開発案件も多い。自分のうでを試せるチャンスが多いと感じた。ソリューション部門やWeb部門の管理職クラスと何度も面談を重ねた。その都度、好印象をもつことができた。そして、最終的にコールセンター長として採用されることが決まった。いきなり管理職だ。A社でのコールセンター立ち上げ経験が評価されたようだ。自分の力量が正当に認められたのだと思った。この会社に行こうか……、でも何かが物足りない。

条件を比較して内定先を決める

 高く評価されたC社だったが、開発をやりたいという道からは外れてしまう。そこでもう1社だけアプローチしてみることにした。そこがつまらなそうであればC社に入るつもりだ。応募したのは強力なパッケージソフトをもつD社。応募動機も初心に帰ってみたのだ。ネットでアクセスしたところ、翌々日にメールがきた。そして1週間後に面接日が決まった。
 ところが当日はいきなり役員面接。ここが自分の未来の分かれ目と意気込み、緊張するどころか、かえって積極的にアピールした。パッケージを軸に開発リーダーを務めたことがあるという自分のキャリアの説明はもちろん、大手クライアント向けの大規模プロジェクトで開発の上流から下流まで手掛けたいという希望を訴えた。向こうも話に乗ってくる手応えを感じる。さらにパッケージソフト自体の開発にもかかわっていきたいという想いを語ったところ、何とその場の2時間で合格が決まった。提示された待遇も満足のいくものだった。
 困った。C社もD社も捨てがたい。C社のポジションか、D社の仕事内容か。迷いに迷ったが、初心を貫き、D社に行くことにした。

転職活動考察

 結果論になるがD社を選んでよかった。希望どおり自社パッケージソフトを軸に、システム構築の上流から下流までを任されるプロジェクトリーダーとして働いている。カスタマイズに向けた要件定義、仕様決め、アドオンの設計とプログラミング、テスト、導入などで忙しい日々だ。そして近い将来、次期バージョンの開発にもタッチできそうだ。念願のパッケージソフトそのものの開発である。

 一方で教育研修と資格手当が充実しているので、制度を利用していくつかのベンダー資格も取得した。次はセキュリティとネットワークのスキルを強化したい。その後にシステム監査の資格に挑戦しようと考えている。合格すればコンサルタントへの道も開けるだろう。

 実は今回の転職を後押しした最大の動機は、やりがいのある仕事への渇望ではない。待遇面での不満でもない。それらは付随する要素にすぎない。本当の原動力はこのままエンジニアとして先に進めなくなるのではないかという将来への不安感だった。30代直前は、エンジニアにとって重要なターニングポイントを迎える時期だと思う。同じような不安を感じるならば、転職が現状打破のきっかけになるかもしれない。
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