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システム・オン・チップ事業でベテランエンジニアを即戦力採用

企業合併をきっかけにASIC設計開発者が図研に転職

回路設計/プリント基板ソリューションで定評がある図研は、SoC(システム・オン・チップ)ソリューション市場へも進出している。ASICデザインサービスを柱に、ターンキー(完成品引き渡し)サービスにも注力し、どのフェイズへも柔軟に対応する。事業拡大を続ける中、ASICエンジニアへの求人ニーズは高まる一方だ。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:04.11.17
図研
応募したエンジニア 企業の面接担当者
小川さん
小川貴史さん
(当時32歳)
横川さん
SoC事業部
デザインセンター 部長
横川 隆氏
当時の職種
ASIC設計開発エンジニア
募集職種
ASICデザインエンジニア
業務内容
係長としてASICターンキーサービスにおける一連の業務の取りまとめ。
仕事内容
ASICの設計プロジェクトにおけるフロントエンド設計、およびプロジェクトマネジメント。
職務経歴
大学電子工学科を卒業後、半導体商社に10年勤務。各種ASICのRTL設計からテープアウト、ターンキーサービスの立ち上げ、設計開発管理などを担当。
応募資格
VerilogもしくはVHDLでの論理設計の経験。LSIもしくはFPGAの設計(RTL設計、論理合成)経験。
志望動機
SoCのアプリケーションの幅を広げるため、より高い技術力と活気のある環境で設計開発に取り組みたい。
募集背景
SoC事業における開発体制を増強するため。
面接の流れ
最初に総務人事部の採用担当者が選考。次に技術部門の部長クラスが選考する。
基本的には事業部長と技術部長が面接するが、担当課長が加わり3人になることもある。所要時間は1時間程度。
総務人事部長と人材開発室長が面接する。所要時間は1時間程度。
社長が1対1で面接する。所要時間は15分程度。
3次面接の当日に社内で最終判定会議を行い、可能な限りその日のうちに電話で内定を連絡する。
【通過率:4〜5割】
【通過率:7〜8割】
【通過率:9割】
Part1
現在の会社への入社動機と今回の転職理由
※面接には合計3人の面接官が対応したが、
 ここでは便宜上、横川氏のコメントとして掲載した。
※お互いのあいさつの後、面接官の紹介があり、面接が始まった。
応募者のメーカー志向性をチェック
横川:
 早速ですが、小川さんは、大学を卒業してから現在まで○○○に勤めていますね。入社の動機を教えてください。
小川:
 私は大学で電子回路を勉強しました。就職のときに○○○を推薦されて、調べてみるとASICの設計開発をしている部門がありました。お客さんから仕様書をもらって完成させる形です。そこに非常に魅力を感じて入社しました。
横川:
 ○○○は半導体デバイスの商社です。ASICの設計開発に興味があれば、半導体メーカーへの就職を考えると思うのですが、そうは思わなかったのですか?
小川:
 学生だった当時は、メーカーは大企業で自分のやりたいようにできず、ASICの設計や開発も歯車のひとつでしかないというイメージがありました。しかし、○○○は商社ですが、【Point1】独自に設計開発を行い、かつASIC部門は小所帯なので、仕様書からLSIの完成まで一貫して携われる。この点が強い動機になりました。
より多くの新しいASIC開発に携わりたい
横川:
 【Point2】そう考えて入った会社に10年勤めた今、転職を考えている。その理由は何ですか?
小川:
 ご存じのように、○○○のASIC部門は、×××(半導体メーカー)の販売特約店として機能してきました。しかし、他社のASIC部門と合併しましたので、設計開発部隊は単純に2倍になりました。その結果、開発案件が少なくなってきたのです。多くて年間に1〜2件しか担当できない状態で、私としては物足りなく思い、転職を決心しました。
横川:
 設計開発をたくさん手掛けたいと?
小川:
 はい。件数と同時に、新しいものを幅広く手掛けたいと思っています。
Point1
[面接官]この考え方は当社のSoC事業部の現状にマッチしています。この後で、今も同じ志向かどうかを、入社後に希望する仕事などから確かめることになります。メーカー志向の強いエンジニアの場合は、当社とのギャップを感じることがあります。ですから、大きなチェックポイントのひとつなのです。
Point2
[面接官]転職の動機はやはり気になります。合理的で前向きな理由から転職したいと考えているのかどうかです。この点は面接の中で何度かチェックします。
Part2
志望動機と現在の仕事内容

ASICターンキーサービスのマネジメント経験
横川:
 当社についてはそれなりに調べて応募されていると思いますが、【Point3】当社のどんなところに興味を感じ、そして入社後はどんな仕事に就きたいと考えていますか?
小川:
 御社のSoC事業についてはホームページを拝見しました。その中で最も魅力を感じるのはオリジナルIP(回路機能ブロック)の開発とターンキーサービスです。
 オリジナルIPについては、最新のトレンドであるPCI EXPRESSやUSBなどをそろえ始め、技術力の高さと独自性を感じます。また現在、ASICビジネスは苦しいともいわれていますが、その打開策として私は、IPの開発・提供とターンキーサービスの組み合わせが有効だと考えます。そして私も、その方向での仕事により深くかかわりたいのです。
横川:
 職務経歴書には、×××製ではなく台湾メーカー製ASICの設計開発を指揮し、台湾との窓口もこなしていると記述されています。これはターンキーサービスをマネジメントしていると受け取っていいのですか?
小川:
 はい、そうです。3年前から担当しています。【Point4】台湾メーカーと協力したASICターンキーサービスをハンドリングする力と語学力は、御社のSoC事業に、即戦力として役立てられると自負しています。
横川:
 台湾メーカーと協力したターンキーサービスでの実績を教えてください。
小川:
 テープアウトしたのはOA機器用1件、民生用2件の3製品です。
台湾メーカーと協力した新サービスの立ち上げ
横川:
 【Point5】そのターンキーサービスの立ち上げには、どのようなかかわり方をしましたか?
小川:
 最初は、台湾メーカーがもつプレゼンやデザインのキットをインストールして、使い方などを調べました。そしてマニュアルを作成し、デザインセンター内で研究しました。次に、当社の過去製品を用いてデザインキットを使いこなせるようにしました。当然、さまざまな疑問が出ますから、台湾へ逐一問い合わせて解決しました。また、何度か出張してディスカッションもしました。こうして徐々に体制を整えていった感じです。
横川:
 立ち上げ作業そのものを、小川さんが中心になって行ったということですか?
小川:
 そう受け取っていただいて結構です。
横川:
 ゼロからの立ち上げですから、大変だったのでは?
小川:
 ○○○には×××オンリーの土壌があり、台湾メーカーの意思を浸透させるのに苦労しました。
横川:
 【Point6】それほどの苦労を経験しているのなら、思い入れが強いはず。それでも転職したいのはなぜですか?
小川:
 自分が中心になってレールを敷きましたから、思いは確かにあります。しかし、先ほども申し上げたとおり、開発案件の絶対数があまりにも少なくなってしまいました。技術者としての将来が不安です。【Point7】ならばこれをきっかけにして、ASICの開発案件が数多くあり、力のある技術者がそろっている環境へ移ろうと決意しました。
Point3
[面接官]即戦力採用である以上、この質問にきちんと答えられない応募者の評価はぐっと下がります。意欲の面で疑わしいからです。
Point4
[応募者]志望動機と入社後の希望業務は、とても重要だと考えました。なぜなら、私と企業とのマッチングの度合いを印象づけるとともに、能力をアピールできるチャンスだからです。特に、私が入社することで会社が得られるメリットを、明確に伝えねばと思いました。尋ねられる前に、こちらからいいたかったくらいです。
Point5
[面接官]SoC事業部のデザインセンターが欲しいエンジニアは、RTL設計か論理合成の即戦力か、ターンキーサービスのリーダー格です。小川さんは後者を希望し、職務経歴書によると現職で立ち上げに携わったという。そこで、実際の作業内容を確認したのです。
Point6
[応募者]ここまで突っ込んで聞かれると、答えづらいものです。しかし、取り繕っても仕方ありません。正直に心境を話しました。
Point7
[面接官]この答えには、積極性やプラス思考を感じる半面、今の会社を盛り立てようとせずに逃げ出す姿勢もうかがえます。どちらに比重を置いて受け取るかは会話のニュアンスや応募者の全体像によるのです。小川さんの場合、積極性のほうを買いました。
Part3
応募者の得意技のレベル

上流から参加して実作業とマネジメントを兼務
横川:
 台湾メーカーで作った3製品について伺います。具体的にはどんなASICで、どんな作業フローでしたか?
小川:
 1つ目は、エンドユーザーがエレクトロニクスメーカーで、そこからの仕様受けでした。まず、○○○としての仕様書を作り、RTL設計をしてSTAやシミュレーションをしました。次に、ネットリストができた段階で台湾メーカーへ渡します。そして、レイアウト後のデータが出てきたら、またシミュレーション。そして、テープアウトです。
横川:
 小川さんが実作業をしたところは?
小川:
 【Point8】お客さんの仕様書をもとに、RTL設計へ落とせるレベルの仕様書の作成と、DFT設計です。その後の実作業はメンバーに任せて、私はマネジメントを行う立場でした。
横川:
 プロセスは?
小川:
 【Point9】0.18μのスタンダードセルです。
横川:
 規模は?
小川:
 メモリーはかなり大きくて4Mビット、ゲート数が10万くらいでした。ゲート数はさほどではありませんが、PLLが入り、動作は100MHzです。
(このあと横川氏は、ほかの2つの製品についても概要を尋ねた)
評価の対象となるワンチップマイコンの設計開発力
横川:
 【Point10】CPUの入ったASICは、これまでに数多く手掛けてきたのですか?
小川:
 はい。マイコンコアを使ったものですね。4年ほど前には、RISCコアが入った携帯電話端末用のASICを開発しました。RISCコアはペリフェラルが不足しているので、ペリフェラルモジュールのRTL設計と検証を先に行ってから、全体のDFT設計をしたこともあります。
横川:
 CPUコアの部分もRTLですか?
小川:
 はい。Verilogで行い、合成します。
横川:
 プロセッサーの合成は大変でしょう?
小川:
 ええ。大変ですが、スクリプトは提供されますし、良いものができます。×××のRISCコア開発部門から技術サポートも受けました。
横川:
 【Point11】これまで主に使用したツールを教えてください。
小川:
 論理合成にはSYNOPSYSのDesignCompiler、STAではPrimeTime、スキャン挿入ではMentorのDFTadvisor/Fastscanです。検証ツールとしてはDebussy、言語チェッカーにはSpyGlassを使ってきました。
細かな作業の確認が開発設計全体を支える
横川:
 ところで、【Point12】設計開発をするうえでは、どんな点に最も注意を払っていますか?
小川:
 ひとつは受け入れチェックです。ターンキーではお客さんからのインターフェースがいろいろありますから、仕様書ならばお客さんと突っ込んだ討論をし、RTLで受け取るのであれば軽く合成をかけてみます。また、ネットリストなら、SYNOPSYSのDRCをかけてみたり、スキャン挿入ができるかどうかを確かめてみたりします。

 もうひとつの注意点は、レイアウト前のサインオフと、マスク化前の最終サインオフでのチェック項目です。要所要所での確認を怠らないことが、設計開発上での重要な注意点だと思っています。
横川:
 最後の質問ですが、当社へ入社したとして、長期的には当社のSoC事業をどのようにしていきたいと思いますか? また、どんなエンジニアになりたいと思いますか?
小川:
 御社には優れたIPが既にいくつもあります。この製品数を増やしながらターンキーでのお客さんに、付加価値の高いサービスを提供していきたいです。
 個人的には、知識とスキルを広め、高めて、お客さんに喜んでもらえるようにしたいです。というのは、お客さんに喜んでもらえるときが、自分にも最高の喜びだからです。
(続いて入社可能時期などの質問があり、面接は終了した)
 
Point8
[面接官]この答えから、小川さんはターンキーサービスの最上流からかかわり、最後までハンドリングできていたことがわかります。納品したASICの概要を尋ねるのは、念のための事実確認です。
Point9
[面接官]ここで0.18μではなく、0.13μのスタンダードセルという答えが返ってきたら、プラス1ポイントになります。0.13μの経験者は当社でもまだ少ないからです。
Point10
[面接官]ワンチップマイコン内蔵の開発ニーズは広がる一方なのに対して、この分野での当社の実績はまだあまりありません。従って、ワンチップマイコン内蔵の経験は高く評価します。
Point11
[面接官]質問の意図はツール自体を知ることではありません。すらすらと名前を挙げられるかどうかです。言いよどむのはツールを使い込んでいない証拠と考えます。
[応募者]経験ツールを聞かれるのは当然だと思います。私にとっては日常会話と同じで、言いよどむなどということはとても考えられません。
Point12
[面接官]狙いは、ASIC設計開発フローの理解度をチェックすることです。当社で奨励する注意点と食い違っていたとしても、自分なりのしっかりした考えでポイントを挙げられる人は、フローをきちんと理解していると判断します。
 
面接官はココを見た!
●ASIC技術の得意技は何か、そのレベルはどの程度か。
●リーダー経験の具体的な内容はどのようなものか。
●SoC事業部のカラーに合っているか。
 まず、職務経歴書をもとに得意技がどのあたりにあるのかを探る。大きくはASICのRTL設計か、論理合成か、ターンキーサービスにおけるハンドリングか。そのうえで、得意技のレベルを判定する。同時に、入社後の希望業務も確かめる。次に、リーダー経験をチェックする。その内容と実績から、図研でもリーダーが務まるかどうかを見る。人物面では、顧客サービスの志向性や事業拡張・スキルアップの意欲など、事業部のカラーとの適合性を重視する。
小川さんはコレで決めた!
「RTL設計のみの担当なら考えたかもしれませんが、
ターンキーサービスの担当にしてもらえそうな雰囲気を
面接中にひしひしと感じました」
 図研ならば、即戦力として事業に貢献できるでしょうし、私が得たい環境も整っているだろうと、応募の段階で想像はついていました。問題は、希望するターンキーサービスの担当にしてもらえるのかどうかでした。RTL設計だけを前提とする採用であれば、たとえ内定をいただいても、二の足を踏んだはずなのです。面接を受けてみたらそれは杞憂でした。私の希望にずばりマッチすることを面接でひしひしと感じ、ぜひ入社したいと思いました。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
近年では競合他社同士の大型合併や、事業部を統合させた戦略子会社の設立が珍しくありません。しかし、その渦中にいるエンジニアにとってはまさに一大事です。進路の大きな分かれ目ともなりますが、今回の面接現場はひとつの好例ではないでしょうか。皆さんの知りたい現場を教えてください。

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